イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

”#ジャニーズのサブスク解禁を考える”…一昨日開催のコラボスペースを振り返る

一昨日、コラボスペースを開催しました。Twitter版Clubhouseといえる音声生配信サービスを利用し、ブログ【ただの音楽ファンが見る音楽業界】(→こちら)の管理人であるRYOさんのお誘いを受けて実施しました。

日本版グラミー賞があったならという題目にて1月に実施したコラボスペース(上記ブログエントリー参照)に続く2回目の内容は、【ジャニーズのサブスク解禁を考える】。前回のスペースでジャニーズ事務所所属歌手の解禁の重要性と願望を語り合ったことを踏まえれば、続編と呼んでも過言ではない内容です。

当日は”#ジャニーズのサブスク解禁を考える”のハッシュタグを用いて質問も受け付けました。常時40名程度、多いときは50名を超える方の同時接続に心より感謝申し上げると共に、またも電波の不具合でお聴き苦しい箇所があったことをお詫び申し上げます。

 

 

さて今回、【ジャニーズのサブスク解禁を考える】というテーマながら、RYOさんそして自分ともにサブスク解禁を希望しているというのが大前提として存在します。ジャニーズ以外の歌手に対してもそうですが、大半の歌手が未解禁のジャニーズについては事務所側への提案、希望の旨を伝え続けることが必要と考えています。では現段階での最善は何かについて等、前向きな提案を行わせていただきました。

これまでにこのブログで書いてきた内容等を総合し、以下の内容を紹介してきました。

 

● ジャニーズのデジタル解禁を勧める理由

 ・ビルボードジャパンソングスチャートの成績を考慮して

 ・デジタル解禁すればより大きなヒットになったことが見込まれるため

 ・デジタル解禁が大枠ではNGとみられる中、様々な工夫がみられるため

 ・映像作品の世界配信に対して主題歌のデジタル未解禁という矛盾の解消のため

 ・昨年末の東京ドームイベントでの選曲を踏まえて

 ・聴かれ方の変化を見越して

ビルボードジャパンソングスチャートは8つの指標から構成されますが、2017年度以降は一定以上のフィジカルセールスに対して係数処理が行われ、売上枚数がそのまま考慮されるわけではありません。その係数処理対象枚数は2022年度初週にも引き下げられ(下記リンク先参照)、30万→10万→5万(いずれも推定)と変化しています。20万枚程度のセールスを記録しても、デジタルに強い作品の後塵を拝する形が目立ってきました。

ビルボードジャパンソングスチャートがより社会的ヒットの鑑になっていると捉えるのは、時代に合わせて変化し続けるため。毎週ジャニーズ事務所所属歌手が出演する『ミュージックステーション』(テレビ朝日)で年末に放送される【今年の1曲ランキング】の順位がフィジカルセールスメインのそれではなくビルボードジャパン的になっていることからも、ビルボードジャパンの重要性は明らかでしょう。

(上記は2020年度版。『ミュージックステーション』が2021年度にこのランキング企画が行われなかったことを残念に思います。)

デジタル解禁は嵐、KinKi Kidsのソロ活動、直近ではKAT-TUNの昨年以降の作品群でみられるようになりましたが、KAT-TUN以外はフィジカルリリースまでにデジタル解禁することはありませんでした。それも踏まえるに、ジャニーズ事務所自体がフィジカルセールスを第一義としていると捉えることは自然なことでしょう。とはいえその前提の中でも様々な工夫がなされ、チャートにも反映。デジタルの重要性がよく解るのです。

たとえばなにわ男子「初心LOVE」の動画展開や関ジャニ∞「稲妻ブルース」でのテレビパフォーマンス映像のYouTube配信等が大倉忠義さんの意向と推測され、またRYOさんの説明に激しく納得したのですが、昨年末の東京ドームでのイベントを演出した松本潤さんがYouTubeでチェックできる曲主体に選出したことことは、歌手側のデジタルへの積極的な姿勢や、デジタルの力を見越してのものと考えていいでしょう。

一方で、なにわ男子「The Answer」はメンバーの道枝駿佑さんが主演する『金田一少年の事件簿』主題歌となりますが、このドラマの世界配信が決定しながら従来どおり音源が未配信なのは、ドラマを好きになった世界の方々に違和感を抱かせかねません。『アーケイン』(Netflix)で起用されたイマジン・ドラゴンズ & J.I.D「Enemy」が世界的にトップ10入りしていることを踏まえれば、音源の配信は世界進出的にも必須と言えます。

ビルボードでは2020年秋にグローバルチャートをスタートさせていますが、松本潤さんが所属する嵐「Whenever You Call」はグローバルチャートから米の分を除いたGlobal Excl. U.S.でトップ10目前まで上昇した経緯があります。グローバルチャートはフィジカルセールスを含まないため、ジャニーズ事務所所属歌手が世界進出を掲げるならば、やはりデジタル解禁が前提となるのです。

 

そもそもの話として、音楽の聴かれ方が変わったことが挙げられます。音源をサブスクで、もしくはサブスクサービス未加入でもダウンロードで聴くことが増えた時代にあって、CDのみの音源提供手法は当然ながらCDプレイヤーを必要とするものです。しかし家電量販店におけるCDプレイヤーの展開場所は大きく後退、またレンタル店舗の減少やレンタルCD取扱の終了等でCDの扱い自体が大きく減っている状況です。

 

● ジャニーズがデジタル解禁に至れない要因

 →フィジカルセールスのダウンの可能性

CDセールスは減少していますが、それでも大きく減っていないのはコアなファン層のCD購入が多く、グッズとしての位置付けが強くなったためと思われます。これは米ビルボードにおいても、チャート上昇のタイミングで歌手のホームページにてフィジカルをリリースすることが目立っています。フィジカルリリースがコアファンの購入意欲につながり、またチャート上昇目的(およびそのためのファンの連帯)に寄与するためです。

また日本では複数種販売が当たり前となり、カップリング曲を別にする策も採られています。そうなると全種揃えんとするコアファンが少なくないのは当然のこと。ライト層でどうしても音源がほしいという方自体のフィジカル購入は減ったとして、グッズ的な意味合いや全種欲しいというファン心理を考慮すれば極度な落ち込みはないと考えます。ましてレンタル可能店舗が減る以上、サブスク移行は必須でしょう。

フィジカルセールスの多さは素晴らしいことですが、今の時代はひとつの数字だけで良し悪しを判断する時代ではありません。テレビにおいても同様で、たとえば『アンナチュラル』や『最愛』は視聴率が必ずしも芳しいものではありませんでした。しかしネットニュース等で取り上げられる数字はほぼ全てがあくまでリアルタイムでのもの。録画視聴率や追いかけ再生等は高く、総視聴者数はリアルタイムの数字を圧倒するはずです。リアルタイム視聴率だけを持ち出し酷評する記事がみられますが、それらが的外れなのは複合指標で、より広い視野でチェックしていないことを意味します。

音楽に戻すと、デジタルにはフィジカルにおける廃盤という概念がありません。嵐が活動休止を発表した際にデビュー曲「A・RA・SHI」をミリオンにしたいというファンの思いが散見されながら、廃盤のために達成できなかった経緯があります。デジタルには廃盤はないため、後からでも購入や接触が可能。これによる売上や著作権収入も考えれば、いつ何時でもチェックできるデジタルの用意は必須でしょう。

いつ何時でもチェックできるデジタルを用意することで、嵐「カイト」は昨年の東京オリンピックパラリンピックのタイミングでチャート再浮上を果たしています。またTikTokでは広瀬香美さんによる「ロマンスの神様」が再燃しています。フィジカルの収入が減少したとして、デジタルで補完できる可能性は十分あるのです。最も「ロマンスの神様」のミュージックビデオ不徹底は気になるところではあるのですが。

 

● ジャニーズのデジタル解禁の最善策

 →フィジカルシングルの”表題曲のみ”配信

それでもフィジカルセールスを極度に、いやわずかでも落としたくないというのは当然の心理です。ならば最低限フィジカル表題曲だけを配信することを提案します。間口を広げることで、気になった方がフィジカル購入に、そしてコアなファンに昇華することも。またサブスクはTikTokYouTubeとの関連度が高く、動画経由でデジタル配信に手を伸ばす方は少なくないでしょう。

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(上記は最新3月23日公開(3月28日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおけるCHART insight。「初心LOVE」はこちら、「ブラザービート」はこちらから確認可能。ストリーミング指標は青で表示されます。)

最新3月23日公開(3月28日付)ビルボードジャパンソングスチャートではなにわ男子「初心LOVE」そしてSnow Manブラザービート」のストリーミング指標が300位以内に入り加点対象に。この指標はサブスクのみならずYouTubeのオーディオストリーミングも対象となっており、「初心LOVE」や「ブラザービート」をサブスク的にチェックしている方が多いことが解ります。これはサブスク解禁後のニーズの高さを示すに十分でしょう。そして2曲ともTikTokでヒットしている、もしくはその兆しがみえている作品となります。動画再生指標も高いことから、表題曲解禁の提案は以前にも記載しています。

またTravis JapanYouTubeチャンネル、+81 DANCE STUDIO(→こちら)でジャニーズ事務所所属歌手の過去のヒット曲を用いたダンス動画を配信していましたが、これはアーカイブ音源がジャニーズ内で自由に使えること、YouTube使用が問題ないことを示します。解散した歌手の作品だけでもデジタルアーカイブ化すれば、動画やテレビでの懐かしのアイドル特集時などを経てチェックする方が増え、利益創出につながるはずです。彼らのアーカイブをフィジカルで購入可能な状況を用意しないならば、デジタル環境の整備は尚の事必要です。

 

 

さて、デジタル解禁についての要望を述べる中で、一部の方から『ファンは未解禁について事務所に矛先を向けることにもやっとします』という声をいただきました。そちらに対する私見を記載します。

(そもそも気になることとして、ここで提示された”ファン”というのがジャニーズ事務所所属歌手のファンによる総意なのかという疑問があります。ジャニーズファンの中にもデジタル未解禁を疑問視し、事務所側への違和感を抱く方は少なくないと捉えています。ゆえに、”少なくともファンの一人である私”という解釈を施した前提でお話します。)

ジャニーズ事務所の姿勢とは別に、音楽業界やメディア全体における旧態依然の姿勢が残念ながら日本のエンタテインメントの足を引っ張っているということは感じています。先述した視聴率におけるリアルタイム視聴率優先等、内容以上に数字の面が最優先される傾向にあります。数字は分かりやすい指標ではありますが、それにこだわるあまり新陳代謝が図れていないという側面は否定できません。

音楽業界においては2002年にコピーコントロールCDが登場、2004年には著作権法改正に伴い輸入盤CDの輸入停止が可能な状況が生まれてしまいました(詳細はこちら等参照)。これらはいずれも、”消費者は犯罪者予備軍”というレコード会社側の論理が前提にあったと解釈しています。デジタル黎明期に採られたこの姿勢は、日本のエンタメ業界が今に至るまで保守的な状況が続いている、その根底にあるものと考えるに十分です。

ゆえに業界全体の姿勢の問題はたしかにありますが、ジャニーズ事務所においてはたとえばSMAP解散後も元メンバーからSMAPの名が不自然なまでに出ない、懐かしの映像特集では現在退所しているメンバーに過度な処理が施される、新しい地図のメンバーがテレビ出演できない事態が続いた際の公正取引委員会の介入時における赤西仁さんのコメント等、様々な疑念が可視化されています。

そして上記リンク先でも記載していますが、ジャニーズ以外の男性ダンスボーカルグループが地上波の民放音楽番組、特に『ミュージックステーション』(テレビ朝日)にほぼ出演できていない状況が今も続いています。特にDa-iCEは同局の『仮面ライダーバイス』に主題歌を提供、「CITRUS」がサブスク1億回再生を突破、さらに先月にはEPもリリースしながら出演が叶っていない状況です。

ジャニーズ側の圧力なのか、メディア側の過度な忖度か…個人的には主に後者だと考えます。メディアが未だ分かりやすい数字にこだわることで、数字を獲れる(イコールコアなファンが多い)ジャニーズ事務所所属歌手を起用する姿勢が増えています。それが間違いだとは思いませんが、しかしそれがジャニーズ以外の男性ダンスボーカルグループを冷遇していい理由にはなりません。

CITRUS」がヒットの軌道に乗った中でDa-iCEが「Kartell」をリリースした際、歌詞を踏まえた論評でジャニーズへの違和感を表明する音楽関係者、そして同調する方が少なくありませんでした。これもまたジャニーズ事務所への違和感の可視化と捉えています。言われる側はいい思いを抱かないかもしれませんが、それでも事務所側が広い心を示すことがひとつの解決手段ではないかと考えます。

 

また、先述した新しい地図赤西仁さんをはじめ、ジャニーズ事務所所属歌手が退所後メディアで取り上げられる機会は極度に減っていないでしょうか。またRYOさんの指摘で驚かされたのが、赤西さんがベストアルバムリリース時にジャニーズ事務所所属時代の音源をそのままではなく再レコーディングした上で収録したということ、およびジャニーズ事務所所属歌手に曲提供した歌手のセルフカバー音源について、曲提供した歌手自体はデジタル解禁しながらもセルフカバーだけが未配信という状況が散見されたということでした。これらから事務所側との取り決めがあったと推測するのは容易であり、その雁字搦めな姿勢は事務所側の問題と指摘して差し支えないはずです。

 

ジャニーズ事務所所属歌手がいつまでも所属し続けるかは本人以外分かりません。そして退所後の活動のみならず、退所前の活動もまるでなかったことにされるかのような扱いはあまりにも歪です。ならば、ジャニーズ事務所所属歌手のファンの方こそが予見されるリスクを前提として声を上げることが重要だと考えます。そして事務所側の姿勢が軟化すれば、必然的にサブスクへも柔軟な姿勢を採るのではないでしょうか。

尤も、嵐がデジタル解禁後に唯一ビルボードジャパンソングスチャートで首位を獲得したのはフィジカル先行の「カイト」でした。ゆえにジャニーズ事務所全体でデジタルの重要性が意識付けできにくかったと言えるかもしれませんが、その「カイト」はデジタルを同時発売すれば年間ソングスチャートでより高い位置に届いたはずです。

 

 

今回のコラボスペースは電波の不具合もありましたが、その内容は3時間に及びました。ゆえに取り上げながらまとめに記載しないものもあれば、取り上げないながら掲載したものもあります(ゆえに自分の私見が強いと言われればそれまでです)。

コラボスペース、そして今回のまとめが何かしらの気付きになるならば幸いです。そしてデジタルの工夫等良いところは評価し、違和感にはその旨を表明した上で改善策等を書き添えることを勧めます。それがエンタテインメント業界の改善につながるはずです。ジャニーズ事務所所属歌手の音楽作品がデジタル配信されることを心から願ってやみません。

 

 

最後に。今回コラボさせていただいたRYOさんが来月よりレギュラーラジオ番組を担当するとのことです。非常に楽しみです。良い音楽がラジオを介して拡がっていくことを願っています。