イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(訂正あり)【ビルボードジャパン最新動向】宇多田ヒカル「君に夢中」の急上昇に寄与した”先行解禁”とは、そしてチャート訂正問題への提案を記す

(※追記(12月4日8時10分):宇多田ヒカル「君に夢中」のミュージックビデオ公開分がビルボードジャパンソングスチャートの動画再生に初めて加算されるタイミングは12月15日公開分(12月20日付)でした。該当箇所を訂正の上、お詫び申し上げます。)

 

 

 

毎週木曜は、最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。

11月22~28日を集計期間とする12月1日公開(12月6日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。フィジカル関連指標初加算に伴い、Hey! Say! JUMP「Sing-along」が初登場で首位を獲得しました。

(上記ミュージックビデオはショートバージョンとなります。)

 

 

さて今回、まずはビルボードジャパンに対する願いをあらためて記します。

 

ビルボードジャパンは水曜のチャート公開時、まず初めにCHART insightを更新します。しかし昨日はその公開時にミスが発覚。ラジオ指標が前週(11月24日公開分(11月29日付))と変わっていませんでした。そのことに気付いた自分が問い合わせフォームを介して指摘したこともあり、CHART insightの更新内容取り下げ→再度発表という流れが生じています。

 

今回の訂正において、取り下げたタイミングでその旨をアナウンスしなかったことが強く引っ掛かります。下記アナウンスが発表されたのは取り下げから1時間近く経過した頃であり、このツイート直後に訂正後のCHART insightが公開されています。本来は取り下げたタイミングでアナウンスするべきだったのではないでしょうか。

『今後の管理体制を見直し、同様のミスが起きないように徹底して参ります』という表明はこれまでに見られなかった表現ゆえ支持したいと思う一方で、ビルボードジャパンはチャート発表後の訂正がここ最近目立つ印象があります。そのことについては以前、ブログエントリーで指摘させていただきました。

しかしこの後も、ビルボードジャパンではチャート発表時のミスが続いています。

TWICEの曲における動画再生指標加算先が異なっていた点について、訂正して以降そのアナウンスがないことを疑問に思っていました。ビルボードジャパンは翌日になって訂正した旨を発表していますが、今回の件も含めその発表は遅いと思うのです(TWICEの件については訂正アナウンスの発表を好意的に捉えていましたが、昨日の件も踏まえればやはり遅きに失していると言わざるを得ません)。

TWICEの件も、最新チャートにおけるミスも、すべての指標を取りまとめた後にデータを突き詰めれば十分に発覚可能だったと思われます。ならばチャート更新前に担当者、さらには新曲リリース情報に詳しい方等も交え、全員でデータを再検証する時間を用意することは必須であり、それにより先述したミスはかなりの確率で防げたはずです。

(追記あり) 【ビルボードコラム】ビルボードジャパンが日本を代表する音楽チャートとなるための知名度向上案(9月27日付)ではミスを起こさない体制づくりについて提案しています。元来オリコンに比べて週間チャートの発表が遅れるのは複合指標を扱う関係上やむなしであり、急いで発表する必要はないでしょう。ならば発表を夕方の定時とし、それまでにミスがないかをチェックする時間を十分に確保することが必要です。

 

最新チャートにおいて、当初BE:FIRST「Gifted.」が10位とアナウンスされていながら訂正後には11位となったことで、ファンの方から”10位と11位の差は大きい”との声が聞かれました。ともすれば1位と2位が入れ替わっていた可能性もあったわけです(実際はそうではありませんでしたが)。チャートは歌手もファンも気になるものであり、訂正に失望するのは当然のことです。まして、訂正過多であれば信用失墜は免れません。

ビルボードジャパンには代替となるチャートが存在しません。他にも合算ランキングはあるとして、それらはフィジカルセールス偏重となっていること等もあり信頼度はビルボードジャパンがはるかに上回ります。音楽業界やメディアでも重用されてきている以上、ビルボードジャパンにはチャートを扱うものとしての責任を強く意識してほしいというのが私見。その意識があれば、訂正アナウンスの徹底も可能となるはずです。

 

厳しい物言いかもしれませんが、ビルボードジャパンには今回をはじめとするチャート発表時(当初)のミスについての経緯をまずは説明した上で、改善策を提示することを勧めます。

 

 

 

さて、最新12月1日公開(12月6日付)ビルボードジャパンソングスチャートでは、宇多田ヒカル「君に夢中」が2位に急上昇。首位のHey! Say! JUMP「Sing-along」との違いは、チャート構成指標群を見れば明らかです。

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Hey! Say! JUMP「Sing-along」がフィジカル関連指標に偏りデジタル未解禁、且つ動画再生指標が伸びていない一方で、宇多田ヒカル「君に夢中」はミュージックビデオ解禁前でこの位置に(12月9日に公開)。次週はデジタル解禁後はじめて関連指標が1週間フル加算され、またミュージックビデオ解禁に伴う動画再生加算を踏まえれば、2曲の次週の動向は大きく異なり、「君に夢中」は勢いをキープすることが十分考えられます。

(※追記(12月4日8時10分):「君に夢中」のミュージックビデオ公開分がビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標に初めて加算されるのは12月15日公開分(12月20日付)となります。訂正の上、お詫び申し上げます。)

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注目は、この「君に夢中」がラジオ先行で解禁されていたということ。デジタル解禁のちょうど2週前となる11月12日にラジオおよび有線でOAがスタートしています*1。11月17日公開(11月22日付)では公開後わずか3日間でラジオ指標が20位に初登場しており、「君に夢中」への注目度の高さが解ります(上記CHART insightではラジオ指標は黄緑で表示されます)。

「君に夢中」が主題歌となったドラマ『最愛』(TBS)はリアルタイムでの視聴率がこれまで一度も10%を超えていませんが、タイムシフト視聴率はすべての回でリアルタイム視聴率を上回り、総合視聴率では常時トップ10入りを果たしています(タイムシフト視聴率(世帯)10 - ビデオリサーチ参照)。ドラマの考察も盛り上がっており、曲のニーズが高いことが推測されます。

この「君に夢中」は前週84位に初登場を果たしていますが、ラジオ指標が2位に入ったことが大きく牽引していることは間違いありません。ラジオ先行OAで解禁への期待が高まってきたタイミングでデジタルを投入したことで、デジタル3日分のみの加算ながら急上昇につながったものと捉えています。

 

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デジタル解禁に先駆けて先行公開したことが功を奏した例としては、back number「水平線」が挙げられます。ミュージックビデオのみ長らく解禁されていたこの曲は、デジタル解禁後加算2週目でトップ10入りを果たし(8月25日付 総合4位)、以降最新チャートまで15週連続でトップ10入りを続けています。この曲がロングヒットする理由については若年層支持の観点から以前分析しましたが、先行解禁の影響もありそうです。

back numberが「水平線」を動画のみで先行解禁したのは、戦略を理由とするものではないはずです。しかしながらデジタル解禁を望む声が高まったタイミングでのダウンロードやサブスクの解禁が、チャートアクションの伸びにつながったのは間違いないでしょう。デジタル解禁までどうやって期待感を高めていくか、「君に夢中」や「水平線」から学べることはあるはずです。

*1:Hikaru Utada Official Website | NEWS(11月12日付)参照。