坂本龍一さんの訃報に伴い、過去作や最新作が音楽チャートで上昇。最新4月12日公開分(集計期間:4月3~9日)のビルボードジャパンアルバムチャートでは、最新作『12』が3位に再浮上しています。
最新4月12日公開分においては、集計期間中にアルバム『12』のレコード(アンコールプレス分)が発売されたことも影響しています。フィジカルセールスは6,189枚を売り上げ、同指標を制しています。
【ビルボード】ももいろクローバーZ『ZZ's III』総合アルバム首位獲得 https://t.co/j1oEKc43in pic.twitter.com/xsaB4PcncZ
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2023年4月12日
(上記ツイート内リンク先の記事ではCDセールスと記載されていますが、レコードやカセットテープも含まれるため弊ブログではフィジカルセールスと記しています。またフィジカルセールス1枚の売上よりもダウンロード1DLの売上のウエイトが勝るため、フィジカル未リリースで3,536DLを売り上げたももいろクローバーZ『ZZ's III』が総合アルバムチャートで首位に立っています。)
なお総合アルバムチャートの構成指標であるダウンロードでは坂本龍一さんのアルバムが『12』(949DL 8位)を含め、100位以内に13作品登場しています。
【ビルボード】ももいろクローバーZ『ZZ's III』がDLアルバム首位、坂本龍一は計13作がチャートイン https://t.co/u9e7ppI6db pic.twitter.com/jdhFwl6brd
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2023年4月12日
ダウンロードが牽引という点においては、最新4月12日公開分のソングチャート100位以内に唯一ランクインした「Merry Christmas Mr.Lawrence」も似ています。
上記は直近60週分のCHART insightを指しますが、坂本龍一「Merry Christmas Mr.Lawrence」はダウンロード指標が11位に入り、チャート構成比の半分近くを占めています。他指標ではラジオが18位、動画再生が24位に入りましたが、たとえばラジオにおいては指標化の基となるプランテックのOAチャートにて、関連曲を含め大挙エントリーを果たしています。
日本が世界に誇る音楽家の一人、坂本龍一さんが3月28日に亡くなった。その訃報が4月2日夜に報じられたことを受け、翌3日より各局・番組が追悼し関連曲のオンエアが急伸。今週のラジオ・オンエア・チャートでは下記の計8曲がチャートインするに至った。
「Merry Christmas Mr.Lawrence」(19位)、忌野 清志郎&坂本 龍一「い・け・な・い ルージュマジック」(36位)、「energy flow」(81位)、「The Last Emperor-Theme」(126位)、坂本 龍一featSister M「The Other Side of Love」(126位)、YMO「TECHNOPOLIS」(84位)、YMO「BEHIND THE MASK」(109位)、YMO「TONG POO(東風)」(109位)
※アーティスト名未表記はソロ名義
また、チャート圏外ながらデビッド・シルビアン&坂本 龍一名義による「禁じられた色彩」をはじめ、ソロ名義での「Ballet Mecanique」「サウザンド・ナイブズ」「undercooled」、そして今年1月にリリースされたばかりのオリジナルアルバム「12」収録曲等々、多岐にわたる楽曲のオンエアが多数確認された。
アルバムチャートにはラジオ指標がありませんが、複合指標から成るビルボードジャパンのソング/アルバムチャートではダウンロードやラジオが訃報直後に大きくなるという傾向がみられます。
ただ、「Merry Christmas Mr.Lawrence」においてはソングチャートのストリーミング指標で300位以内に入っていません。このことについてはビルボードジャパンの最新ポッドキャストでも触れられており、総合ソングチャート300位までには計6曲がランクインしながら、構成指標はいずれも同様だったこと(ダウンロード、ラジオおよび動画再生)も紹介されています。
ストリーミングはサブスク再生回数やYouTubeのオーディオストリーミングから成る指標ですが、たとえば日本のSpotifyにおけるデイリーチャートの動向をみると200位以内に到達した坂本龍一さんの作品は「Merry Christmas Mr.Lawrence」のみであり、4月3日に69位まで達した一方で200位以内ランクインは前後を含む3日間に限られます。
他方、『純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られた』日本のSpotifyバイラルソングチャートでは、4月5日付において『坂本龍一の逝去を受け、関連楽曲がTop100のうち半数近くもランクイン』しています(『』内は上記記事より)。ただし、バイラルチャートが同じSpotifyのデイリーチャートに大きく派生する状況には至っていないと言えるかもしれません。
海外では訃報が流れた直後、サブスク再生回数にも追悼の思いが反映されます。
そしてSNSでの話題に基づくバイラルチャートのみならず、特に海外では実際の再生回数に基づくデイリーチャートにおいても顕著な動きがみられます。たとえば昨年9月に亡くなったクーリオによる1995年度米ビルボード年間ソングチャート制覇曲「Gangsta's Paradise (feat. L.V.)」が、2022年9月29日付のグローバルデイリーチャートで11位に再登場し、同日付ではアメリカにて6位に初登場を果たしたのです。
上記はクーリオによる一例ですが、坂本龍一さんの訃報後におけるチャートアクションからは日本における音楽の触れ方が色々見えてくるように思います。主要サブスクユーザー(とされる若年層)に坂本さんの知名度がどのくらいあるかを確認する必要もあるでしょうが、主に中高年層は接触より所有を優先する一方でサブスクには大きく移行せず、サブスクが日本でまだ十分に浸透していると言い難いのではと感じた次第です。
坂本龍一さんの作品がすべてサブスク解禁されているわけではない模様であり、ともすればその状況もサブスクへの良くないイメージとなり聴取行動を控えることにつながったのかもしれません。アーカイブ(カタログ)の不十分さは訃報に限らず触れたいという衝動を消しかねないのではと以前ブログで記しており、そのような環境は今回においても少なからず見られた可能性は否定できないでしょう。
先述したSpotifyにおいては、デイリー200位の再生回数推移からサブスクユーザーが(Spotifyに限らず)上昇していると捉えていましたが、今回の坂本龍一さんの訃報を受けた後の動向からは、まだ十分と言えないのではという疑問が自分の中に生まれています。歌手やレコード会社におけるアーカイブの強化、そして音楽ファンへのサブスクの浸透がまだまだ必要だと受け止めています。