イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ロングヒットに欠かせない接触指標群、しかしどちらか一方が弱い曲の原因は明確に存在する

ビルボードジャパンソングスチャートは8つの指標で構成され、ロングヒット曲ほど、サブスク等に基づくストリーミングおよび動画再生という接触指標群が強い傾向がみられます。これはこのブログで伝え続けていることです。その指標構成が可視化されているCHART insight、および構成8指標については下記リンク先をご参照ください。

最新3月23日公開分(3月28日付)ビルボードジャパンソングスチャート、トップ5のCHART insightはこちら。

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フィジカルリリースされていない曲はフィジカルセールスおよびルックアップを除く6指標が集計対象となりますが、曲の強さは集計対象指標がすべて100位以内で推移していることからも解ります(なおカラオケは上昇までに時間がかかる傾向があります)。Aimer「残響散歌」は9週連続で8指標を獲得しており、今年度最強と言えるのです。

このCHART insightをみると、時折アンバランスな曲に出会います。ストリーミングが強いながら動画再生がそうではない、もしくはその逆のパターンもみられるのです。なぜアンバランスな事態が発生するのか、今回は解説していきます。

 

 

・ストリーミングが高い、動画再生が低い場合

最新3月23日公開分(3月28日付)ビルボードジャパンソングスチャートの総合トップ20において、ストリーミングが100位以内に入りながら動画再生が100位未満なのは2曲。これはストリーミングのトップ20においても同様です。

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原因は自分にある。「青、その他」はミュージックビデオが3月12日に公開され、3月13日からを集計期間とする最新ソングスチャートでは1週間フル加算対象となったのですが、動画再生は加点対象となる300位以内にも入っていません。ストリーミングに偏った人気は、同曲がLINE MUSIC再生キャンペーン(再生回数キャンペーン)を採用していることと大きくリンクします。

「青、その他」は3月12日から、続く「結末は次のトラフィックライト」は3月21日から同様のキャンペーンを実施しており(キャンペーン内容はこちら)、次週3月30日公開分(4月4日付)ビルボードジャパンソングスチャートではキャンペーン初日からの分が加算対象となる「結末は次のトラフィックライト」の躍進が注目されます。ともすれば同曲の総合トップ10入りもあり得るかもしれません。

一方で「青、その他」は先述の通り動画再生のみならず、ダウンロード指標も加点されていません。また別のサブスクサービスであるSpotifyではデイリー200位以内に登場していないため、あまりにも偏った構成となっています。

LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲にみられがちな偏りの傾向は、コアなファンの熱量とライト層との乖離の大きさを示しており、キャンペーン終了後に再生回数の急落が生まれる可能性が高いのです。原因は自分にある。のキャンペーン採用曲は2作品とも4月5日までがキャンペーン期間となっていますが、コアなファンの再生が次の曲に移れば「青、その他」はキャンペーン中にあっても急落する可能性が考えられます。

 

Tani Yuuki「W/X/Y」はTikTokで人気を博し、本人が踊ってみた動画に参加したことでさらなるバズに至った曲。この点については1月上旬に紹介しています。

(上記はリリックビデオ)

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TikTokはストリーミングや動画再生といった接触指標群により大きな影響を与えるのですが、ストリーミングで4週連続10位を獲得した「W/X/Y」は、一方では動画再生において一度も加点対象となっていません。

原因として考えられるのが、ISRC(国際標準レコーディングコード)の未付番。YouTubeの概要欄に"この動画の音楽"として曲名がクレジットされていないため、未付番の可能性が高いと思われます。必ずしもISRC付番とクレジット記載とがイコールではありませんが、ISRCは後からでも付番可能であり、未付番という仮定が正しければ今からでもつけるべきです。

このISRC未付番と思しき現象は、あいみょんさんやYOASOBIにもみられたことでした。レコード会社、そして芸能事務所側の対策は必至です。

 

 

・動画再生が高い、ストリーミングが低い場合

最新3月23日公開分(3月28日付)ビルボードジャパンソングスチャートの総合トップ20において、動画再生が100位以内に入りながらストリーミングが100位未満なのはありませんが、動画再生指標トップ20においてストリーミング100位未満なのは4曲あります。ただしSnow Manブラザービート」および「REFRESH」はリリース前という状況であり、音源と動画のどちらか一方が先行公開されていればこのような状況は発生します。

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Stray Kids「MANIAC」はストリーミングが100位未満ながら300位以内に入り加点対象に。3月18日金曜にリリースされたことで集計期間上有利と言えなかったのですが、これはあくまで日本のチャートでの話。K-Popアクトは海外展開を意識し、海外チャートの金曜集計開始を見越して金曜リリースを採ることが増えた印象があります。個人的には日本の音楽業界も金曜を起点としたものに変える必要があると考えます。

なおK-Pop曲についてはストリーミングも高いながら、動画再生の順位がより高い傾向にあります。アイドル的な側面もあるK-Popアクトを観て楽しむ方々が多いこと等もその要因でしょう。

 

なにわ男子「初心LOVE」は動画再生が極めて強く、前週まで通算19週もの間同指標でトップ10入りを果たしていました。この強さはミュージックビデオのみならず、デビュー日のパフォーマンス動画やダンス動画の連続アップ、TikTok人気からの派生も影響しており、総合ソングスチャートでも2週連続で首位を達成。その点についてはブログにて紹介しています。

(ミュージックビデオはショートバージョン、ダンス動画はフルバージョンとなります。)

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本日午前6時の段階で、短尺版のミュージックビデオが2790万回、ダンス動画が2948万回再生と逆転しており、YouTubeで"初心LOVE"と検索するとダンス動画が最上位に登場します。フルバージョンの重要性はここからも感じられます。

この「初心LOVE」のストリーミングの強くなさは、単純に同曲がダウンロードやサブスクといったデジタルの未解禁にあります。先述したSnow Manブラザービート」等もデジタル未解禁ならば同様となります。それでも「初心LOVE」がストリーミング指標で2週前、さらに最新チャートでも加点対象となっているのはサブスクと共にストリーミング指標の要素となっているYouTube Musicの再生回数が多かったことを示します。

仮に「初心LOVE」がデジタルで解禁されていたならば、この曲は2021年から2022年にかけてより大きなヒットになっていたことは間違いありません。レンタルCDの要素も含むルックアップの上位安定等を踏まえれば、接触の多さは容易に想像できるのです。

 

 

ストリーミングと動画再生という接触指標群で一方が極端に低い曲については、その原因が明確に見えてきます。問題がはっきり可視化されるのは複合指標から成るビルボードジャパンソングスチャートの特性、そして同社によるCHART insightの提供効果と言えるでしょう。簡単に改善できることではないかもしれませんが、歌手側がどう対応していくかが求められます。