イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(訂正あり)【ビルボードジャパン最新動向】クリスマスソングがピークに、一方で日本を代表する2曲に大きな差が生じた理由は

(※訂正(18時58分):King Gnu「一途」紹介の際、『『劇場版 呪術廻戦0』は12月24日にされ大ヒット』と記載しましたが、正しくは『『劇場版 呪術廻戦0』は12月24日に公開され大ヒット』でした。訂正し、お詫び申し上げます。そして、問い合わせフォームにてご指摘くださった方へ感謝申し上げます。名前の掲載可否が分かりかねるため、この形での御礼となることをご了承ください。)

(※追記(12月21日5時11分):はてなブログにてビルボードジャパンのホームページを貼付すると、きちんと表示されない現象が続いています。そのため、表示できなかった記事についてはそのURLを掲載したビルボードジャパンによるツイートを貼付する形に切り替えました。)

 

 

 

毎週木曜は、最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。

2021年12月20~26日を集計期間とする2021年12月29日公開(2022年1月3日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)は、年末年始進行の関係で昨日発表。今回、Aimer「残響散歌」が首位に返り咲きを果たしています。

Aimer「残響散歌」に徐々に近づいているのがKing Gnu「一途」。ポイント前週比は108.9%→124.7%と上昇を続け、「残響散歌」とのポイント差を576に縮めています。同曲が主題歌に起用された『劇場版 呪術廻戦0』は12月24日に公開され大ヒット、また次回(1月5日公開分(1月10日付) 年末年始進行により1月7日金曜に発表)はフィジカルセールス関連指標が初加算されることから、同曲が首位を獲得する可能性は高いでしょう。

そして今回の1位および2位のチャート構成比はかなり似ています。デジタルの所有(ダウンロード)もさることながら、接触(ストリーミングおよび動画再生)の人気がチャートに大きな影響を及ぼすことが、ここからはっきりみえてきます。

f:id:face_urbansoul:20220106051942p:plain

f:id:face_urbansoul:20220106052044p:plain

 

さて、2021年12月29日公開分(2022年1月3日付)ビルボードジャパンソングスチャートではクリスマスソングがピークに達しています。

毎年街を賑わせるクリスマスのラストウィークとなった当週では、back numberの「クリスマスソング」が前週19位から総合7位に、マライア・キャリー恋人たちのクリスマス」が前週37位から17位に、鈴木鈴木「ホワイトキス」が31位から21位に、山下達郎の「クリスマスイブ」が46位から29位へと、それぞれジャンプアップを果たした。

back number「クリスマスソング」は、2019年1月2日公開分(1月7日付)以来3シーズンぶりにトップ10に返り咲きました。

f:id:face_urbansoul:20220106052534p:plain

(上記は直近60週分のCHART insight。)

季節感が特に反映されるラジオ指標では上位20曲のうち半数以上がクリスマスソングで占められていますが、ストリーミングでもその傾向が少しずつ高まっているように感じます。ビルボードジャパンのストリーミング指標の記事では、back number「クリスマスソング」の勢いの大きさを感じることができます。

前週26位から当週7位にジャンプアップしたのは、back numberが2015年にリリースしたシングル「クリスマスソング」だ。ホリデー・シーズンになるとチャートを上昇する展開は毎年恒例で、クリスマスを集計期間に含んだ当週の再生回数は前週比153%となる5,912,228回を記録。大きく数字を伸ばして上位に返り咲いた。

そしてストリーミングは、日本におけるクリスマスソングの代表曲にも反映されました。

f:id:face_urbansoul:20220106053040p:plain

(上記は直近60週分のCHART insight。)

山下達郎「クリスマス・イブ」は前回46位に再登場し、今回は29位に。前回は毎年リリースされるフィジカルの影響で返り咲いていますが、今回はその影響が弱まりながら総合ではさらなる上昇に至っています。それでもback number「クリスマスソング」とは大きな差が生じているのですが、上記CHART insightでは黄緑で示されるラジオもさることながら、青で示されるストリーミングも上昇の大きな要因であることが解ります。

この「クリスマス・イブ」、一部デジタルプラットフォーム限定でサブスク解禁されているのです。Amazon Music Unlimitedのほか、Apple Musicでも確認できます(その一方で、Spotifyでは確認することができません)。

デジタルプラットフォームを限定していながら、山下達郎「クリスマス・イブ」はサブスク再生回数等を基にするストリーミング指標で67位に登場しており、解禁済のデジタルプラットフォームではより上位に進出したと想像できます。そして、山下達郎さんの作品はそのほとんどがサブスク解禁されていないため、ともすれば解禁済のサブスクサービスを利用しながらその存在に気付かなかった方もいらっしゃることでしょう。

back number「クリスマスソング」と山下達郎「クリスマス・イブ」とではチャート構成比が大きく異なり、後者ではミュージックビデオがYouTube未掲載のため動画再生指標も未加算。かつてこの指標は加算されていましたが、ビルボードジャパンは米ビルボードに倣い公式動画のみを加算対象に切り替えたことが影響しています。接触指標群が充実していないことは、曲が”見つからない"点において勿体ないと言えるのです。

 

この見つからないという指摘は、以前竹内まりや「プラスティック・ラブ」についても記していたことでした。

竹内まりやさんに限らず、またシティ・ポップ関連曲にとどまらず、過去作品のデジタルアーカイブを徹底させ、ムーブメントやバズの発生時に機会損失を招かないことが必要です。海外の音楽ファンが日本の音楽に触れたくても触れられない、もしくは触れたとしても十分な解禁状況ではないため不満を抱かせかねない事態の発生は、世界からの日本の音楽に対する失望につながると言っても過言ではないでしょう。

フィジカルを利用せずストリーミングのみで音楽に触れる方にとっては、サブスク未解禁の作品は"存在しない"ことになるわけです。歌手側の意向は勿論尊重した上で、しかしながらユーザー(リスナー)の意向、聴かれ方の選択もまた尊重されるべきだというのが私見です。

 

今回の総合ソングスチャートの振り返り記事では、このような記述があります。

2021年に総合7位まで上がったのは、ストリーミング・ユーザーの着実な拡大を示すものとみられ、この傾向は次年度以降も続くだろう。とすると、日本のクリスマス定番曲として、米ビルボード・ソング・チャートにおけるマライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」同様に、同曲が総合首位を獲得することもあるかもしれない。

マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」は2019年以降米ビルボードソングスチャートを制し、最新チャートでは通算8週目の首位を獲得しています。これは間違いなく今の聴かれ方の変化や多様化、そしてその変化に柔軟に対応したソングスチャートの影響に他なりません。そして、今のソングスチャートにおけるストリーミングの重要性がよく解るのです。

(なお、米ビルボードソングスチャートやグローバルチャートにおけるストリーミング指標にはYouTubeFacebookの動画再生も含まれます。)

 

ストリーミングや動画再生において"見つからない"そして"存在しない"というのは機会損失と言えます。こう記すとフィジカルは要らないのかと仰る方が稀にいらっしゃいますが、決してそうではありません。フィジカルもデジタルも充実させ、ユーザー(リスナー)の多様な触れ方を尊重されるならば断然そのほうが好いということです。

今回のチャート動向から山下達郎さんのサブスクニーズが可視化されたと言えます。柔軟な対応を願うばかりです。