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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

プランテックによる2023年度ラジオエアプレイチャートを読む

プランテックによる2023年度の年間ラジオエアプレイチャートが先週発表されました。プランテックは全国31のFMおよびAM局のOA回数チャートを毎週発表しており、ビルボードジャパンはこのデータを基に聴取可能人口等を加味したソングチャートのラジオ指標を算出しています。

プランテックの年間チャートは2022年度にも紹介。下記リンク先には2018年度以降の年間チャートのリンクも掲載されています。

なお2023年度の記事やその元となるプレスリリース(PDFはこちら)において、2023年度の集計期間は公表されていません。これは2022年度においても同様であり、プランテックには記載を願うばかりです。

 

 

まずは総合のトップ10を転載します。プランテックの記事では邦楽、洋楽それぞれの部門のトップ10も掲載され、K-POPは洋楽として括られています。ただし、洋楽部門のトップは全員が日本人で構成されるXGとなっています。

<プランテックによる2023年度年間ラジオエアプレイチャート 総合トップ10>

総合

1位:YOASOBI「アイドル」2106pt. (ソニー・ミュージックエンタテインメント

2位:10-FEET「第ゼロ感」1802pt. (EMI RECORDS

3位:Mrs. GREEN APPLE「Magic」1753pt. (EMI RECORDS

4位:スピッツ「美しい鰭」1617pt. (ポリドール・レコード

5位:あいみょん「愛の花」1428pt. (ワーナーミュージック・ジャパン

6位:tonun「Friday night」1252pt. (ユニバーサル・シグマ

7位:imase「Nagisa」1201pt. (Virgin Music)

8位:XG「NEW DANCE」1188pt. (XGALX)

9位:デュア・リパ「ダンス・ザ・ナイト」1107pt. (ワーナーミュージック・ジャパン

10位:米津 玄師「LADY」1105pt. (SMEレコーズ

 

ラジオオンエアチャートもYOASOBI「アイドル」が制した形ですが、この曲を含むトップ5はいずれも、前年度2位を記録したAdo「新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」(1,407ポイント)を上回っています。

上記はビルボードジャパンソングチャートの2023年度年間チャート最終週にあたる2023年11月29日公開分までを表示したCHART insightであり、プランテックによる2023年度年間ラジオエアプレイチャート、総合上位5曲を表示。黄緑がラジオ指標を示します。

そもそもラジオ指標は他指標(所有指標よりも、ともいえるかもしれません)に比べてロングヒットしにくいことが特徴だと解ります。それでもYOASOBI「アイドル」はこの指標で一度として100位圏外になっていないことから、同曲が如何に大ヒットしたかがよく解るはずです。

 

 

次に掲載した表は2023年度のビルボードジャパンソングチャート、ラジオ指標における週間20位までの推移。オレンジがK-POP以外の洋楽、青が旧ジャニーズ事務所所属歌手、黄緑が旧ジャニーズ事務所所属以外の男性アイドル/ダンスボーカルグループ、薄青がLDH所属の男性ダンスボーカルグループ、紫がK-POP男性歌手を指します。またYOASOBI「アイドル」についてはピンクで表示しています。

週間単位では男性アイドル/ダンスボーカルグループが最上位に進出することが少なくありませんが、年間単位ではトップ10入りしていません。またプランテックの記事にはリクエスト部門のトップ10も掲載されていますが、そちらにも男性アイドル/ダンスボーカルグループの曲はありません。

興味深いのは、ビルボードジャパンの総合ソングチャートとラジオ指標とで、週間単位においては乖離する傾向にある一方、年間単位では近い形になるということ。またレギュラーラジオ番組の有無は大きく影響しない可能性もみえてきます(尤もこの辺については11位以下をみないと断言はできないのですが)。前者からは、ライト層獲得に向けてコアファンの方々が継続的に動くことの重要性を感じています。

 

 

(上記CHART insightは、2023年12月20日公開分までを表示。)

プランテックによる2023年度年間ラジオエアプレイチャート、洋楽部門トップとして記載されたのはXG「NEW DANCE」(総合では8位)ですが、メンバー全員が日本人のため本来は邦楽として括られるはずです。実際、ビルボードジャパンがこの秋新設したGlobal Japan Songs Excl. JapanにXGが掲載されているゆえ、尚の事です。

それを踏まえれば、総合トップ10における洋楽はデュア・リパ「Dance The Night」(総合9位)の1曲のみとなり、総合トップ10に占める洋楽(K-POP含む)は2018年度以降過去最少となります(3曲→2曲→5曲→4曲→2曲→1曲と推移)。

また、洋楽部門8位に入ったリゾ「About Damn Time」、および同9位のハリー・スタイルズ「As It Was」は2022年の楽曲となります。後者は2023年の米ビルボード年間ソングチャートでも15位に入ってはいますが、リリースは共に2022年4月。2022年末以降のリリース作品がもっとランクインしてもよかったはずです。

 

実際、洋楽部門トップ10の全体的なオンエア回数も前年度より減っています。これは以前も述べたような音楽番組自体の減少、ワイド番組でのラジオ(専門)DJ以外の方の起用も影響していると考えます。ラジオ業界の洋楽への向き合い方に疑問を抱きますが、一方ではリスナーの洋楽意識の低下も十分考えられます。リクエスト部門トップ10がビルボードジャパン年間ソングチャートに最も近いことも、その証明といえるでしょう。

(リクエスト部門のみ、2023年度記事の元となるプレスリリース(PDFはこちら)にて20位まで公開されていますが、やはりビルボードジャパン年間ソングチャートに近いと断言していいでしょう。)

 

この洋楽の弱さについて、ラジオ業界には自問自答してほしいと願います。

先述したGlobal Japan Songs Excl. Japanについては立ち上げ時に上記エントリーにて解説していますが、デジタル時代にあってリリースは海外進出とほぼ同義となり、必然的に海外の作品と競うことになるのです。そしてそのことは歌手のみならず歌手のコアファン、もっといえば広く日本人歌手のファン全体がうっすらとでも意識することが必要になると考えます。

ラジオは良い曲を発掘、流布しリスナーの耳を肥やすことをより意識的に行う必要があるというのが私見です。その一環としてGlobal Japan Songs Excl. Japan、そしてその基となるGlobal 200(米ビルボードが2020年に発足したグローバルチャートのひとつ)を紹介するランキング番組を用意する等、今のヒットを知らせることも必要でしょう。そのような取組が、最終的にJ-POPのグローバルへの進出を後押しするものと考えます。