イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

「どうしても君が好きだ」のチャートアクション、最近のAKB48のシングルで異なる動向を辿ることについて

一昨日のブログエントリーでは、櫻坂46「Start over!」のチャートアクションについて紹介しました。

(このブログエントリーを紹介したツイート(→こちら)に対し、”LINE MUSIC再生キャンペーンが批判の対象になっている”という指摘をいただきました。その点について、ライト層の真のヒット曲が可視化されにくくなること、参加者の疲弊を招くことおよび(キャンペーンの存在が)チャートに少なからず影響することの問題点を引用RTにて提示しています。)

 

さて、最新6月28日公開分のビルボードジャパンソングチャートで注目すべき曲として、AKB48「どうしても君が好きだ」を取り上げます。5月3日公開分で3位に初登場を果たしながら翌週100位圏外へ急落した曲が、直近2週は21→15位と上位に登場しているのです。

AKB48「どうしても君が好きだ」のCHART insightをみると、この曲のヒットの要因がフィジカルセールス指標にあることが解ります。

実は「どうしても君が好きだ」も櫻坂46「Start over!」同様、LINE MUSIC再生キャンペーンを実施しています(詳細はこちら)。デジタルとフィジカルのセールスタイミングに1ヶ月以上の開きがあるゆえ「Start over!」と比較することは難しいのですが、しかしキャンペーンよってストリーミングが「Start over!」ほど増加したとは言い難いことがCHART insightから解ります(ストリーミングは青で表示)。

CHART insightから総合順位(黒)およびフィジカルセールス指標(黄色で表示)を除いたものが上記。他指標の加点がこの1ヶ月以上ないことから、同期間はフィジカルセールス指標のみでポイントを獲得していることも解ります。つまりはロングヒットしている「どうしても君が好きだ」については、実際はデジタル、特に接触指標が強くないためライト層に浸透しているとは言い難いと言えるのです。

 

 

AKB48は”会いに行けるアイドル”を謳い支持を集めてきましたが、コロナ禍以降はそれまでの”会える”アプローチができなくなりました。それゆえか他のアイドルよりもコロナ禍突入以降のフィジカルリリースにブランクが生じ、2020年3月発売の「失恋、ありがとう」から「根も葉もRumor」のリリースまで1年半を要することに。結果、「根も葉もRumor」の初週フィジカルセールスは前作から100万枚近くダウンしています。

その「根も葉もRumor」以降のシングルは、CHART insightにて共通の特徴がみられます。

「根も葉もRumor」は激しいダンスが話題になったこともあり動画再生指標(赤)が他の曲よりも加点され続けた傾向はあるものの、フィジカルセールスが総合チャートを良くも悪くも牽引し、また数週に一度急上昇することで総合チャートでも再浮上しています。この動向がAKBグループ共通の特徴と言えることについて、下記エントリーにて(アルバムチャートのみならずソングチャートについても)言及しています。

その中にあって、AKB48「どうしても君が好きだ」のフィジカルセールスはコロナ禍以降で初めて、100位圏外にダウンすることなく安定しています。それが総合チャートにも反映された形です。

(なおここでは”コロナ禍以降”と書きましたが、実際のところ新型コロナウイルスは今また猛威を振るう可能性が高まっています。)

次回7月5日公開分のソングチャート、フィジカルセールスの集計期間前半3日分における速報記事(先ヨミ)では「どうしても君が好きだ」が11,227枚を売り上げ4位につけています。加えて下記リンク内記事では累計売上が638,307枚に達したことが記されており、同曲はセールス初週(473,635枚)以降16万枚以上の売上を記録したことになるのです。

 

無論これは、コロナ禍以降においてAKB48側が個別お話し会(ファンと直接会えるイベント)を3年半ぶりに再開した効果もあるでしょう(再開についてはこちらをご参照ください)。また「どうしても君が好きだ」がレコード会社移籍第一弾であり、売上を伸ばしたいとして施策をこれまで以上に組んだ可能性も考えられます。

次回7月5日公開分のビルボードジャパンソングチャートでもAKB48「どうしても君が好きだ」が総合100位以内をキープする可能性は高く、総合順位のこれまで以上になだらかな推移を踏まえればヒットしているとみなす方は少なくないかもしれません。

しかし先述したようにデジタル、接触指標群による獲得ポイントが極めて少ないこと、特にこの1ヶ月強においてフィジカルセールス以外の指標からポイントを得られていないことを踏まえれば、「どうしても君が好きだ」はAKB48のコアファン以外からの支持を得られているとは言い難いと言えるでしょう。接触指標、とりわけストリーミングでのヒットがロングヒットそして社会的ヒットにつながるのとは大きく異なる動きです。

 

AKB48は2020年の落選以降、『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)に出演できていません。この番組への出場についてはビルボードジャパンの各種チャート…ソングチャートは勿論のことですが、ソングチャートとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャート(Artist 100)が特に重要な指針と成り得ることをこのブログにて以前紹介しました(上記リンク先参照)。

そのトップアーティストチャートでAKB48の動向を追いかけると、シングルリリース時に大きく変動しているもののそれ以外の期間はほぼ凪の状況となっています。もし紅白への復帰を目指すならば、真の社会的ヒット曲を輩出すべくデジタルの充実は必須でしょう。LINE MUSIC再生キャンペーンは問題があれど、せめてこのキャンペーンの認知浸透を行うところからはじめていいのかもしれません。