アリアナ・グランデとの「Stuck With U」はコロナ禍におけるチャリティの性質もありフィジカル施策がダウンロード指標を押し上げて米ビルボードソングスチャートを制覇。一方で翌週にはトップ10落ちとなったことでこの曲が社会的ヒットに至れたかは疑問ですが、両者にとって若干のブランクを経ての首位カムバックとなったことは間違いありません(チャートにおける施策等については以前まとめています)。そしてコロナ禍の不安を解いてくれる意味も持ち合わせているだろう歌詞、とても甘いのです。
そしてとりわけ強さが際立ったのがダウンロード。先述したリミックス等の登場も相まって、フィジカルを除いても265000を売り上げているのですが、この数値はテイラー・スウィフト「Look What You Made Me Do」(2017年9月16日付)の353000以来となるビッグセールスに。グループとしては、プリンス&ザ・レボリューション「Purple Rain」(1984)がプリンスの訃報に伴い2016年5月14日付で282000を売り上げて以来となります。
先述したように、BTS「Dynamite」は韓国出身の歌手で初の首位を獲得。これまでの最高位はPSY「Gangnam Style」(2012)の2位でした。アジア出身の歌手による初の米ビルボードソングスチャート制覇は1963年6月の坂本九さんによる「上を向いて歩こう」。また韓国出身とは異なりますが、韓国系アメリカ人が2名在籍するファーイースト・ムーヴメント(他の2名も日本および中国の血をひくアメリカ人、フィリピン系アメリカ人)による「Like A G6」が2010年秋に米ソングスチャートを制しています。
初登場から2週連続で首位の座に就いていたカーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」は2位に後退。ストリーミングは前週比10%ダウンながら6500万を獲得し同指標首位に立ち、ダウンロードは同30%ダウンの25000(同指標2位)、ラジオエアプレイは同13%アップの1870万(同指標46位)となっています。一方、前週ダウンロード指標の差により「WAP」を抜いて初登場で首位を獲得できなかったドレイク feat. リル・ダーク「Laugh Now Cry Later」も1ランク後退し3位へ。ストリーミングは前週比38%ダウンの4360万(同指標2位)、ダウンロードは同64%ダウンの7000(同指標7位)と2指標で大きく落とした一方、ラジオエアプレイは同44%アップの2460万となり同指標31位へ上昇しています。またラジオエアプレイの首位はザ・ウィークエンド「Blinding Lights」で、前週比2%アップとなる8020万を獲得。これにより「Blinding Lights」はラジオエアプレイ最長首位記録を21週に伸ばしています。
ちなみにルックアップではBTS『MAP OF THE SOUL : 7 ~ THE JOURNEY ~』が、レンタル初加算にも関わらず登場3週目に同指標の順位を落としているのが特徴的。他の2指標についても、表で取り上げた4作品の中で前週比が最も低くなっています。これは所有指標、それもダウンロードよりCDセールスへの集中という状況が見て取れます。
前週のブログでもOfficial BTS Music Store(URLは bts-dynamite.us)における「Dynamite」商品一覧のキャプチャを紹介しましたが、「Dynamite」においては新たにトロピカル、プールサイドと名付けられたリミックスが登場。オリジナルおよびそのインストゥルメンタル、アコースティックさらにEDMと合わせた6バージョンとなり、ダウンロードやサブスクサービスではこの6バージョンがデラックスエディションとしてまとめられています。
ここで前作の動向から今作を占ってみたいのですが、三浦春馬「Night Diver」は昨夏のデビュー作「Fight for your heart」から大幅に売上を伸ばし比較対象にすることは困難と言えるため、JO1のみ取り上げます。彼らのデビューCD「PROTOSTAR」は初週シングルCDセールス34万強を記録し、CDの冒頭を飾る「無限大」が3月16日付ビルボードジャパンソングスチャートで首位を獲得しています。
✔︎300万Vew:『OH-EH-OH』Performance Video ✔︎500万Vew:『OH-EH-OH』Practice Video ✔︎700万Vew:『OH-EH-OH』Practice Video Costume Ver. ⭐️1000万Vew:1000万再生達成記念Special企画⭐️ pic.twitter.com/pjEBpnhqbm
他方、至極勿体ないと思ったのはレンタル解禁が17日後であるということ。TSUTAYAのレンタルCDページで三浦春馬さんの作品を検索すると判るのですが、気になるのはデビュー曲の「Fight for your heart」が発売とレンタルとが同日だったという事実。「Night Diver」の売上が寄付に回るということで、接触状況を減らしてでもCDセールスに集中させたいというレコード会社や芸能事務所側の意向があったのではないか、ゆえに前作とレンタル解禁日をずらしたのではと思うのです。
今回の改定の背景には『YouTubeのビデオストリーミングも、オーディオストリーミングも、全て同じ係数でチャートに反映されていた』件があります(『』内は上記記事より)。これをビデオプレイヤーでの再生は動画再生指標に、音声のみのアートトラック音声のみモード/バックグラウンド再生モードでの再生はストリーミング指標して分割。月額1180円のYouTube Music Premium会員による再生と無料会員とでも分けられ、無料会員による再生のウェイトは、昨年11月18日付にて導入を開始したSpotifyの無料会員による再生のそれと同一となります。Spotify導入の際に有料サービス会員と無料会員とで1再生あたりのウェイトを変えたことについては、具体的な数値には言及されていませんが下記に記載されています。
22万以上売り上げシングルCDセールス指標2位に入ったNMB48「だってだってだって」は総合2位、11万以上売り上げ同指標3位のTOMORROW X TOGETHER「DRAMA」は総合4位に登場。一方でパソコン等にCDを取り込んだ際にインターネットデータベースにアクセスされる数を示すルックアップ指標では前者が13位、後者が25位と、シングルCDセールスと乖離が生じています。これは購入枚数に対する取り込み数の多くなさに加え、ユニークユーザー数やレンタル回数の多くなさを示すものと考えますが、個人的には後者において、男性アイドルについてはジャニーズ事務所所属歌手と彼ら以外、女性アイドルでは坂道グループと彼女ら以外、K-PopではBTSやTWICE等日本でも成功を収め続ける歌手と彼ら以外とで、レンタルCDの在庫数に大きな開きがあることも背景にあるものと捉えています。
さてTOMORROW X TOGETHER「Drama」(シングルCD「DRAMA」の表題曲)において、個人的に勿体ないと感じた点が。
LINE MUSICで前週ウイークリーチャートを制したBALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE「SUMMER HYPE」ですら最新週では100位と急落し、ビルボードジャパン各種チャートからも姿を消しました。TOMORROW X TOGETHER「Drama」はシングルCDセールス加算初週の影響で総合4位に入ったものの、ストリーミング指標が一切加算されなかったのは至極勿体ないと思うのです。
TOMORROW X TOGETHER「Drama」については、デジタル先行解禁は行ってもシングルCDが売り出される頃にキャンペーンを組むべきではなかったでしょうか。キャンペーンをCDリリースのタイミングに合わせたとしても、”CDは買わなくてもサブスクで十分”と捉える方はおそらく稀ではないでしょうか。キャンペーンが5日間で500回以上再生というハードルの高さを踏まえれば、キャンペーン参加者はプレゼントを希望するコアなファンが主体であり、イコールCDを確実に買う方々であるはずです。LINE MUSICキャンペーンの時期をCDリリースのタイミングで組むこと、さらに再生回数のハードルを抑え参加賞を用意しライト層にも訴求できるようにすることが、チャートアクションの最大化を生むには重要だったと考えます。