イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) ビルボードジャパンがチャートポリシー変更をアナウンス、次週発表分よりYouTubeデータの反映方法が細分化されます

(※追記(2023年3月18日5時14分):はてなブログにてビルボードジャパンのホームページを貼付すると、きちんと表示されない現象が続いています。そのため、表示できなかった記事についてはそのURLを掲載したビルボードジャパンによるツイートを貼付する形に切り替えました。)

 

 

 

ビルボードジャパンのチャートポリシーが変更されます。9月7日付ビルボードジャパンソングスチャートから適用されるため、実のところ8月24日からその変更がはじまっているのです。

今回の改定の背景には『YouTubeのビデオストリーミングも、オーディオストリーミングも、全て同じ係数でチャートに反映されていた』件があります(『』内は上記記事より)。これをビデオプレイヤーでの再生は動画再生指標に、音声のみのアートトラック音声のみモード/バックグラウンド再生モードでの再生はストリーミング指標して分割。月額1180円のYouTube Music Premium会員による再生と無料会員とでも分けられ、無料会員による再生のウェイトは、昨年11月18日付にて導入を開始したSpotifyの無料会員による再生のそれと同一となります。Spotify導入の際に有料サービス会員と無料会員とで1再生あたりのウェイトを変えたことについては、具体的な数値には言及されていませんが下記に記載されています。

 

今回のチャートポリシー変更は開始されてからのアナウンスとなりましたが、米ビルボードソングスチャートに近い形となったものと考えます。尤も、米ビルボードソングスチャートを構成するストリーミング指標はサブスクの再生回数(ビルボードジャパンのソングスチャートにおけるストリーミング指標)とYouTube(日本での動画再生指標)を合わせたものですが、まずは2018年7月13日付よりサブスクサービスでの1再生におけるウェイト付けを実施しています。

ビルボードではさらに、今年1月18日付よりYouTubeについてのウェイト変更も実施。主な改定はユーザー生成コンテンツ(UGC)に該当する動画の算出方法の簡素化ですが、このタイミングで通常の動画とUGCとでウェイトを区別させ、前者は1再生イコール2/3ユニット、後者は1/2ユニットとしています(一方で有料のサブスクサービスの場合は1再生イコール1ユニット、無料サブスクサービスは2/3ユニットとして計算)。さらには有料サービスでのビデオストリームとYouTube Musicのオーディオストリームも区別されています。

これらサブスクサービスの有料と無料の別、広告支援により無料でも視聴可能なYouTube等とでウェイトを分けて計算することで、ストリーミング再生回数と同指標の順位とが逆転する現象も生じています。直近となる8月29日付米ビルボードソングスチャートで連覇を達成したカーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン(ミーガン・ジー・スタリオン)「WAP」ですが、ストリーミングは7220万で2位。一方で総合2位に初登場したドレイク feat. リル・ダーク「Laugh Now Cry Later」はストリーミングが6980万ながら首位に。おそらくはミュージックビデオのエロティックさや複数のカメオ出演が評判となった一方、出演者のひとりであるカイリー・ジェンナーのパーティーに参加した直後にメーガンが銃撃される事件があったことでカイリーの出演を疑問視する声もあがったこと等により「WAP」のビデオをチェックする方が少なくなかった、それにより1再生あたりのウェイトが平均すると低くなったと捉えることができるでしょう。

 

今回のビルボードジャパンでの変更にはUGCについての言及はありませんが、米ビルボードの動向を踏まえ、既に議題に上がっているかもしれません。日本ではUGCにより動画再生指標が爆発的に伸びる事態がいくつか生じていますが、歌ってみた動画に代表されるそれらは歌手本人の作品とは異なるため通常の動画と同じウェイトが用いられることには疑問を抱きます。今後その点について協議していただきたいと願いつつ、今回のYouTubeの区別化によりビルボードジャパンソングスチャートがより社会的ヒットの鑑として機能するようになったものと捉えています。

今回のチャートポリシー変更の理由をビルボードジャパンは『ストリーミングによる収益と、ユーザーの視聴動向を正しく反映させるため』と記事の中で示しています。ストリーミングによる収益を、主に収益自体の少なさにおいて疑問視する声が未だ聞こえてくる中で実施した今回の変更により、チャート上位曲がより利益に直結してくるように可視化されたと言えるでしょう。