イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

SixTONES「Imitation Rain」およびSnow Man「D.D.」は真の社会的ヒット曲になれるのか? 2月10日付ビルボードジャパンソングスチャートから考える

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。

1月27~2月2日を集計期間とする2月10日付ビルボードジャパンソングスチャート、STU48「無謀な夢は覚めることがない」がシングルCDセールスを武器に首位を獲得しました。

初週のシングルCDセールスは自己最高を更新したものの、『他指標ではラジオ15位、ルックアップ11位、Twitter 16位と今少しの結果となり、コア・ファンから一般層への訴求には時間がまだまだかかりそうだ』(上記記事より)とあります。この点は2つの意味で問題です。

STU48は前作「大好きな人」が昨年8月12日付で首位を獲得しながら翌週には100位以内に残ることが出来ませんでした。今作はさすがにそこまでとはならないかもしれませんが、シングルCDセールスのみに突出した曲はライト層への浸透が出来ていないという点において”真に社会的ヒット曲に至ったとは言えない”ことは、これまでのブログエントリーからも明らか。次週の状況に注目しましょう。

 

さて前週は、SixTONES「Imitation Rain」とSnow Man「D.D.」が共に4万ポイントを超えるというハイレベルな戦いとなりましたが、今週は「D.D.」が「Imitation Rain」を逆転しています。CHART insightで総合1~5位、および曲毎にみてみると。

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『当週では「D.D.」がCDセールスで7,351枚差、動画再生でも359,984回差で「Imitation Rain」を上回った。「Imitation Rain」はラジオ、ルックアップ、Twitter、カラオケで「D.D.」を上回ったが、その差を逆転するまでには至らなかった』(上記記事より)とありますが、2曲のチャート構成比をみれば指標毎の割合はほぼ同じであり、毎週2曲が競い合いながら下降していくものと予想します。この2曲の、特にポイント前週比をみて真っ先に浮かんだのは、2組の先輩として2018年にデビューしたKing & Princeによる「シンデレラガール」でした。

「Imitation Rain」「D.D.」を「シンデレラガール」と比較すると。

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ツイートで”単純比較は出来ません”と書いたのは、2018年度にはカラオケ指標がなかったこと、「シンデレラガール」のミュージックビデオがフルバージョンではなく1分のティーザーであることが理由。Twitter指標においては今週も2組による6曲が4週連続で上位6位までを独占しており、ビルボードジャパンにおけるファンの積極的なTwitter活動が垣間見えますが、言い換えれば「シンデレラガール」の頃はそこまで積極的ではなかったと捉えることも可能(このファンによる動きは、三浦大知「Blizzard」以降目立ってきたという印象があります)。「シンデレラガール」のカラオケの火の付き方がどうだったかは分かりかねますが、今挙げた指標群を除けばこの3曲(3組)のデビュー曲の動向は酷似しています。なお、「シンデレラガール」の2019年度のカラオケ動向については先週触れています(→こちら)。

 

「シンデレラガール」が2018年度にビルボードジャパン年間ソングスチャートで12位を記録したことを考えれば「Imitation Rain」および「D.D.」が今年の年間ソングスチャートで上位に入ってくるとは思うのですが、シングルCDセールスの前週比が気掛かりなのです。「シンデレラガール」と今回の2曲では6%という壁が存在。これは2組が競い合うことで初週セールスに売上が集中したことの反動もあるでしょうが、「シンデレラガール」がドラマ主題歌であったためライト層への浸透度がより高く、シングルCDセールスに繋がったとも言えます。ジャニーズ事務所所属歌手は嵐以外サブスクリプションサービスで解禁されておらず、ゆえにライト層への浸透状況はシングルCDセールスやルックアップ(CDレンタルの動きが垣間見えます)に表れます。

ライト層への浸透の重要性は昨年の年間ソングスチャート(→こちら)を見れば明らかで、同年の年間シングルCDセールスチャート(→こちら)の上位10曲における総合ソングスチャートの最高位は欅坂46「黒い羊」の14位。総合ソングスチャートトップ10のうちシングルCD未発売(ゆえにシングルCDセールスおよびルックアップの2指標を獲得出来ない)が2曲あることを踏まえれば、ストリーミングや動画再生といった接触指標群がシングルCDセールスより重要な意味を持つことがよく解ります。そして総合ソングスチャートトップ10のうちドラマもしくは映画タイアップが6曲、『みんなのうた』(NHK総合ほか)に用いられたFoorin「パプリカ」を含めれば7曲という多さを考えると、主題歌というタイアップがライト層拡大に大きく貢献することもみえてきます。その意味では、「Imitation Rain」および「D.D.」が「シンデレラガール」並みに伸びていくのかは難しいのではというのが私見です。 

「シンデレラガール」が行っていなかった1分を超えるミュージックビデオの用意という武器はあれどフルバージョンではないため動画再生指標が大ヒットしているとは断定出来ず、ダウンロードおよびサブスクリプションサービスで未解禁の状況が続くならばライト層への浸透は高くないでしょう。ファンによるTwitter活動(ルックアップ上昇のための活動も行われていると聞きます)は押し上げ効果にはなれど、それが目立ちすぎればビルボードジャパンがウェイト減少を考えるかもしれません(個人的には、以前よりTwitter指標のウェイトは下げてもよいのではと以前から提案しています)。ならば、カラオケ指標の上昇も必要です(し現に上昇しているのは素晴らしいことです)が、ファンは彼らの所属事務所であるジャニーズ事務所に対し、ライト層の拡大のためのデジタルの充実を求めるのが最善ではないでしょうか。セルCDの実施店舗が減少し、またYUKIさんが今日全曲を、明日には嵐がアルバム全曲をサブスクリプションサービスにて解禁することで同サービスの関心がどんどん高まっていることを考えれば、ライト層の行動はCD所有からデジタルに移行していくのは確実。

勿論CD購入も選択肢のひとつですが、沼に招くにはその接点を増やさないといけないと思うのです。「そうは言っても声は届かない」という反論もあるかもしれませんが、見ている関係者は絶対にいるということは自分の経験談から断言します。

NakamuraEmi、そして彼女に影響を与えたRHYMESTERから感じる”音楽の力”、そしてその言葉へ嫌悪感を表明する者への私見

1月の私的ベストに挙げた、NakamuraEmi「東京タワー」。この曲を収録したベストアルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST 2』が今日リリースされました。

私的ベストは下記に。

メジャーデビューして以降彼女の動向を追いかけてきた身には、曲が発表されるたびに心を掴まれてきましたが、今回の「東京タワー」は聴く度に落涙必至なんですよね。素晴らしいです。

そのNakamuraEmiさん、自身の音楽活動に強い影響をもたらしたのがヒップホップ、そしてRHYMESTER

28、9歳の頃に初めてヒップホップを聴きました。RHYMESTERさんを聴いた時に、人生のこと、家族のこと、世界のこと、平和のこととか、こんなこと歌ってたんだ!って驚いたんです。いままで、恋愛の曲で人を感動させたいと思って歌っていたのが恥ずかしくなって、完全に人生観が変わりました。

NakamuraEmiの歌に息づく人生―ヒップホップから得たリアリズムが特別なドラマ生み出した新アルバムを語る | Mikiki(2017年3月9日付)より

RHYMESTER宇多丸さんがパーソナリティを務める『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ 月曜19時)のライブコーナーに今週月曜出演し、「東京タワー」を含むベストアルバム収録の新曲3曲を披露していました。これも胸に来るものがありました。

(※radikoタイムフリーは2月10日29時まで聴取可能。首都圏エリア以外の方は有料サービスに加入の上でチェック出来ます。)

NakamuraEmiさんが今回のベストアルバムのために用意した新曲のひとつが「ふふ」。この曲は児童虐待問題をテーマに書き下ろされたものだそう。そしてこの曲の制作に大きな影響を与えたのがRHYMESTER「Hands」だとラジオで話し、一足先にアルバムを聴いていた宇多丸さんが恐縮しきりだったのが印象的でした。

「N」ではパラアスリートの中西麻耶さんを応援し、大人でもなければ子どもでもない者としてのメッセージを「大人の言うことを聞け」で示し、等身大の人間の心の脆さを「東京タワー」に込め、今ある切実な問題を受け止めて「ふふ」にしたためる…NakamuraEmi さんが『人生のこと、家族のこと、世界のこと、平和のこととか』を込めた歌に、大なり小なり彼女から力を受け取る方は少なくないでしょう(『』内は上記Mikikiの記事より)。自分がそうですし、何よりその力の存在をNakamuraEmiさんも信じているはず。そして彼女が一筋の光明を、希望を音楽に込める理由は、RHYMESTERという先達の存在ゆえでしょう。アルバム『POP LIFE』(2011)に収められた「Hands」は、宇多丸さんさんがパートナーを務めた『小島慶子 キラ☆キラ』(2009-2012 TBSラジオ)がきっかけのひとつになったと記憶しています(「Hands」のこと - rhymester blog|starplayers(2011年2月24日付)参照)。

そういえば「東京タワー」を初めて聴いた後、東京タワーが出てくる曲でプレイリストを作ろうと思ったのですが、真っ先に浮かんだのがアルバム『POP LIFE』のタイトルトラックでした。ここにもNakamuraEmiさんとRHYMESTERのつながりを感じます。

この『POP LIFE』リリースから間もなく、3月11日に未曾有の災害が発生してしまいます。絶望に苛まれる中、実質的にアルバムの冒頭を飾る「そしてまた歌い出す」が翌日のラジオ番組でかかったことは、間違いなく希望になりました。

2016年に発生した熊本地震の際にも、宇多丸さんは直後のラジオ番組で「そしてまた歌い出す」をベースにしたDJ HAZIME feat. RHYMESTER, PUSHIM「そして誰もが歌い出す」をOAしています。RHYMESTER等が曲に希望を込め、音楽の力を信じているからこそ、復興を願う思いを曲に乗せて伝えたかったはずです。

 

この”音楽の力”について、坂本龍一さんの発言が今週Twitterにて話題になりました。

自分はソウル・フラワー・ユニオンの意見にかなり共感します。

受け手として書くならば、音楽の力が存在するかはその人の考え方次第でしょう。受け手にせよ発し手にせよ、どう考えるのはその人の自由ですが、しかし音楽の力がないと思う派の人間が、音楽の力があることに嫌悪感を露呈し、それを伝える者が誇大に記載し、同調する支持者がこぞって持ち上げるのは違和感を覚えます。

メディア等が過剰に演出して強制的に音楽の力がとか絆がなどと言うことへの違和感はありますが、個人的には音楽の力があると考えています。しかしその考えが、個人的嫌悪感を社会的な正義とすり替えた者によるスクラムに圧迫されそうな気がしてなりません。音楽は発し手受け手共に自由であり、発し手が社会的テーマを用いることも自由であってほしいと思いますし、それが受け手の力になれたのならば好いことではないでしょうか。個人的嫌悪感を持つのは自由でも、それを武器にして誰かの受け取る力を削いだり否定するやり方は全くもって歓迎出来るものではありません。

ロディ・リッチ4連覇、ビリー・アイリッシュがグラミー賞効果で返り咲き…2月8日付米ソングスチャートをチェック

ビルボードのソングスチャートをチェック。現地時間の2月3日月曜に発表された、2月8日付最新ソングスチャート。ロディ・リッチ「The Box」が4連覇を達成、またグラミー賞主要4部門を制覇したビリー・アイリッシュ「Everything I Wanted」がトップ10に返り咲き、さらに前年のグラミー賞最優秀新人賞の覇者、デュア・リパによる「Don't Start Now」が新たにトップ10入りを果たしました。

ミュージックビデオが未発表ながらストリーミングの強い「The Box」は、前週比11%ダウンしながらも6700万を獲得し同指標5週目の首位をキープ。ダウンロードは同14%ダウンの11000(同16位)となった一方、ラジオエアプレイは同38%アップの3520万を獲得し同指標25位に上昇。アルバム『Please Excuse Me For Being Antisocial』も最新米ビルボードアルバムチャートで通算3週目となる首位を獲得しています。

ポスト・マローン「Circles」(今週3位)に変わってラジオエアプレイを制したのはマルーン5「Memories」。前週比4%アップの1億260万をマークし、この指標で7曲目となる首位を獲得しました。ラジオエアプレイ指標が1990年にローンチされて以降、マルーン5の首位獲得曲数は歴代4位タイ。リアーナの13曲、マライア・キャリーの11曲、ブルーノ・マーズの8曲に続き、ケイティ・ペリーおよびアッシャーと並びました。

デュア・リパ「Don't Start Now」が6ランクアップの9位に入り、新たにトップ10入り。ラジオエアプレイは前週比12%アップの6760万(同指標7位)、ストリーミングは同6%アップの1430万(同23位)、ダウンロードは同12%アップの11000(同15位)と全指標が上昇。彼女にとってのトップ10入りは「New Rules」が2年前の2月に6位を獲得して以来2曲目。昨年のグラミー賞、最優秀新人賞の覇者でもあります。

そのグラミー賞、今年は現地時間の1月26日日曜に開催。2月8日付米ビルボードソングスチャートの集計期間はストリーミングおよびダウンロードが1月24日金曜から、ラジオエアプレイが1月27日月曜からの1週間となり、今週のチャートはグラミー賞効果も反映。主要4部門を史上2組目、クリストファー・クロス以来39年ぶりに制覇したビリー・アイリッシュは、昨日発表されたアルバムチャートで『When We All Fall Asleep, Where Do We Go?』が7ランクアップの3位に入り、ユニット数も前週比77%上昇しています。そしてその勢いはソングスチャートにも反映。

アルバム以降初の新曲となる「Everything I Wanted」が前週の23位から10位に入り、昨年11月30日付で8位を獲得して以来のトップ10返り咲き。1月23日にビリー自身が監督したミュージックビデオが公開されたこと、そして先述したグラミー賞効果で全指標が急伸し、ストリーミングは前週比48%アップの2130万(同指標6位)、ダウンロードは同105%アップの15000(同10位)、ラジオエアプレイは同17%アップの3560万(同24位)となっています。またこの勢いは他の曲にも波及し、「Bad Guy」は前週の41位から17位に再浮上。ダウンロードは前週比185%アップの20000(同指標3位)、ストリーミングは同50%アップの1630万(同18位)を獲得しています。

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (1位) ロディ・リッチ「The Box」

2位 (2位) フューチャー feat. ドレイク「Life Is Good」

3位 (4位) ポスト・マローン「Circles」

4位 (5位) マルーン5「Memories」

5位 (8位) ルイス・キャパルディ「Someone You Loved」

6位 (6位) ダン+シェイ&ジャスティン・ビーバー「10,000 Hours」

7位 (7位) トーンズ・アンド・アイ「Dance Monkey」

8位 (9位) アリゾナ・ザーヴァス「Roxanne」

9位 (15位) デュア・リパ「Don't Start Now」

10位 (23位) ビリー・アイリッシュ「Everything I Wanted」

そういえば今年のグラミー賞効果は「Someone You Loved」にも表れていますね。尤もこの曲はルイス・キャパルディが当日パフォーマンスしたのではなく、司会を務めたアリシア・キーズがこの曲を用いてグラミー賞出席者の名前を取り込んだ替え歌を披露した形ですが、アリシアの機転の利き方も相俟ってチャートを上昇したのではないかと推測します。

2020年1月の私的トップ10ソングス、選出しました

音楽聴取の環境変化を機に、新しい音楽に触れる楽しさを再認識しています。そこで出来る限り毎月、その月によく聴いたりハマった曲を10曲取り上げることにします。その前の月にリリースされているものを主に、しかしその縛りは出来る限り緩くしようと思います。

 

10位 アリシア・キーズ「Underdog」

J-WAVEチャート(『TOKIO HOT 100』(日曜13時))でトップ3入りを果たしたアリシアのミディアムチューン。ヒップホップにも通じるビートだと思ったらソングライターにはエド・シーランの名があり、なるほど「Shape Of You」の流れだと思いつつ、このキャッチーさと背中を押すメッセージには逆らえません。先月開催されたグラミー賞の司会も見事で、3月のアルバムが楽しみです。

 

9位 w-inds.「DoU」

曲のジャンルが多岐に渡れどサビのクールダウンで一気に締まる印象、そして米国の演出手法を踏襲したミュージックビデオが、w-inds.の音楽性の豊かさや醸し出す雰囲気の大人っぽさを示しています。今回も橘慶太さんによる作品で、もはや彼の作品に間違いはないのだと実感。

 

8位 dvsn「A Muse

ズルいですこれは。ジェイ・Zも「Dead Presidents」(1996)で用いたロニー・リストン・スミス「A Garden Of Place」をサンプリングし、ビートを織り交ぜた後にゆっくり深層に向かうかのようなメロディではじまる…これだけで降参してしまいました。美しすぎます。

 

7位 H ZETTRIO「レソラ」

元は昨年11月にリリースされた曲が、元日にリリースされたアルバム『RE-SO-LA』に収録されたことでSpotifyJ-WAVEで注目され、それらを機に遅ればせながら知った次第。美しさと軽快さ、時折入るシンセの効果でちょっと80年代感を醸し出すように感じられるのも◎。先のdvsn同様、80年代を意識した音は今年も流行しそうです。

 

6位 Rina Sawayama「Comme des Garçons (Like The Boys)」

遂にこの春リリースされるファーストフルアルバム『Sawayama』からの先行曲は、強さと靭やかさを湛え一切の隙がないアップ。『情熱大陸』(毎日放送/TBS 日曜23時)で昨年遅ればせながら彼女の存在を意識したのですが、イギリスから世界にその名を轟かせるのに「Comme des Garçons (Like The Boys)」は間違いなく名刺代わりとなることでしょう。

 

5位 Official髭男dism「I LOVE...」

アルバム『Traveler』から間を空けずにドラマ主題歌提供…どこにそのストックがあるのかと不安になりましたが、心配は杞憂でした。変則的な構成、ゴスペル的ハンドクラップの導入など随所に彼ららしさを織り交ぜ、それでいて難解さは感じさせません。サブスクは長尺は望まれないと言われる中、4分42秒の「I LOVE...」は現在ヒット中。5分強の「Pretender」の大ヒットにより、流行に即するのではなくただただ好い曲を作るという姿勢が徹底されているように思います。

 

4位 香取慎吾 feat. WONK「Metropolis」

ブギーテイストな音像に香取慎吾さんの声がこんなに合うとは!といい意味で驚かされた元日発売のアルバム『20200101』収録曲。新鋭からベテランまで招き彼らの個性を大切にしながら、しかしアルバムを通して聴くと紛うことなき香取さんの作品に仕上がっています。様々なアレンジをこなす歌声の器用さが、曲の世界観をよりふくよかにさせるのだと実感。J-WAVEチャートでトップ10入りしたのも納得です。

 

3位 アッシャー feat. エラ・メイ「Don't Waste My Time」

グラミー賞におけるプリンストリビュート、およびこの曲でもって”アッシャー復活!”と言い切ってよいでしょう。16年前に大ヒットした『Confessions』の続編たるアルバムを制作中とのことですが、そこでも参加したジャーメイン・デュプリ&ブライアン・マイケル・コックスが手掛けたこの曲は当時の薫りを思い出させ、それでいて古くない絶妙な仕上がりに。

 

2位 BTS「Black Swan」

リル・ナズ・X「Old Town Road」にビリー・レイ・サイラス等と共に客演参加しグラミー賞でパフォーマンスした姿にK-Popの凄さをあらためて思い知ったのですが、その前にリリースされたアルバムからの先行曲がこちら。華麗でありながら不穏な空気も湛え、危ういバランスを完璧に保つ姿は見事。

 

1位 NakamuraEmi「東京タワー」

はじめて聴いたのは地元のラジオ番組でしたが、平日昼の番組から流れてくるこの曲に心の中で号泣。フルOA後にラジオDJ陣が一瞬沈黙したのはこの曲に自分同様心をえぐられたからではないかと。サビのビブラートしながら音階が落ちていく歌唱法、2番のサビに至るまでのヒップホップ的アプローチ、さらには"40歳近くにもなって…"のくだりが本当に刺さります。ライブ、絶対に行きます。

 

今月も素晴らしい音楽に出会えることを願っています。

『関ジャム 完全燃SHOW』”売れっ子プロデューサーが選ぶ年間ベスト10”企画で選ばれた歌手が”売れた”状況になるために必要なこと

先月放送された『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日 日曜23時10分)のこの企画。

楽家3名が選んだランキングは下記に。選者のコメントも記載されています。

 

昨年にも同様の企画が放送され、複数名に取り上げられた中村佳穂さん等にはチャート上でOA効果がみられました。

2019年版ベストで複数名に選ばれたのはOfficial髭男dism、RADWIMPS、miletさんおよび長谷川白紙さんの4名。特に長谷川白紙さんについては、複数名の選出と判った瞬間にMCの村上信五さんが”売れた”と言っていたのが印象的だったのですが、ではチャート上にその影響は表れたのでしょうか。

放送中に日付が変わり、そこからの1週間が集計期間となる2月3日付ビルボードジャパンソングスチャートでは、2名が選出した「あなただけ」を含む長谷川白紙さんのアルバム『エアにに』は総合アルバムチャート100位以内にはランクインせず(同日付アルバムチャートはこちら)、CDセールスチャート(→こちら)でも100位以内には入らなかった一方、ダウンロードチャート(→こちら)では100位に登場しています。ダウンロードでいくら売れたのかは不明ですが、10位のKing Gnu『Sympa』が727ダウンロードであるため、『エアにに』の売上は数百かと思われます(また、番組放送中に当週の集計期間に突入したことを踏まえれば前週ある程度売れたのかもしれません)。2月3日付ダウンロードアルバムチャートの詳細は下記をご参照ください。

この状況を考えるに、「あなただけ」を収録した『エアにに』はセールスを主体としたビルボードジャパンアルバムチャートにおいて売れたと判断するのは難しいかもしれないと思うのですが、いかがでしょう。一方、ソングスチャートにおいては総合、ダウンロードおよびストリーミングにおいて、100位以内に「あなただけ」は入っていません。

この状況を踏まえれば、先の”売れた”発言には疑問を覚えるのです。長谷川白紙さんに対する”売れた”発言にはじめて触れた際の自分の素直な感想を引用します。 

長谷川白紙さんを選出した蔦谷好位置さんは『長谷川白紙さん・君島大空さんの他に、諭吉佳作/menさん、崎山蒼志さんなどの若い才能が集まっている。何十年に1回でるかの人がゴロゴロいる!!と絶賛』しています(『』内は上記moraの記事より)。ならば彼らについて『関ジャム 完全燃SHOW』はまとめて取り上げてはいかがでしょう。それこそが番組の責務であり、自分が望む形であり、そして厳しい物言いにはなりますが安易に”売れた”という言葉を用いた村上信五さんの責任のとり方なのではないかとすら思うのです。無論、売れたイコールセールスとは限らないですし、昨年の中村佳穂さんについては企画後に特集が組まれたわけではないのですが、是非ともまずは彼らの特集を組んでほしいと思います。

上原りさ「ベイビーシャーク」のカバー元、パーラ選手の入場BGMで人気のピンクフォン版でないとは断言出来ない?

今週頭にブログで紹介した、上原りささんによる「ベイビーシャーク」についての追記。

おかあさんといっしょ』(Eテレ 月-土曜8時)で"パント!"のおねえさんとして昨年春まで活躍していた上原りささんによる「ベイビーシャーク」は、昨年アメリカでヒットしたピンクフォン版「Baby Shark」(元々は2015年発表)ではなく、その曲をリリースした韓国の幼児向け教育コンテンツブランド、スマートスタディー社に権利侵害を訴えているジョニー・オンリー版(2011年発表)をオリジナルとする"世界初のオフィシャル日本語カヴァー"と謳っています。しかしメジャーリーグで活躍したヘラルド・パーラ選手の入場曲は上原さんがカバーしたジョニー・オンリー版ではなくピンクフォン版であり、レコード会社の説明には違和感を覚える…ということを以前記載しています。

さて、上原りささんによる「ベイビーシャーク」は今週シングルCDがリリースされ、ミュージックビデオも公開となりました。

ピンクフォン版とジョニー・オンリー版は上記ブログエントリーからチェック出来ますが、カバーにおける"Do doo…"のメロディ(のリズム)はジョニー・オンリー版ではなくピンクフォン版に近い一方、イントロにピンクフォン版のような『ジョーズ』を模した音は用いられず、またピンクフォン版の日本語バージョン(上記ブログにて紹介)とは歌詞が異なります(上原りささん版の歌詞はこちら)。他方、終盤の"こわがらなくていいよ!"の部分はジョニー・オンリー版のみにあるメロディであり、さらにソングライターのクレジットをみるとジョニー・オンリー(ジョナサン・ライト)の名が記載されています。これらを踏まえれば、上原りさ「ベイビーシャーク」はジョニー・オンリー版のカバー寄りだけれどもピンクフォン版も意識したものであり、言い方を工夫すればいいとこ取りだと言えるでしょう。ともすれば、"Do doo…"のメロディが違う"とジョニー・オンリーから指摘されるかもしれませんが、そもそも「Baby Shark」が元は童謡である以上、ある程度のアレンジは可能だという言い訳は可能なのかもしれません。

 

さて気になるのは、昨年ピンクフォン版を用いて大活躍したヘラルド・パーラ選手がこのカバーをどう思うかということ。読売ジャイアンツ入りを果たしたパーラ選手は今年も「Baby Shark」を使いたいと意気込んでいます。

もしかしたら今頃、上原りささんの所属レコード会社が売り込みをかけているのかもしれませんが、だとしたら果たしてパーラ選手はすんなり受け入れてくれるでしょうか。気になるところです。

King Gnu「白日」のストリーミングチャート連覇に待ったをかけるか? Official髭男dism、「I LOVE…」リリースを機に「Pretender」が勢いを増す

最新2月3日付ビルボードジャパンソングスチャートはSixTONESSnow Manの対決が大きく注目を集めたものと思われます。実際に弊ブログでも記載しました。

実はこの週における、King Gnu「白日」(総合4位)とOfficial髭男dism「Pretender」(同5位)の対決も興味深いものがあります。

 

前週アルバムチャートを制した『CEREMONY』の勢いはソングスチャートに波及し、前週はサブスクリプションサービスの再生回数を元にするストリーミングソングスチャートで18曲、総合ソングスチャートで13曲を送り込んだKing Gnu。今週は総合こそ3曲減りましたが、ソングスチャートの10分の1を占めるのは凄いことです。なにより、「幕間」というインタールードが総合チャートでも入っているのはサブスクリプションサービスの強さを如実に示しています。

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アルバムチャートは今週『CEREMONY』が2連覇を達成。しかしながらここに面白い現象が起きています。

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ルックアップ指標ではOfficial髭男dism『Traveler』が『CEREMONY』を追い越しました。『CEREMONY』はレンタル解禁が2月1日であり、レンタル分のルックアップ(パソコン等に取り込んだ際のインターネットデータベースへのアクセス数)が次週以降のチャートに反映されれば『CEREMONY』の再逆転もありうるでしょうが、『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)効果も相俟ってOfficial髭男dismに触れるライト層が今も多いことが解ります。そしてそこには、この曲の影響も間違いなくあると考えます。

来月12日にシングルCDとしてリリースされる「I LOVE...」はドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS 火曜22時)の主題歌として、ドラマ初回放送の翌日となる1月15日にデジタル解禁(ミュージックビデオも同日)。アルバム『Traveler』のリリースからわずか3ヶ月後、コンサートツアー真っ只中の新曲配信(しかも『CEREMONY』リリースと同日)には驚かされますが、新曲の登場はストリーミング指標で旧譜の勢いをキープもしくは上昇させるというセオリーが。そこでSpotifyデイリーチャートをみると。

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『CEREMONY』が発売された1月15日以降「白日」がトップに立っていたものの、1月26日に「Pretender」が逆転、1月29日には「Pretender」が「白日」を1万回以上引き離すことに。2月3日付ビルボードジャパンストリーミングソングスチャートでは首位の「白日」が史上初となる再生回数800万を突破しましたが(【ビルボード】King Gnu「白日」が史上初の800万回再生超えでストリーミング2連覇 Official髭男dism「I LOVE...」が4位に浮上(1/30訂正) | Daily News | Billboard JAPAN(1月29日付)参照)、今週は700万台というハイレベルでこの2曲が争い、且つ「Pretender」が再逆転する予感がします。「白日」に一時逆転を許したタイミングで下降に転じなかったのは「I LOVE...」の投入も大きいでしょう。

 

このOfficial髭男dism「I LOVE...」における、"アルバムから程なくして新曲を投入"という施策、実はKing Gnuが昨年実施した、『Sympa』→「白日」→『Sympa』収録の「The hole」ミュージックビデオ公開、という流れに通じるものがあると思うのです。

Official髭男dismにおいては、「I LOVE...」のデジタルの勢いが一旦落ち着くかもしれないタイミングでシングルCDがリリースされ、昨夏の武道館ライブも映像化されて同時発売(個人的にはライブ音源のCD化が嬉しい限り)。これら畳み掛けの施策は歌手への興味や熱の持続に繋がります。さらにドラマの視聴率が比較的好調に推移していることも「I LOVE...」の勢いに寄与し、その勢いが「Pretender」をはじめとするOfficial髭男dismの他の曲へも波及することは、King Gnuの例からも間違いありません。

 

King Gnuのアルバムリリースの勢いに負けじと結果を残すOfficial髭男dism…今年もこの2組の勢いは間違いなく続き、音楽性は異なれど良いライバル関係となっていくでしょう。