(※追記(6時31分):ビルボードジャパンアルバムチャートの記事に一部誤りがあり、訂正された記事が先程アップされました。それを踏まえ、このブログでも貼付ツイートの差替を実施しています。)
(※追記(6月11日8時56分):ビルボードジャパン上半期チャートのうちソングチャートおよびトップアーティストチャートは100位まで公開され、また後者については上位20組の指標構成も掲載されています。それを踏まえて表を作成の上、6月10日付および6月11日付エントリーにて分析を行いました。このエントリーの最後にリンクを掲載しています。)
(※追記(6月14日7時51分):ビルボードジャパン上半期チャートのうちアルバムチャートは20位まで公開され、各指標も20位までの数値が掲載されています。それを踏まえて表を作成の上、6月14日付エントリーにて分析を行いました。このエントリーの最後にリンクを掲載しています。)
ビルボードジャパンは本日、2023年度上半期各種チャートを公開しました。集計期間:2022年11月28日~2023年5月28日(2022年12月7日公開分~2023年5月31日公開分)となります。
Billboard JAPAN 2023年上半期チャート発表、Official髭男dismが【JAPAN Hot 100】/King & Princeが【Hot Albums】首位に https://t.co/UAspHljFiG pic.twitter.com/Xqp8Kmr9OY
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各チャートの詳細はこちらから確認できます。
・上半期ソングチャートおよび各指標
【ビルボード 2023年上半期JAPAN Hot 100】Official髭男dism「Subtitle」が歴代記録を塗り替え、総合首位(コメントあり) https://t.co/Py5EocePIp pic.twitter.com/gPFZk1SElt
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【ビルボード 2023年上半期総合ソング・チャート“JAPAN Hot100”】
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1位 Official髭男dism
2位 米津玄師
3位 YOASOBI
4位 Vaundy
5位 10-FEET
6位 Ado
7位 Tani Yuuki
8位 なとり
9位 Official髭男dism
10位 back numberhttps://t.co/Py5EocePIp pic.twitter.com/OQeOzPcdQX
【ビルボード 2023年上半期Top Singles Sales】King & Prince『Life goes on/We are young』で初首位 Snow Man/乃木坂46が続く https://t.co/Gi4fqMsrdr pic.twitter.com/jJyns85fzD
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【ビルボード 2023年上半期シングル・セールス・チャート“Top Singles Sales”】
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1位 King & Prince
2位 Snow Man
3位 乃木坂46
4位 乃木坂46
5位 日向坂46
6位 なにわ男子
7位 AKB48
8位 INI
9位 SixTONES
10位 櫻坂46https://t.co/Gi4fqMsrdr pic.twitter.com/7WrFbNctq8
【ビルボード 2023年上半期Download Songs】YOASOBI「アイドル」首位、アニメ関連曲がチャート席巻 https://t.co/D2yvwMVRFY pic.twitter.com/Ftn3duX33h
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【ビルボード 2023年上半期ダウンロード・ソング・チャート“Download Songs”】
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1位 YOASOBI
2位 Official髭男dism
3位 10-FEET
4位 MAN WITH A MISSION×milet
5位 米津玄師
6位 YOASOBI
7位 Ado
8位 Vaundy
9位 SEKAI NO OWARI
10位 Official髭男dismhttps://t.co/D2yvwMVjQq pic.twitter.com/lnykcqh0ay
【ビルボード 2023年上半期Streaming Songs】Official髭男dism「Subtitle」が約2.8億回再生で首位獲得 米津玄師/Vaundyが続く https://t.co/clM9TFNFB7 pic.twitter.com/AxYWlWPv51
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【ビルボード 2023年上半期ストリーミング・ソング・チャート“Streaming Songs”】
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1位 Official髭男dism
2位 米津玄師
3位 Vaundy
4位 YOASOBI
5位 Tani Yuuki
6位 なとり
7位 Ado
8位 Official髭男dism
9位 10-FEET
10位 Mrs. GREEN APPLEhttps://t.co/clM9TFN7Lz pic.twitter.com/Bqo2WvEreb
・上半期アニメーションソングチャート
【ビルボード 2023年上半期Hot Animation】史上初“21連覇”達成、アニメ『チェンソーマン』OPの米津玄師「KICK BACK」上半期制す https://t.co/zMgpVjL4oc pic.twitter.com/UrRBI5fjmp
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【ビルボード 2023年上半期総合アニメソング・チャート“Hot Animation”】
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1位 米津玄師
2位 YOASOBI
3位 10-FEET
4位 Ado
5位 Official髭男dism
6位 YOASOBI
7位 Ado
8位 Aimer
9位 Official髭男dism
10位 MAISONdeshttps://t.co/zMgpVjKwyE pic.twitter.com/XyS8po5xeZ
・上半期アルバムチャートおよび各指標
【ビルボード 2023年上半期Hot Albums】King & Prince『Mr.5』が総合首位 Snow Man/SEVENTEENが続く(コメントあり) <6/9訂正> https://t.co/Baj0XyiB9l pic.twitter.com/4kVOWl6Rqh
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【ビルボード 2023年上半期総合アルバム・チャート“Hot Albums”】
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1位 King & Prince
2位 Snow Man
3位 SEVENTEEN
4位 Stray Kids
5位 SixTONES
6位 結束バンド
7位 INI
8位 JIMIN
9位 back number
10位 ジャニーズWESThttps://t.co/Baj0XyiB9l pic.twitter.com/nw2VOxPlJI
【ビルボード 2023年上半期Top Albums Sales】King & Prince『Mr.5』が首位獲得、Snow Man/SEVENTEENが続く https://t.co/u8naR96kMH pic.twitter.com/z1cDGHXYHn
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【ビルボード 2023年上半期アルバム・セールス・チャート“Top Albums Sales”】
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1位 King & Prince
2位 Snow Man
3位 SEVENTEEN
4位 Stray Kids
5位 SixTONES
6位 INI
7位 ジャニーズWEST
8位 TOMORROW X TOGETHER
9位 JIMIN
10位 SEVENTEENhttps://t.co/u8naR95MX9 pic.twitter.com/RVnJlcXI9W
【ビルボード 2023年上半期Download Albums】結束バンド『結束バンド』が通算21回のトップ10入りで首位に back number『ユーモア』が続く https://t.co/VyUc4nMtYX pic.twitter.com/5nh7oiKt0I
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【ビルボード 2023年上半期ダウンロード・アルバム・チャート“Download Albums”】
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1位 結束バンド
2位 back number
3位 Ado
4位 ELLEGARDEN
5位 星街すいせい
6位 JIMIN
7位 桑田佳祐
8位 Agust D
9位 スピッツ
10位 松任谷由実https://t.co/VyUc4nMtYX pic.twitter.com/lBC7Jyp9S3
・上半期作詞家および作曲家チャート
【ビルボード 2023年上半期Top Lyricists】「Subtitle」「ミックスナッツ」とロングヒット続出、藤原聡が1位に https://t.co/Mg1lUu0hPl pic.twitter.com/JiN71bIezd
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【ビルボード 2023年上半期Top Composers】藤原聡、ラジオ/動画/カラオケで3冠達成し3年ぶりの首位 https://t.co/F207UYMpZm pic.twitter.com/Z0ootiECYF
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・上半期その他各種チャート
【ビルボード 2023年上半期Heatseekers Songs】ano「ちゅ、多様性。」通算8度の首位獲得で上半期1位に https://t.co/wDaWqfNBQR pic.twitter.com/PzYJ5xvpTr
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【ビルボード 2023年上半期ヒートシーカーズ・ソング・チャート“Heatseekers Songs”】
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1位 ano
2位 ヤングスキニー
3位 NewJeans
4位 新しい学校のリーダーズ
5位 8LOOM
6位 NewJeans
7位 PEOPLE 1
8位 結束バンド
9位 結束バンド
10位 imasehttps://t.co/wDaWqfNBQR pic.twitter.com/BBLmQvSEls
【ビルボード 2023年上半期UGC Songs】Kanaria「酔いどれ知らず」が首位、2位はなとり「Overdose」がチャートイン https://t.co/V3nIYIl90S pic.twitter.com/WP4x0yreqh
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【ビルボード 2023年上半期ユーザー・ジェネレイテッド・ソング・チャート“Top User Generated Songs”】
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1位 Kanaria
2位 なとり
3位 HoneyWorks
4位 YOASOBI
5位 ツミキ
6位 ピノキオピー
7位 DECO*27
8位 米津玄師
9位 Kanaria
10位 MAISONdeshttps://t.co/V3nIYIl90S pic.twitter.com/oM5loWP9Fv
【ビルボード 2023年上半期TikTok Songs Chart】HoneyWorks「可愛くてごめん (feat. かぴ)」が首位獲得 https://t.co/oOwQKXKOVp pic.twitter.com/OEkAAr8cU0
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【ビルボード 2023年上半期TikTokチャート“TikTok Songs Chart”】
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1位 HoneyWorks
2位 Chipz
3位 メイ・スティーブンス
4位 有華
5位 YOASOBI
6位 ジョージ・エズラ
7位 YOASOBI
8位 Kanaria
9位 LANA
10位 anohttps://t.co/oOwQKXKOVp pic.twitter.com/wOpset365J
【ビルボード 2023年上半期ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20】記念すべき初の上半期首位獲得はKanaria「酔いどれ知らず」、ツミキ/すりぃが続く(ツミキコメントあり) https://t.co/nCGP4oIRLe pic.twitter.com/rxyRWqvvak
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【ビルボード 2023年上半期ニコニコ VOCALOID SONGS“ニコニコ VOCALOID SONGS”】
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1位 Kanaria
2位 ツミキ
3位 すりぃ
4位 まらしぃ×じん×堀江晶太(Kemu)
5位 ゆこぴ
6位 いよわ
7位 ピノキオピー
8位 ぬゆり
9位 かいりきベア
10位 wowakahttps://t.co/nCGP4oIjVG pic.twitter.com/9BascZOw01
・上半期トップアーティストチャート
【ビルボード 2023年上半期Artist 100】Official髭男dismが堂々1位、総合100位圏内に8曲入り https://t.co/qIN0YYsuCe pic.twitter.com/uKh5G9FD1C
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【ビルボード 2023年 上半期アーティスト・チャート“Artist 100”】
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1位 Official髭男dism
2位 Vaundy
3位 back number
4位 YOASOBI
5位 Ado
6位 Mrs. GREEN APPLE
7位 優里
8位 King & Prince
9位 Snow Man
10位 米津玄師https://t.co/qIN0YYrWMG pic.twitter.com/mJrLCh2aPc
それでは、ソングチャートを主体に上半期を振り返ります。
参考として、昨年度上半期および昨年度年間ソングチャートについて記載したエントリーのリンクを下記に掲載します。
今年度のソングチャート、週間1~3位のリストはこちら。
ビルボードジャパンソングチャートは週間50位までのポイントが可視化されています。この可視化されたポイントのみで集成した表を下記に掲載しますが、表におけるポイントは暫定のものです。
ビルボードジャパンのソングチャートおよびトップアーティストチャートの記事には100位までがすべて掲載。ソングチャート関連ではストリーミングが20位まで掲載され、うち18曲が集計期間中に1億回再生を突破しています。またその他のチャートについても20位まで、一部については数値付きにて掲載されています。
なお今回紹介する曲およびアルバムのCHART insightはいずれも、2023年5月31日公開分(上半期最終週)までの最大30週分となり、CHART insightにおける順位やチャート構成比は5月31日公開分のそれを指します(なお一部を除きます)。
CHART insightにおける色の内訳は総合が黒、ソング/アルバムチャート共通指標ではフィジカルリリースが黄色、ダウンロードが紫で、ソングチャートのみの指標ではストリーミングが青、ラジオが黄緑、動画再生が赤、カラオケが緑で、それぞれ表示されます。なおオレンジで示されるルックアップ、水色のTwitterは2023年度以降廃止されています。
ビルボードジャパン2023年度上半期チャート 特筆すべき項目
① Official髭男dism「Subtitle」をはじめデジタルヒット曲が大ヒット&ロングヒット化
上半期ソングチャートはOfficial髭男dism「Subtitle」が制し、2位には米津玄師「KICK BACK」がランクイン。いずれも昨年10月12日にデジタルリリースされ、前年度は100位以内エントリー7週という短期間で前者が年間27位、後者が30位を記録。この勢いを今年度上半期も維持し「Subtitle」は常時トップ10内、「KICK BACK」は20位以内にエントリーを続けた結果、「Subtitle」は歴代最多となる通算13週の首位を獲得しています。
(「Subtitle」および「KICK BACK」におけるポイント推移表においては、2022年度と2023年度の境界線を太線にて表示しています。)
この他にも前年度からヒットが継続する曲が多いのがビルボードジャパンソングチャートの特徴。「Subtitle」および「KICK BACK」の上半期最終週におけるCHART insightからも解るように、全体の3分の2以上を占めるストリーミング指標がロングヒットに欠かせない要素であり、総合ソングチャートトップ10入りした曲のうちストリーミングトップ10ランクインが9曲。サブスクでの人気獲得が如何に重要かがよく解ります。
総合ソングチャートの記事では『ドラマやアニメタイアップによる相乗効果が、ストリーミング、動画再生、ダウンロードのデジタル指標のポイントを今まで以上に積み上げる展開が目立っている』ことに加えて、それら指標の『ポイント加点が非常に大きくなってきている』ことが指摘されています。デジタルのヒット曲はポイント前週比の下落幅が抑えられていることもあり、大ヒットとロングヒットとが共存できているのです。
② 米津玄師「KICK BACK」をはじめアニメソングのヒットが多数登場
先述した米津玄師「KICK BACK」がテレビアニメ『チェンソーマン』オープニングテーマとして大ヒットしたのみならず、今年度はアニメ作品関連曲の強さがこれまで以上に強い状況です。『THE FIRST SLAM DUNK』エンディング主題歌の10-FEET「第ゼロ感」は上半期ソングチャート5位、後述するYOASOBI「アイドル」は同3位にランクインする等、アニメソングは総合ソングチャートトップ10の実に半数を占めています。
アニメソングはベテランのフックアップにもつながることは10-FEETのみならず、以前から「チェリー」等がサブスクでロングヒットを記録していたスピッツによる「美しい鰭」(映画『劇場版名探偵コナン 黒鉄の魚影』主題歌)が登場から7週という短期間で上半期ソングチャート29位に入ったことからも明らかです。この2組には他にも共通項がみられますが、その点は後述します。
アニメソングは海外の音楽チャートにもランクインする傾向にあり、そして日本では所有指標も刺激するのがポイント。元来フィジカルリリースされるシングルにアニメソングが多いということもその特徴を如実に示していますが、ソングチャートのダウンロード指標ではトップ10内のうち7曲がアニメソングで占められているのが大きな特徴。アニメソングの存在感、そして注目度は今後ますます高まっていくことでしょう。
③ YOASOBI「アイドル」、わずか7週で上半期3位にランクイン
Official髭男dism「Subtitle」と米津玄師「KICK BACK」が同日リリースであるように、スピッツ「美しい鰭」とYOASOBI「アイドル」が同週リリースされたことも音楽チャートや音楽業界にとって重要なターニングポイントに成ったと言えます(前者は4月10日デジタル先行/4月12日フィジカルリリース、後者は4月12日デジタルリリース)。その「アイドル」はわずか7週のエントリーで上半期ソングチャート3位に至っています。
チャートポリシーの変更に伴い2万ポイント超えが難しくなった中にあって、上半期最終週まで5週連続で2万ポイントを余裕で超えてきたのは見事の一言。オープニングテーマに起用されたテレビアニメ『【推しの子】』の人気も相まって世界でも人気を獲得した「アイドル」は、第3四半期に同規模以上のヒット曲が出ない限りは年間首位が確実と捉えていいでしょう。
YOASOBI「アイドル」は、”踊ってみた”等に代表されるユーザー生成コンテンツ(UGC)の人気を示すTop User Generated Songsチャートで上半期4位、TikTok人気を表すTikTokチャートで同5位にランクイン。ソングチャートのカラオケ指標でも上半期最終週に首位を獲得しており、”活用”という点でもこの曲が如何に人気かがよく解ります。
YOASOBIは「祝福」(上半期ソングチャート15位)のヒットはあれど、最近はリリース曲のヒットの規模に波があったことは否めません。しかし「アイドル」の特大ヒットが、トップアーティストチャート(Artist 100)も押し上げていることが解ります。このチャートを制することに意欲を示しながら一昨年度はBTS、昨年度はAdoさんにその座を奪われているYOASOBIにとって、年間チャートを制することができるかにも注目です。
④ Vaundy「怪獣の花唄」を大ヒットに導いた『NHK紅白歌合戦』の影響力
トップアーティストチャートにおいては年間単位で54→12→7位と着実に上昇しているVaundyさんは、「怪獣の花唄」が大ヒットに至ったことが契機となり上半期トップアーティストチャートで2位につけています。
これは間違いなく昨年大晦日の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)出演効果と言えます。番組出演直後にチャートを駆け上がった「怪獣の花唄」は、音楽フェスが開催された大型連休時にポイントを大きく伸ばしたことも特筆すべき点でしょう。
『NHK紅白歌合戦』自体もネットを介した取組が評価を集めています。視聴率の(以前に比べての)高くなさを踏まえ非難するメディアは少なくないものの、そこで主に語られるリアルタイム視聴率の重要度は以前ほど大きくはありません。Vaundyさんが広く知れ渡ったこと、また藤井風さんが「死ぬのがいいわ」を初披露した点でも、『NHK紅白歌合戦』が如何に影響力を持ち、そして意義のある番組かがよく分かるはずです。
⑤ K-POP第4世代女性ダンスボーカルグループが作り上げたヒットの形
K-POPアクトはアルバムチャートこそ男性ダンスボーカルグループが強いものの、ソングチャートとなると女性歌手、特に第4世代女性ダンスボーカルグループが強いと言えます。その筆頭として挙げられるのが昨年デビューしたNewJeans。フィジカルシングル「OMG」は上半期ソングチャート22位、そのカップリングでフィジカルセールス指標未加算となる「Ditto」は先行リリース効果もあり同17位にランクインしています。
そのNewJeansをはじめ、「ANTIFRAGILE」が上半期ソングチャート30位を記録したLE SSERAFIM、またIVE等いわゆる第4世代と呼ばれるK-POPのダンスボーカルグループにおいては、接触指標群が引っ張る形でロングヒットする傾向が高まっています。その結果トップアーティストチャートでは、NewJeansがK-POPアクトで最高位となる11位を獲得し、LE SSERAFIMは21位、IVEは28位にそれぞれランクインしています。
トップアーティストチャートのCHART insightからは、リリースの度に彼女たちが一段高いステップに到達していることが見て取れます。これはBTS以降の男性ダンスボーカルグループ、また日本の多くのアイドルグループとも大きく異なる傾向と言えるでしょう。
⑥ ダンスボーカルグループはトップアーティストチャートでもっと伸びる可能性を持ち合わせているということ
K-POP第4世代女性ダンスボーカルグループとは異なり、BTS以降のK-POP男性ダンスボーカルグループや日本のアイドルグループの多くがトップアーティストチャートで上位を維持しにくい状況と言えるかもしれません。顕著なのはK-POPの男性ダンスボーカルグループで、フィジカルリリース前後で順位が大きく異なっています。上半期トップアーティストチャートではSEVENTEENが14位、Stray Kidsが16位を記録しています。
ソングチャート共々トップアーティストを構成するアルバムチャートでは彼らの作品がK-POP女性ダンスボーカルグループよりも強い状況です。今後はこのアルバムのリード曲を主体にソングチャートでも結果を残し、より安定したチャートアクションにしていくことが課題と考えます。
またジャニーズ事務所所属歌手においてはKing & Prince、そしてSnow Manがアルバムチャートでミリオンセールスを記録したこと等に伴い上半期トップアーティストチャートで前者が8位、後者が9位にランクインしていますが、デジタルが解禁されていればソングチャート共々、より高い位置に就くことができたはずです。
ビルボードジャパンの総括記事においては、ダウンロードやサブスクに明るくないジャニーズ事務所所属歌手における動画再生指標の好調を記した上で、『フィジカルからデジタルマーケットにも軸足を置きつつあるファンダムの変容がみてとれる』と述べています。業界内で特異なポジションを維持する彼らがデジタルをきちんと解禁するようになれば、日本のエンタテインメント業界全体が前向きに成るはずです。
⑦ ユニバーサルミュージックの強さ、およびロックジャンルのヒット
上半期ソングチャートのみならずトップアーティストチャートではback number(3位)やスピッツ(24位)、10-FEET(25位)の強さが目立ちます。またMrs.GREEN APPLE(6位)やAdoさん(5位)等も引き続き強さを発揮していますが、彼らはいずれもユニバーサルミュージック(グループ)に所属。そして彼らの作品はストリーミング指標に強いのが特徴です。
ストリーミングは2010年代前半以前デビューの歌手では強くない傾向でしたが、その中でback numberが早い段階でストリーミングに強い歌手の仲間入りを果たしたことについては以前お伝えしました。
ユニバーサルミュージック側がスピッツ「美しい鰭」や10-FEET「第ゼロ感」にてアニメ作品のタイアップを獲得した経緯は解りかねますが、ともすれば映画制作側へのアプローチを積極的に行っていた可能性も考えられます。加えて、最近では藤井風「死ぬのがいいわ」やimase「NIGHT DANCER」がグローバルで人気が出たタイミングにて現地法人と連携し積極的な展開を実施していることも注目すべき点と言えます。
レコード会社(グループ)単位ではYOASOBIや優里さん等が所属するソニーミュージックが強い印象がありましたが、ユニバーサルミュージックはグループとして推すことに長け、結果としてヒット曲を次々と生み出しているのかもしれません。そして日本ではOfficial髭男dism等も含め、ロックというジャンルが引き続き強さを発揮しているとも言えます。
またロックジャンルのヒットにおいては、テレビアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』に登場する劇中バンド、結束バンドによるファーストアルバム『結束バンド』が上半期アルバムチャートで6位に入ったことも注目すべきポイントです。週間チャートを2週制し、ダウンロード指標では通算7週首位を獲得。上半期アルバムチャートのダウンロード指標では2位の3倍以上となるセールスを記録しています。
上記CHART insightは下半期初週(6月7日公開分)までとなりますが、安定してヒットを続けていることが解ります。
ビルボードジャパンはレンタルCDのインターネット接続機器への取込も含むルックアップ指標を2023年度より廃止。唯一の接触と呼べる当該指標の廃止に伴い今年度以降アルバムチャートでのロングヒットが難しくなったと言えるゆえ、『結束バンド』のヒットは尚の事特筆すべきことなのです。
おわりに
ビルボードジャパンは2023年度からルックアップおよびTwitterの2指標を廃止しましたが、これにより特にソングチャートは社会的ヒット曲の鑑により近づいたと捉えていいでしょう。
一方で改善が必要な箇所もあると考えますが(この点については下半期チャート開始前に、ビルボードジャパンに対する改善提案をまとめる(6月4日付)で記載しています)、たとえばこの1週間以内に発表された上半期ヒット作品振り返り記事(下記参照)をみると、ビルボードジャパンのチャートが世間の考えるヒット作品と合致してきていると捉えることが可能であり、このことからもチャートが鑑であると言っていいでしょう。
ならば歌手側がチャートへの高い意欲と意識を持つこと、そして施策を実行することはより重要に成ると考えます。この点についてはYOASOBI「アイドル」が米ビルボードによるグローバルチャートのうちGlobal Excl. U.S.を制した際にも記載しています。
他方、たとえばソングチャートの動画再生指標においてポイントが加算されない”欠測”と言える状況が現在でも目立っています。下記エントリーでも紹介した百足 & 韻マン「君のまま」は結果的に、動画再生指標がほぼ加点されていません。
再生回数を踏まえれば、加点対象となるISRC(国際標準レコーディングコード)の未付番が続いていると考えていいでしょう。仮にこの点がしっかり行われていたならば、上半期ソングチャートの順位は間違いなく上昇したはずです(「君のまま」は32位にランクイン)。これら失点をなくすことが、歌手側には求められます。
逆に、YouTubeにおいては表示される再生回数に対し動画再生指標の順位が低く見えるという傾向が最近みられますが、これはYouTubeにてミュージックビデオ等公式動画を広告として展開していることが影響しています。このような広告展開は今後増えていくかもしれませんが、表示回数は増えてもビルボードジャパンの動画再生指標ではカウント対象外となります。この点は下記エントリーにて解説しています。
広告にミュージックビデオ等公式動画が活用されることでYouTubeにて表示される再生回数は急上昇し、また再生回数の多さが話題となりメディアで採り上げられる可能性も踏まえれば、実際のところ広告展開のメリットは多いのかもしれません。
この広告によるYouTube再生回数の上昇分について、ビルボードジャパンでは当初からカウント対象外としていますが、今後も構成指標のデータ提供元において似た動きが登場するかもしれません。ビルボードジャパンはその都度、数値が適切かをきちんと見極め、客観的な判断を下す必要があります。鑑の精度を高めるべく、ビルボードジャパンはこの判断を確実に、徹底して行っていくことを願ってやみません。
(※追記(6月11日8時56分):ビルボードジャパン上半期チャートのうちソングチャートおよびトップアーティストチャートは100位まで公開され、また後者については上位20組の指標構成も掲載されています。それを踏まえて表を作成の上、6月10日付および6月11日付エントリーにて分析を行いました。下記にそれらエントリーのリンクを掲載します。)
(※追記(6月14日7時51分):ビルボードジャパン上半期チャートのうちアルバムチャートは20位まで公開され、各指標も20位までの数値が掲載されています。それを踏まえて表を作成の上、6月14日付エントリーにて分析を行いました。下記にそれらエントリーのリンクを掲載します。)