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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

デジタル先行リリースのBE:FIRST「Bye-Good-Bye」がビルボードジャパンで首位に立つ可能性、そして気になること

次週発表される3月16日公開分(3月21日付)ビルボードジャパンソングスチャートではBE:FIRST「Bye-Good-Bye」が首位を狙える位置につけています。ビルボードジャパンが昨日発表した、週前半3日間を集計期間とする速報(先ヨミ)記事ではダウンロード、ストリーミング指標とも「Bye-Good-Bye」がトップに立ちました。

GfK Japanによるダウンロード・ソング売上レポートから、2022年3月7日~3月9日の集計が明らかとなり、BE:FIRST「Bye-Good-Bye」が20,371ダウンロード(DL)を売り上げて現在首位を走っている。

「Bye-Good-Bye」は、BE:FIRSTが5月18日にリリースする2ndシングル『Bye-Good-Bye』の表題曲。日本テレビ系『ZIP!』の朝ドラマ『サヨウナラのその前に』の主題歌として、3月1日よりオンエアされている。同曲は3月7日に配信がスタートし、初動3日間で2万DLを超えるダウンロード数を記録している。

GfK Japanによるストリーミング再生回数レポートから、2022年3月7日~3月9日の集計が明らかとなり、BE:FIRST「Bye-Good-Bye」が5,972,614回再生で首位を走っている。

(中略)

同曲は初動3日間で600万回近い再生数を記録しており、2位以下に220万回以上の大差をつけて首位を独走している。

ちなみに週前半3日間の集計が500万回を超えるのは、BE:FIRSTが2021年11月にリリースしたシングルの表題曲「Gifted.」で記録した5,572,969回(集計期間:2021年11月1日~11月3日)以来、およそ4か月ぶりとなる。

 

BE:FIRSTは昨年「Shining One」でプレデビューし、11月に「Gifted.」を初のフィジカルシングルとしてリリース。「Gifted.」はフィジカルリリース週の月曜にデジタルを解禁したことも相俟って、昨年11月10日公開分(11月15日付)ビルボードジャパンソングスチャートを制しました。2022年度第4四半期以降では最高となる23658ポイントを獲得しています。

「Bye-Good-Bye」はBE:FIRSTの2枚目となるフィジカルシングル表題曲。フィジカルは5月18日に発売されますが、「Gifted.」とは異なりデジタル先行で配信された「Bye-Good-Bye」は次回3月16日公開分(3月21日付)ビルボードジャパンソングスチャートの構成指標のうちダウンロードおよびストリーミングで首位を狙える位置に。総合ソングスチャートでも首位に立つかもしれません。

 

「Bye-Good-Bye」のポイントはどのくらいになるでしょう。前作「Gifted.」の首位獲得時から算出してみます。

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2021年11月10日公開分(11月15日付)における「Gifted.」のCHART insightを上記に。同曲は210544枚のフィジカルセールス、34685ダウンロードおよびストリーミング13040803回再生を記録し総合ソングスチャートを制覇。「Gifted.」は集計期間前半3日間の速報値では18649ダウンロードおよびストリーミング5572969回再生となっており、「Bye-Good-Bye」はダウンロード、ストリーミング共に「Gifted.」を上回っています。

ビルボードジャパンは今年度第1四半期にフィジカルセールスのウエイト減少(係数処理適用枚数の引き下げ)を実施しましたが他指標のウエイト増減はみられず。ゆえに「Bye-Good-Bye」が「Gifted.」と同レベルで推移するならば16000ポイント程度の獲得が見込まれます(「Gifted.」におけるフィジカルセールスとルックアップの獲得ポイントを全体の3割強として計算)。

「Bye-Good-Bye」におけるデジタルの好調について、ダウンロードにおいてはフィジカルが後発となることでまずデジタルで所有しようとする方が少なくないことが考えられます。またストリーミングにおいてはLINE MUSIC再生キャンペーン(再生回数キャンペーン)も影響しているでしょう。各種デジタルプラットフォームで実施中のキャンペーンはBE:FIRSTのホームページにまとめられています。

また「Gifted.」で行われていた複数の動画発信は今回も。「Bye-Good-Bye」は一昨日、ダンスパフォーマンス動画をアップしています。これは動画再生指標のさらなる加速につながるはずです。

ラジオやTwitter指標では以前から安定した強さを発揮しており、BE:FIRST「Bye-Good-Bye」はライバルの動向如何ではフィジカルシングル表題曲が2作連続で首位に至る可能性が十分考えられます。

 

 

となると、初登場後にその勢いをキープできるかが気になるところ。とりわけLINE MUSIC再生キャンペーンの反動はキャンペーン採用曲の大半で発生します。また現段階で他のサブスクサービスの順位はLINE MUSICのそれとは大きく異なるのですが、その中でSpotifyの動向は興味深いと言えます。

日本における最新3月10日付Spotifyデイリーチャートでは「Bye-Good-Bye」が51位に入っているほか、「Shining One」および「Brave Generation」が上昇。過去曲は共に3月6日日曜に200位以内返り咲きを果たし、5日連続でランクインしています。新曲登場時に過去曲が上昇するのは自然なことと言えますが、ともすれば新曲がライト層に少なからず浸透し、過去曲を押し上げている可能性もありそうです。

BE:FIRSTは今週水曜、日本テレビの情報番組『ZIP!』『スッキリ』に連続出演しパフォーマンスを披露。テレビパフォーマンスはコアなファンのみならずライト層への浸透にもつながり、とりわけダウンロード指標を刺激します。通常は音楽番組出演が最善の形とは言えますが、リリース週のタイミングでテレビ露出ができる状況はチャートにも影響を及ぼすと言えるでしょう。実際、放送日のSpotify再生回数は上昇に転じています。

なお、『スッキリ』におけるBE:FIRSTのパフォーマンス動画は番組公式YouTubeチャンネル発。ビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標は公式動画のみが対象となり、且つ上記動画の概要欄に楽曲クレジットがないことから、テレビパフォーマンス動画は動画再生指標の加算対象外になるものと思われます。この点については以前解説していますが、BE:FIRSTの公式チャンネルで発信されなかったことを残念に思います。

テレビパフォーマンスはライト層への浸透も果たしますが、テレビパフォーマンス動画がソングスチャートに直接寄与しないだろうことは機会損失だと考えます。尤もテレビ局との権利関係の問題が背景にあるのかもしれませんが、だとすれば日本の権利に関する環境は海外に比べて遅れを取っていると言わざるを得ません。これは日本のエンタテインメント業界の大きな課題でしょう。

 

初登場後にその勢いをキープできるかに加えて気になるのは、ビルボードジャパンソングスチャートが次週を第2四半期の初週としてチャートポリシー(集計方法)変更を実施する可能性が考えられること。ビルボードポッドキャストを聴く限り四半期の区切りは曖昧で、ともすれば第1四半期が今週発表分までの14週、次週が第2四半期初週と考えられます。となれば四半期初週実施のチャートポリシー変更が次週もあるかもしれません。

このチャートポリシー変更の有無に注目すると共に、上記ブログエントリーでも紹介した第1四半期(を14週と仮定した場合)におけるソングスチャートの上位曲がすべてロングヒット且つストリーミングに強い曲であることをBE:FIRST側は意識する必要があるでしょう。短期的な上位進出以上に中長期的なヒットこそ真の社会的ヒット曲だというのがビルボードジャパンの設計思想であり、ライト層獲得こそヒット曲と成るためです。

それでも、たとえば男性ダンスボーカルグループや男性アイドルはメディア露出がなぜか十分に行えないことを踏まえれば(「CITRUS」がストリーミングで1億回再生を突破したDa-iCEが未だに『ミュージックステーション』に出られないことはその顕著な例)、まずはチャートを制することで認知度上昇に努めるというアプローチもひとつの策と言えます。

 

 

集計期間初日となる月曜のリリースや複数の動画の用意等を踏まえれば、BE:FIRST側はソングスチャートの戦略を熟知しているというのが自分の見方です。そしてコアなファンの方々の熱意もさることながら、チャートへの意識も高いと捉えています。次週首位に立つことも重要ですが、短期的なヒットにとどまらず中長期的な勝利を目指すこと、そのためにライト層を如何に獲得するかを熟考、実践することが求められます。