米ビルボードが2020年秋に新設したグローバルチャートは世界200を超える地域における主要デジタルプラットフォームのダウンロードおよびストリーミング(動画再生を含む)で構成され、Global 200およびGlobal Excl. U.S.(Global 200から米の分を除いたもの)が存在します。
最新米の8月27日付のGlobal Excl. U.S.ではAdo「新時代」が18→8位となり、J-Pop3曲目のトップ10入りを果たしました。
Ado「新時代」のグローバルチャートランクインについては、その可能性を以前示唆していました。Global 200では最新8月27日付においてトップ10入りは叶わなかったものの、好成績を収めています。
2022年8月27日付 #Global200 200位以内のJ-Popの動向
— Kei (@Kei_radio) August 23, 2022
(集計期間:8月12~18日)https://t.co/RgmtXn8paA
・40→20位 #Ado「#新時代」
・177→73位 Ado「#逆光」
・76位 (初登場) Ado「私は最強」
・101位 (初登場) Ado「ウタカタララバイ」
「#ミックスナッツ」および「#Habit」は200位圏外へ。
気になるのは次週以降、「新時代」等がどう動くかです。ロングヒットに至るかを見極めるべく、これまでGlobal Excl. U.S.でトップ10入りした曲の指標構成をチェックしてみます。各指標の数値が明らかになっているものについてはその数値、および解説したブログエントリーを合わせて掲載しています。
・LiSA「炎」
2020年10月31日付 Global 200 8位、Global Excl. U.S. 2位 (共に最高位)
(Global 200の内訳:ストリーミング1940万、ダウンロード97,000)
The Global 200 top 10 (chart dated Oct. 31, 2020)
— billboard charts (@billboardcharts) October 26, 2020
The Global Excl. U.S. top 10 (chart dated Oct. 31, 2020)
— billboard charts (@billboardcharts) October 26, 2020
2020年11月7日付 Global Excl. U.S. 3位
The Global Excl. U.S. top 10 (chart dated Nov. 7, 2020)
— billboard charts (@billboardcharts) November 2, 2020
2020年11月14日付 Global Excl. U.S. 4位
The Global Excl. U.S. top 10 (chart dated Nov. 14, 2020)
— billboard charts (@billboardcharts) November 9, 2020
2020年11月21日付 Global Excl. U.S. 6位
The Global Excl. U.S. top 10 (chart dated Nov. 21, 2020)
— billboard charts (@billboardcharts) November 16, 2020
2020年11月28日付 Global Excl. U.S. 7位
The Global Excl. U.S. chart top 10 (chart dated Nov. 28, 2020)
— billboard charts (@billboardcharts) November 23, 2020
・YOASOBI「夜に駆ける」
2021年1月16日付 Global Excl. U.S. 9位
(Global Excl. U.S.の内訳:ストリーミング1540万、ダウンロード27,000)
The Global Excl. U.S. top 10 (chart dated Jan. 16, 2021)
— billboard charts (@billboardcharts) January 11, 2021
2021年1月23日付 Global Excl. U.S. 7位
The Global Excl. U.S. top 10 (chart dated Jan. 23, 2021)
— billboard charts (@billboardcharts) January 19, 2021
2021年1月30日付 Global Excl. U.S. 6位 (最高位)
The Global Excl. U.S. top 10 (chart dated Jan. 30, 2021)
— billboard charts (@billboardcharts) January 25, 2021
・Ado「新時代」
2022年8月27日付 Global Excl. U.S. 8位
(Global Excl. U.S.の内訳:ストリーミング2180万、ダウンロード19,000)
The Billboard Global Excl. U.S. top 10 (chart dated Aug. 27, 2022)
— billboard charts (@billboardcharts) August 22, 2022
構成指標の数値が判明している週には限りがあります。これは米ビルボードの記事においてトップ10初登場時にのみ掲載する傾向が強いためです。「炎」におけるGlobal Excl. U.S. 2位記録時の数値も明らかになっていません。
J-Popの3曲は、いずれもダウンロードが強い傾向があり、「炎」のGlobal 200における97,000という数値は当時の最高記録を更新していますが、ストリーミングはそこまで強くないというのが現状です。これはJ-Popが基本的に日本での所有/接触が主体となってランクインしていること、日本ではダウンロードの水準が高いためと言えます。
「炎」はデジタルが2020年10月12日月曜に解禁され、同曲が主題歌となった映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は同年10月16日金曜に公開。その16日金曜が10月31日付グローバルチャートの集計期間初日となったこと、初の1週間フルでのカウント対象となったことで、LiSA「炎」は躍進したと考えられます。
YOASOBI「夜に駆ける」はGlobal 200では最高16位とトップ10に届きませんでしたが、Global Excl. U.S.では3週連続でトップ10入り。そしてこの曲はグローバルチャート発足から1年間(52週)、Global Excl. U.S.で200位以内に連続ランクインした11曲のうちのひとつとなりました。
「夜に駆ける」がGlobal Excl. U.S.で初のトップ10入りを果たしたのは2021年1月16日付(9位)。この時もダウンロードが強いのですが、集計期間が2021年の元日以降1週間でありYOASOBIが2020年大晦日の『NHK紅白歌合戦』に出演したこと、また集計期間中に「夜に駆ける」を収録したEP『THE BOOK』がリリースされたことにより注目が高まったことが要因と言えます。
Ado「新時代」は、「炎」および「夜に駆ける」双方のトップ10入りの要因を持ち合わせた曲と言えるでしょう。最新8月27日付グローバルチャートの集計期間は8月12~18日となっており、前週に「新時代」が主題歌となった映画『ONE PIECE FILM RED』が公開、さらに集計期間直前の10日にはアルバム『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』が発売されています。映画公開に伴う注目度の上昇、アルバムリリースによって曲の勢いがさらに高まったことが、Global Excl. U.S.での8位到達に大きく貢献したと言えます。
注目は今後の動向です。次週はBLACKPINK「Pink Venom」の高位置での初登場が予定されますが、その他の上位進出曲は少ないとみられます。ハリー・スタイルズ「As It Was」の米ビルボードソングスチャートでの首位返り咲きが予想担当者内で噂されているのは、ライバル曲の多くなさを示しているとも言えます。
日本におけるSpotifyデイリーチャートの推移をみると、Adoさんによる『ONE PIECE FILM RED』関連曲は先週末にピークを迎えた可能性もあります。強力な初登場曲が少ないと思しき今週木曜までを集計期間とする9月3日付のグローバルチャートが、「新時代」が最高位を記録できる機会と成り得るでしょう。
そして注目はロングヒットするかについて。ダウンロードは失速しやすい指標ゆえ、ストリーミングの安定した推移が重要となります。YOASOBI「夜に駆ける」のような英語版追加投入や、THE FIRST TAKE(「夜に駆ける」およびLiSA「炎」も披露)にAdoさんが登場するという施策も必要かもしれませんが、まずは映画『ONE PIECE FILM RED』が海外に進出し現地で評判を集めることが重要になってくるものと考えます。
Ado「新時代」は8月17日公開分(8月22日付)ビルボードジャパンソングスチャートを制し、トップ3は『ONE PIECE FILM RED』関連の3曲が占拠。また同日付アルバムチャートではB'z『Highway X』を逆転し『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』が総合首位に立ちました。そしてグローバルチャートでも躍進するというAdoさんの勢いに、注目しないわけにはいきません。