もはや現在の音楽はジャンルの垣根が低くなっているのは自明。そのことは、今月リリースされたカバー曲からも見えてきます。
・dvsn「Use Somebody」
カナダ出身のR&Bデュオ(発音はディヴィジョン)の新曲で、昨年リリースしたアルバム『A Muse In Her Feelings』のデラックスエディションに追加されたナンバーのひとつ。アルバムタイトルも『Amusing Her Feelings』に変更されています。トニ・ブラクストンを思わせる濃密なイントロを経て歌われるのが、キングス・オブ・レオンのカバーというのですから驚きます。
オリジナルは2008年末のリリースで、2010年のグラミー賞では最優秀レコード賞を受賞。ド直球で重厚なロックサウンドとコールドプレイ等に顕著なタイプのコーラスが響き渡るのですが、dvsnはオリジナルとは異なるアプローチながら重厚感は見事に踏襲しています。
・デス・キャブ・フォー・キューティー「Waterfalls」
1997年に結成されたオルタナティヴロックバンドが先週リリースしたEP『The Georgia』の冒頭を飾るのは、TLCの大ヒットナンバー「Waterfalls」のカバー。
オリジナルは大ヒットアルバム『CrazySexyCool』(1994)から翌年シングル化され、米ビルボードソングスチャートで週間1位、年間2位となる大ヒットを記録。どちらかといえばシンプルなアレンジゆえ、カバーしやすいのかもしれません。デス・キャブ・フォー・キューティーは森に迷い込んだ挙げ句見つけた滝とも言えるアレンジで、この曲に新たな息吹を与えています。
・ガブリエル・ガルソン・モンターノ「Oops」
Listen to Gabriel Garzón-Montano (@GGM) cover Tweet (@Ms_Hummingbird) and @MissyElliott's 2002 hit https://t.co/vegQTSEn30
— Pitchfork (@pitchfork) 2021年1月17日
公式動画はないので米ピッチフォークのツイートにて紹介。ガブリエル・ガルソン・モンターノ自体R&Bであるゆえ実際はジャンルを超えないカバーではあるのですが、シンプルさは同じながらそのアプローチは大きく異なる印象があると感じ紹介した次第。オリジナルは2002年のトゥイートのデビュー曲で、ティンバランドとミッシー・エリオットが制作(ミッシーは客演としても参加)。
オリジナルの「Oops (Oh My)」が出た当時、歌詞の過激さに賛否が分かれた記憶があります。ガブリエル・ガルソン・モンターノの声はR&Bとしてはあっさり過ぎるゆえか過激さは鳴りを潜めた印象がありますが、このような曲をカバーで用意するセンスは好いですね。
カバー曲の良いところはオリジナルの(再)発掘につながる点。サブスクやYouTubeが充実した今、発掘は尚の事しやすくなりました。オリジナルが好きだった方はカバーに触れ、カバーを好いと感じた方はオリジナルに思いを馳せることで、ジャンルに関係なく聴く習慣も身に付くものと考えます。