イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) ビルボードジャパン首位、SKE48「あの頃の君を見つけた」の極端な指標構成を踏まえチャートポリシー変更を提案する

(※追記(9月17日6時12分):9月8日公開(9月13日付)ビルボードジャパンソングスチャートの順位およびポイントが、9月16日になって訂正されています。ビルボードジャパンの記事のURLに変更はなく、また当該ブログエントリーにおいても変更はありませんが、訂正があった旨をお伝えしておきます。)

 

 

 

昨日のブログエントリーにて、最新9月8日公開(9月13日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおけるチャートポリシー変更について取り上げました。

今回は首位獲得曲について、その動向を踏まえ私見を記載します。

 

 

最新のビルボードジャパンソングスチャートはSKE48「あの頃の君を見つけた」が制しています。

さて、ビルボードジャパンのソングスチャート詳報においては時折、このような表現がみられます。

SKE48の28作目となる「あの頃の君を見つけた」は、初週売上234,600枚を売り上げシングル1位、他指標ではTwitter 16位、ルックアップ19位、ラジオ72位となり、シングルのポイントが牽引して総合首位に。前作「恋落ちフラグ」の初週売上は196,556枚で、それを約3万8千枚上回り、コアファンを着実に拡大させている

太字箇所はあくまでブログ筆者の独断により強調しています。この"コアなファン (もしくはコアファン)"という表現、穿った見方かもしれないと前置きした上で書くならば、ライト層が伴っていないことを示していると捉えていいでしょう。

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最新チャートにてルックアップやTwitter指標のウェイトが減少しただろうことで、チャート構成比に占めるフィジカルセールス指標のウェイトは大きくなっています。なお、下半期(第3四半期)初週にフィジカルセールス指標におけるウェイト減少(係数処理対象枚数の引き下げ)が行われたため*1、前作「恋落ちフラグ」のフィジカルセールス初加算週におけるポイントが17897だったのに対し、今作は8649ポイントと半減しています。

「あの頃の君を見つけた」はフィジカルセールスが4万枚近く増えた一方、デジタルではダウンロードが前作同様に100位未満300位以内となり、大きなポイント獲得源となっていません。そしてストリーミングや動画再生は300位に達せず加点対象外に。ロングヒットの重要な要素である接触指標はライト層の獲得が鍵となっており、ゆえに先述の記事にて『コアなファン』との表現が用いられたものと考えます。

さらに言えば、フィジカルセールス指標が首位を獲得した一方でルックアップ*2は19位と大きく乖離します。ルックアップはレンタル数や、CDの売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)を推測可能とする指標であるため、このことからもコアなファンの人気の域を超えていないことが判るのです。

 

「あの頃の君を見つけた」においては、LINE MUSIC再生回数キャンペーンが行われていました。

9/1(水)発売 SKE48「あの頃の君を見つけた」をLINE MUSICにてフル尺再生でたくさん聴いていただいた方の中から、A賞ご応募の再生上位18名様に「直筆メッセージカード入りSKE48サイダー瓶」、B賞ご応募の上位90名様に「直筆サイン入りポラロイド」をプレゼント!

最新ビルボードジャパンソングスチャートの集計期間のうち5日間が実施期間に該当(9月7日火曜まで実施)。前作ではLINE MUSIC再生回数キャンペーンを行っていなかったため「あの頃の君を見つけた」のストリーミング指標上昇が予想されましたが、ストリーミング指標は先述の通り300位以内にも達していません。

 

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SKE48は前作「恋落ちフラグ」が2月10日公開(2月15日付)ビルボードジャパンソングスチャートで首位を獲得しながら、その翌週には総合100位以内から姿を消しています*3。仮に「あの頃の君を見つけた」でも同様の事態となれば同作品が社会的なヒット曲と言い難いと考えると共に、ビルボードジャパンの週間チャート首位という称号が形骸化してやいないかと強く懸念します。

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この状況は、フィジカル関連指標初加算に伴い前週8272ポイントを獲得、総合2位に入った=LOVE「ウィークエンドシトロン」でも当てはまります。フィジカルセールス指標の強さが際立った同曲は今週、総合100位以内から姿を消してしまいました。

 

ビルボードジャパンには次回のチャートポリシー変更のタイミングで、フィジカルセールス指標のウェイト減少措置を検討してほしいと願います。下半期以降最新チャートまでの15週のうちフィジカルセールス首位曲が総合も制したのは8週ありますが、SKE48「あの頃の君を見つけた」以外の7週のうち翌週もトップ10内に残ったのが2週しかないためです*4

 

このチャートポリシー変更案については、AKB48の新曲動向によってはより強く提示することになります。

AKB48は昨年3月の「失恋、ありがとう」以来、1年半ぶりのフィジカルシングル「根も葉もRumor」を9月29日にリリースします。前作はフィジカルセールス加算2週目となる昨年4月1日公開分で72位に急落しましたが、とりわけデジタルの強くなさが際立っています。またフィジカルセールスは初週ミリオンを記録しながらルックアップが6位と乖離していました。チャートアクションについては下記ブログにてまとめています。

新型コロナウイルスの感染拡大に基づく一回目の緊急事態宣言に伴いビルボードジャパンがソングスチャートから一時的にカラオケ指標を集計対象から外して以降*5AKB48はフィジカルシングルを用意していませんでした。ゆえに今作のセールスを読むことは難しいのですが、デジタルが伴わない限りは仮にフィジカルセールスが牽引し総合首位を射止めたとしても、翌週の急落は免れません。

AKB48「根も葉もRumor」の動向次第では、それこそ総合首位獲得の翌週に100位以内をキープできないならば尚の事、係数処理適用枚数のさらなる低下やウェイトの減少等、フィジカルセールス指標の影響力低下の措置が必要でしょう。そして、特にアイドルグループにおいてはライト層の拡大が必要であると強く断言します。昨日のブログエントリーに記載した内容を、多くの歌手やファンの方々が意識してほしいと願います。

 

 

なお本日、乃木坂46YouTubeの人気チャンネル、THE FIRST TAKEに初登場を果たします。この動画が動画再生、さらにはストリーミング指標に活きてくる可能性が高く、反響の大きさによってはAKBグループとさらなる差をつけるものと考えます。

 

*1:下半期初週におけるフィジカルセールス指標のウェイト減少については、【ビルボード最新動向】フィジカルセールス指標のウェイト減少でますます社会的ヒットの鑑に(6月3日付)およびビルボードジャパンのチャート変革の理由が公開…支持の表明や声を上げることの必要性を記す(6月6日付)にて記しています。

*2:パソコン等にCDを取り込んだ際、インターネットデータベースのGracenoteにアクセスされる数。

*3:なお「恋落ちフラグ」はフィジカルセールスの安定に伴い総合でも100位以内に数度復活しながら、翌週には姿を消すという状況が続いていました。この点については【ビルボード最新動向】SKE48「恋落ちフラグ」セールス安定の理由と気になる点(4月30日付)で取り上げています。

*4:7月28日公開分においてSnow Man「HELLO HELLO」が7位、8月25日公開分においてSixTONES「マスカラ」が3位。しかしながら最新週におけるルックアップおよびTwitter指標のウェイト減少というチャートポリシー変更に伴い、各歌手の次回作ではデジタル解禁に至らない限り今作ほどの順位をキープすることは難しいと考えます。

*5:カラオケ指標の集計停止期間は昨年4月15日~6月24日公開分。