イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) 藤井風が初回に登場する日本版tiny desk concerts、YouTubeでの公開を希望する→4月12日に公開されました

(※追記(3月22日4時38分):表記に一部誤りがありました。『エンベット(埋め込み)』と記載していましたが、正しくは『エンベッド(埋め込み)』でした。訂正の上、心よりお詫び申し上げます。)

(※追記(4月12日18時35分):NPR Musicの公式YouTubeチャンネルにて『tiny desk concerts JAPAN』藤井風さん出演回が公開されました。その公開内容について追記しています。またこれに伴い、タイトルも一部変更しています。)

 

 

 

本日、NHK総合にて新たな音楽番組、『tiny desk concerts JAPAN』がスタートします。

アメリカの公共放送NPR(National Public Radio)がネット展開し、全世界にブームを巻き起こした音楽コンテンツ「tiny desk concerts」の日本版をNHKで制作/放送します。「小さな机のコンサート」というタイトルの音楽プラットフォームは、NPRが2008年にインターネットでスタートさせました。アーティストたちは文字通り「NPRオフィスの小さな机」でパフォーマンスし、斬新なコンセプトから生まれたオーガニックなサウンドと親密なライブの雰囲気で、瞬く間に全米の人気コンテンツになりました。そしてパンデミックを経て人気は全世界に飛び火、今やそのラインナップはテイラー・スイフトBTSを筆頭に世界のビッグネームの多数を網羅、日本のアーティストたちにとっても憧れのプラットフォームとなっています。

NPRによる”tiny desk concerts”のリストはList of Tiny Desk Concerts - Wikipedia(英語)にまとめられています。このブログエントリーを執筆している段階で最高再生回数を誇るのは2020年のデュア・リパによるパフォーマンス。ウイルス感染のリスクを考慮した”Home”バージョンとなっています。

様々な歌手が登場するこの企画。日本時間の本日午前1時には、昨日ニューアルバム『Everything I Thought It Was』をリリースしたばかりのジャスティン・ティンバーレイクが登場しています。

また昨年9月には、上原ひろみさんも出演しています。国もジャンルも問わないというのが”tiny desk concerts”のコンセプトです。

 

 

さて、今回の新番組についてはひとつ気になるところがあります。

2024年春、NHKがNPRよりプラットフォームのライセンス供与を受け、日本のアーティストで「tiny desk concerts JAPAN」を制作します。総合テレビで日本国内へ、そして全世界へはNHKの国際放送「NHK World JAPAN」では全世界へ向けて放送します。

現時点で『tiny desk concerts JAPAN』をYouTubeで配信するという文言は見当たりません。NHK MUSICの公式YouTubeチャンネルにて昨日公開された予告動画の概要欄でも、そのような文章はみられませんでした。そして付け加えれば、その予告動画をブログに貼付しようとすると通常と異なる形に変換されてしまいます。

これは『NHKYouTube動画は記事にエンベッドができないもっとも厳しいポリシーになってる』(今回の紅白歌合戦では、星野源さんやSuperflyなど、一部アーティストのフル動画がYouTubeに公開されてく模様|徳力基彦(tokuriki)- note(1月17日付)より)ことが理由。YouTubeに飛ばないと観られないというワンクッションの存在はユーザーに面倒くさいという心理を生みかねません。

それもあって、上記内容をポストした次第。NPRでの公開もさることながら、NHK側がYouTubeのポリシーを変えることも重要です。

 

”tiny desk concerts”は韓国でも開始されているのですが、こちらはその韓国版のYouTube、また一部はNPR側でも公開されています。

(上記はTiny Desk Koreaの公式YouTubeチャンネルにて掲載された動画ですが、NPRのアカウントからも発信されています(→こちら)。)

韓国版とNPRの双方で掲載されているのはTOMORROW X TOGETHERやV(BTS)に限られるものの、韓国版はYouTubeできちんと観られる仕様であり、またエンベッド(埋め込み)も通常の形で可能となっています。

 

 

今年に入りこのブログでは、テレビパフォーマンス映像のYouTube配信に関する理想の条件を提案しています。『tiny desk concerts JAPAN』は元々配信である”tiny desk concerts”を放送の形にしており、またNHKプラスやNHK WORLD JAPANという媒体経由で配信の形でも観ることができるでしょうが、しかしYouTubeでの配信視聴に慣れている方には大きな手間になりかねません。

ゆえに、少なくともNHK MUSICの公式YouTubeチャンネルで視聴可能にすることが重要であり、そして本家NPRの公式YouTubeチャンネルでも流れる必要があります。特に後者が重要と考えるのは、tiny desk concertsそしてNPRの認知度が高く、同チャンネルを世界中の音楽ファンが視聴することで出演者の名が世界に拡がっていくためです。

 

ビルボードジャパンは昨日、昨年秋に開始したGlobal Japan Songs Excl. Japanの振り返りコラムを公開しています(集計期間はチャート発足前からの1年間)。チャートの内容はビルボードジャパンによる”Global Japan Songs Excl. Japan”とは何か、ビルボードジャパンへの提案も添えて紹介する(2023年9月15日付)で紹介していますが、日本の楽曲そして歌手が世界に轟くことを後押しするという意味も込めた発足や公開と捉えています。

世界で人気となる日本の楽曲にはアニメ関連やTikTokでバズが発生したものが多い中で、世界の音楽ファンが興味を抱くコンテンツに日本人歌手が登場することは別のアプローチから人気を高めると考えます。その絶好の機会を、コンテンツを放送する側が一方では配信に消極的であったり、自社独自の(使い勝手が良いとはいえない)プラットフォームに固定させることは機会損失になると危惧します。

 

NHKとNPRでの契約内容は分かりかねますが、日本人歌手が世界に羽ばたくための障壁が生まれないことを願います。また、ドメスティックなコンテンツであってもYouTubeで公開すれば、日本の楽曲が世界に拡がる大きな一助となります。日本のメディアの判断を注視し、英断を期待します。

 

 

 

(※追記(4月12日18時35分))

日本時間の4月12日18時、『tiny desk concerts JAPAN』の藤井風さん出演回がNPR Musicの公式YouTubeチャンネルにて公開されました。記事にエンベッドができないもっとも厳しいポリシーを採用するNHK側のYouTubeチャンネルとは異なり、通常仕様のエンベッドとなっています。

動画の概要欄に掲載された内容を紹介します。

In the corner of a busy office at the NHK Broadcasting Center in Shibuya, Tokyo, a staffer rearranged books, vinyl records and tchotchkes on a bright red shelving unit. The production crew double-checked equipment settings and made small adjustments to the lighting. Another worker added a few more posters to the tall white file cabinets. Cameras were set and microphones were ready because Fujii Kaze and his band had just rehearsed the night before. Everyone in the room — including a few of us from NPR that were there to help — was eager and excited because the very first performance for Tiny Desk Concerts JAPAN was about to start.

(東京・渋谷にあるNHK放送センターの忙しいオフィスの片隅で、スタッフが真っ赤な棚に本やレコード、小物を並べ直していた。制作スタッフは機材の設定を再チェックし、照明の微調整を行った。別のスタッフは、背の高い白いファイルキャビネットにポスターを追加した。藤井風と彼のバンドは前夜リハーサルをしたばかりだったので、カメラはセットされ、マイクも準備されていた。タイニー・デスク・コンサート・ジャパンの初公演が始まるのだ。)

 

Popular around the world, the talented Fujii Kaze is a Japanese singer and pianist known for his sultry R&B grooves and catchy songwriting. His adventurous spirit was strong as he settled into the Tiny Desk way — a concert that's intimate, mostly acoustic and recorded without reverb, effects, in-ear monitors or wedges. During the rehearsal, the band quickly acclimated to the environment and adjusted instrument volumes to hear each other better. The end result was a beautiful 30 minute set, captured without pause and with no stops, restarts or retakes.

(才能豊かな藤井風は、世界中で人気の日本人シンガーでありピアニストであり、そのセクシーなR&Bグルーヴとキャッチーなソングライティングで知られている。リバーブやエフェクト、インイヤーモニターやウェッジを使わずに、親密でアコースティックなコンサートを録音するタイニーデスク方式に落ち着いた彼の冒険心は強かった。リハーサルの間、バンドはすぐに環境に慣れ、お互いの音がよく聞こえるように楽器の音量を調整した。その結果、一時停止もリスタートもリテイクもなく、30分間の美しいセットが完成した。)

 

This video is part of the second international version of Tiny Desk, a joint venture between NPR and The Japan Broadcasting Corporation (NHK) — the sole public media organization in Japan that is operated with the purpose of providing the latest news, education and culture both domestically and internationally. This new series will spotlight emerging and established Japanese artists with the same engaged performances, look and feel of the original Tiny Desk Concerts series.

(このビデオは、NPRと日本放送協会NHK)の共同事業であるタイニーデスクの第2回国際版の一部である。NHKは日本で唯一の公共メディアであり、最新のニュース、教育、文化を国内外に提供する目的で運営されている。この新シリーズは、タイニーデスク・コンサート・シリーズと同じ魅力的なパフォーマンス、ルック&フィールで、日本の新進・ベテランアーティストにスポットライトを当てる。)

 

(※ ()内はDeepLによる翻訳内容となります。)

 

最後に私見を記すならば、NHK総合での放送からNPR Music公式YouTubeチャンネルの公開までにおよそ1ヶ月を有したのは、両者の契約内容ゆえと想起されます。NHK側には、今後のOA時にNPR Musicの公式YouTubeチャンネルにて後日公開される旨を伝達するよう願います。