1月の私的ベストに挙げた、NakamuraEmi「東京タワー」。この曲を収録したベストアルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST 2』が今日リリースされました。
私的ベストは下記に。
メジャーデビューして以降彼女の動向を追いかけてきた身には、曲が発表されるたびに心を掴まれてきましたが、今回の「東京タワー」は聴く度に落涙必至なんですよね。素晴らしいです。
そのNakamuraEmiさん、自身の音楽活動に強い影響をもたらしたのがヒップホップ、そしてRHYMESTER。
28、9歳の頃に初めてヒップホップを聴きました。RHYMESTERさんを聴いた時に、人生のこと、家族のこと、世界のこと、平和のこととか、こんなこと歌ってたんだ!って驚いたんです。いままで、恋愛の曲で人を感動させたいと思って歌っていたのが恥ずかしくなって、完全に人生観が変わりました。
・NakamuraEmiの歌に息づく人生―ヒップホップから得たリアリズムが特別なドラマ生み出した新アルバムを語る | Mikiki(2017年3月9日付)より
RHYMESTER宇多丸さんがパーソナリティを務める『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ 月曜19時)のライブコーナーに今週月曜出演し、「東京タワー」を含むベストアルバム収録の新曲3曲を披露していました。これも胸に来るものがありました。
「NakamuraEmi」@nakamura_emi さんのスタジオLIVE!2/5に ALBUM『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST2』リリース!ツアー情報は https://t.co/K7nl3qpNtx https://t.co/cRnUUTDvFY 2/3(月)TBSラジオ「アフター6ジャンクション」L&Dをradikoタイムフリーで! #utamaru #アトロク #tbsradio #NakamuraEmi
— アフター6ジャンクション(聴くカルチャー番組) (@after6junction) 2020年2月3日
(※radikoタイムフリーは2月10日29時まで聴取可能。首都圏エリア以外の方は有料サービスに加入の上でチェック出来ます。)
NakamuraEmiさんが今回のベストアルバムのために用意した新曲のひとつが「ふふ」。この曲は児童虐待問題をテーマに書き下ろされたものだそう。そしてこの曲の制作に大きな影響を与えたのがRHYMESTER「Hands」だとラジオで話し、一足先にアルバムを聴いていた宇多丸さんが恐縮しきりだったのが印象的でした。
何度来ても緊張しちゃうけど
— NakamuraEmi (@nakamura_emi) 2020年2月3日
幸せな緊張。
私がこの音楽の世界に来れたのは
チームの皆に会えたからで
チームの皆に会える音楽になれたのは
RHYMESTERさんがいたからです。
宇多丸さんの大事なラジオからまた沢山の方に出会わせてもらい。
頑張るっきゃない!
ありがとうございました!#アトロク pic.twitter.com/xPT17Q0LNA
あと「ふふ」でリバーブを切るエフェクトも、短い時間のリハでスタッフさんが調整してくださり出来たことです。
— NakamuraEmi (@nakamura_emi) 2020年2月3日
いいライブを作ろうとしてくれるアトロクチームの皆様に感謝。
そして私が話してたRHYMESTERさんの
Handsという曲はこちらです。https://t.co/gsaJYSfQ9f
歌詞をぜひ。#アトロク pic.twitter.com/JK8ecEp4Zm
「N」ではパラアスリートの中西麻耶さんを応援し、大人でもなければ子どもでもない者としてのメッセージを「大人の言うことを聞け」で示し、等身大の人間の心の脆さを「東京タワー」に込め、今ある切実な問題を受け止めて「ふふ」にしたためる…NakamuraEmi さんが『人生のこと、家族のこと、世界のこと、平和のこととか』を込めた歌に、大なり小なり彼女から力を受け取る方は少なくないでしょう(『』内は上記Mikikiの記事より)。自分がそうですし、何よりその力の存在をNakamuraEmiさんも信じているはず。そして彼女が一筋の光明を、希望を音楽に込める理由は、RHYMESTERという先達の存在ゆえでしょう。アルバム『POP LIFE』(2011)に収められた「Hands」は、宇多丸さんさんがパートナーを務めた『小島慶子 キラ☆キラ』(2009-2012 TBSラジオ)がきっかけのひとつになったと記憶しています(「Hands」のこと - rhymester blog|starplayers(2011年2月24日付)参照)。
そういえば「東京タワー」を初めて聴いた後、東京タワーが出てくる曲でプレイリストを作ろうと思ったのですが、真っ先に浮かんだのがアルバム『POP LIFE』のタイトルトラックでした。ここにもNakamuraEmiさんとRHYMESTERのつながりを感じます。
この『POP LIFE』リリースから間もなく、3月11日に未曾有の災害が発生してしまいます。絶望に苛まれる中、実質的にアルバムの冒頭を飾る「そしてまた歌い出す」が翌日のラジオ番組でかかったことは、間違いなく希望になりました。
2016年に発生した熊本地震の際にも、宇多丸さんは直後のラジオ番組で「そしてまた歌い出す」をベースにしたDJ HAZIME feat. RHYMESTER, PUSHIM「そして誰もが歌い出す」をOAしています。RHYMESTER等が曲に希望を込め、音楽の力を信じているからこそ、復興を願う思いを曲に乗せて伝えたかったはずです。
この”音楽の力”について、坂本龍一さんの発言が今週Twitterにて話題になりました。
これ、記事タイトル(「『音楽の力』は恥ずべき言葉」)に問題があるよな。坂本龍一さんの発言自体は、よく分かる内容で、この世代のミュージシャンが昔から言いそうなことでもある。俺も共鳴するところあるし。まあ、俺が「音楽に力はあるか」と問われれば「ある」と答えるけどね。音楽に力はあるで。 https://t.co/DmuGkawVvP
— ソウル・フラワー・ユニオン (@soulflowerunion) 2020年2月3日
自分はソウル・フラワー・ユニオンの意見にかなり共感します。
受け手として書くならば、音楽の力が存在するかはその人の考え方次第でしょう。受け手にせよ発し手にせよ、どう考えるのはその人の自由ですが、しかし音楽の力がないと思う派の人間が、音楽の力があることに嫌悪感を露呈し、それを伝える者が誇大に記載し、同調する支持者がこぞって持ち上げるのは違和感を覚えます。
記事においての問題は、【坂本さんがあくまで個人的嫌悪感を堂々と吐露】し、【個人的嫌悪感を堂々と見出しに付けるメディア】があり、そして【同種の感覚を持つ者が個人的嫌悪感を社会的に正しいんだ!として堂々と乗っかる】、この“堂々”な3点だと考えます。嫌いが大手を振る動き、違和感が凄いです https://t.co/aHxp9hRe2v
— Kei / ブレストコナカ (@Kei_radio) 2020年2月3日
メディア等が過剰に演出して強制的に音楽の力がとか絆がなどと言うことへの違和感はありますが、個人的には音楽の力があると考えています。しかしその考えが、個人的嫌悪感を社会的な正義とすり替えた者によるスクラムに圧迫されそうな気がしてなりません。音楽は発し手受け手共に自由であり、発し手が社会的テーマを用いることも自由であってほしいと思いますし、それが受け手の力になれたのならば好いことではないでしょうか。個人的嫌悪感を持つのは自由でも、それを武器にして誰かの受け取る力を削いだり否定するやり方は全くもって歓迎出来るものではありません。