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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Travis Japanの新曲「Moving Pieces」、リリース日からみえてくる施策の転換について考える

Travis Japanが5月15日に新曲「Moving Pieces」を配信リリースすることが明らかになりました。グループが出演するCMソングは6月5日にリリースされるデジタルEPに収録され、およそ1週間前から複数ティザー(ティーザー)を公開していた「Moving Pieces」をメインに据えた形です。

気になるのはこの「Moving Pieces」が、EP共々月曜0時にリリースされるということ。このリリース手法はファーストシングル「JUST DANCE!」が昨年10月28日金曜、日本時間の13時にリリースされたこととは大きく異なります。

 

Travis JapanJUST DANCE!」の配信リリースを複数のメディアが”世界デビュー”と表現したことは印象的でした。配信は世界リリースとほぼイコールのためこの表現に違和感を抱きましたが(国内と海外のどちらに重きを置くかの違いはありますが)、メディアがこの表現を用いたのは同曲が海外の標準リリース日である金曜13時(米東部標準時(EST)の午前0時)に配信開始したことも理由のひとつと考えます。

JUST DANCE!」のチャートアクションはビルボードジャパンのCHART insightで確認できます(総合順位は黒で表示)。同曲はリリース日を集計期間に含む2022年11月2日公開分のビルボードジャパンソングチャートで4位に登場しましたが、初の1週間フル加算となった翌週は29位に後退。100位以内エントリーはわずか3週にとどまっています。

総合4位獲得時に6万6千DLを突破した「JUST DANCE!」ですが、ダウンロード指標(紫で表示)は瞬発力に長けながら持続力が強くなく、同指標は翌週13位に後退。そしてストリーミング(青)においては総合4位獲得の翌週に初めて加算対象となる300位以内に入るも、100位には届きませんでした。初登場週はストリーミング加算対象期間がおよそ2日半だったことも影響はしていますが、それでも強くなかったと言えるでしょう。

 

 

Travis Japanのセカンドシングル「Moving Pieces」は、その日本におけるチャートアクションの反省を踏まえてリリース日を月曜に設定したものと考えます。またリリース前に様々なアプローチを行うことを明らかにしており、日本でのヒットを狙うという意気込みが見て取れます。TikTok先行配信もその一環でしょう。

@travisjapan_capitol 2023.5.15 (mon) 2nd Single "Moving Pieces" Release!🧩🧩🧩🧩🧩🧩🧩 #TravisJapan ♬ Moving Pieces - Intro Version - Travis Japan

 

 

一方で、海外でのチャートアクションはどうなるでしょう。

月曜リリースというスケジュールでは、金曜を起点とする米ビルボードのグローバルチャートで有利になれないという問題が発生します。このグローバルチャートは米ビルボードが2020年秋に開始した、世界200以上の国や地域におけるストリーミング(動画再生含む)およびダウンロードという複合指標で構成、算出される音楽チャートです。

Travis JapanJUST DANCE!」はリリース日を集計期間初日とする米ビルボードの2022年11月12日付Global Excl. U.S.(Global 200から米の分を除く)で5位に初登場を果たし、同日付Global 200では28位にランクイン。上記ツイートはTravis Japanの公式Twitterアカウントでもリツイートされ、ファンの間でも認識されているものと思われます。

この記録を達成した翌週、「JUST DANCE!」は翌週に急落。この理由は上位進出時におけるストリーミングとダウンロードの乖離にあり、ストリーミングの課題が浮き彫りになりました。

Global Excl. U.S.におけるTravis JapanJUST DANCE!」の獲得数はストリーミング340万、ダウンロード118,000を記録。最新の同チャートで数値が判明した他曲はテイラー・スウィフトAnti-Hero」(1位 5840万・7,000)、リアーナ「Lift Me Up」(3位 5320万、17,000)、JIN「The Astronaut」(6位 4350万、43,000)であり、Travis JapanJUST DANCE!」ではダウンロードが際立つ一方でストリーミングが高くない状況です。

他方、「JUST DANCE!」はダウンロードの高さがGlobal Excl. U.S.5位という結果をもたらしたとも言えます。これはビルボードジャパンと異なり米ビルボードやグローバルチャートではリミックス等複数バージョンが合算され、tofubeatsさんおよびYaffleさんが手掛けたリミックスがオリジナルバージョンと同時リリースされたことも功を奏した形です。

ダウンロードの大半は日本国内での購入と考えますが、その日本におけるリリース4日目以降のダウンロード数が下がっていることは先述した通り。この動向をセカンドシングル「Moving Pieces」に当てはめれば、5月18日木曜までの4日分のダウンロードセールスを武器に、その木曜までを集計期間とする5月27日付グローバルチャートにおいて200位以内に初登場する可能性が考えられます。

 

 

ともすればTravis Japan側がセカンドシングル「Moving Pieces」においてリリースを月曜に切り替えたのは、日本におけるチャートアクションの強化に加えてその日本のセールスだけでもグローバルチャートに登場できると見込んでのものではないかと考えます。ただしセカンドシングルがファーストシングル「JUST DANCE!」と同等の売上になるか、またリミックスのリリースがあるかは不明です。

 

そして重要なのは、ストリーミングを強くすることでロングヒットを目指すことです。現在J-POPにおいてこの指標が最も強いのがYOASOBI「アイドル」。同曲は日本で記録的なヒットを続けるのみならず、明日発表予定の5月7日付グローバルチャートにおいてGlobal Excl. U.S.のみならずGlobal 200でもトップ10入りするものと考えられます。

 

ストリーミングヒットの輩出はどの歌手においても難しいものの、人気の波に乗れば加速する可能性があります。リリーススケジュールの発信やTikTokでの先行配信等、今の施策のトレンドをきちんと押さえてその波を作ろうとしているTravis Japan「Moving Pieces」が、ライト層へ浸透しストリーミングでもヒットに至るか、その動向に注目しましょう。