イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

最新チャートにおける「Luv Bias」「RIGHT NEXT TO YOU」の動向に思う…最強のチャートアクションを誇るYOASOBIに倣うべき

最新3月15日付ビルボードジャパンソングスチャートではAdo「うっせぇわ」が首位を獲得しましたが、その一方でロングヒットとなりながらも優里「ドライフラワー」が初の栄冠を逃したことの問題について昨日記載しました。

優里「ドライフラワー」の問題はミュージックビデオのショートバージョン化にほぼ尽きるのですが、最新週のチャートでは他の曲においても勿体ない点が生じています。

 

Kis-My-Ft2Luv Bias」は前週首位を獲得しながら今週は13位に後退、トップ10内在籍はわずか1週となっています。

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前作「ENDLESS SUMMER」がフィジカルセールス加算2週目に前週の首位から53位へと急落したのに対し、「Luv Bias」は1→13位となっており、ドラマ主題歌というタイアップが貢献したとは言えます。

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昨年10月5日付における総合50位のポイントは1825であり、「ENDLESS SUMMER」がこの数字に極めて近いと仮定すれば同曲のポイント前週比は10.0%。これを踏まえても「Luv Bias」は前作超えと言えますが、昨年のTBS火曜ドラマ枠からOfficial髭男dism「I LOVE...」、あいみょん「裸の心」が年間ソングスチャートトップ10入りを果たしたことを考えれば、やはり勿体ないチャートアクションであると思うのです。そのヒントは動画再生指標の高さにあります。

ジャニーズ事務所所属歌手は昨年以降、ミュージックビデオをショートバージョンながらシングル表題曲で解禁しています。一方でその動画再生指標はシングルCDに同梱される映像盤で視聴できるためフィジカルセールス加算開始後はダウンすることが多いことから、コアなファンによる視聴が主体であると考え上記ブログを記載しました。その動画再生指標が「Luv Bias」では好調に推移しているのです。

(実はジャニーズ関連曲において、今年に入り動画再生指標が安定し好調をキープする曲が増えた印象があります。ともすればショートバージョンながらミュージックビデオを解禁したことがライト層へ浸透し、ライト層の接触の場にもなっているのかもしれません。とはいえ、その中でも「Luv Bias」はとりわけ安定しているのです。)

Luv Bias」が動画再生指標において4週連続20位以内をキープしたその要因にライト層が大きく関わっているとしたならば、やはりデジタル解禁していれば…そう思わざるを得ません。今週リリースのKAT-TUN「Roar」が遂にCDリリース日でのデジタル解禁に踏み切りましたが、先述した「I LOVE...」や「裸の心」が接触指標群で伸ばしたこと(あいみょん「裸の心」については動画再生指標が高いとは言い切れないのですが)を踏まえれば、実験的に今からでも「Luv Bias」をデジタル解禁し、サブスクサービスでも触れられるようにはできないでしょうか。そうすれば、相当な規模と思しきライト層の顕在化につながるものと考えます。

 

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ベストアルバム『SZ10TH』が最新3月15日付ビルボードジャパンアルバムチャートを制したSexy Zoneですが、同作で初CD化された「Change the world」およびこの「RIGHT NEXT TO YOU」は共に今週のソングスチャートで100位以内ランクインを逃しています。特に「RIGHT NEXT TO YOU」は音楽関係者の評判も多く集めていること、動画再生指標が比較的安定していること、およびラジオ指標も43位に登場していることを踏まえれば、Twitter指標のみが300位以内だった「Change the world」よりも上位にいると考えるのが自然。アルバムのフィジカルセールスがソングスチャートに反映されないとして、しかしこの勢いがソングスチャート100位以内へのエントリーにつながらなかったのは、こちらもやはりデジタル未解禁が影響しているものと考えます。

尤も今作はベストアルバムであり、Sexy Zoneの2曲をデジタル解禁すれば収録曲の残りはすべて既発曲であるためフィジカルセールスに悪影響を及ぼすと言われるかもしれません。しかし新曲「LET'S MUSIC」(3月24日リリース)も音楽関係者から上々のリアクションが集まっており、音楽好きを中心にベストアルバムで"セクゾ沼"に没入する人が増えるだろうそのきっかけとして新曲をデジタル解禁するのもひとつの手段だったと思います。

 

 

タイアップという認知拡大の場を活かせない、アルバムは大ヒットしながら収録曲が思うように上昇しない…これらと真逆の動きを示している代表はやはりYOASOBIです。EP『THE BOOK』がアルバムチャートに初登場した1月18日付において、同日付でアルバム『ST』が首位を獲得しながらサブスク等未リリースであるSixTONESとの動向が真逆であることを以前記載しました。

デジタルを十分に解禁していることで、アルバムやEPをリリースすればその収録曲もまたソングスチャートで存在感を示すことが、今回のYOASOBIの件でよく解ります。またデジタル指標群以外にもラジオエアプレイや(アルバムチャートにおける)フィジカルセールスに勢いが表れており、今週のチャートでYOASOBIがさらなる飛躍を遂げたと言えるでしょう。

デジタルの十分な解禁が最終的にYOASOBI自体の飛躍につながっていくことは、最新3月15日付ビルボードジャパンソングスチャートからも解ります。

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上記はインストゥルメンタルを除きYOASOBIがリリースした9曲のうち、最新ソングスチャートで50位までに入った7曲および「優しい彗星」の動向。「優しい彗星」はポイント数が不明ながら、50位以内の7曲はすべてポイント前週比が上昇しています。

これは2月26日金曜に「群青」のTHE FIRST TAKE版が公開されたことによるもの、そして解禁の翌々日にテレビで収録模様も紹介されたことで3月1~7日を集計期間とする最新3月15日付ビルボードジャパンソングスチャートにも影響したといえます。しかしながら「群青」のトップ10返り咲きのみならず全曲のポイントが上昇しているのはまさに、THE FIRST TAKEが歌手自体の認知度や影響力の拡大につながったことを意味していると言えるでしょう。さらには一昨日、「優しい彗星」のTHE FIRST TAKE版も公開されています。個人的にはこの選曲に一瞬驚いたのですが、フィジカルリリース直前であることやチャート上での再浮上につなげる点で絶妙な選曲であったと思うのです。

YOASOBIについてはTwitterの巧さもまた見事で、ファンとのエンゲージメントの強固な確立やライト層をコアなファンに昇華させつついやらしさがないことが、YOASOBIの人気をさらに高めることに貢献しています。

言い換えれば、デジタル未解禁に加え、SNS未開設のためにエンゲージメントを確立できないことがどれほどの機会損失につながっているか…YOASOBIの成功例を踏まえれば、「Luv Bias」「RIGHT NEXT TO YOU」には相当の勿体なさを抱いてしまいます。

 

 

無論、Kis-My-Ft2Sexy Zoneも既に十分な人気を誇り、認知度も十分でしょう。その一方で、音楽面で一層評価されるタイミングがまさに今回の新曲にあったはずで、ライト層の獲得のみならず、例えばジャニーズ所属であることを理由にむしろ敬遠していた人たちまでをも振り向かせるチャンスだったと思うのです。『NHK紅白歌合戦』出場時に最新曲を堂々と披露する意味でも、タイアップ曲や評判の高い曲をより広く認知させヒットにつなげる必要があったと思いますし、今からでも遅くないはずです。