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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

プランテックによる2024年度上半期ラジオエアプレイチャートを読む

全国のラジオ、テレビのメタデータの生成・加工・編集事業、およびビルボード日本公式サイト「Billboard-Japan.com」、テレビCMソング検索サイト「CMソングサーチ」、ラジオチャートメディア「Radio OnAir Ranking」を運営するプランテックは、2024年度上半期の全国31FM・AM局を対象に集計したラジオ・エアプレイチャート、および関東民放5局におけるテレビ番組・CMで露出した楽曲ランキングを発表した。

ビルボードジャパンによる2024年度上半期各種チャートの発表から11日後、プランテックによる上半期ラジオエアプレイチャートが昨日発表されました。対象期間が明示されていないという根本の部分から違和感を覚えるのですが(この点はエントリー最後に掲載した昨年度年間チャート紹介時においても言及しています)、興味深いチャートゆえ紹介します。ビルボードジャパンの上半期チャートは下記リンク先をご参照ください。

 

なお、ビルボードジャパンではプランテックによる対象31局のラジオエアプレイに基づき、聴取可能人口等を加味した上でソングチャートのラジオ指標を算出しています。2024年度上半期における同指標週間20位までの推移は以下の表をご参照ください。

(表において、K-POPを除く洋楽をオレンジで、男性アイドル/ダンスボーカルグループではSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手(エージェント契約含む)を青、STARTO ENTERTAINMENT以外ではLDHを薄青、LDH以外を緑、K-POP男性アクトを紫でそれぞれ表示しています。)

 

 

2024年度上半期のFM/AMラジオ・エアプレイはCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が総合1位、MVオンエアと2冠達成〜プランテック発表 | Musicman(6月18日付)より

 

邦楽/洋楽をまとめた総合ラジオエアプレイチャートはCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が制覇。このチャートではヒップホップのヒットはほぼみられないのですが、社会現象がラジオエアプレイにも大きく影響した形です。ビルボードジャパンソングチャートにおける同曲のCHART insightをみるとラジオ指標(緑で表示)の週間最高位は6位であり、ロングヒットが上半期ラジオエアプレイチャート制覇の原動力だと解ります。

 

その「Bling-Bang-Bang-Born」も含め、トップ10に入った邦楽8曲のうち映像タイアップ作品は6曲。他方、11~20位ではラジオ局によるパワープレイ選出曲が目立ちます。ただ後者はパワープレイに設定した局とそうでない局とでOAの差が目立ち、パワープレイ期間終了後に急落する傾向もあることから、勢いを如何に持続させていくか、デジタルでもヒットさせビルボードジャパン総合ソングチャートに送り込むかが重要です。

(上記は上半期ラジオエアプレイチャートで総合13位に入ったレトロリロン「TOMODACHI」。同曲は数多くのラジオ局でパワープレイに選ばれています(全国39局で「TOMODACHI」が1月度ヘビーローテーション決定!!(1.15追記)| レトロリロン|Retroriron Official Site(1月1日付)参照)。)

 

トップ10のうち映像タイアップ作品以外の邦楽は2曲ですが、桑田佳祐松任谷由実「Kissin' Christmas (クリスマスだからじゃない) 2023」の強さが際立ちます。クリスマス曲はOA時期が限られるのですが、両者が全国ネットでレギュラー番組を務めていること、またラジオ局がベテランを重用する傾向も、同曲が総合7位に到達した大きな要因といえます。同曲のラジオでの強さはこのブログでも以前紹介しています。

 

アイドルやダンスボーカルグループは音源リリース週に帯番組や番組内コーナー等にて定期的なOAを獲得する傾向が高いため短期的にはラジオエアプレイが強い一方、その後リクエストに伴うOAが多くなければ急落は免れず中長期には強くない傾向が目立つ中にあって、Number_i「GOAT」が上半期総合10位に入ったのは興味深いことです。

ビルボードジャパン上半期ソングチャートにおけるNumber_i「GOAT」のCHART insightをみると、ラジオ指標ではデジタル先行リリース時およびフィジカルシングルリリース時の二度に渡りピークが生まれていることが解ります。仮に瞬発力が高い曲やジャンルにおいても、ピークが複数生まれることで中長期にて上位進出が可能であることが「GOAT」の事例からみえてきます。

 

 

さて、気がかりなのは洋楽。総合トップ10にはアリアナ・グランデ「Yes, And?」およびビヨンセ「Texas Hold 'Em」の2曲が入っていますが、20位までをみてもこの2曲のみという状況です。ちなみに洋楽3位は「Texas Hold 'Em」から400ポイント近い差がついており、しかも全員日本人によるXGがクレジットされていますが、XGを洋楽に含めること共々違和感を抱きます。

2024年度上半期のFM/AMラジオ・エアプレイはCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が総合1位、MVオンエアと2冠達成〜プランテック発表 | Musicman(6月18日付)より

洋楽トップ10の顔ぶれをみると中堅以上の歌手が大半であり、たとえば米で今年ヒットしているテディ・スウィムズやベンソン・ブーン等の曲は登場していません。尤もリクエストチャートを踏まえれば日本のリスナーが流行の先取りよりも中心、若手よりも中堅以上の歌手による作品を好む傾向がみえてくるのですが、ラジオがヒットの最先端を伝える、ヒットを自ら創るという意志を弱めているのではないかと痛感しています。

 

 

ラジオに対する危機感(業界における自問自答の重要性)は、プランテックによる昨年度のラジオエアプレイチャートを紹介した際にも述べています。そのエントリーを最後に掲載し、業界の改善を願います。