今回から毎週水曜は、米ビルボードが昨年新設したグローバルチャートについてお伝えします。
今回分けた理由は、まず今週米ビルボードの発表が遅れたことにあります。通常日本時間の月曜早朝までにアルバムチャートを、火曜早朝には米ソングスチャートおよびグローバルチャートを発表するはずでしたが、今週はすべて火曜午前の発表となりリズムを取ることができなかったのがひとつ目の理由です。
もうひとつは、今週月曜のビルボードコラムの内容に準じます。『グローバルチャートについて、日本できちんと毎週報道する媒体が見当たりません』『弊ブログで米ビルボードソングスチャート速報時に合わせて紹介するくらいにとどまっているのではないでしょうか』と書いたのですが、ならば自分がきちんとグローバルチャートをひとつのエントリーとして独立させ、J-Popの動向も合わせて記載しようと考えた次第です。
昨年秋に新設されたグローバルチャートについては、以前ブログエントリーにてまとめています。
200を超える地域の主要デジタルプラットフォームによるストリーミングとデジタルダウンロードで構成され歌手のホームページでの販売分を含まないグローバルチャート。10月9日付ではGlobal 200、Global Excl. U.S.共にコールドプレイ & BTS「My Universe」が初登場で制しています。
The sky's the limit for Coldplay and BTS, as their new single #MyUniverse debuts at No. 1 on both the Billboard Global 200 and Global Excl. U.S. charts. https://t.co/Fms3DsVstW
— billboard (@billboard) 2021年10月5日
The Global 200 top 10 (chart dated Oct. 9, 2021)
— billboard charts (@billboardcharts) 2021年10月5日
The Global Excl. U.S. top 10 (chart dated Oct. 9, 2021)
— billboard charts (@billboardcharts) 2021年10月5日
コールドプレイ & BTS「My Universe」はGlobal 200ではストリーミングが9540万、ダウンロードが142400を、Global 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.ではストリーミングが8440万、ダウンロードが90500を獲得しています。
これによりBTSは、Global 200において最長不倒となる6曲目の首位獲得を果たし、コールドプレイは初制覇となりました。Global Excl. U.S.ではそれぞれ5曲目、および初の首位到達となります。
ザ・キッド・ラロイ with ジャスティン・ビーバー「Stay」は双方のチャートで2位に後退。Global 200ではストリーミングが前週比8%ダウンの1億620万、ダウンロードが同17%ダウンの17200を、Global Excl. U.S.ではストリーミングが前週比8%ダウンの8420万、ダウンロードが同13%ダウンの8800を記録。Global 200ではストリーミングが前人未到の8週連続1億回超えを達成しています。
ナイアガラ出身のCケイ(CKay)による「Love Nwantiti (Ah Ah Ah)」がGlobal 200で8→4位に上昇。ストリーミングは前週比36%アップの6890万、ダウンロードは同76%アップの4500を記録し、Global 200ではアフリカ勢で初となるトップ5入りとなりました。Global Excl. U.S.では2指標の数字は記事未記載ながら、4→3位となり最高位を更新しています。
エルトン・ジョン & デュア・リパ「Cold Heart (Pnau Remix)」がGlobal Excl. U.S.で11→9位となり、エルトン・ジョンにとって同チャート初のトップ10入りを果たしました(デュア・リパにとっては3曲目)。ストリーミングは前週比10%アップの2590万、ダウンロードは同1%アップの17900を記録しています。
「Cold Heart (Pnau Remix)」ではエルトン・ジョンによる「Rocketman」(1972)、「Where’s the Shoorah ?」(1976)、「Kiss The Bride」(1983)および「Sacrifice」(1989)が用いられ、オーストラリアのプナウが手掛けた曲となっています。
ここまで記事の翻訳を行いました。ここからは私見を記載します。
コールドプレイ & BTS「My Universe」は米ビルボードソングスチャートも制しています。米ビルボードソングスチャートは3つの指標で構成されており、ストリーミングは1150万、ダウンロードは127000、そしてラジオは550万をそれぞれ獲得しました。
一方でGlobal 200からGlobal Excl. U.S.を引くと、グローバルチャートにおける米の分の数字が判明します。ストリーミングは1100万、ダウンロードは51000となり、ストリーミングにおいては米ビルボードソングスチャートとほぼ変わらない一方、ダウンロードが大きく異なることが判ります。
これはグローバルチャートのダウンロード指標が歌手のホームページでの販売分を含まないこと、またフィジカルセールスを含まないことが要因です。逆に言えば米ビルボードソングスチャートが歌手のホームページの販売分をデジタル/フィジカル共に含むために発生する現象です。なおこのホームページ分の強さは、BTSによくみられる傾向でもあります。
さて、今週はGlobal 200で面白い動きが。
ニルヴァーナ「Smells Like Teen Spirit」が登場39週目にして91位に到達し、最高位を更新しました。今から30年前にリリースされ、米ビルボードソングスチャートでは翌年1月に最高6位を記録しています。この曲はクリスマスソングが一掃された今年1月16日付で181位に初登場を果たし、以来ずっと200位以内をキープしてきました。チャート初登場時の記事はこちら。
Nirvana's "Smells Like Teen Spirit" debuts on the Billboard Global 200 as holiday songs clear out. https://t.co/Cp5hSA0nEP
— billboard (@billboard) 2021年1月15日
初登場時の2指標の動向は、ストリーミング970万およびダウンロード1000。ストリーミングには公式動画の再生回数も含まれますが、上記ミュージックビデオは年間1億回ペースで再生回数を伸ばしています。YouTubeの概要欄、"Listen to more from Nirvana"と記載されたリンク先はApple MusicおよびSpotifyにつながっており、サブスクに移行し聴取した方も少なくないはずです。
名曲がきちんと再生され、また所有され続けていることがグローバルチャートによって可視化され、また名曲は時を超えて強いということもまた判明しました。今後「Smells Like Teen Spirit」の上昇が報じられれば尚の事、人気再燃が加速するかもしれません。
最後にJ-Popの動向を紹介。毎週火曜夕方に更新されるグローバルチャート詳報で100位以内に入ったJ-Popをツイートしており、そちらを転載します*1。
10月9日付 #Global200 100位以内のJ-Popの動向
— Kei (@Kei_radio) 2021年10月5日
(集計期間:9月24~30日)
(100位以内にJ-Popはランクインしていません。)
10月9日付 #GlobalExclUS 100位以内のJ-Popの動向
— Kei (@Kei_radio) 2021年10月5日
(#Global200 から米の分を除く)
(集計期間:9月24~30日)
・57→60位 #Official髭男dism(@officialhige)「#CryBaby」
・70→71位 #backnumber(@backnumberstaff)「#水平線」
・77→82位 YOASOBI(@YOASOBI_staff)「#夜に駆ける」
(続く)
10月9日付 #GlobalExclUS 100位以内のJ-Popの動向(続き)
— Kei (@Kei_radio) 2021年10月5日
・42→91位 #YOASOBI(@YOASOBI_staff)「#大正浪漫」
・92→97位 YOASOBI「#怪物」
今日発表される10月6日公開(10月11日付)ビルボードジャパンソングスチャートの集計期間は9月27日-10月3日であり、前半4日分が最新グローバルチャートの集計期間と被ります。グローバルチャートではYOASOBIの以前からのヒット曲が安定した動きをみせる一方で「大正浪漫」が急落していることから、ビルボードジャパンにおける動向も似たようなものになるのではないでしょうか。
*1:グローバルチャートは無料会員が100位まで、有料会員が200位まで閲覧可能。ただし有料会員のみが知り得る情報を流すことはできないという観点から、100位以内の動向のみ紹介しています。