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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Travis Japan、ZEROBASEONEがソングチャートトップ3入り、その原動力と今後の推移を読む

これまでは土曜もしくは日曜に、ビルボードジャパンソングチャートにおいて前週上位に初めて進出した曲の翌週動向、ならびに最新週における上位初進出曲の状況をチェックするエントリーをアップしてきました。

このエントリーについてはCHART insightのリニューアルを受け、一時的に中止します。CHART insightの変更については下記エントリーをご参照ください。

今後はCHART insightも踏まえつつ、上位進出曲を個別に採り上げていきます。

 

 

さて最新3月27日公開分ビルボードジャパンソングチャートではトップ10内に2曲が初登場。今回はこの2曲について紹介します。

 

(上記ミュージックビデオは英語詞版。)

ビルボードジャパンの最新ソングチャートではTravis Japan「T.G.I. Friday Night」が2位に初登場、ZEROBASEONE「ゆらゆら -運命の花-」が47→3位に上昇。獲得ポイント(前者は10,940、後者は8,252)の大半を占めるのは前者がダウンロード、後者がフィジカルセールスとなっています。なお上記CHART insightはリニューアルに伴い、円グラフにおける各指標の表示がチャートイン以降のポイント累計となっています。

 

2曲の主なポイント獲得源をみると、Travis Japan「T.G.I. Friday Night」がダウンロード75,135DL、ZEROBASEONE「ゆらゆら -運命の花-」がフィジカルセールス516,721枚とっており、後者が有利と思われかねません。ただしフィジカルセールス指標においては2017年度以降に一定枚数以上の週間セールスに対し係数処理が適用されるウエイト変更が実施され、その枚数は段階的に引き下げられています。

(ビルボードジャパンは当初、フィジカルセールス指標の基となるフィジカルセールスチャート(Top Singles Salesチャート)について、ZEROBASEONE「ゆらゆら -運命の花-」の売上枚数を誤って掲載していました。この点は掲載から間もなくポストしましたが(→こちら)、ともすれば当初の掲載内容が係数処理適用後の数値を指すのかもしれません。)

フィジカルセールス指標のウエイト変更に伴い、ビルボードジャパンソングチャートは徐々に社会的ヒットの鑑に成ってきたと捉えています(変更前後の年間チャートをみれば多くの方が納得されるはずです)。週間チャートでの上位進出や高ポイント獲得も重要ですが、より大事なのはロングヒットや年間チャートへのランクインであり、そのためにはサブスク等に基づくストリーミング指標の安定した獲得が重要となります。

 

一方で、Travis Japan「T.G.I. Friday Night」においては英語詞版のほか、キャリア史上初めてシングルにおいて日本語版が同時発売となりました。

(上記公式オーディオは日本語詞版。)

この2バージョン同時発売が75,135DL獲得につながったと捉えていいでしょう。同曲は、2021年12月15日公開分にてAimer「残響散歌」が記録した87,649DL以来の好セールスを記録しています。チャートポリシー(集計方法)では歌詞の言語のみが異なる(アレンジの変更や共演者追加等を伴わない)場合は合算されることになっているため、2バージョンの用意が総合チャートでの2位獲得、1万ポイント超えに貢献したといえるのです。

ダウンロードはフィジカルセールスと異なり、指標化の際に係数処理が適用されないことも、Travis Japan「T.G.I. Friday Night」がZEROBASEONE「ゆらゆら -運命の花-」を上回った要因と考えます。一方で2曲とも今回のチャートにおける最大の原動力が所有指標であり、基本的には勢いが持続しません。ゆえに、先述の通り接触指標での上位安定が真の社会的ヒットにつながる鍵となります。

 

 

その接触指標の中でも特に大きなポイント源となるストリーミングにて、2曲はいずれも100位以内にランクインしています。

2位にはTravis Japan「T.G.I. Friday Night」が初登場。英語詞と日本語詞の2バージョン同時リリースとして、3月18日にデジタルリリースされてから、75,135DLを売り上げてダウンロード1位を獲得。その他ストリーミング43位、動画再生35位で好調なスタートダッシュとなった。

これに続くのは、オーディション番組『BOYS PLANET』から登場したしたグループ、ZEROBASEONEの日本デビューシングル「ゆらゆら -運命の花-」。3月20日のリリースに伴い47位から3位へ大きくランクを上げた。この起因となったCDセールスは、初週516,721枚を売り上げており1位。ストリーミングは79位、ダウンロードは93位となっている。

ただし、今後も好調を維持できるとは言い難いでしょう。というのも、2曲とも今回の集計期間中に重なる形でLINE MUSIC再生キャンペーンを実施。ZEROBASEONE「ゆらゆら -運命の花-」についてはストリーミング指標の基となるStreaming Songsチャートで29→79位と推移していますが、これは同曲のLINE MUSIC再生キャンペーンにおいて3月14日まで第1弾が、3月15日から第2弾が開催されたことが影響したと考えられます。

(期間限定キャンペーンの紹介ページは後日削除される可能性を踏まえ、キャプチャ画像を貼付しています(問題があれば削除いたします)。)

LINE MUSIC再生キャンペーンに伴い2曲は同サービスにて上位進出を果たし、ビルボードジャパンソングチャートのストリーミング指標にも影響が表れた形ですが、他方どちらの曲も日本のSpotifyデイリーチャートで100位以内に達しておらず、Apple Music週間チャートにおいても同様です(下記リンク先は、3月27日公開分ビルボードジャパンソングチャートと集計期間を同一とするApple Music週間ソングチャートとなります)。

(Spotifyについては別途、デイリーチャート等を確認できるサイトが存在します。自分のXアカウント(→こちら)ではそれを踏まえて日々ポストしています。)

これを踏まえれば、次回4月3日公開分のビルボードジャパンソングチャートではLINE MUSIC再生キャンペーンが続いているTravis Japan「T.G.I. Friday Night」が総合100位以内にランクインし続ける可能性はあるものの、キャンペーンの影響が途絶えた4月10日公開分チャート以降は100位以内にとどまるかが難しいものと考えます。

 

 

一時的にでも上位進出を果たすことは凄いことですが、再生キャンペーンに頼らない形でライト層(歌手のコアファンというわけではないが曲は気になる方々)にリーチさせていくことがより重要です。LINE MUSIC再生キャンペーンはライト層の人気を可視化するストリーミング指標にコアファンの熱量が強く影響する点において、その動向は所有指標のそれとあまり変わりません。つまりは急落の可能性をはらんでいるのです。

CHART insightのリニューアルに伴いストリーミングのヒットがLINE MUSIC再生キャンペーンに伴うものかが見えにくくなった点は否めませんが、それでも見えている情報を精査してヒットの原動力、および克服が必要な点を見出すことは可能です。そして特に後者においては、歌手側(レコード会社や所属芸能事務所)のみならずファンダムもアイデアを考え、歌手側に伝えることができるはずです。