毎週水曜は、米ビルボードが昨年新設したグローバルチャートについてお伝えします。
200を超える地域の主要デジタルプラットフォームによるストリーミングとデジタルダウンロードで構成され歌手のホームページでの販売分を含まないグローバルチャート。10月30日付ではGlobal 200、Global Excl. U.S.共にアデル「Easy On Me」が初の首位を獲得しました。
.@Adele's "Easy on Me" is the biggest song in the world, as it hits No. 1 on the Billboard Global 200 and Billboard Global Excl. U.S. charts (dated Oct. 30).https://t.co/H4XadQKeFX
— billboard (@billboard) 2021年10月25日
The Global 200 top 10 (chart dated Oct. 30, 2021)
— billboard charts (@billboardcharts) 2021年10月25日
The Global Excl. U.S. top 10 (chart dated Oct. 30, 2021)
— billboard charts (@billboardcharts) 2021年10月25日
前週は米ビルボードソングスチャートにおいて、解禁からわずか5時間で68位に到達したアデル「Easy On Me」。Global 200でも前週195位に登場したこの曲が、1週間フル加算となった今週首位に到達しています。ストリーミングは1億7820万、ダウンロードは136300を獲得しました。なお前週、Global 200ではストリーミング770万、ダウンロード16900を記録しています。
Global 200におけるストリーミング指標では、今回の「Easy On Me」がBTS「Butter」の2億8920万(6月5日付)に次いで歴代2位に。ダウンロードにおいては同日付の「Butter」の248600、同じくBTS「Permission To Dance」が7月24日付で記録した138600に続く歴代3位となります。またイギリス出身の歌手がGlobal 200を制したのはエド・シーラン「Bad Habits」(7月31日付)、BTSとコラボレーションしたコールドプレイ「My Universe」(10月9日付)に続き3組目です。
「Easy On Me」はGlobal 200において、2位に入ったザ・キッド・ラロイ with ジャスティン・ビーバー「Stay」の2.5倍ものポイントを獲得しています。これはオリヴィア・ロドリゴ「Drivers License」が初登場で首位を獲得した1月23日付において、2位のザ・ウィークエンド「Blinding Lights」に3倍ものを差をつけた以来となります。なお「Drivers License」は初登場から4週間、このような大差をつけています。
Global Excl. U.S.においては、「Easy On Me」は初登場で首位に。ストリーミングは1億2560万、ダウンロードは62700を記録しています。なお、同曲は前週ストリーミングが460万、ダウンロードが2000を記録していましたが200位以内には入れませんでした。Global Excl. U.S.においてもエド・シーラン、コールドプレイに続く3組目のイギリス出身歌手の首位獲得となります。
コールドプレイ & BTS「My Universe」は8→4位に。ストリーミングは前週比24%アップの4300万、ダウンロードは同79%アップの16500を記録しています。これはコールドプレイのアルバム『Music Of The Spheres』が10月15日にリリースされたことが影響しています。
エルトン・ジョン & デュア・リパ「Cold Heart (Pnau Remix)」がGlobal Excl. U.S.で1ランクアップし5位に到達。ストリーミングは前週比11%アップの3620万、ダウンロードは同9%アップの23600を獲得しました。Global Excl. U.S.でのトップ5入りはエルトン・ジョンにとっては初、デュア・リパは「Levitating」が今年5月に3位を記録して以来2曲目となります。
なお、前日のブログエントリーでも紹介しましたが、こちらでも。
今週から定額制音楽配信サービス、Boomplay(ブームプレイ)のデータが米ビルボードのソングスチャート(Hot 100)、アルバムチャート(Billboard 200)、歌手別チャート(Artist 100)およびグローバルチャート(Global 200およびGlobal Excl. U.S.)に含まれることになりました。Boomplayにおけるサブスクリプション層*1のオーディオストリーミングおよび広告支援ストリーミングの2種類が各種チャートに加算され、ふたつのデータのウエイトは異なります。
Great news!! Our data will now be added to the data that informs the prestigious Billboard Hot 100, Billboard 200 & more global charts! 🎵🎶Read more: https://t.co/mdqGfkIPBj
— Boomplay Music (@BoomplayMusic) 2021年10月14日
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#musiclover #musicislife #music #boomplay #billboard #BillboardMusic #billboardcharts @billboard pic.twitter.com/I0tHMH9CaN
Boomplayはアフリカ大陸で最大の音楽ストリーミングサービスとのこと(2019年4月の上記記事参照)。グローバルチャートが昨秋ローンチされたこともあり、近年は世界中の曲がよりヒットする環境が醸成されています。Boomplayの集計開始がアフリカ勢のさらなるチャートヒットにつながることは間違いないでしょう。
さて、今週はグローバルチャートに関する記事が別途公開されています。
.@Adele's 11 songs on this week's global charts combine to over 300 million streams and 150,000 downloads worldwide.https://t.co/z6wE71xCmA
— billboard (@billboard) 2021年10月26日
アデルはふたつのグローバルチャートにおいて、過去3枚のアルバム(『19』(2008)、『21』(2011)および『25』(2015))から200位以内に10曲がエントリー。「Easy On Me」を含めると、Global 200においては11曲でストリーミングが3億3200万、ダウンロードが152000を獲得するに至りました。
「Easy On Me」に次ぐ高位置に登場したのは「Someone Like You」(『21』収録)。Global 200では16週目のエントリーで91→33位に、Global Excl. U.S.では26週目で91→38位に上昇。Global 200ではストリーミングが前週比69%アップの2220万、ダウンロードが同76%アップの2300を獲得しています。
続いて順位が高かったのが「When We Were Young」(『25』収録)で、Global 200では37位、Global Excl. U.S.では41位につけています。また「Rollling In The Deep」(『21』収録)はGlobal 200で42位、Global Excl. U.S.で39位に。Global 200において、ストリーミングは「When We Were Young」が前週比96%アップの2070万、「Rollling In The Deep」が同60%アップの2060万を記録しました。
(その他の作品は以下の順位です。「Love In The Dark」(『25』収録。Global 200 54位、Global Excl. U.S. 58位)、「Set Fire To The Rain」(『21』収録。64位、64位)、「Hello」(『25』収録。71位、85位)、「Send My Love (To Your New Lover)」(『25』収録。79位、89位)、「All I Ask」(『25』収録。110位、181位)、「Chasing Pavements」(『19』収録。113位、128位)、「Make You Feel My Love」(『19』収録。135位、142位)。)
「Rollling In The Deep」は昨年9月、「Someone Like You」は昨年10月、「When We Were Young」は前週、ふたつのグローバルチャートに初登場を果たしています。「Easy On Me」は先述の通りGlobal 200で前週195位に初登場、そして「Easy On Me」の影響でその他7曲はすべて今週初登場を遂げています。過去の作品の増加率はGlobal 200において、ストリーミングが60~107%、ダウンロードが36~87%となっています。
グローバルチャートが昨年9月にローンチされてから1年で様々な歌手が、ニューアルバムからのリード曲等を首位の座に送り込んでいますが、その曲が過去曲を牽引しランクインさせるまでには至っていませんでした。まして二桁もの曲が登場することはなく、グローバルチャートにおけるアデルの影響力の大きさを感じずにはいられません。またグローバルチャートにエントリーした11曲の多くは、Global 200の順位がGlobal Excl. U.S.のそれを上回っており、アデルが米でより強いことが解ります。
今回、共に米ビルボードソングスチャートで100位以内に入っていない「Love In The Dark」およびボブ・ディランのカバーである「Make You Feel My Love」がグローバルチャートにランクイン。「Love In The Dark」は米ビルボードソングスチャートを制した「Set Fire To The Rain」および「Hello」の順位を上回っています。また「When We Were Young」(米ビルボードソングスチャート最高14位)はGlobal 200において、2011年度の米ビルボード年間ソングスチャートを制した「Rollling In The Deep」超えを達成しています。
ここまでは記事を要約してお送りしましたが、私見を申し上げるならばサブスクのプレイリストが順位構成に大きく影響していると考えます。
こちらはアデルのSpotifyにおけるプレイリスト【This Is Adele】(→こちら。ただし時期によって収録曲や順番は異なります。画像は10月27日6時現在のものです)。「Easy On Me」に続く曲が「When We Were Young」であり、また「Love In The Dark」が4番目に入っていることにも注目。「Easy On Me」のようなピアノバラードを考慮した流れと言えるだろうこのプレイリストや、プレイリストを用意しなくともユーザー(リスナー)が似たような曲を欲した結果が今回の順位構成と言えそうです。
グローバルチャートには(現在のところ)リカレントルール*2が用意されていないため過去曲のフックアップは可能とはいえ、ここまで大挙上昇するのはさすがアデルといったところでしょう。11月19日にリリースされるニューアルバム『30』までに、どれだけ勢いをキープできるかに注目です。
最後にJ-Popの動向を紹介。毎週火曜夕方に更新されるグローバルチャート詳報で100位以内に入ったJ-Popをツイートしており、そちらを転載します*3。
10月30日付 #Global200 100位以内のJ-Popの動向
— Kei (@Kei_radio) 2021年10月26日
(集計期間:10月15~21日)
(100位以内にJ-Popはランクインしていません。)
10月30日付 #GlobalExclUS 100位以内のJ-Popの動向
— Kei (@Kei_radio) 2021年10月26日
(#Global200 から米の分を除く)
(集計期間:10月15~21日)
・43位 (初登場) #LiSA(@LiSA_OLiVE)「#明け星」
・59位 (初登場) #KingGnu(@KingGnu_JP)「#BOY」
・62→63位 #Official髭男dism(@officialhige)「#CryBaby」
(続く)
10月30日付 #GlobalExclUS 100位以内のJ-Popの動向(続き)
— Kei (@Kei_radio) 2021年10月26日
・63→71位 #backnumber(@backnumberstaff)「#水平線」
・86→98位 #YOASOBI(@YOASOBI_staff)「#夜に駆ける」
集計期間は10月15-21日であり、月曜リリースの曲は4日間が集計対象となります。個人的にはテレビアニメ版『鬼滅の刃』無限列車編の主題歌であるLiSA 「明け星」の順位が非常に低いと感じずにはいられません。というのも映画版主題歌の「炎」は昨年10月31日付においてGlobal 200で8位、Global Excl. U.S.で2位に初登場を果たしており、その差が非常に大きいのです。
さらには同日リリースとなった星野源「Cube」は両方のチャートで100位以内に入っていません。
先述したアデル「Someone Like You」はGlobal 200において、ストリーミングが2220万、ダウンロードが2300を獲得し、33位につけています。日本においてはストリーミングが弱い一方でダウンロードが強い傾向がありますが、水曜までの3日間においてはLiSA 「明け星」はストリーミングが185.4万、ダウンロードが50544DLを記録しています(下記ビルボードジャパンの速報記事参照)。
「明け星」はダウンロードではアデル「Easy On Me」に次ぐ高水準と思われますが、一方でストリーミングの強くなさが見えてきます。尤も、「炎」ほどのヒットに「明け星」が至れていないという側面もあれど、しかしストリーミングの弱さはJ-Pop全体の弱点だということが今回の順位からあらためて浮かび上がる…そう捉えても差し支えないでしょう。音楽業界はこの状況をどう打破するか、一致団結して考えるべきです。