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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ベストアルバムを本日リリースしたBE:FIRST、音楽チャート面から7つの代表曲を採り上げる

BE:FIRSTが本日、初のベストアルバム『BE:ST』をリリースしました。

今回は音楽チャート主体に、彼らの代表曲を採り上げます。

 

 

BE:FIRSTは2021年8月16日に「Shining One」でプレデビュー後、同年11月3日に最初のフィジカルシングル「Gifted.」をリリース。本日リリースされた『BE:ST』は、初のフィジカルリリースから4年経った彼らの歴史を詰め込んだ作品となります。

 

上記はBE:FIRST | Artist | Billboard JAPANに掲載された、BE:FIRSTにおけるビルボードジャパンソングチャート週間3位以内ランクイン曲一覧(最新10月22日公開分時点。"Hot 100"を選択すると表示されます)。BE:FIRSTは「Gifted.」を含む9曲を週間トップの座に送り込んでいます。

BE:FIRSTにおいては、デジタル時代における音楽チャートを熟知し、ファンダムと共に歩み、数多くのトップ10ヒットを輩出したという印象です。他方、瞬発力と持続力が異なることもありロングヒット曲が多いとは言い難いかもしれませんが、男性アイドル/ダンスボーカルグループというジャンルにあってソングチャート100位以内に10週以上ランクインした曲を7作品保有しているというのは特筆すべきといえるでしょう。

そしてその7曲はいずれも、チャート面そして音楽面でもBE:FIRSTを代表する作品と捉えています。以下、その7曲を紹介します。

 

(なお今回紹介する楽曲のCHART insightは有料会員が確認可能なもので、20位未満の指標順位も明示されています(ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています)。また、構成指標の300位以内初エントリー以降最高30週分を掲載しています。)

 

 

・「Gifted.」(2021)

週間最高1位、100位以内登場12週。ファーストフィジカルシングルにして、他の男性アイドル/ダンスボーカルグループとは一線を画す音楽性をまとった作品。フィジカルリリースの2日前となる月曜にデジタル先行リリースを実施し、デジタル/フィジカル同時初加算に伴い同日フィジカルリリースのINI「Rocketeer」を上回る結果に。私見と前置きしますが、4年を経てどのような歌声に深化しているかが気になるところです。

 

・「Bye-Good-Bye」(2022)

週間最高1位、100位以内登場26週。現時点で自身最長タイの在籍週数を誇るミディアムチューンのセカンドフィジカルシングル。「Gifted.」とは異なりデジタルを2ヶ月先行でリリースしたことが二度のピーク形成に。LINE MUSIC再生キャンペーンの採用もチャートに寄与しながら、その後も人気は継続しソングチャートに半年ランクインしたのみならず、キャリア初となるストリーミング1億回再生を達成しています。

 

・「Boom Boom Back」(2023)

週間最高1位、100位以内在籍12週。3枚目のフィジカルシングル「Smile Again」のカップリングに収録されたデジタルシングル。"平成レトロ"ムーブメントを先取りした感のあるキャッチーなヒップホップアプローチ作品は、ストリーミング1億回再生を突破。Spotifyで新曲リリースの度に旧譜もフックアップされる傾向の強いBE:FIRSTにおいて、特にこの曲の人気の高さ(再上昇の多さ)を興味深く感じています。

 

・「Mainstream」(2023)

週間最高1位、100位以内在籍14週。4枚目のフィジカルシングル表題曲は、その後の「Masterplan」「Spacecraft」「GRIT」へ連なるアグレッシヴなヒップホップアプローチの出発点といえる作品に。デジタル/フィジカル同週リリース等の施策を徹底しながら、これまで採用していたLINE MUSIC再生キャンペーンはこの曲以降実施していない模様ですが、週間チャート制覇に至っています。

 

・「Sailing」(2024)

週間最高4位、100位以内在籍12週。6枚目のフィジカルシングル「Spacecraft」とダブルAサイドとなった、テレビアニメ「SPECIAL EDITED VERSION 『ONE PIECE』 魚人島編」(フジテレビ)エンディング主題歌。トップ10在籍は1週にとどまるものの、10週以上のエントリーを達成。今年に入りアニメとコラボしたリリックビデオ(→こちら)が公開されたことで、週間100位以内に返り咲いています。

 

・「夢中」(2025)

週間最高7位、100位以内在籍26週。ドラマ『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ)主題歌となるデジタルシングル(7枚目のフィジカルシングル「GRIT」にてカップリングに収録)。ストリーミングの高値安定はBE:FIRSTのファンダムのみならずドラマファン、また曲は気になるが歌手のファンというわけではないライト層等からも支持を得た証拠でしょう。自身3曲目にして最速でのストリーミング1億回再生を記録しています。

 

・「空」(2025)

週間最高2位、100位以内在籍15週。第92回NHK全国学校音楽コンクールにて中学校の部の課題曲となった最新フィジカルシングルの表題曲は、「Bye-Good-Bye」以来となるデジタル大幅先行リリース、且つ近年のフィジカルシングル表題曲路線からも大きく切り替わった作品に。一度は100位近くまで下がりながらも動画再生指標主体に持ち直し、ストリーミング指標も100位以内に推移し続けています。

 

 

さて、音楽チャートを分析する者として、BE:FIRSTおよび彼らを輩出したSKY-HIさんは日本のエンタテインメント業界を好転させたと捉えています。デジタル化が進んでいると言い難かった音楽業界にあってビルボードジャパンソングチャートで結果を残し続け、デジタルやビルボードジャパンの重要性を流布。そして彼らの活躍が、芸能界やメディアに蔓延っていた柵(しがらみ)の多くを取り払ったといえるでしょう。

(STARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ事務所)創業者による性加害問題の社会問題化で同事務所が変わらざるを得なかったという側面も好転を加速させた一因ですが、それ以前に流れを築いたのはBE:FIRSTやSKY-HIさんの存在、そして結果が大きいと考えます。)

 

(上記はビルボードジャパンのトップアーティストチャート(ソングチャートおよびアルバムチャートの合算)、最新10月22日公開分におけるBE:FIRSTのCHART insight。直近150週分を表示しています。)

一方で、BE:FIRSTにおける音楽チャート面での課題を3つ挙げるならば、まずはソングチャートでのさらなるロングヒット化。フィジカル未リリース(フィジカルセールス指標未加算)ながら2022年8月3日公開分で総合首位を獲得した「Scream」は翌週15位に後退。デジタルオンリーの作品が首位獲得の翌週にトップ10圏外に至った5例のうちふたつがBE:FIRSTの作品となります。施策の反動も影響しているとして、特にストリーミング指標にてライト層やグレーゾーンを如何に取り込み、安定させるかが今後の鍵でしょう。

2つ目は、カラオケ指標の獲得です。本日発表の10月29日公開分ビルボードジャパンソングチャートでは「夢中」がキャリア最高となる単独での在籍記録を達成すると思われます。ストリーミング指標で高値安定を続ける同曲ですが、カラオケ指標を未だ獲得できていません。この指標は新曲でも300位以内登場が極めて難しいながら、社会に浸透したといえる作品ではこの指標をきちんと獲得できているゆえ、今後に注目です。

そして最後は、世界での実績。特に男性アイドルやダンスボーカルグループの作品は、米ビルボードが2020年9月に立ち上げたグローバルチャートにおいてほぼランクインしていない状況です(これまでTravis Japanや嵐がランクインしたことはありますが、接触指標が強くないために登場2週目に急落しています)。海外進出に積極的なBE:FIRSTがこのチャートで実績を上げるかに注目しています。

 

 

冒頭ではBE:FIRSTについて『デジタル時代における音楽チャートを熟知し、ファンダムと共に歩み、数多くのトップ10ヒットを輩出した』と述べました。瞬発力の大きさは十分ゆえ、今後は持続力にもつなげるべく、歌手側やファンダムが彼らの魅力をライト層やグレーゾーンへこれまで以上に伝播させ、未来のコアファン候補を作ることが重要に成ると考えます。今回紹介した7曲を名刺代わりに用いるのも好いのかもしれません。