6月9日に発表されたビルボードジャパンによる上半期各種チャートはこれまでよりも公開範囲が拡がっており、見るたびに新たな発見に巡り会えることでしょう。リンク先をまとめ、分析したエントリーは下記リンク先に掲載しています。
また、上半期のソングチャートについては1-5位を定点観測したものを下記に掲載しています。
後者のエントリーではKing & Prince「ツキヨミ」等に言及していますが、上半期ソングチャートにおける男性ダンスボーカルグループ(男性アイドル)作品のトップはDa-iCE「スターマイン」でした。同曲はこれまで週間トップ10入りを果たしていないものの、ロングヒットによりヒットが可視化されたと言えます。
下記は最新6月21日公開分までにおけるDa-iCE「スターマイン」のCHART insight。特に動画再生指標(赤で表示)が高いですが、ロングヒットに欠かせないストリーミング指標(青)も100位以内エントリーを続けています。またこの曲がブレイクの兆しをみせた昨年11月以降カラオケ指標(緑)が300位以内エントリーを続け、加点対象となっています。
「スターマイン」はリリース前にインフルエンサーの踊ってみた動画に使用してもらいTikTokでバズを誘導、後にライブ動画を投入したことがバズの増幅につながり、地上波音楽番組でのパフォーマンスを経て総合ソングチャートでもヒットに至っています(【ビルボードジャパン最新動向】「Subtitle」の強さが際立つ最新チャートからみる、次のヒット曲候補(2022年12月22日付)参照)。
ピークが過ぎた「スターマイン」が再度フックアップされたのはTHE FIRST TAKEでの披露がきっかけ。4月28日金曜に公開されると、同日を集計期間に含む5月3日公開分では「スターマイン」の動画再生指標が100位未満(300位圏内)から12位に急伸、総合では88→59位に上昇しています。その後この曲を含むアルバム『SCENE』がリリースされ、アルバム初登場週には「スターマイン」が総合41位まで再浮上を果たしました。
バズ発生がテレビ出演を生み、THE FIRST TAKEにつながること。アルバムリリースがソングチャートにも波及すること。バズの発生自体は難しいことですが、Da-iCEはデジタルできちんと結果を残していると言えます。その結果、男性ダンスボーカルグループ(男性アイドル)作品におけるビルボードジャパン上半期ソングチャート最高位を獲得したことになるのです。
このバズ発生については、Da-iCEがとにかく意識的であることがインタビュー等からみえてきます。
<連載>Da-iCE×インフルエンサー対談第1弾 工藤大輝×ごっこ倶楽部――“バズ”を生み出すためのお互いの戦略 https://t.co/EGcuzHGuKv pic.twitter.com/WHan9n5EjG
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2023年6月19日
重要なのはバズの兆しが生まれた際、それをさらなるステップアップの好機につなげることができるかにあります。TikTok→ライブ動画投入がテレビ出演につながったことは大きく、特にテレビパフォーマンスはDa-iCEを知らない、もしくは「CITRUS」は好きだが歌手に興味があるわけではないライト層にもリーチしたと言えるでしょう。メンバーがクリエイティブ面に大きく関わることも、チャンスの可能性を高めたと考えます。
6月21日にミュージックビデオが公開された『SCENE』収録曲の「ハイボールブギ」は映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』主題歌。この”ハイボール”をテーマに据えたこと自体、バズを意識する姿勢が感じられます。
発表から4年以上を経てTikTokを機にヒットしたLucky Kilimanjaro「Burning Friday Night」は、出だしの”ウイスキーを飲み干して”のフレーズが踊ってみた等に用いられたことが上昇の契機に。振り付けを作ったローカルカンピオーネはDa-iCE「スターマイン」の最初のバズに一役買った方々であり、また2曲とも酒(ウイスキー(ベース))がテーマになっている点も共通しています。
ちなみにRolling Stone Japanのインタビューでは、Da-iCEのメンバーによるヒットについての考え方を知ることができます。この点についてもきちんと理解されている上に、いい意味で貪欲であることが解ります。
そのRolling Stone Japanによるインタビューでは、『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)への出演希望について語っています。
『NHK紅白歌合戦』出場歌手選考においては、ビルボードジャパンにおけるトップアーティストチャート(Artist 100)が鍵を握るだろうことを上記エントリーにて記載しました。それを踏まえてDa-iCEにおける最新6月21日公開分までのトップアーティストチャート動向(直近60週分のCHART insight)をみると、前年度以上に安定していることが解ります。
そしてRolling Stone Japanにて語っていたもうひとつの夢である『ミュージックステーション』(テレビ朝日)への出演については、「CITRUS」の大ヒットおよび「スターマイン」の上半期チャートランクインを踏まえれば妥当なはずです。この妥当については2年前の段階で既に記していますが、その後テレビ朝日発の仮面ライダーシリーズや春ドラマの主題歌も担当しながら出演に至れていないのは、やはり疑問が残ります。
この点において、番組側が抱いているであろう枷が外れることを願います。これを外せたならば、エンタテインメント業界全体の向上に自ずとつながるものと考えます。
Da-iCEによる「スターマイン」はリリース後、初の夏シーズンを迎えます。この季節を彩る曲としては5年前にリリースされたMrs.GREEN APPLE「青と夏」が最新6月21日公開分のビルボードジャパンソングチャートで18位に上昇し、夏の代表曲と成っています。「スターマイン」が新たな夏の代名詞たる曲となるかに注目すると共に、『NHK紅白歌合戦』や『ミュージックステーション』への出演が叶うかも気になるところです。
(上記はMrs.GREEN APPLE「青と夏」の、直近150週分におけるCHART insight。リリースした2018年にソングチャート最高10位を記録したこの曲は、翌年以降最高25位→30位→33位→23位→18位と推移。今夏、最高位を更新する可能性も考えられます。)