先月末以降のエントリーにて、arne代表の松島功さんによるポストを踏まえた下記エントリー群を掲載しています。ここでは”洋楽”について、松島さんによる問題提起に合わせる形で”K-POPを除く”と定義しています。
いただいたリアクションの中に、洋楽がヒットする/しないは洋楽好きな自分には関係ない、もしくは洋楽に興味ないのでどうでもいいというものがみられました。ヒットに至りにくくなっているという客観的な事実と主観とは分けて語る必要があるという点において、厳しい物言いですがそれらリアクションには違和感を抱いています。
(自分の見方も主観といわれればそれまでですが、とりわけ強い主観を述べる際はその旨を前置きしており、客観性を心掛けて記しています。)
洋楽の影響を受けているJ-POP(歌手も含む)が今後生まれにくくなる可能性や、また現在は円安の影響もあり来日公演や日本の音楽フェス出演を行う海外の歌手が多くいるだろうとして、円高基調となればその状況が悪化する可能性は小さくないものと捉えています。市場規模が小さくなれば日本で公演することの優先順位は低くなるはずであり、洋楽の勢いが弱まっているのは好ましい事態ではないと考え、提案している次第です。
さて、これまで提案の続きは後日紹介するとして、今回は最新のビルボードジャパンソングチャートにおける洋楽の状況を紹介します。
【ビルボード】Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」総合3連覇、OWV「BREMEN」は自身最高スタート https://t.co/RVhm2MWkd4
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2024年2月14日
最新2月14日公開分のビルボードジャパンソングチャートは、2月5~11日が集計期間。初日には米グラミー賞が行われており(現地時間の2月4日に開催)、同賞の影響が反映されます。ビルボードジャパンソングチャートを構成する6指標の中で特に洋楽が強いのがラジオ指標であり、今年もこの指標にグラミー賞効果が大きく反映された形です。
今年のグラミー賞で主要部門のひとつである最優秀レコード賞を受賞したマイリー・サイラス「Flowers」は、ビルボードジャパン最新ソングチャートにおけるラジオ指標で7位に急上昇(同指標はCHART insightにおいて黄緑で表示)。その他、ダウンロード指標(紫)も100位以内に返り咲いていますが、一方でストリーミング指標(青)は300位以内に達せず、加算対象外となっています。
当週のラジオ指標では洋楽が20位以内に6曲入り、グラミー賞関連では3曲が登場。ビリー・ジョエルの新曲「Turn The Lights Back On」(ラジオ指標8位)は同賞でパフォーマンスされたものの、ストリーミング指標300位未満に。一方で、ラジオ指標2位となったテイラー・スウィフト「Anti-Hero」はストリーミング指標も加点され、総合57位にランクイン。同曲を収録した『Midnights』は最優秀アルバム賞を受賞しています。
(「Anti-Hero」は今年のグラミー賞でパフォーマンスされていません。)
『Midnights』も、最新のビルボードジャパンアルバムチャートで9位に上昇。フィジカルセールス指標10位、ダウンロード指標5位となり、2022年11月9日公開分(10位)以来となるトップ10入り、且つその前週に記録した8位に次いで高い順位となりました。
テイラー・スウィフトについては、グラミー賞出席直後に来日公演を行ったことやメディアでその公演が紹介されたこと、さらにはスーパーボウルに駆けつけるという報道等も功を奏したといえるでしょう。実際、ラジオ指標の基となるプランテックによるOAチャートでは複数曲の上昇がみられます。来日公演関連ではクイーンの各曲も上昇したほか、後述するOAチャートの記事ではグラミー賞関連曲の上昇にも触れられています。
結果的に、最新2月14日公開分のビルボードジャパンソングチャートにおいて総合100位以内にランクインした洋楽はテイラー・スウィフト「Anti-Hero」(57位)、そして同じくテイラーによる「Cruel Summer」(89位)の2曲でした。
(「Cruel Summer」は現時点でミュージックビデオはありません。またこれまでビルボードジャパンソングチャートの構成指標において20位以内に入っていないため、ビルボードジャパンの無料会員がCHART insightを確認することはできません(有料会員ならば100位まで確認可能ですが、有料会員向けの情報をここで掲載することはできません)。)
ストリーミング指標においては「Cruel Summer」のほうが高いのですが(同指標の基となるストリーミングソングチャートでは「Cruel Summer」が75位)、「Anti-Hero」はラジオ指標(そしてその影響源となるグラミー賞等)の高水準を味方に、総合で100位以内にランクインできたといえます。すなわち、先月ここで記したラジオおよびストリーミングの双方を獲得することの重要性が、「Anti-Hero」から見えてくるのです。
他方、「Cruel Summer」のストリーミング指標100位以内登場は興味深いものがあります。ブログエントリー執筆段階(2月18日午前6時台)におけるSpotifyおよびApple Musicの最新チャートでは同曲が共に20位台につけており、次週のビルボードジャパンソングチャートでも上昇が見込まれます。海外のチャートにて現在ヒットしている曲が日本でも上昇してきたということに、洋楽普及への僅かな期待を抱いています。
プランテックによるOAチャートの記事ではこのような文言がみられます。
洋楽不況と言われるなかだが、世界規模の音楽賞やビッグネームの来日には多くの音楽ファンが注目する。こういったイベントを機に洋楽に興味を持つリスナーもいることだろう。ラジオは、リスナーが既に持ち合わせている音楽趣向とは全く異なる新たな出会いを創出してくれる場でもあるのだ。
洋楽の注目度上昇には世界規模の音楽賞やビッグネームの来日が関わることは間違いないでしょう。ならば、その加速度をさらに大きくするには他指標の獲得も必須であることが、当週のビルボードジャパンソングチャートから解ります。先月のエントリーではラジオからストリーミングへの移行の提案も記しており、不況と形容した状況からの脱出にラジオ業界が積極的に動くことを願います。