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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米ビルボードのGlobal 200で米津玄師「IRIS OUT」がトップ10返り咲き…その背景を読む

ビルボードによる最新11月8日付グローバルチャート(Global 200、およびGlobal 200から米の分を除くGlobal Excl. U.S.)では、米津玄師「IRIS OUT」がトップ10内に登場しています。

 

日本の楽曲におけるトップ10ヒット一覧表はこちら。

注目は、米津玄師「IRIS OUT」がGlobal 200でトップ10内に返り咲いたということ。前週11月1日付Global 200のトップ10(下記ポスト参照)を踏まえるに、テイラー・スウィフト『The Life Of A Showgirl』収録曲の後退に伴う浮上という側面がみえてきます。

そしてもうひとつ、当週11月8日付の集計期間が10月24日からとなり、この日多くの国で公開された映画「劇場版『チェンソーマン レゼ篇』」の好調が寄与したともいえます(米興行収入ランキングでの首位発進については下記参照)。最新のGlobal 200ではエンディングテーマである米津玄師, 宇多田ヒカル「JANE DOE」も浮上しており、映画効果が表れたと捉えて差し支えないでしょう。

 

そして以前も述べましたが、米ビルボードのグローバルチャートにデータを提供するSpotifyのデータをみると、米津玄師「IRIS OUT」の海外再生率が上昇しています。実際、米ビルボードによる11月8日付グローバルチャートと集計期間を同一とするSpotify週間チャートにおいては米津玄師「IRIS OUT」の再生回数が前週より200万以上増え、海外での映画公開が大きく影響したと想起可能です。

上記は直近11月3日付までのSpotifyデイリーチャートにおける米津玄師「IRIS OUT」の動向ですが、最新日においてグローバルの再生回数がデイリー最大を更新しています。これは日本においてこの日が祝日であることも影響していますが、たとえば米では土日祝日より平日が上昇する傾向にあることから、海外での聴かれ方に即した上昇と捉えていいのかもしれません。

 

映画の評判や興行収入の推移も影響すると思われますが、米津玄師「IRIS OUT」がさらなるロングヒットに至るか注目です。

 

 

最後に、ビルボードジャパンに対する違和感を記し、改善を希望します。

 

ひとつは、最新10月30日公開分のGlobal Japan Songs Excl. Japan(Global 200をベースとして日本市場分を除いた上で日本の楽曲のみを抽出するチャート)において米津玄師「IRIS OUT」が首位をキープしながら、ストリーミング再生回数(動画再生含む)が記事未掲載だった点。今後明らかに局面が変わるだろうことは下記エントリーにて紹介したゆえ尚の事、その直前の状況について可視化してほしかったと痛感します。

少なくとも首位獲得曲のストリーミング再生回数およびダウンロード数だけでも、毎週きちんと記すことを願います。

 

もうひとつは、Global 200についてのビルボードジャパン側の説明が不十分だった点です。

先週放送された『SONGS』(NHK総合)ではビルボードジャパンの高嶋直子さんがVTRで登場し、2025年の日本の音楽業界のキーワードを解説していました。その際、10月4日付Global 200で5位にランクインし日本の楽曲で最高位を記録した米津玄師「IRIS OUT」を"世界で5番目に聞かれた曲"と述べていましたが、しかしながら米ビルボードによるグローバルチャートはダウンロード指標も含むゆえ、その説明は正確ではありません。

同日付Global 200については上記エントリーで米ビルボードの記事を翻訳していますが、米津玄師「IRIS OUT」はダウンロード数が19,000を記録し、同チャート首位のHUNTR/X(ハントリックス)(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」が記録したダウンロード数(16,000)を上回っています。全曲のストリーミング数が明かされていないため「IRIS OUT」が実際に5番目に多く聴かれたかもしれませんが、高いダウンロード数が5位到達に貢献した可能性は高いゆえ、やはり違和感を抱くのです。

日本の楽曲のダウンロードの強さが初動や初の1週間フル加算時における原動力となることについては上記エントリーにて説明しています。ともすれば高嶋さんがきちんと説明したにもかかわらず番組側の編集がそのような不正確な表現を生んだかもしれませんが、細かい部分だとしてもきちんと正確に伝えることを強く願うばかりです。