イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) 【ビルボードコラム】ビルボードジャパンが日本を代表する音楽チャートとなるための知名度向上案

(※追記(14時10分):提案項目のうち音楽賞の設立について、問い合わせフォームを介してご指摘をいただきました。その点を追記しております。)

 

 

 

月曜は不定期で、日米グローバルのビルボードチャートに関するコラムを書いています。これまではビルボードジャパンソングスチャートにおける各指標の解説、米ビルボードに対するチャートポリシー変更希望について記しました。ビルボードコラムについては下記リンク先からご確認ください。

 

今回はビルボードジャパンソングスチャートの知名度向上について考えます。

 

 

ビルボードジャパンソングスチャートは開設から十数年が経過し、音楽好きならず多くの方に浸透してきた印象があります。テレビ番組でもビルボードジャパンのデータが紹介され、『NHK紅白歌合戦』は間違いなくこのチャートを参照にしていると言えます。またサブスク等の再生回数に基づくストリーミング指標をいち早く採り入れたことでフィジカルシングル未リリースのヒット曲を可視化した実績があります。

一方でビルボードジャパンの知名度は、日本で長らく君臨してきたオリコンにはまだ及ばないのではと考えます。仮に”日本を代表する音楽チャートと言えば?”のアンケートを実施したならばビルボードジャパンよりオリコンが勝るかもしれず、音楽チャートにそこまで詳しくない方ほどその差が大きくなるのではないでしょうか。

ビルボードジャパンソングスチャートが他の音楽チャートよりも信頼できる理由は保身がないだろうことにあります。ならばチャートの重要性を如何に多くの方に伝え、日本を代表する音楽チャートの地位に押し上げるかを考える必要があります。今回のコラムは余計なお世話かもしれませんが、より高みに到達するには思案し続けることが大切だと考え、記載します。

ソングスチャート(Hot 100)を例に、知名度向上案を5つ紹介します。

 

 

ビルボードジャパンが日本を代表する音楽チャートとなるための知名度向上案

 

① チャートの仕組みをより分かりやすく伝える

ビルボードジャパンソングスチャートは8つの指標で構成されます。ビルボードジャパン独自のCHART insight機能は、総合チャートおよび8つの指標の動向が分かりやすく表にまとまり、ヒットが可視化されています。

自分も以前、CHART insightの見方についてブログエントリーにまとめています。とはいえ、このような解説をさらに伝わりやすい方法で示す必要があるでしょう。たとえばYouTubeに公式チャンネルを立ち上げ、チャートの成り立ちやCHART insightの見方を伝えてみては如何でしょう。視覚に訴えることで、興味を引き出すことが可能です。

 

 

② チャート発表を定時に、且つイベント化する

ビルボードジャパンソングスチャートの発表は、まずはCHART insightの更新が毎週水曜の12~13時台前半に行われ、ほぼすべてのチャートが14時を目処にアップされます。しかしながら定時ではなく、また発表後に修正が行われることも少なからず存在します。対するオリコンはフィジカルセールスのみのランキングを火曜早朝に定時でアップし、メディアも同日朝採り上げます。この徹底の差は何気に大きいのではないでしょうか。

一案として、水曜17時にCHART insightも各種チャートも同時に更新、且つチャート記事をアップするよう時間を固定化し、またポッドキャスト担当者が生配信を実施してカウントダウンを行う等イベント化するのは如何でしょう。そうすれば修正がないかを見直す時間の余裕も生まれます。また生配信の模様をポッドキャスト化すれば収録の負担も抑えることも可能でしょう。

チャートの仕組みを伝えること、そして発表の定時化は、オリコンとの発表の時間差をマイナスに思わせない効果が生まれるものと考えます。

 

 

③ チャート解説番組を用意する

ポッドキャストというコンテンツも必要ですが、主要メディア(特にテレビやラジオ)に開設することも必要でしょう。

現状においてテレビのチャート紹介は情報番組以外ではほぼなく、ビルボードジャパンソングスチャートと同様に複合指標で構成される『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)の独自ランキングが、ビルボードジャパンの発表の5日後に放送されるくらいでしょうか。しかも番組は毎週放送されるわけではありません。また『CDTVライブ!ライブ!』のランキングがフィジカルセールスのウエイトが大きいことに疑問を抱きます。

(昨年秋には『CDTVサタデー』にてランキングが紹介されていました。)

たとえばチャート公開前後のタイミングでラジオ番組を持つのはどうでしょう。特番に流されることなく毎週きちんと放送できるとすれば、個人的にはNHK-FM水曜16-18時枠が最善と考えます。生配信(→ポッドキャスト化)とは別に、既存メディアの枠を確保することもまた必要です。これは②で述べたイベント化をさらに加速させるものでもあります。

(なおNHKでは特定のブランド名について、その表記を認めない可能性もあります。しかし”ビルボード”が音楽チャートを示すものとして米で歴史を築いてきたこと、他の音楽チャート以上に社会的なヒットの鑑であること、さらに『NHK紅白歌合戦』の選考基準に大きく影響を与えているだろう点を踏まえれば、NHK-FMビルボードジャパンの名を用いたチャート番組を用意することは可能であると考えます。)

 

 

④ 音楽賞を設立する

ビルボードは毎年【ビルボードミュージック・アワード】を開催し、チャートを賑わせた作品を讃えています。

今年5月の【ビルボードミュージック・アワード】ではトップ・アーティスト賞をザ・ウィークエンドが獲得。「Blinding Lights」は様々な記録を塗り替える歴史的なヒット曲となりながらも一方ではグラミー賞から無視され、ザ・ウィークエンドはグラミーを痛烈に非難していましたが、ビルボードの賞はきちんと受けています。

音楽賞は複数あることで、ひとつの賞が悪い方向へ流れた際に自浄を促し引き戻す効果も持ち合わせているものと考えます。純粋なチャート上のヒットを称える賞であるならば既存の賞と共存可能であり、その点でもビルボードジャパンが音楽賞を用意することは必要と考えます。

なお、音楽賞の用意には相当な予算がかかるかもしれませんが、たとえばビルボードジャパンの運営が阪神コンテンツリンクであり、親会社が阪神電気鉄道であるならばできないことではないと思います(楽観視しすぎかもしれませんが)。賞の会場をビルボードライブとすれば、運営費は幾分抑えられるはずです。

 

※追記(14時10分)

問い合わせフォームを介してrock-roさんよりご指摘をいただきました。この場を借りて感謝申し上げます。実は、ビルボードジャパンによる音楽賞は既に設立されているとのことで、こちらのリンク先を紹介してくださいました。

ビルボード・ジャパン・ミュージック・アワード - Wikipedia

2013年度まではテレビ中継が行われていたというこの賞ですが、2020年度の受賞者一覧をみると、2020年度年間チャート各部門の首位獲得作品ならびに歌手がそのまま受賞する形となっています。

そのような形のため、音楽賞のテレビ放映というスタイルはなくなったものと思われます。一方で米ビルボードの場合は年間チャートの集計期間と音楽賞の期間とが異なるため、年間チャートと受賞者のズレに面白みを感じることができるものと思われます。

 

個人的にはテレビ放映の復活を望みます。その際は、①年間チャート発表のタイミングを授賞式と合わせてイベント化する(通常は最終週のチャートが発表された9日後、金曜午前4時に発表されますが、同日夜に放映(もしくは配信)し、その際年間チャートも発表)、②米ビルボード同様に年間チャート発表のタイミングとずらし、授賞式を12月以外に設定…この2点を提案します。また、独自の部門賞も設けると面白いでしょう。

 

(追記ここまで)

 

 

⑤ 訂正アナウンスを徹底し、チャート発表時の環境を強化する

ビルボードジャパンソングスチャートが他の音楽チャートよりも信頼できる理由は保身がないだろうこと』と先に記しました。しかしながらその信頼を揺るがすと思しき出来事が発生しています。それは訂正に対する姿勢の問題です。

9月8日公開(9月13日付)ビルボードジャパンソングスチャートの訂正が9月16日になってアナウンスされましたが、トップ10の順位変動がなければ訂正アナウンスは行われないのでは疑念が生まれ、上記エントリーを記載しました。そのエントリーの5日後に発表された9月22日公開(9月27日付)ビルボードジャパンソングスチャートでも問題が発生し、その対応の仕方を見て由々しき事態になったものと厳しくも感じる自分がいます。

YOASOBI「たぶん」がダウンロードおよび動画再生指標急伸となり総合17位に再浮上したという当初の発表が訂正されているのですが、その訂正についてのアナウンスは見当たりません。

総合および各指標のトップ10は、CHART insight更新後の水曜13時台にツイートされますが、ダウンロード指標については他と異なり16時台となっています。おそらくは一度アップされたもののYOASOBI「たぶん」を修正するため一度削除したと想像できますが、しかしその訂正アナウンスはみられません。また総合およびダウンロード指標のチャート解説でも、訂正した旨が記されていません。

一言、”訂正しました、お詫び申し上げます”のアナウンスがあるだけで心象は大きく異なります。今回のように、あたかもしれっと変えたと思わせかねない行為は決して行ってはいけません。公式がそれを行うのは、自身の間違いを認めたくないという意味での保身を優先する姿勢を示してしまっているだろう点において、ご法度ではないでしょうか。

 

チャートを後になって訂正せずに済むよう、事前のチェック体制を強化することが必要です。水曜17時の発表に徹するべきと先に記したのは、現在のチャート解説記事のアップが16時前後であることから、遅らせることで30分以上のゆとりが生まれると考えるためです。

また現在はリモートで行っている業務(ポッドキャストの収録手法や出演者の収録音声の違いから想像可能)を、チャート発表の水曜だけでも顔を突き合わせて行ったり、また人員(チェック要員)を増やすことで環境を改善しては如何でしょうか。

 

 

 

以上、5つの項目を提案しました。

⑤においては知名度上昇とは厳密に異なるかもしれません。しかしながら、知名度が上昇したところで信頼されなければほぼ意味がないと考えます。知名度向上は①~④で行い、同時に⑤を徹底して地道でも着実に信頼を築き上げることで、ビルボードジャパンソングスチャートが名実ともに最高の音楽チャートとして君臨できるものと考えます。