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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週および当週の上位初進出曲におけるCHART insightから、真のヒット曲に成るかを読む (2024年1月24日公開分)

今回のエントリーでは、ビルボードジャパンソングチャートにおいて前週上位に初めて進出した曲の翌週動向、そして最新週における上位初進出曲の状況をチェックし、真の社会的ヒット曲に成るかを読みます。

前週のエントリーはこちら。

ビルボードジャパンの最新のソングチャートに関する記事、および弊ブログでの首位曲についての解説は以下をご参照ください。

 

 

まずは前週のエントリーにて紹介した上位初登場曲の、最新チャートにおける動向をCHART insightを用いて紹介します。このCHART insightについては、下記ポストにて簡潔に説明しています。

 

<2024年1月17日公開分 ビルボードジャパンソングチャートにて

 20位までに初めて登場した作品の、翌週におけるCHART insight>

 

・ヨルシカ「晴る」 8位→12位

 

 

ヨルシカ「晴る」のポイント前週比は84.2%。前週は初の1週間フル加算に伴う上昇でしたが、当週はやや落ち着きつつも上位をキープしています。ストリーミング指標の順位は上昇しており、今後ミュージックビデオが登場することで上位キープ、もしくはトップ10に返り咲くことも十分考えられます。

 

 

続いて、最新ソングチャートにおいて初めてトップ20入りした作品のCHART insightをチェックします。

<2024年1月24日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 20位までに初めて登場した作品のCHART insight>

 

・5位 (前週27位) Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」

(上記はテレビアニメ『マッシュル-MASHLE-』の第2期ノンクレジットオープニングムービー。)

・7位 (初登場) Mrs. GREEN APPLE「ナハトムジーク」

 

当週のソングチャートでトップ10入りした曲の指標構成をみると、興味深い状況が浮かんできます。世界的に人気が拡大しているCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」ですが、動画再生指標が加点されていないのです。

これはCreepy Nuts側が公式動画を用意していないこと(ヨルシカ「晴る」が公式オーディオのみながら公開したことで動画再生指標を獲得したのとは真逆の動き)、そしてタイアップ先のアニメ制作会社によるノンクレジットオープニングムービーをビルボードジャパン側が公式動画と判断していない、もしくは公式動画だとしても動画再生指標の加算対象となるISRC(国際標準レコーディングコード)が未付番ゆえと考えられます。

上記エントリーではこれまでの動画再生指標加算/未加算(加点対象か否か)を踏まえ、テレビ局側(制作会社を含む)におけるISRC付番の意識向上、そしてテレビ局側の動画に対するビルボードジャパンの考え方の開示を提案していますが、同時に歌手側がYouTubeにせめて公式オーディオだけでも掲載することが重要と考えます。これはチャート対策ということ以前に、YouTubeをサブスク的に用いるユーザーへの対応として必要です。

 

 

その動画再生指標において、きちんと対応しているのがMrs. GREEN APPLEです。ミュージックビデオの公開に先駆けてティザー(ティーザー)を公開する等施策を徹底しており、その様子は彼らが投稿したコンテンツカレンダーからも見て取れます。

コンテンツカレンダーはK-POP歌手が用いることが多く、これがK-POP全体のグローバルヒットに結びついた施策の一種と捉えています(その重要性については以前寄稿した「J-POPは海外に通用するのか?」を音楽チャートから考える - TOKION(2022年6月17日付)でも紹介)。日本ではこの施策を用いる歌手が未だ多くない印象ですが、Mrs. GREEN APPLEはコアファンの熱量をさらに高め、ライト層の興味を惹く行動に長けています。

(なおMrs. GREEN APPLEは今週半ば、「ナハトムジーク」のショート動画をYouTubeにて3本公開しています(こちら等)。これは数日前にTikTokにアップしたものと同じと思われますが、ミュージックビデオやサブスク等への導線につながる意味で重要であり、またリリース後も施策は可能であることを証明しているといえるでしょう。)

 

実際、「ナハトムジーク」はビルボードジャパンソングチャートでストリーミング11位となっていますが、この指標において新曲が初週から高位置に登場することは日本で多くありません。初動を高めるにはリリースまでにおける新曲の認知浸透、そして期待値を高めることが必要であり、今回その成果が表れたと捉えています。

そして、1月26日に公開される映画『サイレントラブ』の主題歌であるMrs. GREEN APPLE「ナハトムジーク」が11位に初登場。Mrs. GREEN APPLEは、当週100位圏内に14曲を送り込んでおり、特に「StaRt」は2020年7月15日公開の当チャートで97位をマークして以来、2度目のチャートインを果たしている。

新曲の登場は過去曲の注目度も高めます。ビルボードジャパンソングチャートでストリーミング指標の基となるストリーミングソングチャートでの100位以内ランクインは12→14曲に増加しています。これは2023年末における注目度上昇を維持したまま、新曲「ナハトムジーク」のリリースにつなげたことが大きいといえるでしょう。そして、ビルボードジャパンが記事で言及した「StaRt」については、弊ブログでも触れています。

音楽インフルエンサーのRYOさんと前週実施した日本版グラミー賞企画において、双方の意見が合致したのがMrs. GREEN APPLEの最優秀アーティスト賞受賞でした(尤もこの部門はグラミー賞にはないのですが、2023年度から採り入れています)。それだけミセスの活躍が際立っていたことは間違いありません。過去曲に光を当てること、新曲を見つけてもらうことの双方に長けていることを、この一週間で強く実感しています。

 

「ナハトムジーク」においては今後の展開(施策の投入等)もさることながら、主題歌となった映画『サイレントラブ』の話題性や興行成績も影響を及ぼすものと考えますが、先述した「ナハトムジーク」のショート動画のタイトルには曲名よりまず映画の名前が掲載されており、Mrs. GREEN APPLE側の献身的ともいえる姿勢が見て取れます。

Mrs. GREEN APPLE二宮和也さん主演の映画『ラーゲリより愛を込めて』(2022)にて「Soranji」を主題歌に提供(『サイレントラブ』主演の山田涼介さんと二宮さんは同じ"よにのちゃんねる"のメンバー)。この「Soranji」が「ナハトムジーク」のリリース前からチャートで再浮上していることも興味深く、ミセス自体が注目度を高めているのみならず映画主題歌という共通項も、「Soranji」を高めている要因といえそうです。

Mrs. GREEN APPLEにおいては新曲のみならず(新曲リリースに伴う)過去曲のチャート動向、そして新曲リリース後の展開についてチェックしていくことで、音楽に関わる方が施策に関する気付きを沢山得られることができるでしょう。