イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) 【米ビルボード】コールドプレイ & BTS「My Universe」が初登場で首位獲得…チャートを構成する3指標の数字に注目

(※追記(10月10日6時25分):2020年度以降の米ビルボードソングスチャート首位獲得曲一覧において、補足を追記しました。)

 

 

 

※ 本日2本目のブログエントリーです。米ビルボードソングスチャートの発表が大幅に遅れ、日本時間の火曜10時台となりました。そのため米ビルボードソングスチャートについて、本日昼にアップした次第です。

また、米ビルボードソングスチャートとほぼ同時に発表されるグローバルチャートについては、今後別エントリーとして水曜にアップする方針を採る予定です。理由については明日のブログエントリーにて記載します。

 

 

 

最新米ビルボードの速報をお伝えします。 現地時間の10月4日月曜に発表された最新10月9日付米ビルボードソングスチャート(Hot 100)。前週まで通算6週首位を獲得していたザ・キッド・ラロイ with ジャスティン・ビーバー「Stay」を抑え、コールドプレイ & BTS「My Universe」が初登場で制しました。

コールドプレイ & BTS「My Universe」は、コールドプレイが今月15日にリリースするニューアルバム『Music Of The Spheres』からの先行曲。63年の歴史を持つ米ビルボードソングスチャートでは通算1129曲目の首位獲得曲となり、また初登場での首位到達は57曲目となります。初登場首位獲得曲一覧は下記エントリーにまとまっています。

「My Universe」はストリーミングが1150万を獲得し同指標21位、ダウンロードが127000となり同指標制覇。またラジオは550万を記録していますが同指標50位以内には到達していません。ダウンロード指標の首位はBTSにとって9曲目であり、グループでの同指標制覇は最多となります(なお、コールドプレイにとっては2曲目となります)。

このダウンロード指標の強さの理由は、オリジナルバージョンや、音源は同じながらもジャケットに手書きの歌詞が記されたいわゆるジャケット違いのバージョン、インストゥルメンタル、アコースティックバージョンおよび"Supernova 7"リミックスがいずれもリリースから1週間(つまりは最新チャートの集計期間を通じて)、69セント(0.69ドル)で販売されたことにあります。アコースティックおよびリミックスはオリジナル版から3日遅れて9月27日にリリースされ、また2種のCDシングルが2.50ドルおよび3.50ドルで販売されたことも影響しています。なお、ミュージックビデオの解禁は9月30日となっています。

 

コールドプレイにとっては2008年6月28日付で「Viva La Vida」が首位を獲得して以来2曲目の首位となりました。13年3ヶ月2週間を経ての首位返り咲きは、シェールが「Dark Breed」(1974)~「Believe」(1999)でおよそ25年ぶりに達成して以来となります。グループ単位でみればザ・ビーチ・ボーイズが「Good Vibrations」(1966)~「Kokomo」(1988)で記録した22年弱以来の記録です。

コールドプレイにとって「My Universe」は、ザ・チェインスモーカーズと組んだ「Something Just Like This」(2017 3位)以来となる5曲目のトップ10入りとなります。

 

一方でBTSは「Dynamite」で初めて米ビルボードソングスチャートを制した昨年9月5日以降、わずか1年1ヶ月の間に「Dynamite」を含め合計6曲もの首位獲得曲を輩出しています。トップ10入りは9曲目ながら、首位獲得率が高いのが特徴です。

この1年1ヶ月での6曲もの首位獲得は、ザ・ビートルズが1964年以降、「I Feel Fine」「Eight Days A Week」「Ticket To Ride」「Help!」「Yesterday」そして「We Can Work It Out」を1年と2週間の間に首位に送り出して以来となるハイスピードでの達成となります。

(なおザ・ビートルズは、1964年にはわずか10ヶ月と3週の間に、「I Want To Hold Your Hand」「She Loves You」「Can't Buy Me Love」「Love Me Do」「A Hard Day's Night」そして「I Feel Fine」を首位に送り込んでいます。)

 

BTSの首位獲得は6曲目にして、ジョーシュ・シックスエイトファイヴ & ジェイソン・デルーロ「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」に参加したリミックス版を除く5曲が初登場で首位を獲得しています。5曲もの初登場首位獲得はグループでは最多となり、ソロ歌手も含めればドレイクおよびアリアナ・グランデに並びました。

また2組のグループが共に主演でコラボした曲で首位を獲得したのは今回が初となります。これまでの最高はダイアナ・ロス & ザ・シュープリームスとザ・テンプテーションズによる「I'm Gonna Make You Love Me」(1969)の2位が最高でした。

 

コールドプレイの今回のアルバムからの先行曲にはマックス・マーティンが関与しています。「My Universe」でも共同でのソングライトおよびプロデュースに名を連ねており、今回がソングライターとして25曲目、そしてプロデューサーとして23曲目の首位を獲得したことになります。ソングライターではポール・マッカートニーの32曲、ジョン・レノンの26曲目に次ぐ歴代3位となり、プロデューサーではザ・ビートルズを手掛けたジョージ・マーティンに並ぶ最多タイとなりました。

マックス・マーティンはブリトニー・スピアーズ「...Baby One More Time」が1999年1月30日付で初めて頂点に立って以来そのキャリアを着実に築き上げており、直近での首位獲得曲はザ・ウィークエンド「Save Your Tears」にアリアナ・グランデが参加したバージョン(2021)となります。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (初登場) コールドプレイ & BTS「My Universe

2位 (1位) ザ・キッド・ラロイ with ジャスティン・ビーバー「Stay」

3位 (2位) リル・ナズ・X & ジャック・ハーロウ「Industry Baby」

4位 (3位) ドレイク feat. フューチャー & ヤング・サグ「Way 2 Sexy」

5位 (5位) ウォーカー・ヘイズ「Fancy Like」

6位 (4位) エド・シーラン「Bad Habits」

7位 (6位) オリヴィア・ロドリゴ「Good 4 U」

8位 (7位) ドージャ・キャット feat. シザ「Kiss Me More」 

9位 (8位) ドレイク feat. 21サヴェージ & プロジェクト・パット「Knife Talk

10位 (11位) デュア・リパ「Levitating」

ザ・キッド・ラロイ with ジャスティン・ビーバー「Stay」(総合2位)はラジオ指標で3週目の首位を獲得。同指標では前週比2%のアップとなる8140万を記録しています。またドレイク feat. フューチャー & ヤング・サグ「Way 2 Sexy」(総合4位)がストリーミングで4週目の首位をキープ、前週比15%ダウンの2760万を獲得しています。

5位をキープしたウォーカー・ヘイズ「Fancy Like」はラジオ指標で前週比34%アップし4320万を記録。トップエアプレイゲイナーを獲得し、同指標16→8位に上昇しました。

 

 

 

さて、ここまでは米ビルボードの記事を翻訳する形で記載しました。ここからは私見となります。

 

コールドプレイ & BTS「My Universe」の連覇は厳しいのではないかというのが私見です。

f:id:face_urbansoul:20211005125010j:plain

f:id:face_urbansoul:20211005130457p:plain(上記は2020年度以降の米ビルボードソングスチャート首位獲得曲一覧。オレンジは初登場での首位獲得曲を、黄色は各指標の首位を示します。また2021年度については各指標における首位の数値を記載しています。)

最近ではストリーミング指標は全体的に弱くなっており、またラジオ指標は初登場時において極端に低い曲もあるため、「My Universe」の初週動向はそこまで問題ではないという声もあるかもしれません。しかしながら「My Universe」は明らかにBTSのチャートアクションをなぞる形、すなわち所有指標であるダウンロードが極めて強い作品となっています。

仮に次週以降勢いをキープするのであれば、ストリーミングおよびラジオといった接触指標群を上昇させることでダウンロードの急落をキープすることが必要です。ダウンロードは基本的にひとり1回購入するものであり(バージョンが多いならば各種1回が通常)、ゆえにダウンロードは登場2週目に急落する性質があります。

一方でBTSは「Butter」のように、ダウンロード指標が首位獲得した10週すべてにおいて10万を超えた例があります。ただ、後にリリースした「Permission To Dance」は勢いが続かず急落したことから、「Butter」が特殊な動きをしているというのが私見。「Butter」が首位獲得中の後半に接触指標群が弱くなったことを踏まえれば、「My Universe」は高い所有指標を維持することでロングヒットに至れるかもしれません。

ただし所有指標の長期高水準はかなり厳しいというのが私見であり、接触指標群を上昇させるほうが現実的と言えるでしょう。今回「My Universe」のミュージックビデオ公開日は9月30日木曜、つまりは最新チャートの集計期間最終日であったことからストリーミング指標は次週キープもしくは上昇する可能性を十分持ち合わせています。今回のミュージックビデオ解禁を木曜にした理由は不明ですが、ともすれば米ビルボードソングスチャートでの安定を狙ったものかもしれません。

 

高いダウンロード指標をキープできず、またラジオ指標を思ったより獲得できずに上位初登場後急落する例は他にもありますが、BTSはそのダウンロード数が極度に高い分反動も大きくなっているのが実情です。仮に「My Universe」も同様の動向を辿るならば、BTSは今後もダウンロード指標を武器に総合での首位を量産するだろうとして、米社会への曲の浸透はその称号と乖離しているものと危惧します。

 

以前米ビルボードに対して提案したブログエントリーを再掲し、米ビルボードにはチャートポリシー変更を議論することを希望します。