イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

KAN「愛は勝つ」がソングチャート81位に登場…その原動力、そしてさらに伸びた可能性を考える

11月22日公開分の最新ビルボードジャパンソングチャートでは、KAN「愛は勝つ」が81位に再登場を果たしています。

KAN「愛は勝つ」は元々1990年にリリースされ大ヒット。KANさんは1991年にこの曲で日本レコード大賞(ポップス・ロック部門大賞)を受賞、また『第42回NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)に出場するなど、KANさんを代表する作品となりました。そのKANさんの訃報が流れたことで、今回この曲がチャートを急上昇した形です。なおビルボードジャパンソングチャートは2008年に開始されています。

 

このブログでは今年亡くなった方の、訃報が流れた直後におけるビルボードジャパンソングチャートの動向を記しているのですが、特にラジオ指標が急増する一方で接触指標群、特にストリーミングにおいて伸びないという共通点を感じています。

その中にあって、KAN「愛は勝つ」のCHART insightからは興味深い動きが見て取れます。

 

(上記は直近60週分におけるCHART insight。)

6指標で構成されるビルボードジャパンソングチャートにおいて、KAN「愛は勝つ」はダウンロード(上記CHART insightでは紫で表示)が6位、ラジオ(黄緑)が13位にランクイン。また動画再生(赤)およびカラオケ(緑)は100位未満ながら300位圏内に入り、加点対象となっています。

 

ラジオはプランテックによるOAチャートを基に、調査対象局の聴取可能人口等を加味して指標化するものですが、そのOAチャートでは15位に登場しています。

調査対象93.5%となる全国広範囲のステーションがオンエアするなど、今週最も広く注目された曲であったことも特筆すべきだろう。また、リクエストオンエア数は今週最多のaiko「星の降る日に」、次点の藤井 風「花」の新曲勢に次ぐ多さだった。オンエア状況から同曲、そしてKANさんが如何に広く愛されていたかが窺える。

愛は勝つ」が元々ラジオをきっかけにブレイクしたことや、多くの方にとってKANさんを代表する作品がこの曲だと認識されていることで、OAやリクエストがこの曲に集中したと捉えていいでしょう。亡くなる直前までレギュラーラジオ番組を持っていたこともラジオの強さに影響していると考えます。訃報が伝えられてから2日弱でトップ20内に入っており、「愛は勝つ」の上昇度合い、ラジオ局側の追悼の思いがよく解ります。

11月12日にメッケル憩室がんとの闘病の末、61歳で死去したKANの代表曲「愛は勝つ」は5,283DLを獲得し、6位にデビューした。

加えてダウンロード指標でも上位に進出。KAN「愛は勝つ」の最新チャートにおける獲得ポイントのうち9割近くが、これら2指標で占められています。

 

加えてカラオケ指標の再上昇も注目すべきですが、これら指標群は訃報が流れた直後に上昇する傾向がみられます。

他方、たとえばCHART insightにて黄色で表示されるフィジカルセールスは、特にシングルにおいて廃盤になりやすい性質上ほぼカウントされず、またストリーミング(青)や動画再生(赤)においてはサブスクやYouTubeのどちらか、もしくはそのどちらもが充実していないため加点されにくいという状況が見て取れました。

 

KANさんは今月に入り一部作品をサブスクで解禁していますが、しかしながらその中に「愛は勝つ」のオリジナル版は含まれていません。同曲が収められたコンピレーションアルバム『やまだかつてないCD』(1991)においても、永井真理子ZUTTO」共々サブスクでは聴くことができません。

(ブログ執筆時点で、「愛は勝つ」「ZUTTO」および2曲のオリジナルカラオケ版は聴取できないことがSpotifyから解ります。)

ゆえにサブスク再生回数等に基づくストリーミング指標(CHART insightでは青で表示)は「愛は勝つ」では未加算なのですが、一方で動画再生指標は加点されています。これは下記動画が大きく影響しているためといえるでしょう。

 

KANさんの公式YouTubeチャンネルでは、「愛は勝つ」は公式オーディオにて公開されています(また、同曲を収録した『野球選手が夢だった。』も発信済です)。おそらくは訃報を耳にした方の中に上記動画を再生した方が少なくなかったことで、「愛は勝つ」の動画再生指標が加点対象に至ったと考えていいでしょう。この公式オーディオの重要性については、最近では藤井風「花」についても述べたばかりです。

この公式オーディオをサブスク的に用いた方も多いかもしれないこと、公式オーディオのみで動画再生指標300位以内に達したことを踏まえれば、仮にKANさんのパリ滞在前の作品もきちんとサブスクで解禁されていたならば、「愛は勝つ」はストリーミング指標も300位以内に達し加点対象となることで、総合順位も大きく伸びたのではと考えます。

 

KANさんは今月一部サブスクを解禁したタイミングで、公式サイトにて『私自身がそのあたりよくわかってないこともあってか、なんとな〜くのままになっていたいわゆる「サブスク」』と記しています(こちらで確認できます)。一方で公式オーディオ動画の以前からの解禁を踏まえれば、公式オーディオ展開のタイミングにてサブスクを充実させることはできなかったのかと感じています。

この発信は、「愛は勝つ」の順位がより大きく伸びた可能性を逸したことを勿体なく思うゆえではなく、作品を聴いて故人を偲ぶというユーザーの行動が制限されることを悲しく思うため。デジタル環境の充実はタイムラグのない接触や所有を可能とし、後のフィジカル所有行動への移行にもつながります(ただしCDの所有やレンタルは環境面での制約が高い状況です)。そしてデジタル拡充は、最終的にチャートへ反映されるのです。

 

 

KANさんのサブスク解禁がどうなるかは分かりかねますが、YouTubeで公式オーディオを用意しているならば解禁は行ってほしいと切に願います。