2020年1月にスタートした【私的トップ10ソングス+α】企画、今回は2023年2月分です。前の月にリリースされた曲を中心に選出しています。ミュージックビデオ等動画がない曲は巻末のプレイリスト(Spotify)でチェックしてみてください。
過去の私的トップ10ソングス等についてはこちらに。Spotifyを利用し、New Music Wednesday、New Music Friday Japan、New Music FridayおよびMonday Spinといったプレイリストを毎週チェックしています。
なお、"私的トップ10ソングス"とあるように、月イチで紹介するこのエントリーは完全な私見に基づくベストソング選出企画となります。個人的な作品への思い入れについては音楽チャート紹介時に乗せないよう心掛けています。
10位 U.S.ガールズ「Tux (Your Body Fills Me, Boo)」
今回初めて彼女の存在を知ったのですが、カイリー・ミノーグを想起させるボーカル、1980年代的ミックス、ジャネット・ジャクソン「All For You」で用いられたチェンジ「The Glow Of Love」を思わせるサンプリング的な音使い等、良い意味で様々な時代を踏襲しつつタイムレスなダンスミュージックを仕立て上げています。
9位 スクリレックス、ミスター・オワゾー & ミッシー・エリオット「RATATA」
スクリレックスは先月、2日連続でニューアルバムをリリース。そのうち『Quest For Fire』に収録されたこの曲は、彼の単独プロデュースながらミッシー・エリオットの完全なる新曲と言っても過言ではないでしょう。ミッシーのへの敬愛、彼女が紡いできたヒップホップやダンスミュージックへの尊敬を隠そうとしない、スクリレックスの思いが垣間見えます。
8位 ミュージック・ソウルチャイルド & ヒット-ボーイ「Beat Of Slow Dance」
R&B歌手のミュージック・ソウルチャイルドがヒップホッププロデューサ/歌手のヒット-ボーイと組んだユニットによるアルバムからの先行曲。ミュージックのヒットシングル「Halfcrazy」を想起させる三連バラードとなっており、あらためてこのタイプの作品とミュージックのボーカルとの相性の良さを感じずにはいられません。
7位 ジェシー・ウェア「Pearls」
4月リリースのニューアルバムからの先行曲はスチュアート・プライスによるプロデュース。前作の流れを踏襲し1980年代ダンスミュージックの香りを漂わせていることに加えて、カイリー・ミノーグのアルバム『Disco』デラックスエディションにてジェシーが参加した「Kiss Of Life」も思わせる仕上がり。アルバムへの期待は募るばかりです。
6位 KAT-TUN「Fantasia」
ニューアルバムのタイトル曲。Aメロのメロディラインの駆け上がり、そしてサビにおける(おそらくは)亀梨和也さんによる高音ハーモニーが、この曲の持つ色気をさらに増幅。前作『Honey』に続きサブスクを解禁していることでこの曲の魅力を知ることができた次第ですが、その前作に収録された「Ain't Seen Nothing Yet」は昨年度の私的年間ベストに選出(下記参照)。この系統の作品におけるKAT-TUN、最強かもしれません。
5位 ヨルシカ「アルジャーノン」
(上記動画のタイトルは”TBS火曜ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』×ヨルシカ「アルジャーノン」PV《空豆ver.》”。)
恋愛ドラマの主題歌として、『アルジャーノンに花束を』をモチーフにした作品を提供したヨルシカ。恋愛ドラマ主題歌によく見られるメロディの起伏を抑え、主人公の心の機微を静かに、しかし力強く描いています。今の時代にあって、40秒程度のアウトロそしてフェードアウトは斬新かもしれません。
4位 Summer Eye「失敗」
元シャムキャッツの夏目知幸さんによるソロプロジェクト、Summer Eyeの最新曲。古き良きダンスミュージックをベースにしながら、例えばサザンオールスターズ「勝手にシンドバッド」やザ・ドリフターズのヒゲダンス(原曲はテディ・ペンダーグラス「Do Me」)のような、良い意味で軽さを持ち合わせたポップミュージックに昇華。”失敗”という言葉が持つ響きからは考えにくい明るさも素敵です。
3位 9m88「若我告訴你其實我愛的只是你 - What If ?」
ジョウエムバーバーの新曲は、彼女と同じ台湾出身で1997年に不慮の事故で命を落としたシンガーソングライター/プロデューサー、張雨生(チャン・ユーシャン)のカバー。トランペットに黒田卓也さんを迎えたことで、彼が関与したMISIAさんのジャズアルバムに通じるソウルの薫りを漂わせ、個人的にはオリジナルバージョンよりもタイムレスなものになったのではと感じています。
2位 キエラ・シェアード「We Found Love」
スーパーボウルハーフタイムショーで復活を果たしたリアーナによる代表曲のひとつ、「We Found Love」が若手ゴスペル界の実力派によってカバー。厳密にはチャールズ・ジェンキンスの企画に招かれカバーしたものですが、カルヴィン・ハリスによるハウスミュージックを見事にゴスペルとして昇華させ、原曲以上に多幸感に溢れた作品に。この曲は下記ブログエントリーでも紹介しました。
1位 タイリース「Don't Think You Ever Loved Me」
俳優としても活躍するタイリースの久々のシングルは、2010年代のR&B界に普遍的ソウルミュージックを蘇らせた「Shame」の世界観を踏襲していると言えます。途中から加わり、アウトロに向かって感情を露わにするリアンドリア・ジョンソンの声とは対象的に、タイリース自身は熱を内包したまま淡々と進めていくという演出が見事。音楽評論家の林剛さんのツイートで知ることができました。ありがとうございます。
とにかく素晴らしいタイリースの本格復帰シングル。“Shame”級の名曲では?『Black Rose』期の未発表音源かと思った。スケールの大きい歌声に、レニー・クラヴィッツのギター、リアンドリア・ジョンソンの燃えるような女声が加わるバラッド。新作『Beautiful Pain』も発表間近?https://t.co/2ViciYW6XH
— RIN-GO (@hystys) 2023年2月14日
ちなみに「Shame」は日本のSpotifyでは配信されていないのが非常に残念です。タイリースは公式YouTubeチャンネルもない模様ゆえ、レコード会社等のデジタルの充実を願わずにはいられません。
以下、次点として10曲。
・Roomies「きっと愛」
・エラ・メイ「This Is」
・エニー「No More Naija Men」
・ジェイソン・デルーロ & デヴィッド・ゲッタ「Saturday/Sunday」
・マリオ feat. タイ・ダラー・サイン「Used To Me」
・マエタ「S(EX)」
・レイ「Worth It.」
・セイント・ハリソン & ティアナ・メジャーナイン「Homies」
・サマラ・ジョイ「Someone Like You (Spotify Singles)」
・ヨット & ロスト・ボーイ「Just The Kinda Feeling」
2月はカバーやサンプリング作品を多く取り上げましたが、サンプリングが純粋に楽しい、またはアイデアに工夫が見られる作品を多く選出した次第です。
その中でも、今年のグラミー賞で最優秀新人賞を獲得したタマラ・ジョイによるアデル「Someone Like You」のカバーでは、サマラ独特のボーカルが歌詞を際立たせ、個人的には本気を超える仕上がりになったと感じています。この曲がSpotify限定公開のために多くの方々がチェックできにくいのは残念ですが、グラミーで脚光浴びたサマラの魅力が、このカバーを介してもっと拡がっていくことを願ってやみません。
(こちらはアデルによるオリジナルバージョン。)
Spotifyのプレイリストはこちらに。
今月も素晴らしい音楽に出逢えることを願っています。