サブスクリプションサービスで日本が遅れを取っているのは事実だと思う一方、必ずしも海外の国々がすべてを網羅しているとは限らないということを、下記作品に触れて痛感しています。
先月中旬にリリースされたR&Bコンピレーションアルバム『Luxury Soul』は、イギリスを中心に良質なR&B新作を収めたエクスパンション発の作品。秋にリリースされる『Soul Togetherness』同様、好事家の支持を集めています。しかし、このリンク先にもあるSpotifyのアルバムを辿ると、聴取不可な曲が少なくありません。
35曲中10曲、実に3割近くが抜けています。サブスクリプションサービス自体に解禁していないのか、解禁してはいてもSpotifyには出していないのか、それとも日本だけ除外されているのか…の理由は分かりませんが、しかしながら残念なことに変わりありません。
その10曲の未解禁曲のうちのひとつが、グレン・ジョーンズによる「Better Man」。1980年代から活躍するR&B歌手と同一人物と思われます。日本では、エターナルがカバーしラジオを中心に大ヒットした「Stay」(1993)のオリジナル歌手(アルバム『All For You』(1990)収録)といえば分かる方もいらっしゃるかもしれません。
この「Stay」、エターナルによるカバーはSpotifyにあるのですが(アーティストリンクはこちら)、グレン・ジョーンズによるオリジナルはアルバム『All For You』ごとありません(アーティストリンクはこちら)。日本に比べれば海外は開かれていると思っていたゆえ、このつまずきはショックでした。
もしかしたら、『All For You』のリリース元が現在はレーベルとして機能していない(はずの)ジャイヴだからではないかと思い、同レーベルを代表するアリーヤの作品を調べると。
アルバムは最近リリースされた作品から遡る形で表示されるのですが、出てきたのはジャイヴからリリースされたファーストアルバムのみ。ジャイヴ発の作品がSpotifyに解禁されていないというわけではないことに安堵した一方、『One In A Million』(1996)および『Aaliyah』(2001)という、彼女そしてプロデューサーのティンバランドの人気を確立した作品群がないのは音楽を享受する側にとって大きな損失でしょう。ちなみにこれら不足分のリリース元であるブラックグラウンドからは、たとえば一時期在籍していたトニ・ブラクストンによる『Libra』はSpotifyにはなく、レーベルの意向もやはりあるのかも?と混乱してしまいます(しかもその『Libra』収録曲は『Midnite』と名前を変えて?昨年リリースの作品として登場しています→こちら)。
他にも、昨年『Jimmy Lee』をリリースしたラファエル・サディークが以前所属していたトニー・トニー・トニーはオリジナルアルバムが『Sons Of Soul』(1993)1枚のみ(アーティストページはこちら)、ミント・コンディションは『Life's Aquarium』(1999)以降のアルバムは網羅されているものの、初期3作品はSpotifyで見当たらず(アーティストページはこちら)。2組ともベストアルバムが用意されているとはいえ、これではさすがに十分とは言えないでしょう。
さて、先日のラジオ番組『アフター6ジャンクション』ではこのような特集がありました。
番組の記事も掲載していただいております。奇盤、怪盤を手にする宇多丸さん、宇垣美里さん、ハタ、柴崎4名の写真もお納めください✨💿👌https://t.co/j5MCsApbLk
— lightmellowbu (@hukihuki5) 2020年1月30日
lightmellowbuによる『オブスキュア・シティポップ・ディスクガイド』は手に取りたいと思いつつ近隣の書店に在庫がないこと、それ以上に”CDでしか聴けない”という表現に対する違和感が少なからずあることから、ネット取り寄せに至れない自分がいます。”CDでしか聴けない”のは事実だとして、”CDで手に取るとより味わい深い”となるべくデジタル環境が整備されるべきだ…と思うのです(その考えに立てば、”デジタル環境が整備されていないゆえこの本で情報を補える”と紹介したほうがいいよなあと思うなど)。しかし、例に挙げたように海外の作品も似た状況であることが解り、著書を手に取ろうと考えるに至っています。どこの国でも程度の差こそあれ、デジタル環境が完璧とは言えないのは共通しているのかもしれません。ただ、仮に海外では解禁されていながら日本だけNGだとしたら、流石に許せません。