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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

歌手のSNS人気を示すチャートを米ビルボードが一時停止…日本にも波及するか?

Twitterでフォロワーの方が紹介していた記事。元記事を完全にスルーしていたのが恥ずかしいばかりですが、記事からはいろいろ思うところがあり、遅くなりましたが私見を記載しようと思います。

Social 50は『音楽分析会社のネクスト・ビッグ・サウンドが追跡したデータに基づき、FacebookTwitterYouTubeWikipediaで最も人気のあるアーティストをランク付けしたチャート』。上記リンク先では『』内のほか元記事のリンクも掲載されていますが、Real SoundではSocial 50チャートの一時停止の理由について、元記事にはない見解を加えています。

現在「Social 50」首位のBTSは、チャートイン数が計219回、そして、2017年7月29日付のチャート以降3年以上1位をキープしている状態だ。「Social 50」チャート1位獲得数ランキングでは、1位がBTSの210週、2位がジャスティン・ビーバーの163週で、3位以降はテイラー・スウィフトが28週、マイリー・サイラスとリアーナが21週と一気に減少する。2016年の年末にBTSビルボードの表彰式で「Top Social Artist」賞を受賞するまで、ジャスティンが6年連続でこの賞を受賞していたことも無視できない。さらに、記事執筆時点(12月28日)の「Social 50」のトップ3は、BTSNCT、TRESUREと3組とも男性K-POPアーティストである。

バイラルチャートの“課題”とBTSの不動ぶりーーBillboard「Social 50」チャート一時停止にあわせて振り返る|Real Sound|リアルサウンド テック(1月13日付)より 

つまりSocial 50はファンがより多い、そしてファンの熱量がより高い歌手が勝つ仕組みであり、以前のジャスティン・ビーバー、現在のBTSをはじめとするK-Popアクトが強いこと、そしてその状態が硬直していることは自然と言えるかもしれません。

さて、このSocial 50の一時停止について、BTSのファンのリアクションには思うところがあります。

ツイートの『』内はReal Soundの記事より。ファンの態度(目線の位置)に引っ掛かりるものがありますが、しかしBTSの大ヒットは実際にファンの熱意に因るところが大きく、ファンがこのような態度を取ることも理解できなくはありません。

BTSが「Dynamite」で米ビルボードソングスチャートを初めて制し、その後ダウンするも再度急伸を繰り返した理由は、相次ぐリミックスの投入で主にダウンロード指標を刺激したため。0.69ドルでの安価販売でライト層を取り込んだとも言えますが、購入者が多いほど有利になるのはビルボードジャパンソングスチャートにおけるシングルCDセールス指標に近いものがあります。

ビルボードのダウンロード指標においては、昨年秋までフィジカル施策が有効に作用していました。歌手のホームページでCD等のフィジカルを販売し売上が立った段階でカウント、さらにフィジカル到着までの間に別途用意されたデジタルダウンロードもカウントされるというもので、この施策を用いて首位を獲得する曲が増えたものの翌週急落する傾向が目立ち、首位の称号が形骸化したことを踏まえて米ビルボードはフィジカル施策を実質無効としています(フィジカルのカウントは発送時に行われるように、またデジタルダウンロードはカウントしないように変更)。「Dynamite」は時期的なこともありこの策を用いなかったと思われますが、しかしリミックスを多数投入したことで結果的にダウンロード指標を刺激し続けました。ファンの数や熱量はソングスチャートにも波及したと言えるでしょう。

 

ビルボードにおけるSocial 50の一時停止は、凝り固まったチャートの血流を良くするための措置と捉えています。ここにメスを入れたならば、大量リミックス投入についても近い将来何かしらの対策を行うのではないでしょうか。米ビルボードBTSを決して敵視しているわけではなく、どの歌手であったとしても先のフィジカル施策のようなやり方を快いと思わないということが背景にあったと考えるべきであり、そして米ビルボードが社会的ヒットの鑑であり続けないといけないと常に自問自答していることは昨秋の記事からもよく解ります。

 

 

さて、米のSocial 50の対象データのひとつにTwitterがありますが、Social 50の中身は米ビルボードソングスチャートの構成指標にはなっていません。一方、ビルボードジャパンソングスチャートではTwitterが8指標のひとつとなっています。個人的にはこのTwitter指標をSocial 50的なチャートとして分けるべきではないかと、ビルボードジャパンに対して以前から考えていました。

ただ、分けるとなると星野源「うちで踊ろう」のような未発売曲ながら生まれるバズが可視化されません。また現在はサブスクのさらなる普及によりストリーミング指標が拡大したことで、Twitter指標のみで結果を残すことは難しくなっています。

日本のチャートにおけるTwitter指標はもしかしたらこのままでいいのかもと思うようにもなっていますが、しかしたとえばデジタル未解禁のアイドルがTwitter指標があること(そしてそのためにファンが頑張ること)によってポイントをキープできると考え未解禁の姿勢を続けているのだとすれば、それは日本のエンタテインメント業界にとって健全とはいえません。米ビルボードのチャート改正の動向を踏まえ、また不健全の打破(デジタル化促進)の意味でも、ビルボードジャパンもTwitter指標を見直す必要があるのではないでしょうか。