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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】フィジカル売上17万弱のKinKi Kids「高純度romance」が総合3位…未加算の指標が気になる

最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。

3月14~20日を集計期間とする3月23日公開(3月28日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。King Gnu「カメレオン」が初の首位を獲得しました。

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King Gnu「カメレオン」は動画再生およびフィジカル関連指標が初加算となり、100位以内登場3週目で同曲初の総合首位を獲得。カラオケ指標以外がすべて加点対象となり、Twitterを除く6指標が10位以内という安定した成績を収めました。

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Aimer「残響散歌」(総合4位)は登場15週目にして初めてトップ3から陥落するも、9週連続で8指標すべて100位以内に送り込んでいます。またフィジカル後発のBE:FIRST「Bye-Good-Bye」(総合2位)はカラオケ指標以外の5指標が10位以内に入り、うち4指標で首位となっています。

 

今週、KinKi Kids「高純度romance」が3位に初登場を果たしました。

King Gnu「カメレオン」の7倍ものフィジカルセールスを記録した「高純度romance」ですが総合では3位に。「カメレオン」そしてBE:FIRST「Bye-Good-Bye」の後塵を拝する形となりました。

デビュー曲「硝子の少年」を書いた松本隆さんが作詩を手掛け(作詞ではなく作詩と表記するメディアが多数)、アレンジには冨田恵一さんが参加した「高純度romance」。タイトル発表のアナウンスでその言葉の響きや表記、提供者がネットで話題になったこの曲ですが、総合首位に立てませんでした。デジタル未解禁ゆえダウンロードやストリーミング指標が加点されないことに加えて、動画再生も未加算なのが非常に気になります。

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「高純度romance」が動画再生指標を獲得できなかった理由として考えられるのは2点。ひとつはYouTubeで公開されたミュージックビデオがショートバージョンということ。

実際、ジャニーズ事務所所属歌手の作品の大半はミュージックビデオを短尺化してネット上にアップするのですが、しかし最近のアップにおいてはアウトロを削らず、元の尺の3分の2程度は残す傾向です。しかしKinKi Kids「高純度romance」におけるYouTube動画は1分33秒しかなく、これでは曲の概要や、松本隆さんの作詩の本分を理解することは厳しいでしょう。これが動画の(継続)視聴に繋がりにくかったと考えます。

 

そしてもうひとつは、ベテラン歌手ほど動画再生指標を獲得しにくいという傾向。こちらについては昨年度分についてまとめた、下記ブログエントリー内の表をご参照ください。2022年度におけるジャニーズ事務所所属歌手のシングル曲動向は別途表を作成、また2021年度に初登場した曲の2022年度における動向も追記し、貼付します。

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(2021年度と2022年度では、表におけるフィジカルセールス指標の略称を変更しています。)

同じ歌手による作品でも曲によって違いがあり、またドラマ主題歌は高い傾向にありますが、動画再生指標においては2010年代前半までのデビュー組と2010年代後半以降とで差が生じている印象があります。なにわ男子「初心LOVE」は現在でも上位をキープし、またSnow Manカップリング曲も動画再生指標で上位に登場する傾向があるのに対し、ベテランほど加点対象となる300位以内に入っていない状況が目立ちます。

考えられることとしては先述した短尺化のほか、コアなファン層の動画視聴習慣が近年デビュー組のコアファンほど根付いていない可能性も挙げられます。さらに、動画再生を含む接触指標群が十分に開かれていないことでライト層へリーチしくいとも言えるでしょう。

 

KinKi Kidsはメンバーのソロ作品が、フィジカルリリースに遅れるとしてもサブスク解禁に至っています。今週末にもさらなる解禁が予定されています。

ジャニーズ事務所としてはソロ作が解禁OKでデュオとしてはNGかもしれませんが、しかしソロ作のデジタル充実があるならばKinKi Kidsとしても解禁を望む声は少なくないはずです。そして解禁することになれば、ミュージックビデオの充実にも自然と意識が働くはずです。

タイトル発表時のTwitterの盛り上がり(指標にも反映されている状況)をみれば、発表と同時にフル尺に近い形でミュージックビデオをアップしたならば「高純度romance」の認知度がより高まり、フィジカルリリース時にあらためて動画再生が伸びたものと考えます。そうなれば総合ソングスチャートの順位も上がった可能性を考えるに、デジタル非充実の状況は勿体ないというのが厳しくも私見です。