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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

アメリカの最新ソングスチャートを毎週追いかける理由…日本のチャートの今後の傾向が先取りできるのです

このブログでは毎週、ビルボードジャパンソングスチャートと共に米ビルボードソングスチャートの最新動向を取り上げています。日本時間の火曜早朝(現地時間の月曜)に発表される米ビルボードソングスチャート速報はビルボードジャパンでも昼前後に記事になるのですが、勝手ながらこちらでも翻訳し、いち早く紹介しています。

昨年末に亡くなったジュース・ワールドがアルバムチャートを制した勢いがソングスチャートトップ10の半数占拠へと波及した昨日のチャート。この状況はある種イレギュラーではありますが、しかしこのチャートの動きも自然であり、且つ日本でも同種の動きが出てきています。アメリカの最新チャートを追いかけていくのは実に意義深いことなのです。というわけで、アメリカの最新チャートを追いかける理由、そして見えてくるものについて3点、取り上げようと思います。

 

アメリカの最新チャートを追いかけていくと見えてくるもの、最初は日本における新しいヒットの形をいち早く知ることができるということ。コロナ禍で自粛期間が増えたことでネット視聴時間が増え、TikTokYouTube発のヒットが増えたという日本の動向については弊ブログにて幾度となく取り上げています。

YOASOBI「夜に駆ける」やyama「春を告げる」、最近ではTani Yuuki「Myra」等がチャートを賑わせ、「Myra」同様にデジタルディストリビューションサービスのTuneCore Japanからリリースした瑛人「香水」はビルボードジャパンソングスチャートを制しました。

「香水」を例に取り上げるならば、歌ってみた等各種動画によるバズの発生、そして瑛人さんがレコード会社や芸能事務所に所属していないこと…ここから想像されるのは、昨年米チャートで19週1位となり最長記録を更新したリル・ナズ・X「Old Town Road」。後にカントリー歌手のビリー・レイ・サイラスをフィーチャーしてさらなる大ヒットとなったこの曲ですが、初の1位獲得時は単独クレジットでした(オリジナルバージョンより客演参加版がよりストリーミングやラジオ等で支持されれば、楽曲のクレジットは客演参加版になります)。

 「Old Town Road」の大ヒットから1年、新型コロナウイルスにより新曲のリリースが控えられたことでこのようなヒットの形が目立ったという見方もありますが、日本のチャートには確実に動画の力やインディペンデントでも活躍できる環境が浸透しているのです。

また、最新の米ビルボードソングスチャートではジュース・ワールドがトップ10の半数を占め、51位までに17曲がランクインしています。これはアルバム『Legends Never Die』がサブスク等ストリーミングで多く聴かれたことによるもの。

アルバムがサブスクで大量に聴取されたことでソングスチャートに波及するケースは2年前のドレイク『Scorpion』における7曲トップ10入りに代表されるようにここ数年で目立ってきていますが、この動きも日本で少しずつ登場。昨年2月25日付、アルバム初登場のタイミングでONE OK ROCKあいみょんさんがソングスチャートに大量エントリーを果たしたことも特筆すべき点ですが(あいみょん、ONE OK ROCKから見えてくるストリーミング"同時解禁"の重要性…2月25日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック (2019年2月21日付)参照)、最近ではNiziUのプレデビューミニアルバム『Make you happy』から表題曲がストリーミング再生回数で新記録を達成したほか、収録された4曲すべてがソングスチャートで20位以内に登場しています。

NiziUの場合はCD未リリースのためストリーミングでの聴取がより顕著になったと言えるかもしれません。CD未リリースは海外では結構みられるようになっており、この動きもまたアメリカのそれをなぞっていると捉えてよいでしょう。

 

アメリカのチャートを毎週追いかけていくと見えてくるもの、2つ目は日本における新たな洋楽曲の流行をいち早く知ることができるということ。先にTikTok発のヒットの形について提示しましたが、そのTikTokの公式チャートをみると面白いことが解ります。

先週金曜に更新された最新のTikTokソングスチャートはこちら。

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先述したTani Yuuki「Myra」が強さを発揮する一方、洋楽(K-Popにおける韓国語曲も含む)は実に10曲以上がランクインし3分の1以上を占拠。ビルボードジャパンソングスチャートで洋楽がトップ10入りすること自体が珍しい一方で、この占有率の高さには驚かされます。そしてここには、最新の米ビルボードソングスチャートで6週目の首位を獲得したダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」が含まれているのです。

とはいえこの「Rockstar」には先月の段階で『TikTok上でダンスムーブメントができあがる』という指摘もあり、また先週まで米でトップ10入りしていたリル・モジー「Blueberry Faygo」等も同様にTikTok発のヒットといえます。おそらくは日本で、米ビルボードソングスチャートに関係なくTikTokで使われているから(日本でも)使うという流れがあるのでしょう。しかし使用や視聴していくうちにその曲がユーザーに沁み込み、いつしか動画を離れサブスク等で聴くようになりTikTokを超えたヒットに波及する可能性もあるのではないでしょうか。TikTokとの関連性も含め、次に日本でブレイクするかもしれない(そして海外では既に大ヒットしている)洋楽をいち早くチェックできるというのも、米ビルボードソングスチャートを追いかける理由のひとつです。

 

アメリカのチャートを毎週追いかけていくと見えてくるもの、最後は日本で今後人気になるであろうジャンルを察知できるということ。最新の米ビルボードソングスチャートではポップスに該当する曲がトップ10から外れ、ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」を除きヒップホップが寡占状態となっています。しかし、たとえばジュース・ワールドはロックミュージックにも影響を受けたエモ・ラップというジャンルを代表するラッパーであり、今週2位に初登場を果たした「Come & Go」は、共演したマシュメロの影響もあってロックのみならずダンスミュージックの要素も多く含んでいます。

一方で唯一ヒップホップ以外のトップ10入りとなったザ・ウィークエンド「Blinding Lights」も、純粋なR&Bというよりはa-ha「Take On Me」を想起させるニューウェイヴの影響が大きく、特にラジオエアプレイで強く支持されるのはこの曲がリスナーのノスタルジーを掻き立てるからではないかと思うのです。さらに、今年史上最長となる39週トップ10入りを記録したポスト・マローン「Circles」は、ヒップホップというよりは完全な歌モノとなっています。

日本ではヒップホップのチャート占有率や売上が他国に比べて低いと言えますが、たとえばビルボードジャパンソングスチャートで最高20位を記録したRin音「snow jam」は、ヒップホップながらメロディラインがはっきりした曲。

このヒップホップの歌モノという傾向等ひとつのジャンルに括れない曲は、たとえばYouTubeが当たり前になった2010年代以降にデビューした歌手にとっては自然に紡ぎ出されるものとだと考えますが、米ではいち早くこのような曲のジャンルレス化が顕著になっているものと考えます。そして同種の現象が日本でも起きていくはずです。

 

 

これら3点が、毎週最新の米ビルボードソングスチャートを追いかける自分なりの理由です。無論、ただ純粋にチャートアクションが好きだったり、早起きするとちょうど米ビルボードソングスチャートが発表されていたということも理由にはなるのですが、ビルボードジャパンソングスチャートを分析する際の参考になっていることは間違いありません。是非とも米ビルボードの速報を参照しつつ、チャート分析の血肉にすることをお勧めします。

ジュース・ワールドがトップ10の半数を占拠…7月25日付米ビルボードソングスチャートをチェック

ビルボードのソングスチャートをチェック。現地時間の7月20日月曜に発表された7月25日付最新ソングスチャート、ダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」が通算6週目の首位を獲得、またジュース・ワールドがトップ10内の半数を占めました。

今週はその勢いの凄まじさから、ツイートに用いられた写真は首位のダベイビーではなくジュース・ワールドとなっています。

昨年12月に21歳の若さで亡くなったジュース・ワールド、遺作となる『Legends Never Die』は昨日発表された7月25日付米ビルボードアルバムチャートで今年最高のユニット数にて首位を獲得し、ソングスチャートへの大量エントリーが見込まれていました。その点については昨日紹介しています。

そして蓋を開けてみると、『Legends Never Die』からは17曲が100位以内、それも51位までに登場。トップ10には5曲が入った形です。

最も高い順位を獲得したのはマシュメロとの「Come & Go」(2位)でした。

トップ10入りした5曲のうち、ホールジーとの「Life's A Mess」(前週の74位から9位に上昇)以外は全て初登場となり、2018年7月14日付でドレイクが、同年10月13日付でリル・ウェインが達成したトップ10内4曲初登場という最高記録に並びました。またトップ10内の5曲エントリーは、ドレイクの先述した日付における7曲に次いで史上2位タイ。1964年4月4日および11日付でザ・ビートルズが成し遂げた記録に並んでいます。

ジュース・ワールドのトップ10入りは今回で計8曲となり、「Come & Go」は最初のヒットとなった「Lucid Dreams」と並ぶ2位に達しています。その「Come & Go」で共演したマシュメロにとっては、10位の「Hate The Other Side」も含めトップ10入りが3曲となり、また「Life's A Mess」のホールジーは6曲目のトップ10入り。「Hate The Other Side」で客演したポロ・Gおよびザ・キッド・ラロイは今回が初のトップ10入りとなっています。

昨日も書いたように、今回のジュース・ワールドのヒットはストリーミングに因るものが大きく、アルバムチャートではストリーミング数のアルバム換算分が今年最多且つ史上4番目の大きさに、そして「Come & Go」はストリーミング指標を制しています。「Come & Go」は3640万を獲得し、同指標2位のダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」が獲得した3900万には敗れているように見えるかもしれませんが、この数値はストリーミングの中身(有償と無償、動画等)に対してそれぞれウェイト付けが行われる前のものであり、ウェイト付けされた後は数値と順位が異なるのです。なお「Come & Go」のダウンロードは12000となり同指標2位に登場しています。

 

ストリーミング指標では2位にダウンしながらも、ダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」は4週連続、通算6週目の首位を獲得。

先述したようにストリーミングは3900万で同指標2位となりましたが前週比8%ダウン、またダウンロードも同16%ダウンとなる11000(同指標3位)となり、デジタル2指標がやや大きく落ち込んでいます。他方ラジオエアプレイは前週比9%アップの5900万を獲得し同指標3位に上昇しています。

そのラジオエアプレイを制したのはザ・ウィークエンド「Blinding Lights」(総合4位)で、前週比1%ダウンながら7640万を獲得し今週で15週連続同指標を制覇。1990年12月にはじまったラジオエアプレイチャートでは前週の段階で首位獲得週数が史上5位タイとなりましたが、今週は単独5位に躍り出ています。

 

最新のトップ10はこちら。

 
 
 
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#Hot100 (chart dated July 25, 2020)

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[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (1位) ダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」

2位 (初登場) ジュース・ワールド × マシュメロ「Come & Go」

3位 (3位) ジャック・ハーロウ feat. ダベイビー、トリー・レーンズ & リル・ウェイン「Whats Poppin」

4位 (2位) ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」

5位 (初登場) ジュース・ワールド「Wishing Well」

6位 (4位) ミーガン・ジー・スタリオン feat. ビヨンセ「Savage」

7位 (初登場) ジュース・ワールド「Conversations」

8位 (5位) セイント・ジョン「Roses」 

9位 (74位) ジュース・ワールド × ホールジー「Life's A Mess」

10位 (初登場) ジュース・ワールド & マシュメロ feat. ポロ・G & ザ・キッド・ラロイ「Hate The Other Side」 

次週はジュース・ワールドが何曲トップ10にとどまるか、何曲がカムバックを果たすかに注目すると共に、17日に解禁されたDJキャレドとドレイクによるタッグ2曲の動向も気になります。特に「Popstar」はリリース日の米Spotifyデイリーチャートを制しましたが、翌々日には早くも4位へ後退しています。

ジュース・ワールドの遺作『Legends Never Die』が米アルバムチャートを制覇、ソングスチャートへの波及の可能性を考える

ジュース・ワールドの遺作となるアルバム『Legends Never Die』が、日本時間で今朝発表された7月25日付米ビルボードアルバムチャートを制しました。初動ユニット数は今年最高となる497000ユニット。グッズバンドルの効果もあり209000ものアルバムセールスを獲得したのも大きいですが、ストリーミング数のアルバム換算分が283000ユニット(4億2263万回再生)となり今年最高、歴代4位となったことが今年最高のユニット数に至った要因と言えます。

ジュース・ワールドはエモ・ラップというジャンルを代表するラッパー。『ロックミュージックにも影響を受けながら厭世感や内省的な感情をラップする』(BAD HOPに続くスターは現れるか? 渡辺志保が注目の若手ヒップホップクルーを解説 - Real Sound(2018年10月12日付)より)というエモ・ラップでは他にも、XXXテンタシオン(エックスエックスエックステンタシオンとも表記)やリル・ピープなどが有名ですが、スティング「Shape Of My Heart」をサンプリングした「Lucid Dreams」(2018)が米ビルボードソングスチャートで2位を獲得し、一躍時の人となったジュース・ワールドが最も知られているのではないでしょうか。しかしながら彼は昨年12月、不慮のオーバードーズにより21歳という若さでこの世を去りました。彼を失った悲しみは、昨年12月21日付の米ビルボードソングスチャートに「Lucid Dreams」が8位再登場を果たしたことにも、その大きさが表れています。

ジュース・ワールドの遺族は『未公開の音楽や、彼が情熱を傾けて制作していた他のプロジェクトを公開することを通して、ジュースの才能や彼の魂、彼がファンのみなさんに対して感じていた愛情を祝福する予定です』(上記記事より)と語っていましたが、それが形となったのが『Legends Never Die』です。

ビルボードアルバムチャートを制したことで、明日発表される同ソングスチャートにも大量エントリーを果たすことが見込まれます。米ビルボードのアルバムチャートは曲単位の購入分やサブスク・YouTubeの再生回数がユニット数(アルバム換算分)として計算されますが、これらはソングスチャートにも影響を与えます。7月25日付米ビルボードソングスチャートが明日発表されるのを前に、米Spotifyデイリーチャートの動向からジュース・ワールドの大量エントリーの可能性を探ってみましょう。

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(7月10~16日分が7月25日付米ビルボードソングスチャートにおけるストリーミング指標に反映されます。)

デジタル音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミさんによると、『Spotifyなど音楽ストリーミングは30秒以上の再生時間を「1再生」とカウント』し、『30秒未満でスキップされた曲は「ゼロ再生」となる』ため、21秒の「Get Through It (Interlude)」はカウントされない模様です(『』内は音楽ストリーミングの成功を左右する「スキップレート」に、アーティストや音楽業界はどう向き合うべきか | All Digital Music(2019年3月25日付)より)。ゆえにこの曲を除く20曲がSpotifyに登場、解禁日となった7月10日には先行4曲を含む20曲が22位までにランクインを果たしており、この勢いがアルバムの再生回数4億2263万回(ユニット換算分283000)に至った理由と言えます。ゆえに前週アルバムチャートを制し、ソングスチャートにも収録曲全てが100位以内にランクインを果たしたポップ・スモークに次ぐ大量エントリーが見込まれるのです。しかもトップ10内の半分近くがジュース・ワールドで占められるのではという予想もみられます。

一方で明日発表のソングスチャートではポップ・スモークの大量ランクダウンが見込まれており、次週はジュース・ワールドも同様の動きをたどるでしょう。しかしながらSpotifyデイリーチャートではホールジーとの「Life's A Mess」、マシュメロとの「Come & Go」をはじめ5曲が1週間トップ10入りし続けています。キープした曲の中にはこの1週間のうちにミュージックビデオを公開したものもあり、興味を惹き続けるためのスケジュールが組まれていることが解ります。これらが最新ソングスチャートのみならず次週にも勢いが波及するだろうことを考えれば、米ビルボードソングスチャートで2週続けてジュース・ワールドの曲が複数トップ10入りを果たす可能性もありそうです。

ジュース・ワールドの勢いの凄まじさに触れ、あらためて彼の存在の大きさを思い知らされます。そして下記noteで音楽ジャーナリストの柴那典さんが述べているように、XXXテンタシオンやリル・ピープ、ジュース・ワールドの相次ぐ訃報がエモラップ自体の終焉に至ってしまうのではと思うと、複雑な思いに駆られます。 

「Wishing Well」のミュージックビデオで表現されているのは、薬物依存の苦しみ。ジュース・ワールドの遺族はこのビデオ、そして彼の音楽を通じて、これ以上の被害者が出ないことを願っているのだと思うのです。『Legends Never Die』がその一助になってほしいと切に願います。

平成を代表する曲が映画化されるタイミングで、中島みゆき「糸」がチャートを上昇するために必要なことを考える

8月21日に公開される映画『糸』。この作品で主演を務める菅田将暉さんによる、石崎ひゅーいさんとタッグを組んだエンディングテーマが17日金曜に解禁されました。

「糸」は中島みゆきさんのカバー曲。オリジナルは1992年のアルバム『EAST ASIA』に収められた後、ドラマ『聖者の行進』(1998 TBS)主題歌に起用されシングル化。Bank Bandが2004年にカバーして以降は様々な歌手に取り上げられ、また多くのタイアップに起用されています。現在では結婚式のBGMやカラオケの定番曲となり、前年度の著作物使用料分配額が多かった上位作品に贈られるJASRAC賞では2016年に3位、そして2017年に1位を記録(その後、2019年および2020年も3位を記録)。昨年、元号が変わる前日に缶コーヒーのCMに起用されたこともあり、「糸」は平成を代表する曲になったといっても過言ではありません。

 

さて、映画公開のタイミングで注目が集まるであろう、中島みゆきさんによる「糸」。ビルボードジャパンがカラオケ指標をソングスチャートに加えて以降、同指標では安定した成績を収めているのですが、ソングスチャートで十分にヒットしているとは言い難いと捉えています。

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ビルボードジャパンソングスチャートのチャート推移(CHART insight)、直近90週分をみると、2019年度からスタートしたカラオケ指標では常時20位以内に入っています(コロナ禍で一時集計取り止めしていた時期を除く)。しかしこのCHART insightで遡ることのできる2014年度以降、「糸」の最高位は2016年6月27日付の44位であり、一度としてトップ40入りを果たしていません。ならば「糸」が再度ヒットに至るにはどの指標の盛り上がりが必要か、考えてみたいと思います。

 

最高位を記録した前後、2015年6月1日~2017年2月13日付のCHART insightをみてみると。

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青の折れ線グラフはストリーミング指標を示します。現在ではサブスクの再生回数が基になっていますが、Apple Music等サブスクサービスの加算開始は2016年12月12日付であり、それまではプチリリにおける歌詞表示回数(を通じてストリーミング数を推定すること)が同指標の基礎となっていました。先程JASRAC賞で2年連続3位以内に入ったことを述べましたが、おそらくは結婚式等で「糸」を使う方が歌詞を確認するという行動が、ストリーミング指標の盛り上がりにつながったものと思われます。しかし現在、ストリーミング指標で「糸」は300位前後を繰り返しており、当該指標を十分獲得するに至っていません。

中島みゆきさんは今年、Amazon Music UnlimitedおよびAmazon Prime Music限定で一部楽曲をサブスクにて解禁しました。

Amazon Music Unlimitedでは現段階で91曲が、Amazon Prime Musicでは12曲が聴取可能。双方に「糸」が含まれていますが、一方でSpotifyApple Musicでは未だ解禁されていません。またビルボードジャパンソングスチャートにおけるストリーミング指標は現段階にて、Amazon Prime Musicはカウント対象外となっています(同サービスがAmazonプライム加入者へのサービス的な位置付けにあることが集計に取り入れにくい理由ではないかと思われます)。Amazon Prime Musicでいくら再生されてもストリーミング指標に反映されないこと、そしてSpotify等での未解禁により、「糸」はストリーミング指標で盛り上がりに至れないものと考えられ、またサブスクサービス限定で解禁という方策は他のサービス加入者からすれば不満の元になってしまうのではと思うのです。ゆえに、早急にサブスクサービス全般に解放することが必要だと考えます。

 

また動画再生の弱さも気掛かりです。2014年度以降、同指標は通算2週のみの加算にとどまり、ランクインした2週とも100位未満(300位圏内)となっています。この原因はオリジナルバージョンのミュージックビデオが作られていないだろうこともありますが、たとえばYouTubeで”中島みゆき 糸”と検索すると、現段階で真っ先に登場するのは歌い手知らずによるカバーなのです。この動画の発信者に公式のマークが付いているのみならず、現段階で8600万を超える再生回数を獲得していることで、動画は歌い手知らずながら信頼を得ているだろうことが解ります。仮にYouTube中島みゆきさん本人による動画がアップされていたならば…と、その著しい機会損失が悔やまれてなりません。

仮にオリジナルバージョンのミュージックビデオが作られていないとしても、現在ではリリックビデオやアニメーション等の公式動画を後から作成して動画再生指標を獲得するという方法があります。アメリカではクリスマスの時期に過去の名曲が上昇するのがこの数年の傾向ですが、サブスクの再生回数が反映されるのみならず、昨年は過去の名曲に新たにミュージックビデオが用意されたことでさらなる上昇につながりました。

これら制作にたとえ着手できなかったとしても、オリジナルバージョンの音源を利用している動画に権利者側から許諾を与え、ユーザー生成コンテンツ(UGC)として半ば公式化させ、カウント対象にするという手段もあります。

 

 

「糸」をモチーフにした映画が公開されれば、また菅田将暉×石崎ひゅーい「糸」が人気となれば、自ずとオリジナルバージョンがカラオケ中心に盛り上がるはずです。他方、そのオリジナルバージョンはポイントが十分に獲得できる環境にありません。他のサブスクサービスへの解禁や動画の用意は中島みゆきさんご本人の意向が最優先となるでしょうが、より多くの方が接触できる環境を用意し接触指標群を充実させることが今のヒットの基礎になっていることはこのブログで幾度となく記載しています。2020年のヒット曲のひとつに「糸」を加えるという意気込みを持って、是非とも中島みゆきさんサイドにはチャート上昇の施策を検討していただきたい…そう強く思っています。

ジャニーズ事務所所属歌手のシングルCD表題曲、チャートの急落度が大きくなっている理由を内外の要因から考える

最近はジャニーズ事務所所属歌手について書く機会が増えています。同事務所をメインにしたブログエントリーはこの1ヶ月で実に6回。彼らの曲には好きなものも多く、たとえばKinKi Kids「KANZAI BOYA」は上半期邦楽ベストのひとつに選んだほど。それゆえもっと広まってほしい、そのためにはデジタル環境の改善が必須ではという思いが、エントリー数に反映されたと考えています。

 

さて、ジャニーズ事務所所属歌手のシングルCD表題曲について、今年度のビルボードジャパンソングスチャートの動向で気になることが。それは、シングルCDセールス加算2週目の総合ポイント前週比が以前より低下していること。これまでは大半の曲が10~20%の間で推移し、中には20%を超えるものもありましたが、今年度は10%未満が増えているのです。

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総合ポイント50位未満はポイント未記載のため、同週50位のポイントを基に推定値を掲載し()内に表記。今年は10曲中3曲、シングルCDセールス加算2週目の総合ポイントが前週比10%未満に。またシングルCDセールス加算2週目に50位を下回るケースも目立っており、今年度は既に3曲となっています。

 

この状況が生まれた理由には内的および外的要因があると言えそうです。外的要因は、全体的なポイントの底上げを指します。

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これまでは50位のみのポイント推移を追いかけていましたが、今回は1位および10位のポイントも併せて掲載。1位のポイントには週により大きな変動がありますが、それ以外は安定して推移。しかしながら10位は最新7月20日付で最高のポイントを記録し、50位についてもカラオケ指標再開後に最高を更新。双方とも上昇しているのです。

このソングスチャート10位および50位におけるポイント底上げの要因は明白です。

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2020年度ビルボードジャパンソングスチャートにおいて、シングルCDセールスは10位と50位、ダウンロードおよびストリーミングは1位と10位の数値を定点観測したグラフが上記。所有を示すシングルCDセールスの50位およびダウンロードの10位は緩やかに下降する一方、接触を示すストリーミング(サブスク再生回数に基づく)は明らかに増加しています。7月13日付では1位および10位共に最高記録を更新しましたが、これはNiziU『Make you happy』収録の4曲全てがトップ10入りしたことが影響しています。

今年に入り目立っているTikTokYouTube発のヒットはまずサブスクに波及する傾向があり、コロナ禍の自粛期間にこの形のヒットが増えています。また海外では、注目度の高いアルバムは解禁直後に収録曲全てがサブスクで上位に登場。たとえばジュース・ワールドの遺作として7月10日にリリースされた『Legends Never Die』は、リリース日に米Spotifyデイリーチャート22位までに20曲がエントリーを果たしています。サブスクのニーズが高まることで、今後『Make you happy』や『Legends Never Die』のような大挙ランクインが日本で定番化するかもしれず、ゆえに他の曲はその波に耐えうる体力が必要となってきます。

しかしながら、ジャニーズ事務所に所属する大半の歌手はデジタル未解禁ゆえ、ストリーミングに動画再生を含めた接触指標を十分に獲得することができません。昨日は今年の作品におけるラジオエアプレイの安定について記載しましたが、初週のCDセールスに合わせてラジオエアプレイやTwitterが盛り上がる分、その反動がより大きくなっているのではと思うのです。その反動、そして接触指標で抑えることができないこと、これが内的要因と言えるでしょう。

 

デジタル環境を解放していないシングルCD表題曲がリリース直後に獲得できる指標はシングルCDセールス、ルックアップ、Twitterそしてラジオエアプレイの4つだというのは昨日も書いた通り。この中で、曲に興味はあれど歌手のファンというわけではないというスタンスのライト層が寄与できる指標があるとすれば、極端に言えばレンタルに伴うルックアップの上昇のみかもしれません。Twitterも可能ですが、今ではファンの熱心なツイート活動もしくは社会的なムーブメント(たとえば米津玄師「感電」がミュージックビデオ解禁日に大きなうねりを起こしたことで、最新7月20日ビルボードジャパンソングスチャートのTwitter指標を制しています)が上位を占めるため、1ツイートの貢献度は以前ほど大きくなくなったものと考えます。

サブスクやYouTubeはライト層でもアクセスしやすく、また1000円を超えるシングルCDよりも250円強の曲単位のほうが気軽に買えることもライト層には嬉しいはず。シングルCDセールスに長けていることは素晴らしいですが、各指標をバランス良く獲得するほうがポイントや順位の急落を抑えロングヒットに至りやすいはずですし、社会への浸透度も高まるものと考えています。

SixTONESのラジオ特番発表から感じる、ジャニーズ事務所所属歌手のシングルCD販売戦略の現状

昨日noteにて、BTSを取り上げました。

海外のiTunes Storeでも日本オリジナル曲は好調ですが、K-Popアクトは韓国語曲に比べて日本オリジナル曲ではJ-Popライクなメロディや尺の長さの点に特徴があり、日本オリジナル曲への海外の反応が気になるところです。

 

海外といえば、今週シングルCDをリリースした山下智久さん。配信ドラマ『THE HEAD』のエンディングに起用された「Nights Cold」は世界で配信された模様で、海外在住の方が所有もしくは接触できた旨をTwitter等に投稿しています。しかし日本ではiTunes Storeでダウンロードしたり、Spotifyで触れることはできません。

今週公開されたリリックビデオは短尺版。『日本語のオリジナルのほか、中国語(繁体字簡体字)、インドネシア語タイ語、韓国語、スペイン語、英語の6言語バージョンが制作され、それぞれを母国語とする国限定で公開』(音楽ナタリーより)とのことなので、諸外国ではフルバージョンで公開されているかもしれません。リリックビデオは先日リリースされた嵐「Face Down : Reborn」(→YouTube)でも登場しましたがこちらはフルバージョンでした。

一方で。

この『レコチョクではフルでダウンロードが可能』という状況、前作「CHANGE」でも同様でした。

今作「Nights Cold」は仮にダウンロードが躍進しても、次週のビルボードジャパンソングスチャートにおいてYOASOBI「夜に駆ける」や瑛人「香水」等のポイントを上回るかは微妙と言えそうです。これが仮に、ダウンロードがiTunes Store等でも可能だったならば状況は変わったかもしれません。それでも実施に至らずデジタル環境がさほど変わらない状況(リリックビデオが公開されたものの短尺であることも含む)は、個人的には至極勿体ないと感じています。

 

さて昨日飛び込んできた下記のニュースに、山下智久さんの件も、ここ最近自分が疑問を抱いていた件も解明できたように思う自分がいます。そのニュースとは、SixTONESスペシャル番組がJ-WAVEでOAされること。

OA日は祝日である23日木曜。前日にはセカンドシングル「NAVIGATOR」がリリースされ、新曲のタイトルが番組名(『J-WAVE SPECIAL MUSIC NAVIGATOR』)にも含まれています。J-WAVEではDJをナビゲーターと呼んでいるのですが、この特番タイトルはJ-WAVEナビゲーター集合番組と誤解されてもおかしくないと思うのは自分だけでしょうか。

この特番の存在を知り、自分の中で疑問が晴れたと感じています。ひとつは6月以降のジャニーズ事務所所属歌手のビルボードジャパンソングスチャートにおける、ラジオエアプレイ指標の好調さ。シングルCDセールス加算初週におけるラジオエアプレイ指標の順位はKing & Prince「Mazy Night」が19位、KinKi Kids「KANZAI BOYA」が22位、ジャニーズWEST「証拠」が21位、Hey! Say! JUMP「Last Mermaid...」は19位。Hey! Say! JUMP以外は前作もラジオエアプレイは好調でしたが、一方で関ジャニ∞「友よ」が37位、Kis-My-Ft2「Edge of Days」が83位、Sexy Zone麒麟の子」が85位等、昨年終盤にリリースした作品はラジオエアプレイが好調とは言えず、今年に入ってこのラジオエアプレイが好調に推移し出したと捉えています。これらは下記CHART insightで確認可能です。

ビルボードジャパンソングスチャートのラジオエアプレイ指標は32の放送局からOA数を割り出します。そもそも日本のラジオ局自体が少ないこともありますが、米ビルボードソングスチャートがおよそ1000局を調査するのとは対照的です。局数が多くないと、レコード会社等がラジオ局に対しプロモートしやすくなり、その成果が反映されやすいように思うのです。プロモートについてはサカナクション山口一郎さんのラジオ番組『サカナLOCKS!』の文字起こしをご参照ください。

尤も、プロモートされた曲がOAに至るかは各番組のスタッフの判断次第ですが、局としてヘビーローテションを用意するところもあります。ヘビーローテションを多く輩出するオフィスオーガスタ等の芸能事務所(音楽制作プロダクション)はラジオへのプロモートが強いと感じているのですが、ジャニーズ事務所は今年に入りそのプロモートに力を入れはじめたのではないかと思うのです。それが今回の20位前後というコンスタントなラジオエアプレイの成績につながっているのではないか、そしてプロモートの成果がJ-WAVEでのSixTONESの特番OAにつながったものと考えます。

 

現在では短尺ながらミュージックビデオも解禁されつつあり、また嵐やENDRECHERIはほとんどの曲をiTunes Store等ダウンロードサービスやSpotify等サブスクサービスにて配信していますが、ジャニーズ事務所所属歌手は未だにその多くがデジタルに明るくありません。ゆえに彼らがビルボードジャパンソングスチャートにて稼げる指標はシングルCDセールスやルックアップ、Twitterそしてラジオエアプレイの4指標。ラジオエアプレイの強化(の可能性)はすなわち、既に稼ぐことのできる部分で如何にポイントを増幅できるかという考えに基づくものであり、他方でダウンロードやサブスクさらにフルバージョンでのミュージックビデオ解禁といったこれまで行ってこなかったに着手するという姿勢は残念ながら見えにくいと感じています。この姿勢が、山下智久「Nights Cold」の日本でのデジタル施策の不十分さにも表れたのではないでしょうか。

 

 

ジャニーズ事務所所属歌手がデジタルを解禁することで生まれるのはメリットばかりではないでしょうか。CDが売れなくなる懸念を抱いているのかもしれませんがコアなファンはきちんと購入するはずです。さらにCD表題曲が事前に解禁されればそちらも買うでしょう。その上でサブスクやミュージックビデオフルバージョンでの解禁はライト層の取り込みにもつながり、ライト層からコアなファンに昇華する方も出てくるものと考えます。これらのメリットの可能性は以前から記載していることで、日本のエンタテインメントを世界に轟かすためにも解禁を前向きに検討してほしいと切に願います。

米津玄師「感電」が首位に肉薄、瑛人「香水」がカラオケ急上昇…ハイレベルな戦いとなった7月20日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

7月6~12日を集計期間とする7月20日ビルボードジャパンソングスチャートは、TWICE「Fanfare」が前週から11ランクアップし首位の座に就きました。2位までが2万ポイント、6位までが1万ポイントを超えるというハイレベルな週となりました。

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一方で「Fanfare」の動向については不安な点も。シングルCDセールスは首位を獲得しながらも、昨年7月に2週連続でリリースされた「HAPPY HAPPY」「Breakthrough」に比べて初週セールスが8~10万ダウンしているほか、パソコンにCDを取り込んだ際にインターネットデータベースにアクセスする数を示すルックアップでは3位となり、セールスと乖離。週間セールスで44倍の差を付けながら、King & Prince「Mazy Night」(総合45位)に同指標の首位の座を譲っているのです。ルックアップはレンタルの動向を示す指標でもあり、また実際の購入者数(ユニークユーザー数)が推測できるもの。ドラマ主題歌がレンタルに長けているという特性もありますが、「Fanfare」はコアなファンに支えられており、一方でライト層への訴求はもう少し必要かもしれません。

注目は次週。シングルCDセールス加算2週目となる「Fanfare」がどの位置になるかが気になります。先月に韓国語曲の「MORE & MORE」がシングルCD未リリースながら3位につけたときと、今回の日本オリジナル曲の動向は大きく異なります。【所有<接触】な韓国語曲に対し、「Fanfare」が【所有>接触】という日本オリジナル曲の動向をなぞってしまうのか、チェックしていきたいと思います。

 

2位には米津玄師「感電」が初登場。

集計期間初日にダウンロードを解禁すると、主題歌に起用されたドラマ『MIU404』(TBS 金曜22時)の第3回放送直後にミュージックビデオを解禁。ビデオは公開から4日と7分でYouTubeでの再生回数が1000万を突破しています。

このミュージックビデオ公開タイミングは、チャートを追いかける身には嬉しい誤算でした。

今週のソングスチャートにおけるミュージックビデオの集計期間は2日と1時間という短期間ながら、5565360回再生され動画再生指標5位に。またミュージックビデオ解禁に合わせた話題づくりの巧さ、さらに『MIU404』放送回の終盤の衝撃も相俟って「感電」への注目度が高まったこともあり、Twitter指標では「Fanfare」を破ってトップに立ちました。

ミュージックビデオの公開はダウンロードへも効果をもたらしています。ダウンロードデータが残っていない「Lemon」は比較不可のため『ノーサイド・ゲーム』主題歌だった「馬と鹿」の初週動向と比べてみると、「馬と鹿」は初動3日間123132→週間172594ダウンロードに対し「感電」は初動3日間88955→週間158572ダウンロードと倍近い伸びに。ドラマ放送日の違いもありますが、ミュージックビデオ効果も間違いなく波及しているはずです。

惜しむらくは米津玄師さんが未だサブスクを解禁していないために、接触指標が動画再生のみの状況でどれだけ勢いをキープできるかということ(ラジオエアプレイも接触指標ではありますが、ユーザー(リスナー)に基本的な選曲権がないため受動的な接触指標となり、能動的なそれにあたるストリーミングや動画再生とは異なります)。次週は動画再生が1週間フルで加算されるため、2万ポイント超えを果たした今週からどこまでとどまることができるのかが気になります。

 

総合ポイントでは共に前週割れとなったYOASOBI「夜に駆ける」および瑛人「香水」ですが、この2曲ともカラオケ指標がトップ5入り。特に「香水」の勢いが凄まじいのです。

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カラオケ指標の集計対象となるDAMおよびJOYSOUNDで集計期間直前に解禁されたことで、今週は初めて1週間フルで加算。前週は100位圏外(300位以内)でしたが今週は2位となり、一気に上昇した形です。今後、コロナ禍の影響で戻りつつあったカラオケユーザーがまた離れかねず同指標が失速する可能性もありますが(最悪の場合は再び集計取り止めも)、しかしながらTikTokYouTubeで歌ってみた動画がバズを起こし総合チャートにも波及した曲がカラオケでも人気に至ることがこの「香水」で証明されたように思います。

 

となると、同様の流れで上昇中の他の曲にも、カラオケでの素早い解禁が求められるものと感じています。

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Tani Yuuki「Myra」はTikTokで火が付き、ストリーミングに波及したことで前週41位に初登場を果たすと、今週は14位まで上昇。サブスクサービスの中で最も流行に敏感と思しきLINE MUSICでは「Myra」が週間チャートを制し、サブスク再生回数を基とするストリーミング指標では5位に到達しています。

瑛人「香水」がはじめてビルボードジャパンソングスチャートでトップ10入りを果たしたタイミングで下記エントリーを記載しました。これはDAMおよびJOYSOUNDで今日現在解禁されていないTani Yuuki「Myra」をはじめ、インディペンデントで活動する多くの歌手にとって、大ヒットのフェーズへ入るために必要なことだと思うのです。

「香水」がカラオケチャートを急上昇したことで同種のヒットの形をなぞる曲のカラオケ需要の高さが証明されたと感じるゆえ、今後これらヒット曲の早急なカラオケ解禁が必要だと感じています。ラジオでの積極的なOAも同様。地上波のテレビ番組で取り上げられれば、未解禁のカラオケやOA数の少ないラジオに対して流行を捉えていないのではとの厳しい目が注がれるかもしれず、ゆえに先回りして自発的な解禁を行うことが必要ではないでしょうか。

ちなみに「Myra」についてはまだ正式なミュージックビデオがない模様。コロナ禍で制作が大変かもしれませんが、動画再生指標が未だ100位未満(300位圏内)という状況を踏まえれば、制作に挑戦してもよいかもしれません。

 

 

次週、シングルCDセールスは山下智久「Nights Cold」が10万枚近いセールスを獲得するものと思われます。前作「CHANGE」がシングルCDセールス加算初週に11809ポイントを獲得して首位の座に就きましたが、「Nights Cold」は「夜に駆ける」「香水」そして「感電」を超えることはできるでしょうか。同曲のリリックビデオが解禁となりましたがフルバージョンではないため、動画再生指標にどれだけ加算されるかは未知数です。

そして、主題歌に起用された映画『コンフィデンスマンJP プリンセス編』の今月23日の公開を控え、今週12位に初登場を果たしたOfficial髭男dism「Laughter」の動向にも注目。ミュージックビデオのティーザーが解禁されましたが、このフルバージョンでの公開如何ではCDリリースを待たずにトップ10入りする可能性もあります。なお「Laughter」の上昇に伴い、今週ソングスチャートで50位以内に入ったOfficial髭男dismの曲は全て、ポイントが前週を上回っています。