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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米ビルボードソングチャート来週発表分の予想からみえてくるチャート施策、および私見

日本時間の明日早朝、4月22日付米ビルボードソングチャート(集計期間:4月7~13日)が発表されますが、既にその先のチャートについてアナウンスを始めた方がいらっしゃいます。

今回はここから読み取れることについて、書き記します。

 

 

4月14~20日を集計期間とする4月29日付米ビルボードソングチャートでは、アイス・スパイス & ニッキー・ミナージュ「Princess Diana」が4位に初登場すると見られていますが、予想担当者はホームページ上のセールスを含まないパターンの予想を別途紹介しています。

「Princess Diana」はアイス・スパイスの公式ショップ(→こちら)、ニッキー・ミナージュの公式ショップ(→こちら)の双方にて、共に2バージョンが発売。価格は通常1.29ドルのところ0.69ドル(69セント)に抑えられています。

この安価販売、そして初動に長けたニッキー・ミナージュの効果もあり、アイス・スパイスはピンク・パンサレスに参加した「Boy's A Liar Pt.2」に次ぐ2曲目の米ビルボードソングチャートトップ10ヒットを輩出できそうな気配ですが、このホームページ上での売上がどうなるかは未知数。予想担当者の中間および最終予想、そして何より米ビルボードソングチャートの結果を注視する必要があります。

 

最新4月15日付米ビルボードソングチャートではチャートポリシー(集計方法)の変更があったのではないか、JIMIN「Like Crazy」がクリスマス関連曲を除く作品での首位からの急落記録を更新したのはその変更に基づくものではとの見方があります。米ビルボードはチャートポリシー変更についてアナウンスしておらず、この点(変更したかどうかについて)も注視しなければなりません。

(自分が見る限り、チャートポリシー変更に関する言及は予想担当者内ではあまり挙がっていない印象ですが、一方で今回の急落を機に米ビルボードに対し綺麗とはいえない言葉で非難している方も少なからずいらっしゃいます。米ビルボードはチャートポリシー変更の有無をきちんと発信し、同時に非難する者へ堂々とした態度を示す必要があると考えます。)

 

 

さて、予想担当者による4月29日付米ビルボードソングチャートの初期予想では、シザ「Kill Bill」が首位に立つと記されています。モーガン・ウォレン「Last Night」と接戦になるともみられていますが、仮にこの予想の通りとなれば「Kill Bill」において、そしてシザ自身にとって初のチャート制覇となるのです。この予想の背景には、シザへの強力な援軍の存在があります。

4月14日、つまりは4月29日付米ビルボードソングチャートの集計期間初日にドージャ・キャットを迎えた「Kill Bill」のリミックスが登場。リリース直前にはこんなやり取りもあり、おそらくこのリミックスを予想された方もいらっしゃるかもしれません。

面白いのはシザ、ドージャ・キャット双方のYouTubeアカウントにて公開されたリリックビデオが各々を主人公とした別の作品であるということ。双方を観てもらおうという施策的な意味合いも感じられます。

 

シザとドージャ・キャットの共演は、ドージャ・キャット feat. シザ「Kiss Me More」(2021)以来。同曲は週間3位、年間6位と大ヒットしています。

過去のヒット曲におけるコラボレーションが(主演と客演の入れ替わり等に関係なく)復活する事例について、直近ではザ・ウィークエンド「Die For You」が挙げられます。これまで複数回共演したアリアナ・グランデが参加したことで、同曲は3月11日付米ビルボードソングチャートで初めて首位に立ちました。

注目は、「Kill Bill」のチャート予想においてはクレジットがシザの単独名義となっている点。米ビルボードでは複数のバージョンが合算され、単独名義のオリジナル版より共演や客演が追加されたリミックスのポイントが優ればチャート上もその名義となります。「Die For You」はアリアナ・グランデ参加版の初動が強かった一方、「Kill Bill」は既にラジオ等で強くドージャ・キャット参加版が少数派になると考えられるのです。

とはいえ、最新4月15日付にて通算8週目の2位を記録しているシザ「Kill Bill」にクレジットが記載されないとしても盟友が尽力したことで、チャートがどう動くかが気になるところです。

 

 

最後に、強い私見と前置きして書くならば、歌手のホームページ上におけるセールスは今後米ビルボードソングチャートやアルバムチャートにおいてもウエイトを下げる必要があるのではと捉えています。予想の難しさが理由ではなく、iTunes Store等デジタルプラットフォームでの売上にならず音楽業界全体に広く還元されにくいと考えるためです。

また所有指標の増加を狙った施策は、チャートでの後の大きな下落にもつながります。ザ・ウィークエンド & アリアナ・グランデ「Die For You」は米ビルボードソングチャートで首位を獲得した翌週に4位へ後退しましたが(3月18日付参照→こちら)、米ビルボードでは割と大きな下落幅と言えます。ストリーミングやラジオ以上にダウンロード指標の急落度合いが大きく、ゆえに所有指標のウエイトは下げていいのかもしれません。

一方でリミックスは、リリース後も接触指標群に有効に作用し続けるならば施策以上の価値が付くものと考えます。そのようなリミックスの登場を期待しています。