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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ソングチャート2位に上昇したINI「FANFARE」、フィジカル初加算週に動画再生指標がダウンした理由を考える

前週5月24日公開分のビルボードジャパンソングチャートを踏まえ、このようなエントリーを記載しました。

前週トップ20内に初めて登場した男性ダンスボーカルグループ(男性アイドル)の4曲は、CHART insightを見れば指標構成等の動向が大きく異なります。特にストリーミング指標に大きな違いがみられますが、その指標に影響を与えたキャンペーンの存在を見極め、真の社会的ヒット曲と成るかを判断する必要があるというのが上記エントリーでの提案内容でした。

 

その4曲は最新5月31日公開分において、大きな差が生じています。

ストリーミング指標(CHART insightでは青で表示)に影響を与えるLINE MUSIC再生キャンペーンを採用した3曲については、その実施期間に伴い差が生じています。Travis Japan「Moving Pieces」は集計期間中の火曜に企画が終了したこと、そしてLINE MUSIC以外のサブスクサービスでヒットしていると言い難い状況だったため当該指標が大きくダウンし、総合チャートにおいても4曲の中で最も下落幅が大きくなっています。

一方でラジオ指標(黄緑)についてはINI「FANFARE」が1位、MAZZEL「Vivid」が2位となり、昨今の男性ダンスボーカルグループにおけるこの指標の強さを物語っています。この点は以前も紹介しています。

 

前週のビルボードジャパンソングチャートでトップ20入りを果たした男性ダンスボーカルグループ作品のうち当週最も伸びたのはINI「FANFARE」でした。フィジカルセールス初加算に伴うものですが、一方で動画再生指標(CHART insightでは赤で表示)は17→51位と後退しています。この点について、気になっています。

 

5月31日公開分のビルボードジャパンソングチャートについて解説したビルボードジャパンのポッドキャストでは、(男女に関係なく)ダンスボーカルグループにおける動画再生指標の動向について紹介されています。

このポッドキャストではK-POPが動画再生指標に強いと紹介されています。これは私見と前置きしますが、ミュージックビデオの予算の大きさや演出の凝り方、推す歌手のビジュアルを楽しむ方の多さ、そしてフィジカルに映像盤が同梱されていないだろうことも、動画再生指標が比較的長期に渡ってランクインする理由ではと考えます。無論作品自体が評価されていることも要因でしょう。

 

J-POPにおいてもロングヒット曲が動画再生指標にて安定傾向にあることが、今年度の同指標におけるトップ20の推移からも解ります。なお青で表示したのはジャニーズ事務所所属歌手の作品であり、デジタルを基本的に解禁していないながらこの指標が安定していることについてはビルボードジャパン側もポッドキャストで度々指摘されています。

一方で、ジャニーズ事務所所属歌手作品で動画再生指標に強いのはKing & Prince以降のデビュー組が大半です(ゆえにHey! Say! JUMP「DEAR MY LOVER」の強さが突出しているとも言えます)。これは歌手側によるYouTube活用の徹底やコアファンの視聴習慣の高さも影響しているものと考えますが、以前は動画再生指標が上昇したとしてもフィジカルリリース週になると下がる傾向が見られました。

ジャニーズ曲のミュージックビデオはフィジカルリリース前にアップされ、コアなファンの視聴が主体とみられました。フィジカルリリース週には同梱される映像盤での視聴に切り替わり、そのタイミングで動画再生指標が下がるのがこれまでの傾向でした

この傾向は、King & Princeより前にデビューしたジャニーズ事務所所属歌手においては今も当てはまるものと捉えています。そしてともすれば、INI「FANFARE」においても似た傾向が生まれた当てはまるかもしれません。

尤も、「FANFARE」が収録された『DROP That』において同梱された映像盤にミュージックビデオは収録されていない模様です(INI 4TH SINGLE 「DROP That」 | INI OFFICIAL SITE参照)。ただしフィジカルリリース週に動画再生指標がダウンしたのはコアファンの熱量がフィジカル購入に移行した可能性、そしてライト層が流入しているとは言い難いことが重なった結果ではないかというのが自分の見方です。

 

もうひとつ、INI「FANFARE」の動画再生指標がダウンしたのはミュージックビデオがYouTubeで広告として用いられていたことも原因と考えます。自分は目にしませんでしたが、ミュージックビデオが広告として流れたことについては複数の方がツイートされていました。

広告で流れたミュージックビデオ等公式動画が一定時間以上再生された場合はYouTubeではカウントされるものの、YouTubeミュージックビデオランキングには反映されず、そしてビルボードジャパンの動画再生指標でもカウント対象外となります。この点は以前、下記エントリーにて仮説を立てています。

Travis Japan「Moving Pieces」においてもミュージックビデオがYouTubeで広告として用いられていました。同曲も当週、動画再生指標が44→73位とダウンしています。

今回の2曲の動向を踏まえ、広告展開される公式動画はビルボードジャパンではカウント対象外となるという仮説がほぼ立証されたものと考えます。

 

推す歌手の公式動画が広告効果に伴い急激に再生回数が伸びた際、”ライト層にも浸透している”もしくは”他のコアファンの方々もチェックしている”と捉えてコアファンが積極的な視聴を控えたことで、INI「FANFARE」やTravis Japan「Moving Pieces」の動画再生指標がダウンしたのではないかというのが自分の見方です。カウント数に惑わされることなく視聴を続けることが重要でしょう。

ただし、YouTubeでは1ユーザーが何回リピートしても、再生したすべてがカウントされるというわけではありません。ゆえに大事なのはライト層の増加をどうするかであり、”広告展開の先をどうするか”をきちんと設定することが必要と考えます。