毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。
7月13~19日を集計期間とする7月27日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)は、YOASOBI「夜に駆ける」が6週ぶりに首位に返り咲きました。
【ビルボード】YOASOBI 「夜に駆ける」総合首位V4達成 ヒゲダン「Laughter」総合10位にジワリ浮上 https://t.co/D49MXcykio pic.twitter.com/ohMxV0sfuI
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2020年7月22日
シングルCDセールスを制した山下智久「Nights Cold」は5位。前作「CHANGE」からCDセールスはダウンしたものの、7万枚以上を売り上げた同曲が総合で上位に進出できなかったのは、その上位陣が厚いことも理由に挙げられます(一方でCDセールス初週におけるダウンロードが19217→4791と大きく落ち込んでいるのは気になります)。今週は3位の瑛人「香水」までが1万ポイントを突破、そしてその上位陣からは今のソングスチャートにおける【所有<接触指標】の重要性が示されています。
今週のビルボードジャパンソングスチャート、4位までがシングルCD未リリース作品ということは特筆すべきだと思います https://t.co/tsWAQqM7cW
— Kei (@Kei_radio) 2020年7月22日
今年度の首位獲得曲一覧は上記に。シングルCD未リリース曲は今週のCD順位およびルックアップ欄をグレーで表示(2月17日付におけるOfficial髭男dism「I LOVE...」はシングルCDセールス加算前)。上位曲の特徴については以前noteに記載しています。
「夜に駆ける」が首位に復帰するまでの間にその座に就いていた曲は全てシングルCDセールスが1位となり、同指標を首位獲得の原動力にしているのですが、首位獲得の翌週には半数以上が大幅ダウンを喫し、今週においてはKing & Prince「Mazy Night」およびTWICE「Fanfare」を除き100位から姿を消してしまいました。今週は集計期間中に『音楽の日』(TBS 7月18日放送)が放送され、「Fanfare」以外は披露されているにもかかわらず、なのです。テレビパフォーマンスはTwitter指標の上昇につながることは勿論のこと、サブスクの再生回数に基づくストリーミングやYouTube等の再生回数に基づく動画再生といった接触指標群が伸びる傾向にあるのですが、デジタル未解禁もしくは動画がショートバージョンであればテレビ効果に期待することは難しいと言えます。
さて、上記表でも記載されていますが、前週首位を獲得したTWICE「Fanfare」はトップ10をキープするも7位にダウンしました。
日本オリジナル曲のシングルCDリリースは1年ぶり。昨夏2週連続でリリースしたシングルのCDセールス加算2週目におけるポイント前週比は「HAPPY HAPPY」が24.2%、「Breakthrough」が23.7%。一方「Fanfare」は32.2%となり、幾分改善されていることが解ります。その一方で、「Fanfare」と同じく先月初のHot 100入りを果たした韓国語曲の「MORE & MORE」をみると。
同名EPがアルバムチャートに初登場した6月15日付で3位にランクインした「MORE & MORE」は、翌週のポイント前週比が77.9%。以降は1週を除きポイントが前週割れを起こすものの8割を下回ることはありません。「MORE & MORE」の緩やかな下降を踏まれるに、ともすれば今後数週のうちに「Fanfare」と「MORE & MORE」が逆転する可能性は十分に有り得そうです。
TWICEのみならず、K-Popアクトの日本オリジナル曲と韓国語曲とではチャートアクションが大きく異なることは以前から弊ブログで述べてきました。前者はシングルCDセールスおよびルックアップが加算されることで瞬発力に長けている一方、持続力は後者が勝っています。以前、日本オリジナル曲の持つ歌謡曲的なメロディの落とし込み等が格好悪いという指摘をいただいたことがあるのですが、K-Popに慣れ親しんだ方からすれば曲を日本仕様にすることへの違和感が、このチャートアクションに表れているのかもしれません。
となれば、気になるのはTWICEの妹分として、オーディションを経てプレデビューしたNiziUの動向。
2週前にストリーミング指標で新記録を樹立したミニアルバムの表題曲は登場3週目にして4位と高位置をキープ。シングルCD未リリースながらポイント前週比は57.9→85.2%と推移しています。この数字を踏まえれば、「Make you happy」が日本オリジナル曲と韓国語曲どちらのチャートアクション(ポイント前週比)を辿るかは断言できませんが、しかし順調に推移しつつあるだろうというのが私見です。
オーディションで審査を担当したパク・ジニョン自身がペンを執ったNiziU「Make you happy」のヒットは、そのオーディションの注目度の高さにあるということは以前記載しました。
しかしながら人気の理由は、【K-Popアクトの韓国語曲の要素が強い】ことにもあるでしょう。「Make you happy」はストリーミングおよび動画再生指標で共に3週続けて3位以内に入り、当初は所有指標の高さも貢献していましたが徐々に、TWICE等の韓国語曲同様に【所有<接触指標】というチャートアクションを辿るようになっています。
このNiziUの動向から読み取れるものとは何でしょう。あくまで私見と強く前置きして書くならば、K-PopアクトはJ-Pop要素の強い日本オリジナル曲を出す必要性が低いのではないかと思うのです。レコード会社等が利益を得るべくシングルCDを用意することは理解できますが、ならば韓国語曲の日本語バージョンをシングルCD表題曲に据えたり、韓国でリリースされているアルバムを国内盤として用意するのもひとつの手段ではないでしょうか。J-Pop的なアプローチで生まれた曲が日本でヒットするという概念は、チャートアクションを見る限り成り立たなくなっているものと考えています。