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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

優里、アルバム『壱』リリース後の様々な施策でアルバム・ソングス両チャートのロングヒット確定へ

優里さんのファーストアルバム『壱』がロングヒットのフェーズに突入…最新のアルバムチャートからそのことを強く感じています。

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1月12日リリースのアルバム『壱』はビルボードジャパンの総合アルバムチャートで3位に初登場を果たすと翌週も順位をキープ、その後3ランクずつダウンし現在に至っています。アルバムチャートは多くの作品が初登場で好位置につける傾向があり、最新2月9日公開分(2月14日付)ではトップ10のうち8作品が初登場。その中で2連覇を達成したAdo『狂言』共々、『壱』はトップ10内にとどまっています。

注目は、上記CHART insightではオレンジで示されるルックアップ指標で、前週の15位から首位にジャンプアップしています。ルックアップはCDをパソコン等に取り込んだ際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスされる数を指し、売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)やレンタル枚数を推測することが可能。最新チャートでレンタル解禁後初の1週間フル加算となったことが影響したと言えます。

 

主にライト層が用いるレンタルが上昇したのは、つまりライト層を動かしたのは、昨年度のビルボードジャパン年間ソングスチャートを制した「ドライフラワー」が『壱』ではじめてフィジカル化されたこともあるでしょう。それに加えて、優里さん側がアルバムリリース後に様々な施策を行ったことの結実ゆえではないかと考えています。

 

 

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アルバム収録曲の「レオ」は最新チャートの集計期間中となる2月3日にミュージックビデオが解禁。テレビでも披露されたこの曲はアルバム初登場の翌週にソングスチャートにおけるストリーミングで46位に上昇。最新2月9日公開分(2月14日付)のソングスチャートでは動画再生指標が42位に初登場、またストリーミングは27位となり総合では26位に達しています。

 

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ベテルギウス」が主題歌に起用された昨年秋のドラマ『SUPER RICH』(フジテレビ)にて、挿入歌に起用されたのが「ミズキリ」。ミュージックビデオはないものの、アルバムリリース後にYouTubeチャンネル【優里ちゃんねる】でピアノバージョンが公開。この曲もアルバム初登場のタイミングでソングスチャートにも登場し、動画再生指標も加算されています。またこのバージョンは明日配信されることが決定しました。

ビルボードジャパンのチャートポリシーでは言語のみが異なるバージョンを除き、アレンジ違いや客演等追加などのバージョンはオリジナル版に合算されないことになっていますが、動画再生指標は基本的に合算されるため、「ミズキリ」は直近の2週において動画再生が加算されています。またこの合算は、THE FIRST TAKEで初披露された「ベテルギウス」がロングヒットに至った一因にもなっています*1

ピアノバージョンはオリジナル版のダウンロード指標においては合算されませんが、明日のリリースは最終的にオリジナルバージョン、そしてそのオリジナルバージョンが収録された『壱』を注目させる結果につながると言えるでしょう。

 

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合算のチャートポリシーを巧く用いたと言えるのが、最新ソングスチャートで7位にランクインした「ドライフラワー」。2020年11月25日公開分(11月30日付)以降トップ10内ランクインを続けるこの曲は、最新チャートにおいてダウンロード指標(上記CHART insightでは紫で表示)が23→12位に急伸。これは同曲の英語版となる「Dried Flowers」が最新チャートの集計期間にリリースされたことに伴います。

言語のみが異なるバージョンが合算対象となることは以前確認しており、その後もこのチャートポリシーは変わっていません(客演、リミックス、言語の違いは”合算対象か別扱いか?” ビルボードジャパンに問い合わせてみた(2018年11月21日付)参照)。またストリーミング指標においても英語版の登場に伴い再生回数前週比105%となったことが、ビルボードジャパンによるこの指標の記事で判ります(→こちら)。

このブログで毎週紹介する米ビルボードソングスチャートや、米ビルボードが2020年秋に新設したグローバルチャートにおいては様々なバージョンが合算対象となるチャートポリシーを採用しています。「ドライフラワー」はグローバルチャートの、特にGlobal Excl. U.S.(Global 200より米の分を除いたもの)で強いのですが、英語版の登場はオリジナルバージョンの援軍となることは間違いありません。

 

 

「レオ」のミュージックビデオ公開、「ミズキリ」のピアノバージョンおよび「ドライフラワー」英語版のデジタルリリースはいずれも、アルバム『壱』のリリース後に行われているものです。アルバムのロングヒットにつながるこれらの施策は、それを目的にアルバムからのシングルカットを続ける米音楽業界の方式をなぞっていると言えるでしょう。フィジカルを用意しなくともいいデジタルの利点を活かしているとも言えます。

これらが結果的に『壱』のレンタル枚数を増やし、最新アルバムチャートのルックアップ指標をトップに至らせた要因だと考えます。また最新ソングスチャートにおいては「ベテルギウス」が5→2位となり、ここにきて最高位を更新していますが、これもアルバムリリース後の施策が結実したものと捉えていいでしょう。カラオケ指標も3位まで上昇しており、同曲の浸透度の高さを示しています。

 

最新2月9日公開分(2月14日付)ビルボードジャパンソングスチャート(→こちら)で優里さんは100位以内に7曲送り込んでおり、代表曲は「ドライフラワー」だけではないことがはっきり判ります。優里ちゃんねるにおけるYouTuber的な活動も、曲への親しみにつながっていることでしょう。

優里さんはアルバム『壱』、そして「ドライフラワー」や「ベテルギウス」をロングヒットのフェーズに突入させ、さらに「レオ」もその仲間入りを果たすかもしれません。ならば大晦日のスケジュールを、(たとえ優里さんがどんなに好きだとしても)格闘技イベントを優先させる前に、NHK側は今からでも抑えないといけないのではないでしょうか。

 

*1:この矛盾を解決するためにも様々なバージョンは合算されるべきであると、個人的にはビルボードジャパンに対しブログを通して提案を続けています。