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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

藤井風「花」、ソングチャートトップ10入りの原動力となった動画再生指標の伸長について

10月13日にデジタルリリースされた藤井風「花」が、最新10月25日公開分ビルボードジャパンソングチャート(集計期間:10月16~22日)にて初の1週間フル加算に伴い11→7位へ上昇。初のトップ10入りを果たしたこの曲について、ビルボードジャパンはこのように解説しています。

10月12日にスタートしたドラマ『いちばんすきな花』の主題歌・藤井風「花」は、ストリーミングのポイントが前週から約111%増で55位→12位、動画再生のポイントは約71%増加し77位→21位へ。この2指標の大幅アップが牽引して、前週総合初登場11位から7位へと上昇している。

「花」については前週のブログエントリーで特に大きく取り上げた指標も躍進を果たしています。それが下記CHART insightにて赤で表示される動画再生指標です。

現時点にて藤井風「花」の公式動画は上記公式オーディオのみですが、きちんと公開していることで再生回数を獲得できたと考えます。歌手の中にはサブスク再生やダウンロード数に支障をきたすと考え公式オーディオを公開しない(もしくはYouTubeの有料会員向けにのみ公開する)ことを選択する方もいらっしゃるかもしれませんが、公開すれば再生回数を獲得しチャートにも反映されることが今回のチャートから解ります。

(中略)

動画再生指標はミュージックビデオのみならずリリックビデオや公式オーディオ等、公式動画が加算対象となります(国際標準レコーディングコード(ISRC)をきちんと付番していることが前提)。ミュージックビデオの公開が遅れるならば音源配信日に公式オーディオを広く公開する、またオーディオ→リリックビデオ→ミュージックビデオの順に公開する等、公式オーディオを用いた施策の活用が重要であることが今回よく解ります。

引用が長くなりましたが、藤井風「花」のビルボードジャパンソングチャート初登場時における解説を今一度紹介。実際、現時点においても「花」の公式動画はオーディオのみとなっていますが、この動画だけで動画再生指標21位を記録するに至っています。

 

動画再生指標の上昇は、ミュージックビデオやリリックビデオを目当てに来る方の多さを示しているといえるでしょう。公式オーディオをきちんと公開していることで、ミュージックビデオ等の(現時点での)未公開を知ったとしてもそちらに誘導することが可能です。

 

また、公式オーディオの公開はオーディオストリーミングの多さにもつながっていると考えられます。ビルボードジャパンではYouTubeのオーディオストリーミングは動画再生ではなく、主にサブスク再生回数に基づくストリーミング指標に組み入れられます。

藤井風「花」はストリーミング5,329,796回再生を記録しこの指標で12位を獲得していますが、主要サブスクサービスにおける週間チャートではApple Musicが12位(10月22日日曜までの1週間が集計期間)、Spotifyが8位(10月19日木曜までの1週間)に対しLINE MUSICでは44位(10月24日火曜までの1週間)と比較的大きく異なります。

他方、YouTubeの日本における楽曲ランキングでは、10月19日までの1週間を集計期間とする最新分において藤井風「花」は7位にランクインしています(ランキングはこちら)。このランキングは楽曲が公式に使用されたユーザー作成動画も含まれますが(詳細はこちら)、オーディオストリーミングも加算対象になるものと考えられます。そもそも公式オーディオのみにて楽曲ランキングでトップ10入りすること自体凄いことです。

公式オーディオ動画はYouTubeを動画として利用する方のみならずYouTubeをオーディオストリーミングとして活用する方のニーズにも応え、結果的に動画再生指標の高さのみならずストリーミング指標の押し上げにも寄与したといえるかもしれません。

 

 

以前、サブスク解禁していない旧ジャニーズ事務所所属歌手の作品がストリーミング指標で300位以内にランクインしていたことがありました。下記エントリーではSnow Man「HELLO HELLO」およびSixTONES「マスカラ」を紹介していますが、その後なにわ男子「初心LOVE」もストリーミング指標が加点されています。

ここから見えてくるのは動画自体へのアクセス数の多さもさることながらYouTubeをオーディオストリーミングとして活用する方の多さであり、仮にサブスク未解禁歌手がデジタルに明るくなった際に彼らの作品がストリーミング指標で上位に進出する可能性も高いと捉えていいでしょう。

ジャニーズ事務所所属歌手に限らず、他事務所でも特にベテラン歌手においてデジタルに未だ明るくならない姿勢がみられます(上記エントリー群参照)。しかしサブスクは敬遠してもYouTubeには積極的という方は少なくないでしょう。そのような方に対し、藤井風「花」のチャートアクションはデジタル環境充実の重要性を示すに十分と考えます。

 

 

最後に。今回の動画再生指標上昇は、藤井風「花」が主題歌を担当するドラマ『いちばんすきな花』(フジテレビ)と放送枠、脚本家等が同じである昨年の作品『silent』(フジテレビ)の主題歌となったOfficial髭男dism「Subtitle」でも同様の現象がみられ、同曲は登場2週目に動画再生指標12→4位、総合では3→1位に上昇しています(2022年10月26日公開分)。「Subtitle」のミュージックビデオは翌週以降この指標に加算されています。

『いちばんすきな花』の動向、そして「花」の推移を見守ると共に、日本の音楽業界が公式オーディオの重要性を意識することを願っています。