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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

『NHK紅白歌合戦』初登場10組出演の妥当性、ビルボードジャパンのチャートがはっきり証明している件

NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 以下、紅白と表記)の出場歌手が16日に発表されました。

今回は初出場歌手をメインに、出演の妥当性について記載します。

 

 

初出場は紅組がIVE、ウタ、Aimer、緑黄色社会、LE SSERAFIMの5組、白組がSaucy Dog、JO1、なにわ男子、Vaundy、BE:FIRSTの5組で計10組と少なくありません(以上敬称略)。また復帰組も多く、昨年とは比較的大きく変わっています。

今年のラインナップを見た第一印象は、紅白がはっきり音楽チャート、それもビルボードジャパンを強く意識し信頼しているという点にあります。現時点でほぼ唯一ビルボードジャパンソングスチャートの予想を行う紅蓮・疾風さんが今年度の年間チャートについても暫定予想をアップされていますが、上位且つ2022年度リリース曲輩出歌手は比較的多く押さえていると言えます。

そして何より、今回の紅白出場歌手発表直後のビルボードジャパンによる記事公開は見事でした。

ビルボードジャパンが今の時代に即したチャートポリシー(集計方法)を採るようになって以降同チャートが社会的ヒットの鑑となっていること、曲のロングヒットと世間一般への認知度が比例してきていることを踏まえ、紅白側がビルボードジャパンのデータを用いたと考えていいでしょう。そしてストリーミング1億回突破曲を保有する歌手が多いことも解ります。

 

初登場組等の人気は、ビルボードジャパンによるトップアーティストチャート(Artist 100)からもみえてきます。これはソングスチャート(Hot 100)およびアルバムチャート(Hot Albums)のポイントを合算し歌手単位でまとめたもので、CHART insightから確認が可能です。

(本来CHART insightのリンクを貼りたいところですが、はてなブログに貼付すると遷移しない(接続が拒否される)事態が発生します。興味を持った方は、ビルボードジャパンのトップページ左上にある”CHART INSIGHT”をクリック(タップ)してご確認いただきたいと思います。)

下記CHART insightは最新11月16日公開分(11月21日付)までの60週におけるトップアーティストチャートの推移となります(IVEおよびLE SSERAFIMは60週未満)。順位は最新11月16日公開分(11月21日付)におけるそれを指し、チャートイン回数は2021年度以降(2020年12月2日公開分(12月7日付)以降を示しています。またチャート構成比は最新週における8指標のポイント構成となります。

総合順位は黒で表示。また各指標はフィジカルセールスが黄色、ダウンロードが紫、ストリーミングが青、ラジオが黄緑、ルックアップがオレンジ、Twitterが水色、動画再生が赤、カラオケが緑で表示。ソングスチャートは8指標、アルバムチャートはフィジカルセールス、ダウンロードおよびルックアップの3指標で構成されます。

 

・IVE

・Ado (ウタ名義を含む)

・Aimer

緑黄色社会

・LE SSERAFIM

・Saucy Dog

・JO1

・なにわ男子

・Vaundy

・BE:FIRST

 

トップアーティストチャートをみると、10組のほぼすべてがこの1年間総合100位以内にランクインし続けていることが解ります。

IVEやLE SSERAFIMはリリースしてから日が浅いものの、シングルやアルバムのリリースの度に前作リリース後よりも総合順位が押し上がっていることが解ります。これはヒットに伴い着実に知名度が上昇していることを示していると言えます。

多くの歌手に共通しているのがストリーミングの強さで、総合より順位面で高い歌手も。特にAdoさんはウタ名義でのリリース以降、8月10日公開分(8月15日付)から12週連続でこの指標を制しています。またVaundyさんは今年度においてストリーミング指標のトップ10落ちが一度もなく、今秋は3週連続で2位を記録しているのも特筆すべき傾向です。

女性K-Popアクトに比べてボーイバンドはフィジカル加算の有無で総合順位が乱高下するという特徴があるのですが、初出場の3組は総合100位圏内にとどまり続けています(なにわ男子は「初心LOVE」のフィジカル関連指標初加算以前にも動画再生指標が牽引し総合100位以内に登場した経緯あり)。とりわけデジタル未解禁のなにわ男子が動画再生指標で長く上位にとどまるのは特筆すべきことであり、仮にデジタルを解禁すれば「初心LOVE」等はより大きなヒットになったと考えられます。

 

このトップアーティストチャートは、紅白初出場歌手のみならず復帰歌手においても十分な妥当性を示すものです。たとえばTWICEは接触指標群(ストリーミングおよび動画再生)が安定し、今の時代ならではのヒットを築き上げています。

一方で、今回の紅白におけるK-Pop3組出場に違和感を覚える方が少なくないと聞きます。ならばTWICEやIVE、LE SSERAFIMのCHART insightと、今回出場を逃したJ-Popの女性アイドルグループとを比較されることを勧めます。フィジカルセールスの大きさは素晴らしいと思う一方、接触指標群が伴っていないゆえフィジカルシングルの表題曲が真の社会的ヒット曲に成ったとは言い難いというのが私見です。

 

 

無論トップアーティストチャートをはじめとするビルボードジャパン各種チャートが選考基準のすべてではないとして、よりチャート実績のある歌手を初出場に至らせたと考えていいでしょう。一方ではチャート上位に進出していても、優里さんのように格闘技観戦を優先するため出演しないというパターンもあります。好きな歌手が出ないから見ない等と言う前に、その歌手の成績や背景を冷静に分析することが大切です。

それでも、客観的なデータにて紹介したところで紅白出場歌手を”知らない”とする方が少なくありません。”紅白見ない”がトレンド入りしたそうですが、知らないのは誰にでもあることだとして、知らないことを正しいと決めつけ認知度の高くない歌手のせい等にするやり方は格好悪いと断言します。学ぶ姿勢、知ろうとする気概を是非持ってほしいと強く願いますが、見ないならばわざわざ公言する必要はありません。

そして演歌歌謡曲やベテランのJ-Pop歌手(それこそサブスク時代が始まる前にデビューした方)がデジタル興隆の現在にあって大きなヒットがあまり生まれていないという現状はきちんと共有されるべきです。今回氷川きよしさんが特別企画枠で出場しますが、その枠を演歌歌謡曲歌手が埋められなかったのはそのひとつの象徴でしょう。

これは演歌歌謡曲界のヒットが乏しいためであり、さらにそのリリース手法にもはっきり問題があると思うゆえ、改善は必須と断言します。演歌歌謡曲界のリリース手法がアイドル等にも伝播しているゆえ、尚の事です。その施策については上記ブログエントリーにて紹介しています。

 

このような現状をきちんと把握すること、そして悪態をつくよりもどうすればいいのかを考えたほうが、日本の音楽業界全体にとってプラスとなることでしょう。