イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【海外ビルボード】米はモーガン・ウォレンが10週目の首位、グローバルはペソ・プルマが席巻しYOASOBIトップ10キープ

現地時間の6月12日月曜に発表された、最新6月17日付米ビルボードソングチャート(集計期間:6月2~8日)。モーガン・ウォレン「Last Night」が7週連続、通算10週目の首位を獲得しました。

モーガン・ウォレン「Last Night」はストリーミングが前週から6%ダウンの3100万(同指標12週目の首位)、ダウンロードが同6%ダウンの8,000(同指標4位)、ラジオが同4%アップの6880万(同指標4位)を記録しています。

「Last Night」はまたソングチャートと同様の計算方法に基づくホットカントリーソングチャートにて18週目の首位を獲得。1958年10月にチャートがジャンルを網羅した調査となって以来、ホットカントリーソングチャートにおける18週首位は歴代10位タイとなります。なお歴代トップ10のうちモーガン・ウォレンはソロとして唯一、2曲を送り込んでいます(「You Proof」は2022年に19週首位を獲得)。

「Last Night」はカントリーエアプレイチャートでも6週目の首位となり、ポップエアプレイでも10位に。モーガン・ウォレンは前者では9曲目の首位、後者では「Last Night」が初のトップ10入り作品となります。また6月10日付から再開したソング・オブ・ザ・サマーチャート(Songs Of The Summer)では2週連続で首位に至っています。

 

マイリー・サイラス「Flowers」が1ランクアップし2位に。ラジオでは前週とほぼ変わらず8700万を記録し、同指標17週目の首位を獲得しています。1990年12月からはじまったラジオソングチャートにおいて「Flowers」は歴代単独3位、女性歌手による作品では最長記録を達成しました。

<ラジオ指標 最長首位獲得週数>

26週 ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」(2020)

18週 グー・グー・ドールズ「Iris」(1998)

17週 マイリー・サイラス「Flowers」(2023)

16週 マルーン5 feat. カーディ・B「Girls Like You」(2018)

16週 マライア・キャリー「We Belong Together」(2005)

16週 ノー・ダウト「Don't Speak」(1996-1997)

15週 アデル「Easy On Me」(2021-2022)

 

今週は最高位更新曲が複数。レマ & セレーナ・ゴメス「Calm Down」は5→3位となり初のトップ3入り。登場40週目での3位以内到達は歴代5位のスロー記録となります(なお最長記録保持曲はグラス・アニマルズ「Heat Waves」の51週(2021-2022))。また昨年4月に始まったU.S.アフロビートソングチャートでは41週目の首位を獲得しています。

 

(公式動画がないためSpotifyのリンクを上記に掲載。)

ルーク・コムズ「Fast Car」が8→4位に上昇し、同曲初のトップ5入りを果たすと共にオリジナルバージョンであるトレイシー・チャップマンが1988年8月に記録した最高位(6位)を上回りました。1980年代にトップ10ヒットとなった曲のカバーバージョンが同じくトップ10入りするのは「Fast Car」が16曲目となりますが(それらリストは下記リンク先に掲載)、オリジナル版の順位を上回るのは今回を含め5例にとどまります。

なおトレイシー・チャップマンは、「Fast Car」同様単独でソングライトを行った「Give Me One Reason」が1996年6月に最高3位を記録しています。そしてルーク・コムズにとっては、「Forever After All」が2020年11月に2位初登場を果たして以来、2曲目のトップ5ヒットとなりました。

ルーク・コムズ「Fast Car」はラジオ指標において前週比30%アップの3420万を記録し、3週連続でトップエアプレイゲイナーを獲得。またカントリーエアプレイチャートでトップ10、アダルトコンテンポラリー、アダルトポップエアプレイおよびポップエアプレイチャートにてトップ25入りを果たしています。なおストリーミングは前週比1%アップの2020万、ダウンロードは同4%アップの9,000を、それぞれ記録しています。

 

モーガン・ウォレン「Last Night」(1位)およびルーク・コムズ「Fast Car」(4位)のように、ふたつのカントリーソング(ホットカントリーソングチャートでは1位および2位に同時にランクイン)が同時に総合ソングチャートにてトップ5入りを果たしたのは、2000年2月から4月にかけてローンスター「Amazed」およびフェイス・ヒル「Breathe」が同時ランクインして以来23年ぶりとなります。その前となると、ジュース・ニュートンQueen Of Hearts」およびロニー・ミルサップ「(There's) No Gettin' Over Me」が同時ランクインを果たした1981年9月まで遡ることになります。

トップ10ヒット曲の構成上の特徴を分析するヒット・ソングス・デコンストラクテッド(Hit Songs Deconstructed)の分析によると、2023年第1四半期に総合ソングチャートのトップ10にランクインした主要ジャンルはカントリーがポップスと並んで最も多く、カントリージャンルはこの10年で最高の成績を収めています。

 

前週客演参加版の初加算に伴い27→2位に上昇したテイラー・スウィフト feat. アイス・スパイス「Karma」は10位に後退。ラジオでは前週比19%アップの4560万を記録し12→7位に上昇したことで、同指標のトップ10ヒットはテイラー・スウィフトが18曲目、アイス・スパイスが2曲目に。テイラーのラジオ指標トップ10ヒット曲数は歴代7位タイとなります(なお最も多いのはリアーナの30曲)。

 

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (1位) モーガン・ウォレン「Last Night」

2位 (3位) マイリー・サイラス「Flowers」

3位 (5位) レマ & セレーナ・ゴメス「Calm Down」

4位 (8位) ルーク・コムズ「Fast Car」

5位 (4位) リル・ダーク feat. J.コール「All My Life」

6位 (6位) シザ「Kill Bill

7位 (9位) トゥーシー「Favorite Song」

8位 (7位) エスラボン・アーマード & ペソ・プルマ「Ella Baila Sola

9位 (9位) メトロ・ブーミン、ザ・ウィークエンド & 21サヴェージ「Creepin'」

10位 (2位) テイラー・スウィフト feat. アイス・スパイス「Karma」

 

なお前週まで61週在籍、歴代4位となる15週の首位を獲得したハリー・スタイルズ「As It Was」が今回リカレントルールに伴いソングチャートから姿を消しました。リカレントとは新陳代謝を目的に、一定週数以上ランクインした曲が一定順位を下回った場合にソングチャートから外れるルールとなります。

 

 

ビルボードが一昨年新設したグローバルチャートもチェック。200を超える地域の主要デジタルプラットフォームによるストリーミングとデジタルダウンロードで構成され、歌手のホームページでの販売分を含まないグローバルチャート。6月17日付Global 200ではエスラボン・アーマード & ペソ・プルマ「Ella Baila Sola」が2週連続、通算5週目の首位に。そしてGlobal 200から米の分を除くGlobal Excl. U.S.ではビザラップ & ペソ・プルマ「Bzrp Music Sessions, Vol.55」が初の1週間フル加算に伴い、前週の54位から首位に至っています。

今回の記事ではGlobal Excl. U.S.が先に紹介されています。このブログエントリーでも記事に倣い、まずはGlobal Excl. U.S.を紹介します。

Global Excl. U.S.を制したビザラップ & ペソ・プルマ「Bzrp Music Sessions, Vol.55」はストリーミング6490万を記録(ダウンロード指標は記事未掲載)。この曲は5月31日水曜にリリースされ、前週は54位に初登場。今回、54位からの首位到達はこのチャートにおいて(首位獲得に至る)最大のジャンプアップを記録した作品となりました。

ビザラップによる”Sessions”シリーズがGlobal Excl. U.S.を制したのは、ケベードとの「Bzrp Music Sessions, Vol.52」(2022年7-9月 6週)に次ぐ2曲目。ビザラップにとっては2曲目、ペソ・プルマは初の首位獲得曲となり、またトップ10ヒットは共に3曲目となります。そしてペソ・プルマについてはGlobal Excl. U.S.および後述するGlobal 200において、異なる作品で同時に首位を獲得した最初の歌手となりました。

ビザラップによる”Sessions”シリーズにおいて、”Vol.52”から”Vol.55”の間にはシャキーラとの「Bzrp Music Sessions, Vol.53」が今年1月に2位、アーカンジェルとの「Bzrp Music Sessions, Vol.54」が4月に22位を獲得。ビザラップによる”Sessions”シリーズは20曲中17曲がこれまでこのチャートに登場し、ナティ・ペルソとの「Bzrp Music Sessions, Vol.36」が2020年12月に初ランクインを果たしています。

 

デイヴ & セントラル・シー「Sprinter」がGlobal Excl. U.S.で8位に初登場。ストリーミング3970万、ダウンロード1,000をそれぞれ獲得しています。共にロンドン出身のラッパーによるコラボレーションは英ソングチャートで首位を獲得しており、Global Excl. U.S.においても初のトップ10ヒットに至っています。またGlobal 200ではストリーミング4440万を記録し9位に初登場を果たしました(ダウンロード指標は記事未掲載)。

 

そのGlobal 200ではエスラボン・アーマード & ペソ・プルマ「Ella Baila Sola」が通算5週目の首位獲得。ストリーミングは前週比1%ダウンの7620万、ダウンロードは同11%ダウンの2,000を、それぞれ記録しています。

またビザラップ & ペソ・プルマ「Bzrp Music Sessions, Vol.55」はGlobal 200においてストリーミング7830万、ダウンロード1,000を記録し85→2位に上昇。ビザラップ、ペソ・プルマ共に3曲目のトップ10ヒットとなったのみならず、ペソ・プルマにおいては異なる2曲でワンツーフィニッシュを達成した初の歌手となりました。

 

前週Global Excl. U.S.で初の首位を獲得したYOASOBI「アイドル」は1→2位に後退。Global 200では9→10位となっています。