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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】男性アイドル/ダンスボーカルグループ、トップ3独占の要因

最新6月5日公開分(集計期間:5月27日~6月2日)のビルボードジャパンソングチャートはトップ10のうち6曲、そして上位3曲がすべて入れ替わりました。JO1「Love seeker」が首位、Number_i「BON」が275ポイント差で2位に、そしてコムドット「拝啓、俺たちへ」が3位にランクインし、いずれも1万ポイント超えを果たしています。下記総合ソングチャートの記事でも、3曲について詳しく紹介されています。

今回の上位曲においては、下記CHART insightや表にてその特色がつかめるものと考えます。

(上記CHART insightは各指標20位まで掲載。未記載の部分においてはJO1「Love seeker」がストリーミング25位および動画再生31位、コムドット「拝啓、俺たちへ」がダウンロード27位および動画再生23位であることが総合ソングチャートの記事から判明しています。)

 

まずは最新6月5日公開分ビルボードジャパンソングチャート、トップ3をおさらいします。

1位 (前週59位) JO1「Love seeker」

 (フィジカルセールス738,776枚/ダウンロード15,613DL/ストリーミング4,142,076回再生)

2位 (初登場) Number_i「BON」

 (フィジカルセールス 加算対象外/ダウンロード49,896DL/ストリーミング5,038,092回再生)

3位 (初登場) コムドット「拝啓、俺たちへ」

 (フィジカルセールス136,964枚/ダウンロード2,429DL/ストリーミング4,769,428回再生)

3曲はいずれもストリーミングが400万回再生を突破し、CHART insightにて青で表示されるストリーミング指標がポイント全体の2割前後を占めています。

 

 

首位獲得のJO1「Love seeker」はフィジカルがSnow Man「LOVE TRIGGER」(2月21日公開分 1,224,902枚)、Aぇ! group「《A》BEGINNING」(5月22日公開分 782,835枚)に続く2024年度歴代3位の週間セールスを記録、さらに『ダウンロードは前週比約2,800%の15,613DLで3位、ストリーミングが157%で25位、動画が117%で31位、ラジオが688%で5位』となり(『』内は記事より)、フィジカルリリース週に伸びていることが解ります。

ストリーミング指標においては主要サブスクサービスでLINE MUSICが突出していますが、「Love seeker」ではLINE MUSIC再生キャンペーンが組まれていません。このキャンペーンを採用する歌手は減っているもののアイドルやダンスボーカルグループの採用がこれまで多かったこともあり、JO1においてもコアファンのLINE MUSICユーザーは多いと考えられます。

一方で「Love seeker」はSpotifyでも100位以内に入っていますが、これはStationheadでの歌手側による公式リスニングパーティーも影響しているものと捉えています。実際、今回の集計期間中パーティーが初開催された5月28日火曜にはSpotifyにて125→67位、再生回数59,159→91,247回に上昇を果たし、翌日以降デイリー60位以内をキープしている状況です。

 

そのStationheadの影響が特に大きく表れたのはNumber_iでした。このことは昨日付ブログエントリーでも紹介しています。

ミニアルバム『No.O -ring-』からは「BON」が2位に入ったのみならず、「No-Yes」が65位(ダウンロード42位/ストリーミング58位)、「SQUARE_ONE」が71位(77位/60位)、「i」が80位(76位/76位)、「OK Complex」が81位(100位未満/68位)および「Banana (Take It Lazy)」が100位(91位/91位)と、デジタル版収録の7曲中6曲が総合ソングチャート100位以内に登場。これは「GOAT」のフィジカルシングルカップリング曲がフィジカルセールス初加算週にすべて総合100以内に登場したことを想起させます。

ミニアルバム『No.O -ring-』がフィジカルセールス308,351枚およびダウンロード29,074DLを記録し総合アルバムチャートを制した中で収録曲の「BON」も5万近いDL数を記録したこと、そしてStationheadの勢いからは、ファンダムの大きさを強く感じた次第です。

 

コムドット初のフィジカルシングル「拝啓、俺たちへ」はLINE MUSICにおいて再生キャンペーンを実施しており、それが同サービスにおける週間ソングチャート制覇の要因といえるでしょう(なおLINE MUSICの集計期間はビルボードジャパンソングチャートと異なります)。一方で、この曲がApple Musicにて43位に登場したことも興味深く感じています。

そして「拝啓、俺たちへ」の総合ソングチャート3位獲得から程なく、下記ランクイン記事が登場したことは注目すべきと捉えています。コムドット側のプレスリリースに基づいたものと推測されますが、彼らがビルボードジャパンソングチャートを重視しているという姿勢が記事タイトル、さらにメンバー5名全員によるポストから感じられます。

(コムドットやまとさん以外のメンバーは、やまとさんによる上記ポストへのリポストの形で各自つぶやいています。)

 

 

ビルボードジャパンソングチャートでは男性アイドルやダンスボーカルグループの上位進出が目立つようになった印象があります。そしてそこからは意思が感じられます。

前週「halfmoon」で首位を獲得したKing & Prince同様、当週はJO1のコアファンが用いた”ビルボ1位”という言葉がXでトレンド入りしていましたが、ここからはコアファンが複合指標から成るソングチャートを重視する姿勢がみえてきたと感じています。フィジカルやデジタルのセールス初加算時にどうやってポイントを最大化させるかを、歌手側そしてコアファンがその重要性を理解の上で実行/参加していることが解るでしょう。

上位進出は素晴らしいことです。そしてそれ以上に大事なのはロングヒットや年間チャートへのランクインだというのが私見です。ロングヒット曲やその兆しが感じられる作品はポイントの過半数をストリーミング指標のみで獲得しており、歌手のコアファンではないものの曲が気になるというライト層の支持を取り付けています。コアファンは支持する歌手の曲を、どうライト層に浸透させるかに注力することが必要と考えます。

 

 

さて、前週首位のKing & Prince「halfmoon」は43位に後退していますが、前作とは動きが異なります。

フィジカルシングルの前作「愛し生きること」はフィジカルセールス指標初加算の昨年11月15日公開分で3位に入った翌週に89位に後退していますが、「halfmoon」では順位面での下落幅が小さくなっています。また今作のダブルAサイドシングルでフィジカルセールス指標が加点されない「moooove!!」は、ストリーミング指標が300位以内に入り加点されたこと等に伴い総合34→77位、2週連続で総合100位に登場しています。

ダウンしていることは事実ながら、フィジカルセールス加算2週目における2曲の動向からはデジタル解禁効果が見て取れます。加えて前週の集計期間中にベストアルバム『Mr.5』も解禁したことで、当週の総合ソングチャートでは「ツキヨミ」が66位、「シンデレラガール」が95位に再登場しています。完全ではないながらもKing & Princeのデジタル解禁が浸透すれば、今後のロングヒットも考えられるでしょう。