イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(訂正あり) ポルノグラフィティ「サウダージ」をソングチャート100位以内登場に導いたデジタル環境の整備

(※訂正(10時15分) 曲名に誤りがありました。正しくは「サウダージ」であり、すべて訂正させていただきました。ご指摘をくださった方に感謝申し上げます。そして誤記載について、心よりお詫び申し上げます。)

 

 

 

2000年9月にフィジカルリリースされ、キャリア初となるオリコン週間シングルランキング制覇を果たしたポルノグラフィティサウダージ」。この曲が今、ビルボードジャパンソングチャートで100位以内に連続エントリーを果たしています。

下記は「サウダージ」における、最新11月30日公開分(12月5日付)までのビルボードジャパンソングチャート120週分のCHART insight。総合ソングチャートは黒、ストリーミング指標は青、動画再生指標は赤、カラオケ指標は緑でそれぞれ表示されます。

(※上記ツイートは曲名を誤った状態のまま記載していました。正しくは「サウダージ」となります。誤記載について、心よりお詫び申し上げます。)

(上記CHART insightについてはツイート内リンク先にて確認可能です。ビルボードジャパンのホームページ内記事等のリンクを、はてなブログに貼付できない状況が続いていることを踏まえ(自分のブログエントリー限定かもしれませんが)、URLを記載したツイートを貼付しました。)

 

チャート上昇に大きく貢献した、そのきっかけはTHE FIRST TAKEへの出演とみられます。

上記動画は昨年9月3日に公開され、再生回数は現在までに2020万回を突破。ポルノグラフィティサウダージ」はカラオケでは以前から人気であり、2019年度にビルボードジャパンがソングチャートにカラオケ指標を導入して以降、この指標ではずっと100位以内に登場していました。しかしそれまでこの指標で50位を上回るのがやっとだった「サウダージ」は、THE FIRST TAKE動画公開に伴い30位台まで上昇します。

(なおビルボードジャパンは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴いカラオケ指標の集計を2020年春に一時中止しています。)

カラオケ指標はその後ダウンに転じるも、春以降に再び上昇気流に乗り最新11月30日公開分(12月5日付)ビルボードジャパンソングチャートでは7位に。そして総合ソングチャートでもこの1ヶ月間、100位以内エントリーを果たしているのです。

 

ここ最近におけるカラオケ指標の上昇には、どうやらTikTokでの人気が背景にある模様です。この点についてはタレントのでか美ちゃんが最近のコラムで紹介しています。ビルボードジャパンによるTikTok Weekly Top 20チャートには未だ登場していませんが、今後ランクインする可能性は十分でしょう。

素晴らしいパフォーマンスを気軽に観る機会を得て、好きになるきっかけさえあれば世代は関係ないのかもしれません。TikTokで演歌がめちゃくちゃバズれば、演歌の時代が来る可能性だってあるのかも。実際、ポルノグラフィティの「サウダージ」が今流行ってますからね。

『紅白』の「若者枠」はどこへ向かう?初出場の韓流グループが選ばれた納得の理由 - QJWeb クイック・ジャパン ウェブ(11月23日付)より

THE FIRST TAKEの影響力を踏まえればTikTokを主に利用する若年層にも曲が浸透し、いずれバズが発生しやすい状況が生まれていたとも言えるでしょう。それでもカラオケ指標はTHE FIRST TAKE公開後一旦下がっていることから、再浮上のタイミングが別途存在したと考えられます。

ポルノグラフィティは8月3日、およそ5年ぶりのアルバム『暁』をリリース。その前後に『THE MUSIC DAY』(日本テレビ 7月2日放送)や『SONGS』(NHK総合 7月28日放送)、『ミュージックステーション』(テレビ朝日 8月5日放送)に出演しています。どの番組でも「サウダージ」は披露されていませんが、各番組では新曲に加えて「アポロ」(1999)、「アゲハ蝶」(2001)、「メリッサ」(2003)といった代表曲が披露されています。

ニューアルバムに合わせての露出や過去曲披露がカラオケ指標の刺激になったことは間違いないでしょう。さらに遡れば、メンバーの岡野昭仁さんがKing Gnuの井口理さんと組みBREIMENプロデュースによる「MELODY」を5月にリリースしたことが、若年層へのリーチにつながった要因と考えられます。

加えて、ポルノグラフィティのミュージックビデオは期間限定と銘打って、フルバージョンが昨年9月4日にYouTubeで公開されています。下記「サウダージ」におけるキャプチャにて期間限定である旨を確認できます(期間限定であることをお伝えするためにキャプチャしました。問題があれば削除いたします)。

ミュージックビデオフルバージョンの公開はTHE FIRST TAKE一本目の出演直後であり、ポルノグラフィティ側がTHE FIRST TAKE動画から動画視聴への流れを意識して公開したと考えられます。また「サウダージ」は直近3週分のビルボードジャパンソングチャートにてストリーミング指標が100位以内に入っていますが、こちらはTikTokからの流入と思われます。実際ポルノグラフィティは2018年9月にサブスクを解禁しています。

デジタルアーカイブの充実は、いつ何時バズが発生しても対応でき、そのバズを増幅させる効果を持っています。

ポルノグラフィティはサブスクにてその下地を4年前に作ったことで、カラオケ指標導入直後からの同指標100位以内エントリーにつながったとも言えるでしょう。そしてミュージックビデオもフルサイズで公開し続けています。THE FIRST TAKEやテレビでのパフォーマンス、またTikTokからのデジタルへの流れを築き上げたことで、「サウダージ」の総合ソングチャート100位以内エントリーに結実したのではないでしょうか。

 

さて、明日開催される授賞式”TikTok Awards Japan 2022”にて流行語大賞等が発表されますが、そのノミネーションには曲に関連するものが非常に多いのです。

上記においては元号が変わる前にリリースした曲も含まれ、広瀬香美ロマンスの神様」(1993)は広瀬さん自らが動画投稿に参加したこともあってバズが発生しています。しかしこの曲はバズ発生前後、ビルボードジャパンソングチャートで100位以内に入ることができませんでした。バズ発生時に「ロマンスの神様」のミュージックビデオがショートバージョンしか存在せず、それが一因ではないかと捉えています。

後に「ロマンスの神様」は、4月6日に広瀬香美さんの公式YouTubeチャンネル発でフルバージョンが解禁されましたが(下記動画参照)、ビルボードジャパンのTikTok Weekly Top 20チャートにおける同曲のピークは3月であり、環境の未整備がバズのさらなる増幅につながりにくかったと考えられます。

TikTok発のヒット曲には数年から数十年前の作品も存在し、一昨年にはフリートウッド・マック「Dreams」が43年の時を経て米ビルボードソングチャートでトップ10目前まで再浮上するということがありました。「Dreams」においてはミュージックビデオもサブスクもきちんと用意されていたことが功を奏したと考えられ、デジタル環境の整備の重要性については当時からこのブログで発信し続けています。

 

ポルノグラフィティサウダージ」のヒットはメディア露出の影響もさることながら、ネットのバズを増幅させたデジタル環境の整備が大きいと感じています。今後さらなるヒットにつながるかは見極めが必要ですが、日本の音楽業界がデジタルについて考えるひとつの教科書的作品になったと言っても過言ではないでしょう。