イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

LE SSERAFIM『UNFORGIVEN』リリース以降の施策からみえてくる、世界での知名度上昇に向けた動きが興味深い

K-POPが新しいフェーズに突入していると感じています。

最新7月29日付の米ビルボードソングチャートではBTSのメンバー、ジョングクによる「Seven (feat. ラトー)」が初登場で首位に立ちました。米では翌週以降の動向を踏まえて真の社会的ヒットに成るかを見極める必要があると感じますが、グローバルチャートではBTS「Dynamite」や「Butter」を彷彿とさせる強さとなっています。

またNewJeansは次週の米ビルボードアルバムチャートにてEP『Get Up』が初登場する予定ですが、最新の米ソングチャートではリード曲「Super Shy」が64位に入りキャリア最高位を更新。そしてビルボードジャパンのソングチャートおよびアルバムチャートを合算したトップアーティストチャートでは最新7月26日公開分にて4位に入り、最高位を2週続けて更新しています。この点は後日あらためて紹介する予定です。

 

K-POPの新たなフェーズとは、(韓国以外の)アジアでの人気確立、そして欧米で人気が高まり世界規模のヒットに成ってきているということ。そして今回紹介するLE SSERAFIMについては、ヒットの世界規模化を意識して動いていると感じます。

LE SSERAFIMが5月にリリースしたファーストアルバム『UNFORGIVEN』やその収録曲には、グローバルに向けた様々な工夫が施されています。

 

 

アルバム『UNFORGIVEN』のリード曲となるタイトルトラックは、映画『続・夕陽のガンマン (原題:The Good, The Bad and The Ugly)』のメインテーマをサンプリングしたのみならず、ギターにはナイル・ロジャースが参加。ダフト・パンクファレル・ウィリアムス共々招かれた「Get Lucky」等近年のディスコティーク作品への参加が多いナイル・ロジャースK-POP作品に参加したことで、彼女たちに箔が付いたと感じます。

 

アルバム『UNFORGIVEN』からは、今年あらためて火が付いたジャージークラブのビートを施した「Eve, Psyche & the Bluebeard's Wife」が新たな人気曲に。5月下旬にミュージックビデオが公開されるとTikTokで人気に火が付いたこの曲は、7月に入り英語版がリリース。英語詞リリースがグローバルチャートにおいて有効に成り得ることについては、以前このブログでも紹介しています。

そして英語版リリースの翌週には、アメリカのUPSAHLが参加したリミックスが公開。UPSAHLは「Eve, Psyche & the Bluebeard's Wife」をTikTokで初めて知り、すぐにファンになったと語っています(LE SSERAFIM、英語曲「Eve, Psyche & The Bluebeard's wife」のリミックスバージョンを公開…米シンガーソングライターUPSAHLも参加 - Kstyle(7月14日付)参照)。

さらに「Eve, Psyche & the Bluebeard's Wife」においては、リナ・サワヤマ参加バージョンも昨日公開。UPSAHLバージョン共々、英語詞版を基とするリミックスとなります。

ジャージークラブの要素を抑え、「UNFORGIVEN」よりも強いウエスタンの香りも漂わせる今回のリミックスは、日本出身でイギリスに拠点を置くリナ・サワヤマによる作品。

リナ・サワヤマは昨年リリースのアルバム『Hold The Girl』が英アルバムチャートで日本人最高となる3位を記録しており、また今年は『ジョン・ウィック:コンセクエンス (原題:John Wick: Chapter 4)』で映画俳優としてのキャリアもスタート。グローバルで活躍するリナの参加が、LE SSERAFIMの欧米における知名度上昇の契機となるはずです。

 

オリジナルバージョンに加えて英語詞版、さらにリミックスバージョンの投入は、米ビルボードによるグローバルチャートではいずれも合算されることからチャート上昇にも効果を発揮します。グローバルチャートの詳細は下記エントリーをご参照ください。

LE SSERAFIM「Eve, Psyche & the Bluebeard's Wife」は最新7月29日付のグローバルチャートにて、UPSAHLリミックス初加算効果も相まってGlobal 200で85→69位へ上昇。同曲の最高位は66位であり、リナ・サワヤマによるリミックス版が初加算される8月12日付にて最高位を更新する可能性も出ています。同週はトラヴィス・スコットやポスト・マローンのアルバム収録曲も大挙エントリーしますが、LE SSERAFIMの動向に注目です。

 

そのLE SSERAFIMは、日本においても興味深い動きをみせています。

日本では8月23日にフィジカルシングルとして「UNFORGIVEN (feat. ナイル・ロジャース)」の日本語詞版がリリース。ビルボードジャパンではリミックス版がオリジナルバージョンとは合算されないものの言語のみが異なるならば合算対象に。そのチャートポリシー(集計方法)も相まって、前作「FEARLESS」はフィジカルセールス指標初加算週に総合ソングチャートを制しています。

そして日本でのセカンドフィジカルシングルからは、imaseさんが提供した「ジュエリー」が今週先行公開されました。

「NIGHT DANCER」がJ-POPとして初めて韓国MelOnのトップ100にランクインしたimaseさんは、LE SSERAFIM共々ユニバーサルミュージックに所属。同社の巧さは(追記あり) ビルボードジャパンの2023年度上半期チャートが本日発表…注目すべきポイントとは(6月9日付)でも触れていますが、組み合わせての訴求はいい意味で予想外でした。「ジュエリー」がLE SSERAFIM、imaseさん双方の注目度上昇につながるでしょう。

 

 

著名曲のサンプリング使用、世界的レジェンドのギター参加、英語詞版のリリース、複数のリミックス版登場、さらには音楽市場規模の大きい日本での独自展開等、LE SSERAFIMはアルバム『UNFORGIVEN』のリリース後も様々な施策を用意し、収録曲ならびにアルバムを通じて自身の訴求に努めています。世界の音楽チャートにおいてどこまで結果を示しキャリアアップにつなげるか、LE SSERAFIMの動向に注目です。