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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

嵐「カイト」、CDリリース日ながらデジタル未配信の理由を考える

嵐がシングルCDとして今日発売した「カイト」が、今朝の段階でもデジタル配信されていません。たとえばSpotifyでは最新のリリースとして表示されるのが前週金曜にリリースされたデジタルシングル「IN THE SUMMER」のままであり、その「IN THE SUMMER」については嵐自身の各種SNSやサブスクサービス等で何度か宣伝されている一方、Twitterで「カイト」について触れているのは現段階で一度きりなのが気になっています。

昨年11月3日のデジタルシングル「Turning Up」を皮切りにデジタル化を加速させた嵐が、それ以降で初のシングルCDとなる「カイト」について配信を行わないのが気掛かりです。このようなブログエントリーを掲載したこともあり、尚更です。

サブスク未解禁なのは楽曲提供した米津玄師さん自身がサブスク未解禁だからという見方もあるかもしれませんが、菅田将暉まちがいさがし」やFoorin「パプリカ」等提供曲がサブスクでヒットした状況を踏まえればこの視点は誤り。米津玄師さんはYouTubeやダウンロードには積極的であるため尚の事です。

 

邪推かもしれないと前置きして書くならば、嵐がシングルCDセールスで一度もミリオンセールスを達成していないことが背景にあるのでしょう。嵐が活動休止を発表した後、 97万以上を売り上げていたデビュー曲「A・RA・SHI」をミリオンにしたいというファンの呼びかけがありながら、既に廃盤されていたため叶わなかったということがありました。また今回の「カイト」は映像盤(DVDもしくはBlu-ray)が同梱されたバージョン、曲数の多い通常盤のほか、特製ジャケットとブックレットが付いたファンクラブ限定盤と3種発売となっており、2種から3種にすることでシングルCDセールスが伸びることは「I seek / Daylight」の動向からも明らか。そしてTwitterで”嵐 シングル ミリオン”と検索すると、初のミリオンセールスをもたらしたいと願うファンの思いが多く登場することから、所有可能な環境をCD購入のみにとどめたことは解らなくはありません。

ただ、活動休止前最後のシングルCDであるだろうことを踏まえれば、フラゲ日と発売日の動向をみないことには断言できないもののミリオンを突破する可能性は高いでしょう。ファンクラブ盤を用意することでミリオンセールスの可能性が幾分計算できたはずであり、『NHK紅白歌合戦』で既に披露されその動画も上がっていることで既に多くのライト層を生んでいる「カイト」がなぜデジタルを外すのか、やはり理解に欠けます。今の時代、ライト層が気軽にダウンロードではなくCDの所有行動を起こすことは容易ではない上に、ビルボードジャパンソングスチャートが社会的ヒットの鑑になりつつある状況ではライト層の拡充がヒットの前提にあるのは自明、なのですが。

 

SNSにおいて「カイト」が「IN THE SUMMER」と比べて圧倒的に紹介されていないことは不自然ですが、仮に「カイト」の未デジタル化が既定路線だったならば、敢えてつぶやかなかったと捉えるのが自然でしょう。SNSとサブスク等の親和性を踏まえれば、つぶやかれた曲がサブスクになかったときのダメージは大きいためつぶやかないほうが得策となり、そうすればデジタルで存在しないことが気付かれずに済む可能性が高まります。

 

「カイト」が仮に解禁されるならばある程度シングルCDセールスが落ち着いた頃になるのではと予想しますが、一方でシングルCDに同梱されたミュージックビデオをYouTubeにアップすればCD購入の優位性が…と思う方が万が一いらっしゃるならば、それを考慮して敢えてアップしないという可能性もありそうです。この選択肢を選んだとしたら、「Turning Up」以降デジタルに前向きだった嵐の姿勢に対し違和感を抱いてしまいます。「カイト」がリリースされた今、ダウンロードやストリーミングで手に入れようとして、見つからずに同様の不満を抱えるようになった方は少なくないはずです。

ドレイクが史上初となる40曲目のトップ10入りを達成、次週はテイラー・スウィフトが席巻か…8月1日付米ビルボードソングスチャートをチェック

ビルボードのソングスチャートをチェック。現地時間の7月27日月曜に発表された8月1日付最新ソングスチャート、ダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」が通算7週目の首位を獲得、そしてドレイクが史上初となる40曲目のトップ10入りを果たしました。

前週はジュース・ワールドの遺作『Legends Never Die』がアルバムチャートに初登場したタイミングでトップ10のうち半数をジュース・ワールドが占めましたが、今週はマシュメロとの「Come & Go」が9位に入ったのみ。代わりに今週は2曲の初登場を含む3曲がトップ10入り、ハリー・スタイルズ「Watermelon Sugar」が返り咲きを果たしています。

5週連続、通算7週目の首位を獲得したダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」はストリーミングが前週比7%ダウンの3620万(同指標1位)、ダウンロードが同6%ダウンの11000(同指標5位)とダウンした一方、ラジオエアプレイは同5%アップの6210万となりこの指標で2位に上昇しています。このラジオエアプレイを今週も制したのはザ・ウィークエンド「Blinding Lights」(総合4位)。前週比2%ダウンしながらも7470万を獲得し、これで同指標16週目のトップに。1990年12月からはじまったラジオエアプレイチャートではマルーン5 feat. カーディ・B「Girls Like You」(2018)、マライア・キャリー「We Belong Togehter」(2005)およびノー・ダウト「Don't Speak」(1996)に並ぶ歴代2位タイとなり、グー・グー・ドールズ「Iris」(1998)の持つ18週首位まであと2週に迫っています。

2位にはジャック・ハーロウ feat. ダベイビー、トリー・レーンズ & リル・ウェイン「Whats Poppin」が浮上。上記に掲載した客演参加版ミュージックビデオがストリーミングおよびダウンロード指標の集計期間初日にあたる17日金曜に解禁された効果で、ストリーミングは前週比19%アップの3330万(同指標2位)、ダウンロードは同36%アップの6000(同指標13位)と共に2桁成長を達成。ラジオエアプレイも前週比5%アップの3780万(同指標18位)を獲得しています。

「Whats Poppin」の客演参加版ミュージックビデオの解禁と同じく17日金曜にリリースされた、DJキャレドとドレイクとのコラボ作品2曲がトップ10入りを果たしました。3位には「Popstar」が、8位には「Greece」がランクイン。ストリーミングは「Popstar」が2840万(同指標3位)、「Greece」が2210万(同指標4位)。ダウンロードは「Popstar」が15000(同指標1位)、「Greece」が9000(同指標7位)となり、またラジオエアプレイは共に同指標50位未満ながら「Popstar」が1310万、「Greece」が350万を獲得しています。これでDJキャレドはトップ10入りが6曲となり、そしてドレイクはこれまでトップタイだったマドンナ(38曲)を抜いて単独トップに躍り出たのみならず、史上初となる40曲目のトップ10入りを達成しました。トップ10入り曲数では3位にザ・ビートルズ(34曲)、4位にリアーナ(31曲)、5位にマイケル・ジャクソン(30曲)と続きます。

10位にはクリス・ブラウン&ヤング・サグ「Go Crazy」が、前週から19ランクアップし初のトップ10入り。こちらもストリーミングおよびダウンロードの集計期間初日となる17日金曜にミュージックビデオを解禁した効果で、ストリーミングが前週比38%アップの1650万(同指標15位)、ダウンロードが同59%アップの5000(同指標17位)と大幅上昇。またラジオエアプレイは同1%アップの3490万(同指標20位)を獲得。クリス・ブラウンにとっては16曲目、ヤング・サグは3曲目のトップ10入りとなります。

 

最新のトップ10はこちら。

 
 
 
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#Hot100 (chart dated Aug. 1, 2020)

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[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (1位) ダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」

2位 (3位) ジャック・ハーロウ feat. ダベイビー、トリー・レーンズ & リル・ウェイン「Whats Poppin」

3位 (初登場) DJキャレド feat. ドレイク「Popstar」

4位 (4位) ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」

5位 (8位) セイント・ジョン「Roses」 

6位 (6位) ミーガン・ジー・スタリオン feat. ビヨンセ「Savage」

7位 (11位) ハリー・スタイルズ「Watermelon Sugar」

8位 (初登場) DJキャレド feat. ドレイク「Greece」

9位 (2位) ジュース・ワールド × マシュメロ「Come & Go」

10位 (29位) クリス・ブラウン&ヤング・サグ「Go Crazy」

さて次週はなんと言っても、24日金曜にサプライズリリースされたテイラー・スウィフトのニューアルバム『Folklore』から何曲がトップ10入りを果たすかに注目。フィジカル施策を活用したこともありアルバムセールスも強いだろうことが予想されるのみならず、サブスク等の再生回数に基づくストリーミングの強さがアルバム/ソングス双方のチャートにも波及することが見込まれます。たとえばSpotifyの動向を見るとリリース日に収録された16曲が16位までを独占しており、ソングスチャートへの大量エントリーは間違いなさそうです。本来はリリースが見込まれていたカニエ・ウェストのニューアルバムが未だ出ていないこともあって尚の事テイラーの一人勝ちと言える状況ですが、果たしてソングスチャートも制することができるのかに注目です。個人的にはこの『Folklore』が、『1989』以来となるチャートや賞レースでの本格的な復権につながるのではと注目しています。

映画主題歌に起用されるOfficial髭男dism「115万キロのフィルム」、ソングスチャートトップ10入りの可能性は

昨日取り上げた『ミュージックステーション』披露曲短尺化の問題について、多くのアクセスをいただいております。異論や反論もあるとは思いますが、これが音楽業界やテレビ制作者への何かしらの気付きになれば幸いです。

 

さて、3日前に放送された『ミュージックステーション』では、Official髭男dismが歌った「115万キロのフィルム」も2分27秒と短尺化されています。実際の尺(5分24秒)の半分以下なのです。

「HELLO」へつながるメドレー形式で披露されながら、ストーリー性のある歌詞の良さが十分に伝わらなかったように思った次第。今回を機にきちんとフルで聴いてくださる方が増えることを願います。

 

この曲がテレビで披露されるに至ったのは、来月公開の映画の主題歌に起用されたためでしょう。

Official髭男dismの映画主題歌といえば、先週公開された『コンフィデンスマンJP プリンセス編』主題歌に「Laughter」が起用されており、同時期公開の2本の作品に新旧の楽曲が用いられることになります。

「Laughter」は最新7月27日付ビルボードジャパンソングスチャートで10位に入った一方、「115万キロのフィルム」は既に最高11位を記録し現在も上位にとどまっていながら、未だトップ10入りには至っていません。

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「115万キロのフィルム」の直近60週におけるチャート推移(ビルボードジャパンのCHART insight)は上記に。アルバム『エスカパレード』の冒頭を飾るこの曲は、ラジオエアプレイによりアルバムリリースからほどなくして一度ビルボードジャパンソングスチャートで300位以内に入るのですが、映画『コンフィデンスマンJP ロマンス編』主題歌のシングル「Pretender」~アルバム『Traveler』~シングル「I LOVE...」と相次いでヒットし、Official髭男dism自体への注目が集まったことで安定的なヒットに至りました。最高位となる11位を記録した今年3月23日付は、「I LOVE...」が主題歌に起用されたドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS)の9回目が放送された週であり、「I LOVE...」もこの週に首位を獲得しています。

 

最高が11位となると、映画公開のタイミングで「115万キロのフィルム」がトップ10入りを果たすかが気になるのです。そこで各指標の動向からトップ10入りするために必要なことをみていきましょう。

シングルCDセールス指標は、未CD化につき加算されません。CDをパソコン等に取り込んだ際にインターネットデータベースにアクセスされる数に基づくルックアップ指標でも同様です。しかし7月27日付ビルボードジャパンソングスチャートではトップ10入りの半数以上にあたる6曲、且つ上位4位までが未CD化であり、今や未CD化は大きな障壁にはならないでしょう。

ダウンロードは、アルバム『エスカパレード』に収録されていながらも曲単位での購入が好調に推移しているため、今後の上昇が見込まれます。サブスクの再生回数に基づくストリーミングも安定した伸びを見せるでしょう。また『ミュージックステーション』での歌唱や映画『思い、思われ、ふり、ふられ』の公開タイミングでTwitterやカラオケといった指標群が上昇するはず。Twitter指標では主題歌起用がアナウンスされた日を集計期間に含む6月29日付で42位に急浮上、またカラオケ指標は集計を再開後、4週連続で20位以内に登場しています。映画原作が主に若年層の支持を集めれば、その若年層が強さを発揮しやすいこの2指標での上昇は十分考えられます。

一方で気になるのは、まずはラジオエアプレイ指標。映画公開の前週には『HELLO EP』がリリースされ、先述した「Laughter」に加えて「HELLO」や「パラボラ」等、収録される4曲がラジオエアプレイチャートを(再)上昇することが考えられます。ストリーミング指標と異なりラジオエアプレイ指標は票割れを起こしやすいため、「115万キロのフィルム」がラジオエアプレイを予想以上に稼ぐことは考えにくい気がします。

また動画再生指標について。この曲をYouTubeで検索すると公式オーディオやライブバージョンはあれど、正式なミュージックビデオはない状況です。YouTubeのクレジット(”この動画の音楽”欄)をみるに下記ライブ動画もカウント対象と思われ(ただしライブバージョンは、厳密にはオリジナルバージョンの合算対象にならないはずですが)、それが動画再生指標を牽引してきたものとは考えられます。

もしこのタイミングで「115万キロのフィルム」のミュージックビデオが用意されたならば俄然注目度は高まり、動画そのものの再生回数のみならず他指標の増加もつながると思うのです。物理的に制作は難しいかもしれませんが、制作そして公開を期待したいところです。

 

「115万キロのフィルム」がビルボードジャパンソングスチャートで念願のトップ10入りを果たすか? 障壁はそこまで多くはなく、仮にミュージックビデオが公開されたならば勝機はあると思うのですが、一方でトップ10入りは厳しいのではという見方も持ち合わせています。「115万キロのフィルム」が総合ポイントにおいて最高を記録したのは今年3月30日付での3841ポイント(同週12位)。しかし各指標が増加したとして、現在では10位の水準がかなり高くなっているのです。

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今年度の1位、10位および50位の総合ポイント推移をみると、カラオケ指標集計再開後は10位のポイントが毎週のように最高を更新し、最新7月27日付では10位(こちらもOfficial髭男dism自身による「Laughter」)が6435ポイント。この状況下で「115万キロのフィルム」がトップ10を果たすには6千ポイントは必要と言え、現在(7月27日付ビルボードジャパンソングスチャートでは28位・2799ポイント)の倍以上を獲得しないといけません。映画の評判にもかかっているだろうとはいえ、今後の推移が気になるところです。

『ミュージックステーション』における曲の短尺化の理由とは、そしてフルバージョンにこだわる『CDTVライブ!ライブ!』で行ってほしいこと

この春からはじまった『CDTVライブ!ライブ!』(TBS 月曜22時)が基本的にフルバージョンでのOAに徹することで、長年夜の音楽番組を牽引してきた『ミュージックステーション』(テレビ朝日 金曜21時)のショートバージョン化が悪い意味で際立ってしまったと思うのです。だからこそ。

一昨日の『ミュージックステーション』に出演予定だった三浦春馬さんの「Night Diver」、そのミュージックビデオを初公開する場だったため尚更違和感を覚えました。曲の素晴らしさ等については昨日のブログエントリーにて紹介しています。

 

このミュージックビデオの件も含め、一昨日番組で披露された曲をみると『ミュージックステーション』の立ち位置が解ると思うのです。そこで今年リリースされた曲の披露時の尺をまとめてみました。左が披露時のおおよその尺、右が実際の尺であり、不明については[?]で表示しています。

Sexy Zone「RUN」 2:32 / ?

・ToshI「BE ALL RIGHT」 2:44 / 4:12

ラストアイドル「愛を知る」 2:30 / 4:12

GENERATIONS from EXILE TRIBE「You & I」2:18 / 3:31

乃木坂46「Route 246」2:29 / 3:52

HYDE「BELIEVING IN MYSELF」2:24 / 3:48

・嵐「IN THE SUMMER」 3:26 / 4:48

・TUBE「日本の夏からこんにちは」1:57 / 2:50

SixTONES「NAVIGATOR」2:57/?

・嵐「カイト」4:32 / 4:35

Official髭男dism「HELLO」4:40 / 4:40

・瑛人「香水」3:50 / 4:12

いきものがかり「きらきらにひかる」3:05 / ?

三浦春馬「Night Diver」(ミュージックビデオ) 2:18 / 3:23

 

※「RUN」「きらきらにひかる」は発売前、「NAVIGATOR」は発売されながら未配信且つ手元に音源がないため尺は不明。「カイト」はNHKYouTube公式アカウントにアップされた動画を参照。

フルバージョンで披露されたのは「カイト」と「HELLO」の2曲のみであり、嵐や乃木坂46による今週発表の新曲も短尺であることに驚かされます。瑛人さんの下記ツイートは一昨日を踏まえてのものなのです。

他にも、ToshIさんが披露したYOASOBI「夜に駆ける」のカバーの尺がオリジナル(4分21秒)の半分にあたる2分16秒。最後のサビ前のいわゆる大サビまで割愛していたため、曲の魅力がかなり薄れたのではないでしょうか。

 

ミュージックステーション』については、ひとつの視点に基づく過去曲のランキング紹介等に時間を割き、新曲への配慮が足りないという声を耳にすることがあります。仮に一昨日放送回でそのランキング等の尺を幾分削ったならば、大半の曲をフルバージョンにて紹介できたはずです。「Night Diver」においては翌日のYouTube公開時にアクセス数を伸ばすべく敢えて短尺化したのかもしれませんが、それは邪推の域を越えません。

ただ、『ミュージックステーション』が最新曲をフルバージョンで披露させるのを躊躇う理由は視聴率にあると考えます。コロナ禍から通常シフトに戻りはじめた6月から7月12日までの視聴率をみると、『ミュージックステーション』は6回の放送の平均が6.65%なのに対し、『CDTVライブ!ライブ!』は3回の平均が5.0%(平均視聴率はビデオリサーチ調べ 関東地区)。時間帯が異なるため単純比較は難しいでしょうが、それでもこの差をみるに、視聴率にこだわるならば最新曲を短尺化してでも多くの方が楽しめ数字を確保できる企画を前面に出したいという気持ちになるのは解らなくありません。そして、視聴率が芳しくない『CDTVライブ!ライブ!』が近いうちに演出面でテコ入れされるのではと危惧する自分がいます。

 

番組のこだわりや意義、もしくは質の高さよりも数字が圧倒的な評価基準であろう地上波テレビ番組においては、レコード会社を中心とした固定スポンサーを導入して収入面を安定させたり、テレビ局が局全体としての視聴率を確保し音楽番組を保護することも重要でしょう。そして個人的に必要だと思うのは、『CDTVライブ!ライブ!』でのパフォーマンス映像を歌手のYouTubeアカウントにて公式に発信すること。海外ではトーク番組や音楽賞でのパフォーマンス映像が後にYouTubeで発信されています。

音楽番組にとってはプロが撮影した素晴らしい映像を後々まで残すことができ且つ番組への評価につながる、歌手側はそのパフォーマンスの素晴らしさを伝えられ且つチャート効果も期待できると考えれば、非常に意味のあることだと思うのです。その上でこのYouTubeへのアップロードはフルバージョンでなければできないことでもあります。権利関係をクリアさせることは容易ではないとしても、是非検討してほしいというのが願いです。

三浦春馬「Night Diver」は曲自体もさることながら、寄付という行動にも素晴らしさを感じる

あまりにも素晴らしかったので紹介します。

3連はサビの部分だけで用いられているゆえ、歌詞に従うならばよりループする感覚に陥るのです。この展開、本当に見事だと思います。

 

この曲、三浦春馬さんのセカンドシングルとして予定通り発売することになり安堵しましたが、この発表にはさらに嬉しくなりました。

「Night Diver」の売上の一部が、ラオスのラオ・フレンズ小児病院に寄付されることも発表された。寄付は三浦が毎年取り組んでいたチャリティイベント「Act Against AIDS」にて支援を続けていた認定NPO法人「フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN」を通じて行われる。

 

三浦春馬さんが参加していたAct Against AIDSは今月20日、四半世紀以上に渡る活動を終了しましたが、実はこの活動終了に違和感を覚えていた自分がいます。日本におけるAct Against AIDSの取組が成果を上げたのか、疑問に感じているためです。

Act Against AIDSHIVエイズの啓蒙運動であり、正しい知識を深め且つ行動を促すべく1993年から行われていましたが、HIV新規感染者数は2000年代後半まで増加、それも先進国の中では日本のみがという状況が続いていました。直近の2019年ではHIV新規感染者・エイズの新規患者ともに減少(前者は3年連続の減少)となりましたが、裏を返せば2016年までは増加するときもあったということになります。

 

Act Against AIDSが十分浸透していれば早々に減少に転じられたかは解りかねますが、しかし毎年12月1日に開催されるイベントは、年々その盛り上がりが聞こえにくくなったと感じています。桑田佳祐さんによる趣向を凝らしたライブが毎年メディアで取り上げられるものの、Act Against AIDSというイベント名は字幕処理で終わらせることが多かった印象が拭えません。これはメディアがAct Against AIDSの意義を軽視しているだろうこともさることながら、個人的には特定の芸能事務所が毎年主体となっていたことも原因ではないかと考えます。

 

さらには、正しい知識が深まらないために偏見が消えていないという、違和感というより不快感がくすぶっています。

アメリカでは4年前の事件を機に、男性同性愛者の献血についての見直しが議論され始めたと上記記事にはあります。記事の前年には『過去12カ月性行為を控えていた場合に限り、男性同性愛者も献血できる』ように改定されたものの未だ問題は残っています(『』内は上記記事より)。一方の日本では半年という期間が設定されていますが、たとえば異性間ならばひとりの方との性的接触は問題ないと読み取れる一方、男性同士の性的接触ならばひとりのパートナーだけでもアウトだというのは理解に苦しみます。

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7月24日21時の段階の表示をキャプチャしたのは、今後文言が変更されている可能性があるため(問題があれば削除いたします)。実際、2018年のHIV新規感染者のうち6分の1は異性間の性的接触が原因なのです。Act Against AIDSできちんとした知識を広く社会に身に着けさせることができたならば、同性愛者に厳しい差別的目線を与えかねない、それも公的機関が行う献血について、その可能者の範囲も、また文言も柔軟に変わっていったはずであり、日本におけるLGBTへの理解もはるかに進んだのではと思うのです。

(HIVエイズについてはこちらこちらの資料を参考にしています(リンク先はいずれもPDF)。)

 

減少しない新規感染者数、メディアの報じ方や特定の芸能事務所の域を超えないことによる啓蒙への疑問、そして献血等で差別が生まれかねない認識が残る現状…『「無知の状態からのエイズ啓発」において一定の成果をあげることができた』かもしれませんが、しかし『役割を終えさせていただきました』とAct Against AIDSが述べることには強く違和感を覚えるのです(『』内はAct Against AIDS活動終了につきまして - Act Against AIDS - エイズには「知る」ワクチンより)。

 

 

その状況下だからこそ、三浦春馬さんによる「Night Diver」の売上の一部が寄付に回ることを嬉しく思うのです。それもラオスの小児病院は、Act Against AIDSの寄付先としてホームページにも掲載されており尚の事。

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(Act Against AIDSのホームページが閉鎖される可能性を考慮し、キャプチャした次第です。問題があれば削除いたします。)

寄付が生前の三浦春馬さんによる意志かは解りかねますが、漏れ伝わってくる彼の人柄の素晴らしさを考慮すれば、きっとこの寄付を率先して行ったのではないか、そしてAct Against AIDSにも人一倍真摯に取り組まれていたのではと思うのです。また、Act Against AIDS的な取組を今後も続けないといけないと感じる方も芸能事務所の中にいらっしゃるのかもしれません。その意志が形となること、HIV新規感染者やエイズの新規患者を減らすべく動くことを願ってやみません。

今夜Tani Yuukiが登場するTHE FIRST TAKE、その人選や選曲からチャンネルのステップアップを感じる

Tani Yuuki「Myra」がビルボードジャパンソングスチャートで好調に推移しています。

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「Myra」は3月にショートバージョンがYouTubeで配信されるとTikTok等で人気が拡がり、レコード会社や芸能事務所未所属の瑛人さんによる「香水」を配信してビルボードジャパンソングスチャートで頂点を極めるのに貢献したデジタルディストリビューションサービスのTuneCore Japanを介し、今月はじめに配信がスタート。

リリース直後から順調なチャートアクションをみせ、ビルボードジャパンソングスチャートにおいてサブスク再生回数を基とするストリーミング指標では261.9万(7月13日付 同指標22位)→5137590(7月20日付 5位)と急上昇。しかし最新7月27日付では4959878(6位)となり微減に転じました。一方で、カラオケ指標では集計対象となる2つのサービス共に未配信(7月24日7時現在)、ラジオエアプレイも最新週にてようやく300位圏内というように、この2指標については動画を契機にヒットしはじめた曲のチャートアクション(こちらのブログエントリー等を参照)と同じ動きを辿っています。総合では前週より1ランクダウンし15位となっています。

踊り場から抜け出すためにはテレビで取り上げられる等で注目度を高め、ラジオエアプレイの上昇やカラオケ解禁等それぞれの業界で認知度を高めていくことが重要と捉えていますが、Tani YuukiさんはこのタイミングでYouTubeの人気チャンネル、THE FIRST TAKEに出演することがアナウンスされました。

曲名は不明ですが、「Myra」であることは確実でしょう。

 

THE FIRST TAKEについては一度このブログで取り上げました(下記引用欄参照)。出演者をまとめることで見えてきたのは、チャンネルを運営していることが確実なソニー・ミュージックの戦略の素晴らしさでした。一方で、このような懸念も浮かび、記しています。

舞台裏が見えれば興ざめ、いや反発すらする方もいらっしゃるかもしれませんが、自分はLiSA「紅蓮華」や女王蜂「火炎」等に強く惹き込まれ、歌ヂカラの凄さや、きちんとフルバージョンで披露する意義を提示してくれたこのTHE FIRST TAKE企画は見事だと思っています。

(中略)

ソニー・ミュージック所属歌手のほぼ独占状況がここまで続くと、先述した反発等のアレルギー反応を起こす方がいらっしゃるだろうということがひとつ。また最近はギターセッションも行われていますが、仮にひとりでもソニー・ミュージック以外に所属していればこのようなセッションや客演が出来ないという問題が発生します。そして歌ヂカラの凄さやフルバージョンでのパフォーマンスが音楽番組等に好い影響を与える可能性がありながらも、ソニー・ミュージックの専売特許ゆえに他のレコード会社が真似出来ず、ゆえにその影響が限定的になるのではないかということ。

(中略)

テレビを介して認知度がより高まった今こそ、ソニー・ミュージックはTHE FIRST TAKEを自社枠から少しずつ開放してほしいと願います。

THE FIRST TAKEに対する望みおよび上記執筆段階での現状をまとめると、THE FIRST TAKEには拡大のための4つのステップがあるのではと考えます。

ステップ1:ソニー・ミュージック系列の所属歌手がラインアップを独占

ステップ2:インディーズもしくはレコード会社未所属の歌手が登場

ステップ3:他のメジャーレコード会社の歌手が登場

ステップ4:他のメジャーレコード会社が同種のチャンネルを用意

先にTani Yuuki「Myra」はTuneCore Japanを介して配信されたと書きました。となるとTHE FIRST TAKEはステップ2に該当することになりますが、個人的には3に近い2ではないかと思うのです。

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THE FIRST TAKEにはこの1ヶ月で、K-PopアクトのStray Kids、およびインディーズもしくはレコード会社未所属の歌手が続けて登場。そのうち優里さんおよびキタニタツヤさんは後にソニー・ミュージック系列からデビューすることがアナウンスされましたが、神はサイコロを振らないは異なります。

もしかしたらTHE FIRST TAKEの動画公開のタイミングでは所属先が決まっておらず、ソニー・ミュージックも名乗り出ていたのかもしれませんが、この件を踏まえればTHE FIRST TAKE出演歌手の選出基準はステップ3に近い2と言えるのではないでしょうか。

歌手の選出基準もさることながら、THE FIRST TAKEの選曲基準も変わってきたと感じています。動画、特にTikTokでの人気がきっかけにストリーミングで火がつき、ビルボードジャパンソングスチャートでHot 100入りしている曲が増えているのです。

Rin音「snow jam」(最新7月27日付38位)のみならず、神はサイコロを振らない「夜永唄」(同78位)や優里「かくれんぼ」(同50位)はこの数ヶ月で火が付いた曲。いずれも歌詞検索サイトのUtaTenで紹介されています。

THE FIRST TAKEはおそらくソニー・ミュージックの運営だとして、系列には他にも沢山の歌手がいらっしゃるはずですが、その選曲基準を変えてきたという印象を抱いています。

 

Tani YuukiさんのTHE FIRST TAKE(厳密に言えばTHE HOME TAKEですが)のデビューは本日22時。別バージョンはオリジナルに合算されないというビルボードジャパンのチャートポリシーを踏まえれば、今回の動画が直接動画再生指標に寄与するということにはなりませんが、サブスクの再生回数等に影響を与えることは確実。次週のチャートを注視しましょう。

そしてTHE FIRST TAKEの今後の人選や選曲から、レコード会社の区別なく日本の音楽業界全体に大きく貢献するYouTubeチャンネルになっていくか、見極めたいと思うのです。

CD未リリース曲が上位を占めた7月27日付ビルボードジャパンソングスチャート、TWICEの日本オリジナル曲の動向からみえてくるものとは

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

7月13~19日を集計期間とする7月27日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)は、YOASOBI「夜に駆ける」が6週ぶりに首位に返り咲きました。

シングルCDセールスを制した山下智久「Nights Cold」は5位。前作「CHANGE」からCDセールスはダウンしたものの、7万枚以上を売り上げた同曲が総合で上位に進出できなかったのは、その上位陣が厚いことも理由に挙げられます(一方でCDセールス初週におけるダウンロードが19217→4791と大きく落ち込んでいるのは気になります)。今週は3位の瑛人「香水」までが1万ポイントを突破、そしてその上位陣からは今のソングスチャートにおける【所有<接触指標】の重要性が示されています。

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今年度の首位獲得曲一覧は上記に。シングルCD未リリース曲は今週のCD順位およびルックアップ欄をグレーで表示(2月17日付におけるOfficial髭男dism「I LOVE...」はシングルCDセールス加算前)。上位曲の特徴については以前noteに記載しています。

「夜に駆ける」が首位に復帰するまでの間にその座に就いていた曲は全てシングルCDセールスが1位となり、同指標を首位獲得の原動力にしているのですが、首位獲得の翌週には半数以上が大幅ダウンを喫し、今週においてはKing & Prince「Mazy Night」およびTWICE「Fanfare」を除き100位から姿を消してしまいました。今週は集計期間中に『音楽の日』(TBS 7月18日放送)が放送され、「Fanfare」以外は披露されているにもかかわらず、なのです。テレビパフォーマンスはTwitter指標の上昇につながることは勿論のこと、サブスクの再生回数に基づくストリーミングやYouTube等の再生回数に基づく動画再生といった接触指標群が伸びる傾向にあるのですが、デジタル未解禁もしくは動画がショートバージョンであればテレビ効果に期待することは難しいと言えます。

 

さて、上記表でも記載されていますが、前週首位を獲得したTWICE「Fanfare」はトップ10をキープするも7位にダウンしました。

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日本オリジナル曲のシングルCDリリースは1年ぶり。昨夏2週連続でリリースしたシングルのCDセールス加算2週目におけるポイント前週比は「HAPPY HAPPY」が24.2%、「Breakthrough」が23.7%。一方「Fanfare」は32.2%となり、幾分改善されていることが解ります。その一方で、「Fanfare」と同じく先月初のHot 100入りを果たした韓国語曲の「MORE & MORE」をみると。

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同名EPがアルバムチャートに初登場した6月15日付で3位にランクインした「MORE & MORE」は、翌週のポイント前週比が77.9%。以降は1週を除きポイントが前週割れを起こすものの8割を下回ることはありません。「MORE & MORE」の緩やかな下降を踏まれるに、ともすれば今後数週のうちに「Fanfare」と「MORE & MORE」が逆転する可能性は十分に有り得そうです。

 

TWICEのみならず、K-Popアクトの日本オリジナル曲と韓国語曲とではチャートアクションが大きく異なることは以前から弊ブログで述べてきました。前者はシングルCDセールスおよびルックアップが加算されることで瞬発力に長けている一方、持続力は後者が勝っています。以前、日本オリジナル曲の持つ歌謡曲的なメロディの落とし込み等が格好悪いという指摘をいただいたことがあるのですが、K-Popに慣れ親しんだ方からすれば曲を日本仕様にすることへの違和感が、このチャートアクションに表れているのかもしれません。

 

となれば、気になるのはTWICEの妹分として、オーディションを経てプレデビューしたNiziUの動向。

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2週前にストリーミング指標で新記録を樹立したミニアルバムの表題曲は登場3週目にして4位と高位置をキープ。シングルCD未リリースながらポイント前週比は57.9→85.2%と推移しています。この数字を踏まえれば、「Make you happy」が日本オリジナル曲と韓国語曲どちらのチャートアクション(ポイント前週比)を辿るかは断言できませんが、しかし順調に推移しつつあるだろうというのが私見です。

オーディションで審査を担当したパク・ジニョン自身がペンを執ったNiziU「Make you happy」のヒットは、そのオーディションの注目度の高さにあるということは以前記載しました。

しかしながら人気の理由は、【K-Popアクトの韓国語曲の要素が強い】ことにもあるでしょう。「Make you happy」はストリーミングおよび動画再生指標で共に3週続けて3位以内に入り、当初は所有指標の高さも貢献していましたが徐々に、TWICE等の韓国語曲同様に【所有<接触指標】というチャートアクションを辿るようになっています。

 

このNiziUの動向から読み取れるものとは何でしょう。あくまで私見と強く前置きして書くならば、K-PopアクトはJ-Pop要素の強い日本オリジナル曲を出す必要性が低いのではないかと思うのです。レコード会社等が利益を得るべくシングルCDを用意することは理解できますが、ならば韓国語曲の日本語バージョンをシングルCD表題曲に据えたり、韓国でリリースされているアルバムを国内盤として用意するのもひとつの手段ではないでしょうか。J-Pop的なアプローチで生まれた曲が日本でヒットするという概念は、チャートアクションを見る限り成り立たなくなっているものと考えています。