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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週および当週の上位初進出曲におけるCHART insightから、真のヒット曲と成るかを読む (2023年8月2日公開分)

今回のエントリーでは、ビルボードジャパンソングチャートにおいて前週上位に初めて進出した曲(下記エントリー参照)の翌週動向、そして最新週における上位初進出曲の動向をチェックし、真の社会的ヒット曲と成るかを読みます。

 

まずは前週のエントリーにて紹介した上位初登場曲の、最新チャートにおける動向をCHART insightを用いて紹介します。

CHART insightについては下記ツイートにて簡潔に説明しています。

 

<2023年7月26日公開分 ビルボードジャパンソングチャートにて

 20位までに初めて登場した作品の、翌週におけるCHART insight>

 

・米津玄師「地球儀」 前週3位→2位

=LOVE「ナツマトペ」 前週5位→100位未満(300位圏内)

サザンオールスターズ「盆ギリ恋歌」 前週7位→52位

・INI「My Story」 前週19位→62位

 

米津玄師「地球儀」については木曜のブログエントリーにて解説しています。同曲はフィジカルセールス指標およびミュージックビデオ解禁に伴い動画再生指標が初加算された一方、ストリーミング再生回数が減少しストリーミング指標に影響が及んでいます。

ストリーミング指標は上位進出且つロングヒットに欠かせない、最も大きなポイント源です。YouTubeのオーディオストリーミングもこの指標のカウント対象となりますが、サブスク未解禁曲がこのオーディオストリーミングのみでストリーミング指標300位以内に入ることは厳しくなっています。ゆえにきちんと解禁した上で、コアファンのみならずライト層からの支持も得ることが重要です。

 

=LOVE「ナツマトペ」はストリーミング等接触指標群が加算されずに100位未満に急落。またINI「My Story」ではコアファンが多く参加するLINE MUSIC再生キャンペーンが8月2日まで行われていましたが、開始2週目でコアファンが再生回数ハードルを徐々に達成したゆえかストリーミング指標は24→42位に後退しています。当該キャンペーンについては、終了後も指標が安定するかを見極めることが重要です。

 

 

続いて、最新8月2日公開分のビルボードジャパンソングチャートにおいて初めてトップ20入りした作品のCHART insightをチェックします。

<2023年8月2日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 20位までに初めて登場した作品のCHART insight>

 

・4位 (初登場) 日向坂46「Am I ready?」

・6位 (初登場) OCHA NORMA「ちょっと情緒不安定?...夏」

・7位 (初登場) LIL LEAGUE from EXILE TRIBE「Higher」

・11位 (前週81位) NewJeans「ETA

 ・13位 (初登場) 山下達郎「Sync Of Summer」

・17位 (初登場) 緑黄色社会サマータイムシンデレラ」

サブスク未解禁の2曲はストリーミング指標が未加算。また日向坂46「Am I ready?」はこの指標が100位未満ながら300位圏内に入ったことで加点対象となり、同指標においてポイント全体のおよそ1割を獲得しています。順位こそ低くとも獲得ポイントは低くない点から、ストリーミング指標の重要性が解るはずです。

 

そのストリーミング指標ではNewJeansが強さを発揮しています。

そして当週、NewJeans「ETA」が初のトップ10入り。同曲は、7月22日にリリースされた2nd EP『Get Up』に収録されたトリプル・タイトル曲のひとつで、リリースに伴うキャンペーン施策も展開されており、前週89位の初登場から大きくジャンプアップした。NewJeansは、「Super Shy」といった同EPに収録されている6曲のほか、「Ditto」「OMG」などの既発曲を含む計9曲を100位圏内に送り込んでいる。

ETA」は今回の集計期間中LINE MUSIC再生キャンペーンが行われたことがストリーミング指標トップ10入りの要因といえます。ゆえにキャンペーン終了後となる次週以降の動向を踏まえて真の社会的ヒットに至るかを判断する必要がありますが、その次週8月9日公開分の速報値(先ヨミ記事)では「ETA」が7位に入り(下記参照)、高値安定に至る可能性も考えられます。

 

他方、OCHA NORMA「ちょっと情緒不安定?...夏」は所属するハロー!プロジェクトの、山下達郎「Sync Of Summer」は自身のサブスク未解禁方針ゆえにストリーミング指標未解禁となっています。後者においては以前から解禁しない旨をインタビュー等で語っていますが、一方では「クリスマス・イブ」等ごく一部の作品について、一部のサブスクサービスに限定してですが解禁しています(下記エントリーに記事のリンク有り)。

こちらでは2021年のクリスマスシーズンにおける「クリスマス・イブ」のCHART insightを掲載していますが、翌年にもストリーミング指標77位を記録。山下さんがサブスクに関わる方を非難する一方で実際は一部を解禁していること、そしてその効果が可視化されている以上、たとえばこの記事のように契約問題が不合理と述べるならば自ら先陣に立って改善を求めるほうが音楽業界全体にとって素晴らしいことだと考えます。

 

ちなみに、山下達郎「Sync Of Summer」はラジオ指標首位を獲得し、その指標のみで2,400ポイント以上を獲得。昨年リリースのアルバム『SOFTLY』からのリード曲「LOVE’S ON FIRE」もまたラジオでの獲得ポイントが大きく、ラジオ業界全体が山下さんを支持していると言っても過言ではないかも知れません。ラジオ指標の基となるOAチャートを提供するプランテックは、このような記事を発信しています。

ラジオ指標は前週のサザンオールスターズも同様、ベテラン歌手が強い状況です。一方で、サブスクを解禁していれば山下達郎「Sync Of Summer」のトップ10入りも、またサブスクが強ければサザンオールスターズ「盆ギリ恋歌」の急落阻止も有り得たと考えます。デジタルを味方につけることは非常に重要だということが、このエントリーからみえてくるものと考えます。

 

 

ビルボードジャパンは音楽における所有や接触の動向変化を追いかけ、チャートポリシー(集計方法)を変更し続けたことで、ソングチャートを真の社会的ヒット曲の鑑へと磨き上げています。上位進出はコアファンの多さ(主に所有)に因るところが大きい一方、ロングヒットする曲はライト層の支持(主に接触)が重要となります。

チャートを意識して施策を講じライト層へ支持を拡げることで、上位での安定そして作品の認知上昇につながります。音楽チャートと浸透度が比例するように成ったといえる以上、チャートで上位安定を目指さない手はないはずです。