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ビヨンセ、6年ぶりのアルバム『Renaissance』がリリース…しかし海外と日本との反応の差を痛感する

一昨日、およそ6年ぶりとなるビヨンセのオリジナルアルバム『Renaissance』がリリースされました。

米歌手や、最近ではK-Popアクトの新曲は日本時間の金曜13時(サマータイム以外は14時)、つまり米の解禁時間に合わせてリリースされることが多いのですが、ビヨンセ『Renaissance』は日本の午前0時に解禁された模様。金曜朝に目を覚ますと、既にチェックされた方からの称賛コメントが多く見られました。

期待の高さは、サブスクサービスにも表れています。米やグローバルのSpotifyデイリーチャートを定点観測するSpotify StatsのTwitterアカウント(→こちら)にて、7月29日付米Spotifyデイリーチャートにおけるビヨンセ「Renaissance」収録曲の勢いを確認することができます。再生回数200万超えの曲はなかったものの、この勢いが続けば複数曲の米ビルボードソングスチャートトップ10入りもあり得るかもしれません。

一方で日本のSpotifyソングスチャートでは『Renaissance』の解禁が午前0時だったにもかかわらず、7月29日付デイリーチャートにおいて200位以内ランクインはゼロ。「Break My Soul」の返り咲きもありませんでした。

(上記はリリックビデオ。)

「Break My Soul」の、日本を含めた世界各国のSpotify動向はkworb.netでも確認できます(→こちら)。6月20日にリリースされたこの曲は、日本のSpotifyでは6月24日付で初めて200位以内に登場。翌日は2ランクアップし185位につけましたがその後圏外に。6月28日に193位へ返り咲きを果たしたものの、それが現段階における最後の200位以内エントリーとなっているのです。

 

それにしても、ここまで洋楽(K-Popを除く)が日本のSpotifyデイリーチャートで上昇しないことに驚かされます。

「Break My Soul」は米ビルボードソングスチャートでトップ10入りを続けています。そして何より歌手自体の日本での知名度は極めて高いはずであり、だからこそ「Break My Soul」の日本での反応の薄さは意外だと感じています。しかしこれは、何もSpotifyだけの現象ではありません。

上記はビヨンセ「Break My Soul」のビルボードジャパンソングスチャートにおけるCHART insight(こちらで確認可能)。黄緑で示されるラジオ指標は最新7月27日公開分(8月1日付)まで5週連続で20位以内に入りながら、青のストリーミング指標は実は一度も300位以内に達せず、加点対象となっていません。この指標はSpotifyも含まれており、このデジタルプラットフォームでの再生回数だけが著しく少ないわけではなかったのです。

ラジオで気を吐く「Break My Soul」ですが、そのラジオでの洋楽全体のOA数は少なくなった印象があります。最新7月27日公開分(8月1日付)ビルボードジャパンソングスチャートのラジオ指標トップ20のうちK-Pop以外の洋楽は4曲で、5年前の同時期(2017年7月26日公開分(7月31日付))における7曲のおよそ半分に。この原因のひとつとして以前、ワイド番組等での芸人パーソナリティ(DJ)起用の増加を挙げました(上記リンク先参照)。

しかしその芸人の間では、ビヨンセの認知度が高いはずです。何より渡辺直美さんがビヨンセの真似をして大ブレイクしたことが大きく影響し、その渡辺さんは今年2月の生配信においてもビヨンセとの邂逅を語っています。そのビヨンセが6年ぶりに新作を出したのならば、渡辺さんつながりとしてもっとラジオで取り上げられて好いと思うのです。

しかしながら、渡辺直美さん自身においても、直近のSNSにてビヨンセ「Break My Soul」や『Renaissance』について紹介されていない模様です。Twitter(アカウントはこちら)では発信自体がごく少数にとどまり、一方のInstagram(アカウントはこちら)ではビヨンセではなく、自身が参加したドージャ・キャットとの「Kiss Me More」が触れられています。

 
 
 
 
 
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渡辺直美 Naomi watanabe(@watanabenaomi703)がシェアした投稿

ドージャ・キャットがシザをフィーチャーし米ビルボードソングスチャート最高3位を記録した「Kiss Me More 」に渡辺直美さんが参加したバージョンが今月リリースされています。この参加によりドージャ・キャット以外の話題をすることがNGとなったというのはさすがに考えすぎかもしれませんが、しかし仮に渡辺直美さんがビヨンセの新譜を話していたならば、日本での新譜の浸透度は大きく変わったのではないでしょうか。

実際、ザ・キッド・ラロイ & ジャスティン・ビーバー「Stay」にチョコレートプラネット松尾駿さんを起用した日本独自のミュージックビデオ(現在は削除済)がヒットし、同曲は現在でも日本のSpotifyデイリーチャートトップ50およびビルボードジャパンソングスチャート100位以内に滞在しています。

芸人を起用しないとより大きなヒットに至れない洋楽の環境には違和感がゼロではありませんが、渡辺直美さんがビヨンセの新譜について言及していたならばと思いますし(勿論言及の有無は個人の自由ですが)、ドージャ・キャットもビヨンセソニーミュージック洋楽部門に属しているならばソニーミュージック側がドージャの流れで渡辺直美さんにコメント等を依頼し、ツイートに使用することも可能だったのではないでしょうか。

 

 

最新のSpotifyデイリーチャートから様々な思いを抱いています。K-Popを除く洋楽の強くなさ(そしてビルボードジャパンソングスチャートから見えてくるラジオの影響力の大きくなさ)もさることながら、Spotifyの動向を日々追う身として新曲をリリース日にチェックする習慣が日本では未だに浸透していないことも感じています。尤もJ-Popのリリース日の多くが水曜というドメスティックな状況にも引っ掛かりを覚えるのですが。

仮に新譜チェックの習慣が身についていたとしてビヨンセ『Renaissance』収録曲が大挙200位以内に入ったかは解りませんが、その習慣は音楽業界活性化のためにも浸透させるべきと感じています。またラジオの強くなさにおいても、たとえばラジオ局や番組が公式プレイリストをサブスクサービスにアップする等ライバルと思われる節のあるデジタルを積極的に活用し、音楽好きな方を誘導する流れを強化することも必要でしょう。

 

それにしても、ビヨンセ知名度や先行曲のヒットがありながらも、『Renaissance』の国内盤アナウンスが未だみられないことは、強く気になるところです。大型音楽フェスが再開し外国人歌手も多く来日する中で、ビヨンセですら国内盤がリリースされない状況からは日本のレコード会社の洋楽への対応力の実情が透けて見えるのではないでしょうか。

(7月31日7時の段階で、HMVのリンク先において『Renaissance』の国内盤アナウンスはありません。)