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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

『SPY×FAMILY』主題歌の「喜劇」「ミックスナッツ」、解禁日を金曜に設定した理由を考える

Official髭男dismが本日、新曲「ミックスナッツ」を配信しました。

「ミックスナッツ」は4月9日にスタートしたテレビアニメ『SPY×FAMILY』のオープニング主題歌。エンディング主題歌となった星野源「喜劇」は1週間前の4月8日金曜に解禁され、4月13日公開分(4月18日付)ビルボードジャパンソングスチャートでは11位に初登場を果たしています。

(上記は公式オーディオ。)

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星野源さんが初登場11位という状況に驚いた方は少なくないかもしれません。というのもチャート常連と言える方の初動位置としては高くないと言えるため。しかし、そもそも「喜劇」は金曜リリースであり、最新4月13日公開分(4月18日付)のビルボードジャパンソングスチャートでは集計期間中3日間のみのカウントにとどまるのです。次週初登場予定のOfficial髭男dism「ミックスナッツ」においても同様となります。

 

ではなぜ、星野源「喜劇」およびOfficial髭男dism「ミックスナッツ」は、ビルボードジャパンで不利とも言える金曜リリースを実施したのでしょう。

 

考えられるのは3点。1つ目はタイアップ先の(初回)放送と日を空けないようにしたこと。リリースする主題歌とタイアップ先の作品との関連性を、時間を空けずに解禁することでより強固にイメージづける狙いがあるものと思われます。しかしそれが目的ならば、放送のおよそ24時間後となる月曜解禁でもよかったはずです。

 

2つ目は、ビルボードジャパンのみならずグローバルチャートを見越しているだろうという点。これが個人的には最も大きいものと考えます。

上記ブログエントリーでも解説していますが、一昨年秋に米ビルボードが新設したグローバルチャートは世界200以上の地域における主要デジタルプラットフォームのダウンロードおよびストリーミング(動画再生含む)で構成され、米ビルボードソングスチャート同様に金曜を集計期間初日に設定しています。世界のリリースが金曜を基軸にしていることとチャート集計開始日との関連性がよく解るはずです。

日本産アニメの主題歌が世界でも人気を博すことについては下記ブログエントリーでも紹介しています。たとえばテレビアニメ『進撃の巨人 The Final Season Part 2』主題歌のSiM「The Rumbling」はグローバルチャートにも登場。アニメ放送日に合わせて月曜解禁としたと思しき「The Rumbling」ですが、仮に金曜解禁だったならばより高い位置につけただろうと予想できるのです。

個人的にはフィジカルを用意せずとも海外に容易に発信可能な現状等を踏まえ、日本の音楽業界には金曜をリリースおよびチャートの起点とすることを提案しています。未だそれが叶わない状態で、しかし星野源「喜劇」やOfficial髭男dism「ミックスナッツ」がビルボードジャパンソングスチャート初登場位置が低くなろうとも金曜をリリース日に設定したのは、アニメ共々グローバルな展開を見据えてのものではないでしょうか。

4月8~14日を集計期間とする4月23日付グローバルチャートは日本時間の4月19日に発表予定ゆえ、星野源「喜劇」の動向に注目したいと思います。翌週にはOfficial髭男dism「ミックスナッツ」もランクインする可能性があります。

 

そして3つ目は、瞬発力以上にロングヒットを見越して。今年度大ヒット中のAimer「残響散歌」に限らず、「炎」「一途」「逆夢」等のロングヒット曲はいずれもアニメタイアップ作品となっています。Official髭男dismにおいても「Cry Baby」がテレビアニメ『東京リベンジャーズ』オープニングテーマとしてデジタルリリースされ、最新4月13日公開分(4月18日付)ビルボードジャパンソングスチャートでは27位に入っています。

これらの曲はグローバルチャートでも200位以内にランクインした実績があり、アニメタイアップ曲は支持を集めればロングヒット、そして世界でのヒットが確約されるといえます。ビルボードジャパンでの初週集計対象期間が3日間にとどまり初動が低いとしても、金曜リリースにしてグローバルチャートを優先的に意識し、じっくりロングヒットさせることで日本のチャートでも存在感を示そうとしたのかもしれません。

 

 

星野源「喜劇」は本日6時の段階でApple Musicで11位、LINE MUSICでは26位に入り、最新4月13日付Spotifyデイリーチャートでも11位にランクイン。LINE MUSICは再生キャンペーン(再生回数キャンペーン)採用曲が強いゆえ、その中でこの位置は高いと言えるでしょう。アニメタイアップ曲としての強さのみならず曲自体への評価も聞かれる「喜劇」はロングヒットの様相を呈していると言えそうです。